インデックス投資という言葉があります。日経平均やS&P500といった株価指数と、同じ値動きを目指す投資方法のことです。
これを台無しにするのは、暴落ではありません。
情報です。
正確に言うと、情報を追いかける時間と、追いかけた結果として湧いてくる「動きたくなる」気持ちのほうです。
私は投資歴18年ですが、他人の情報で動いて12万円を失ったことがあります。それでも今、Xの投資アカウントは見ています。証券アプリの通知は切りましたが、SNSは切っていません。
この記事は「SNSを見るな」という話ではありません。見た後に何もしない、を成立させるための話です。
結論:壊すのは情報ではなく、情報を見て「動く」ことです
先に答えを置きます。
インデックス投資が壊れる瞬間は、SNSを開いた瞬間ではありません。見たものをきっかけに、自分の持ち方を変えた瞬間です。
ここを取り違えると、対策も間違えます。「見るのをやめよう」と決めた人の多くが、数週間で元に戻ります。私も、見るのをやめてはいません。
では何を変えたのか。見る回数と、持つ理由の2つです。この記事では、その2つを順番に説明します。
1日30分の情報収集は、年182時間になります
まず、量を測ります。
投資の情報を1日30分見ると、1年で182時間になります。1日15分なら91時間、1日1時間なら365時間です。
下のグラフは、1日あたりの視聴時間を1年分に積み上げたものです。
私の通勤は往復1時間です。ですから1日30分のSNSは、私の通勤182日分にあたります。
ただし、ここで「時間がもったいない」と言うつもりはありません。
私自身、その通勤の1時間で投資系の動画を聴いたり、ブログのネタを考えたりしています。情報を浴びている量なら、私も多いほうです。それでも、口座を触ることはほとんどありません。
つまり、損は時間から出るのではありません。動いたときに出ます。
投資家は、自分が持っているファンドに負けています
これを裏づける調査があります。
モーニングスターという、世界最大級の投資信託評価会社があります。同社が2025年に公表した「Mind the Gap」という調査です。
対象は、米国の投資信託とETF(証券取引所で売買できる投資信託)25,000本以上になります。
2024年12月末までの10年間で、ファンド自体の年平均リターンは8.2%でした。ところが、その同じファンドを持っていた投資家が実際に手にしたリターンは年7.0%でした。
差は年1.2ポイント。原因は、売買したタイミングと金額です。ファンドは同じなのに、出入りの仕方だけで結果が変わっています。
なお、この1.2という数字には反論もあります。
2026年5月、米国CFA協会の学術誌に別の論文が載りました。CFA協会は、投資の専門資格を運営する国際団体です。
その論文は同じデータを再分析し、実際の影響は年0.10%程度だと主張しています。
幅はあります。ただ、符号はどちらもマイナスです。「よく売買した投資家のほうが儲かった」という調査は、私が探した範囲では見つかりませんでした。
投資アカウントは、あなたが「見た回数」で食べています
次に、情報を出す側の仕組みを見ます。
SNSの投資アカウントの収入源は、表示回数・フォロワー数・有料記事・広告紹介料です。つまり読者が何回見たかで決まります。
一方で、読者が儲かったかどうかは、アカウントの収入に影響しません。下の図が、その関係です。
これは以前、AIの値下げ競争を「客と株主の2つの財布」で読んだ記事で使った見方と同じです。立場が違えば、同じ出来事の意味が変わります。
正直に書きます。このブログも、同じ側にいます
ここで発信者を悪者にすると、話が嘘になります。
このブログも、noteも、YouTubeも、見られることで対価をいただく仕組みの上にあります。今のところ収益化できているわけではありませんが、狙っている構造は同じです。
私が目指しているのは、いい情報をお渡しして、その対価をいただく形です。読者が慌てて売買しても、私の収入は1円も増えません。
ですから、これは「彼らが悪い」という話ではありません。読者が動くほど得をする人がいる、という構造の話です。構造を知ったうえで見るなら、何の問題もありません。
同じ年に、見て動いた回と、見て動かなかった回があります
私自身の記録を3つ並べます。どれも過去に書いた話です。
| 場面 | 見た情報 | 動いたか | 結果 |
|---|---|---|---|
| 2020年・バイオ株 | 両親の勧め | 動いた(買った) | 13万円が1万円に。実損12万円 |
| 2026年・キオクシア | 投資と無関係な雑談系VTuberが語り始めた | 動かなかった | 半年で約10.3倍、その後1か月で約半値 |
| 2026年5月・日経6万円 | 高値到達・年の経験則・選挙の年という3つの材料 | 動いた(追加購入を止めた) | 8月28日までに+11.58%を取り逃した |
2020年の話はキオクシアの記事で書きました。両親に勧められて買い、13万円が1万円になりました。
負けた原因は、勧めた人ではありません。その業界には赤字の会社が多いという、調べれば誰でも分かることを、私が調べなかったからです。
3つ目は5月に追加購入を止めた話です。材料は3つあり、今読み返してもそれらしく見えます。それでも結果は取り逃しでした。
並べてみて分かることがあります。同じ私が、同じ年に、見て動いた回と、見て動かなかった回を持っています。分かれ目は、情報の中身ではありませんでした。
ちなみに前日の記事では、母がフジクラを買い、私が買わなかった話を書きました。母の判断は母のものです。私が買わなかったのも、SNSの意見ではなく自分の基準で決めました。情報源が何であれ、最後に動くのは自分です。
罠は2段階。止められるのは1か所だけです
ここが記事の中心です。
SNSでインデックス投資が壊れるまでには、段階があります。
見ることは止められません。見た結果として気持ちが動くのも、止められません。
手を打てるのは、「動きたくなる」と「動く」の間の1か所だけです。ここに防波堤を2つ置きます。
「勉強すれば勝てる」も「SNSは見るな」も、半分だけ正しい
その前に、よく聞く2つの意見を整理します。
1つ目は「情報は多いほどいい。勉強すれば勝てる」。これは半分正しく、半分見落としがあります。情報が増えるほど、動きたくなる回数も増えるという点です。
私が12万円を失ったときも、情報が足りなかったのではありません。両親という近い情報源があり、それで動きました。
2つ目は「SNSは全部ノイズだから見るな」。以前、私も『オルカンやめとけ』論はノイズだと書いた記事を出しています。
ただ、あれは情報の質の話でした。今回は回数の話です。そして「見るな」にも見落としが2つあります。
ひとつは、いい情報がゼロではないこと。私の実感としても、いい情報は少ないほうです。それでも、たまにあります。見ないと、その少ない分まで捨てることになります。
もうひとつは、そもそも問題が「見ること」ではないこと。私は見ています。それでも動きません。
防波堤①:見る回数を減らす
1つ目は単純です。回数を減らします。
同じ情報でも、毎日見るのと月に1回見るのとでは、動きたくなる機会の数がまったく違います。
毎日なら365回、月に1回なら12回。およそ30倍の差です。判断を迫られる場面の数が、それだけ変わります。
「投資に時間を使いすぎる」ことの本当の損失は、時間そのものではありません。動いてしまう確率が上がることです。
防波堤②:持つ理由を、値段から切り離す
ただ、頻度を下げるだけでは足りません。私自身、通勤の1時間で投資の情報に触れ続けています。それでも動きません。
理由は意志の強さではありません。持つ理由が、値段に左右されないからです。
私は数日に1回、VOOとQQQの値段を眺めています。VOOは米国の代表的な500社に、QQQは米国のハイテク企業100社に分散するETFです。
眺めても、することはありません。上がっていても、下がっていてもです。
長い目で見れば右肩上がりになると考えて持っています。ですから、その日の値段は判断材料になりません。
ここに、白眉があります。
オルカンの基準価額は毎日変わります。でも、オルカンを持つ理由は毎日変わりません。
12万円を失ったときは、ここが違いました。持つ理由が、私のものではなく両親のものでした。だから他人の情報で買い、自分の理由がないので持ち続けることもできませんでした。
以前、米国株の取引時間が延びると知って証券アプリの通知を切ったことがあります。通知は「売る」に直結するので切りました。SNSは眺めるだけなので切っていません。切る必要のあるものだけを切る、という整理です。
投資はあくまで投資。頭を使う場所は、ここではありません
もう一段、根っこの話をします。
SNSで投資情報を追いかけることには、努力している感じがあります。だから続きます。
ところが投資では、その努力が裏目に出ます。投資とダイエットは努力の向きが真逆だと書いた記事で整理したとおりです。ダイエットでは介入するほど報われますが、投資では逆になります。
2026年上半期の答え合わせでも、一番勝ったのは何もしなかった人でした。
私の考えはこうです。投資はあくまで投資で、ここに頭を使う必要はありません。
知的好奇心から個別株を眺めることはあります。ただ、稼ぐ手段は別に持っています。私の場合はブログ、note、YouTubeです。いい情報をお渡しして対価をいただく、という形を目指しています。
頭を使う先を、投資の外に置く。数独の記事を書いたときも、考え方は同じでした。増やす力は投資が担い、稼ぐ力は別の場所が担います。両方を投資に押し込むと、投資のほうが壊れます。
この整理のもとになったのが、次の本です。
お金にまつわる力を「貯める・稼ぐ・増やす・守る・使う」の5つに分けて考えます。増やす力と稼ぐ力を、別の引き出しに入れるという発想がここにあります。
今回の記事のきっかけになった動画の発信者が書いた1冊でもあります。
私の設計図と、あなたが今日からできること
最後に、具体を置きます。
ここで大事なのは、私がやっていることと、私が読者に提案することが同じではない点です。私は18年やってきたので、すでに動きたくならない状態にあります。そこに至る前の段階には、別の道具が要ります。
| 場面 | 私が実際にやっていること | 読者への提案 |
|---|---|---|
| 証券アプリの通知 | 切ってあります | 同じく切ってみてください。設定画面で1分です |
| 口座と値段 | 残高は見ていません。数日に1回、VOOとQQQの値段を眺めるだけです | 見る日を先に決めてください。そのうえで持つ理由を1行で書いておきます |
| SNSの投資アカウント | 見ます。眺めるだけで、動く気にはなりません | 見てかまいません。ただし「この情報で私の持ち方は変わるか」を1問だけ自分に聞いてください |
| 動きたくなったとき | 動きたくならないので、手順を持っていません | 「買わない・売らない」ではなく「1週間置く」と決めてください |
1問テストの答えが「変わらない」なら、そのまま閉じてください。答えが「変わる」なら、1週間置いてください。1週間後も同じ気持ちなら、それはもう情報ではなく、あなたの判断です。
そして通勤の1時間は、私の場合は動画とネタ出しに使っています。投資の口座を開く時間には使っていません。
口座を開いたら、最初にやるのは通知を切ることです
積立の設定を済ませたら、次は通知の設定を見てください。値動きの通知が届くほど、判断を迫られる回数が増えます。私の主軸はSBI証券ですが、証券会社は用途で使い分けるのが合理的です(私の保有=万人への推奨ではありません)。米国株まで幅を持たせたいならマネックス証券、少額から相談しながら始めたいなら松井証券が候補になります。どちらもNISAでインデックス投信を積み立てられます。
よくある不安 Q&A
Q1. 見るのをやめたほうが早いのではありませんか
やめられるなら、そのほうが確実です。
ただ、私は画面を閉じることを勧めた記事を書いておきながら、自分では見続けています。やめるのが難しい人のために、次の一手を用意しておくほうが現実的だと考えています。
Q2. 発信者を疑えという話でしょうか
違います。お金を失う7つのサインでは「誰かを妄信している」ことを危険信号のひとつに挙げました。あれは誰を信じるかの話です。
今回は何回見るか、そして見た後に動くかの話で、別の論点になります。信頼できる発信者を毎日見ていても、動けば同じことが起きます。
Q3. 「持つ理由を1行で書く」とは、具体的にどう書きますか
値段が出てこない文にするのがコツです。
「長い目で見れば世界経済は成長すると考えているから」なら合格です。「上がりそうだから」は、値段そのものなので不合格になります。値段で買った理由は、値段で壊れます。
まとめ
- インデックス投資を壊すのは情報そのものではなく、情報を見て動くことです。1日30分の情報収集は年182時間になりますが、問題は時間ではありません。
- 止められるのは「動きたくなる」と「動く」の間の1か所だけです。防波堤は、見る回数を減らすことと、持つ理由を値段から切り離すことの2つになります。
- 発信する側は見られた回数で成り立っています。このブログも同じ側にいますが、読者が動いても発信者の収益は変わりません。構造を知ったうえで見るなら問題ありません。
まずは、証券アプリの通知を切ってみてください。設定画面で1分です。そのうえで、自分が持っている商品の「持つ理由」を1行だけ書き出してみてください。値段が出てこない文になっていれば、それがいちばん強い防波堤になります。
オルカンの基準価額は毎日変わります。でも、それを持つ理由は毎日変わらないはずです。変わらないものを持っているなら、毎日確かめる必要はありません。
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※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品への投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任のもとで行ってください。過去の実績は将来の成果を保証しません。記事中の数値は2026年9月8日時点のものです。
本記事は情報提供を目的としており、投資助言・勧誘を目的とするものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
