先日、投資とはまるで関係のない配信を見ていました。お気楽な雑談を流している、いわゆるVTuber(バーチャルな姿で活動する配信者)の動画です。その人が、キオクシアの話をしていました。
手が止まりました。株の話をする人ではありません。それでも、その単語が出てきました。
私はそのとき、「ああ、末期だな」と思いました。株価の予想ではありません。相場の空気を見ての話です。
この記事では、キオクシアの株価がどう動いたのかを数字で確認します。そのうえで、私がなぜこの祭りに乗らないのかを、13万円が1万円になった自分の失敗と一緒に書きます。銘柄の良し悪しの話ではありません。乗り方の話です。
投資と何の関係もない配信で、その名前を聞いた
キオクシアホールディングス(証券コード285A)は、日本のフラッシュメモリ(スマホやパソコンのデータを保存する半導体)の大手です。もとは東芝の半導体部門で、2024年12月に東京証券取引所プライム市場へ上場しました。
ここ半年、この会社の名前をあらゆる場所で見かけるようになりました。経済ニュースだけではありません。株を扱わないメディアでも、SNSでも、そして雑談配信でも出てきます。
私が引っかかったのは、その配信者が株の解説をしていたわけではない点です。話題として消費されていました。それだけ広く行き渡ったということです。
金(ゴールド)の価格が上がったとき、田中貴金属の店舗に行列ができました。あの光景と同じ匂いがしました。行列ができてから買いに行く人は、たいてい高値をつかみます。
半年で10倍、そこから1か月で半値になっていた
感覚の話だけでは意味がないので、数字で確認します。以下はすべて2026年7月24日時点のデータです。
キオクシアの株価は、2026年1月6日に年初来安値10,945円をつけました。そこから約5か月半で上昇し、6月22日に年初来高値112,700円に達しています。およそ10.3倍です。
そして、そこからが速い動きでした。7月17日に52,110円まで下げ、7月24日の終値は56,010円でした。前日比マイナス5,870円、1日でマイナス9.49%です。
高値からの下落率は約50%。ひと月で半分になりました。
この日は市場全体も重く、日経平均株価は1,811円45銭安の64,611円15銭で引けました。人工知能(AI)関連や半導体の銘柄が売られています。
そして日本経済新聞は、キオクシア株で追証(おいしょう)が焦点になっていると報じました。追証とは、借金をして株を買う信用取引で、株価が下がったときに追加のお金を差し入れるよう求められる仕組みです。差し入れられなければ、持ち株は強制的に売られます。
暴落の場で何が起きるのかは、キオクシア急落で「売らされた」のは誰か——暴落で売らずに済む人が持つ、2つの構造に書きました。この記事は、その手前の話をします。そもそも、なぜ乗らないのかです。
白状します。私も一度、乗りました
偉そうに書いていますが、私にも乗った経験があります。しかも、いちばん典型的な負け方をしました。
新型コロナウイルスが広がっていた時期のことです。ある会社が、コロナに効く薬を研究開発していると話題になりました。テレビでも紹介されていました。
両親から連絡が来ました。「ここは伸びる」と。
ここは正確に書いておきます。私の両親は個別株で勝ってきた人たちです。私が銘柄の相談をする側であって、その逆ではありません。その両親ですら、あのときの熱には飲まれていました。それくらいの空気だったということです。
強く勧められて、私は買いました。結果を書きます。
13万円だった株が、1万円になりました。1万円で売りました。実損12万円です。
痛かった、という言葉では足りません。いちばん情けなかったのは、私が何も調べていなかったことです。
創薬に関わるバイオ企業には、赤字の会社が多くあります。薬が承認されるまで売上が立たないからです。それは調べれば分かることでした。私は調べませんでした。人に勧められて、話題になっていて、テレビで紹介されている。それで十分な気になっていたのです。
誤解のないように書きますが、悪いのは両親ではありません。買うと決めたのは私で、手順を全部飛ばしたのも私です。
あれ以来、私にとって「話題になっている」「テレビで紹介された」は、買いの理由ではなく罠を知らせる言葉になりました。
なぜ「猫も杓子も」が天井のサインなのか
私は今年7月6日に公開したMicronとは何の会社か?S&P500の第8位になった”メモリの巨人”という記事で、こう書きました。
「危ないかもしれない」と感じているうちは、まだ大丈夫です。本当に危ないのは、猫も杓子も「乗り遅れるな」と言い出し、自分までそう感じ始めたときです。それが天井のサインだと、私は考えています。
あの記事では「飛びついてやけどをする人を、腐るほど見てきた」とも書きました。正直に言えば、その中に私も入っています。上に書いた12万円が、それです。
では、なぜ知名度が上がりきると危ないのでしょうか。理屈は単純です。
株価が上がるには、今より高い値段で買う人が必要です。ところが名前が広く知られるほど、「まだ知らない人」=これから新しく買いに来る人が減っていきます。
投資をしない配信者が雑談で口にする段階は、その最終盤にあたります。届く先が、もう残っていません。買いたい人がひととおり買い終わったところで、値段を押し上げる力は消えます。
これは「いつ下がるか」を当てる話ではありません。上がる余地がどれだけ残っているかを見積もる話です。
ただし、キオクシアが悪い会社なのではありません
ここは強調しておきます。私はキオクシアという会社を批判していません。むしろ数字は立派です。
2026年3月期の通期決算は、売上収益が前期比37.0%増の2兆3,376億円、営業利益が同92.7%増の8,703億円でした。営業利益は東芝メモリ時代の記録を8年ぶりに更新しています。
さらに、この先には株価を押し上げうる予定もあります。日本取引所グループ(JPX)は2026年7月10日、東証株価指数(TOPIX)の銘柄見直しについて発表しました。キオクシア株を2回に分けて組み入れるという内容です。指数に連動するファンドから、まとまった買いが入るという観測が出ています。
逆に、重しもあります。2026年7月16日(米国時間)、米テキサス州西部地区連邦地方裁判所の陪審が評決を出しました。衛星通信大手ビアサットの特許を侵害したとして、2億2,900万ドル(約371億円)の賠償を認める内容です。
キオクシアは「到底容認できない」として控訴する方針で、製品供給への影響はないとしています。評決であって、確定ではありません。
| 材料 | 向き | 中身 |
|---|---|---|
| 2026年3月期決算 | 押し上げ | 営業利益8,703億円(前期比92.7%増)・8年ぶりに過去最高を更新 |
| TOPIX組み入れ(2回に分割) | 押し上げ | 2026年7月10日にJPXが発表。指数連動ファンドの買いが見込まれる |
| 米国での特許訴訟 | 押し下げ | 2億2,900万ドルの賠償評決(2026年7月16日)。会社は控訴方針で未確定 |
| 信用取引の追証 | 押し下げ | 株価急落で発生。売りが売りを呼ぶ需給の悪化要因 |
つまり、上げ要因と下げ要因が交互に並んでいます。私は「ここから下がる」と言っているのではありません。上がる可能性も普通にあります。
それでも私は乗りません。理由は株価の予想ではなく、自分のルールだからです。
私が守っている4つのルール
12万円の授業料で身についたものを、4つに整理しておきます。
1. 手順は必ず踏む
何の会社か、何で稼いでいるか、黒字か赤字か。最低限それを見てから買います。私はあのとき、この段階を丸ごと飛ばしました。
2. ルールを守る(インデックス以外に手を出さない)
私の中心はインデックスファンド(市場全体にまとめて分散投資する商品)です。ここを崩さないと決めています。ルールは、守っているときは退屈で、破ったときにだけ牙をむきます。
3. 手を出すなら、十分に調べて自分の意志で決める
例外を作ること自体は否定しません。ただし条件があります。自分で調べて、自分で決めること。そして、消えても生活が揺らがない金額であることです。
4. 人の話には乗らない
これがいちばん大事だと考えています。勧めてくれる人に悪気はありません。それでも、損をしたときに痛むのは自分の財布だけです。
ここは正直に書いておきます。私はキオクシアを買うつもりがありません。そして、祭りに割ける資金もありません。かっこいい理由だけで乗らないのではなく、単純に、そこに回すお金がないという事情もあります。
乗らなかった結果、株価がさらに上がることもあるでしょう。それは「儲けそこない」であって「実損」ではありません。この違いはSpaceX上場1週間の現実でも書きました。取り返せない損と、取り逃した利益は、別のものです。
祭りは、見物する側でいい
ここまで書いてきましたが、半導体という大きな流れそのものを否定しているわけではありません。
実は、キオクシアは2025年11月にMSCI ACWIという指数に採用されました。これは「オルカン」の愛称で知られるeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)が連動している指数です。
つまり、オルカンを積み立てている人は、意識しないうちにキオクシアの株主になっています。ごくわずかな比率ですが、確かに持っています。
これは前述のMicronの記事で書いたことと同じ構造です。個別に飛び乗らなくても、指数を持っていれば流れには乗っています。しかも、1社が半値になっても資産全体は半値になりません。
| 項目 | 私(Hiro)の場合 | 読者の方への検討材料 |
|---|---|---|
| キオクシア株 | 保有していません。買う予定もありません | 買う場合は、自分で調べて、失っても困らない金額で |
| 中心に置くもの | VOO・QQQ(米ドル建てETF)を長期保有 | eMAXIS Slim 全世界株式(オルカン)/同 S&P500 |
| 半導体への関わり方 | 個別では買わず、指数の一部として間接的に保有 | 同じく、指数を通じてなら意識せず乗れます |
証券口座について(私の使い分け)
私の主軸はSBI証券ですが、用途によって使い分けています。米国株や個別株を触るならマネックス証券、少額から始めたい方やサポートに相談しながら進めたい方には松井証券が向いています。どこで買うかより、何を買わないと決めるかのほうが結果を左右します。
まとめ:乗らなかった話は、誰も自慢しません
この記事でお伝えしたかったことを整理します。
- キオクシアは年初来安値から高値まで約10.3倍になり、そこから約1か月で半値になりました(2026年7月24日時点)。会社の業績は好調で、問題は会社ではなく相場の熱にあります。
- 名前が知れ渡るほど、これから買う人は減っていきます。投資と無関係な場で話題になる段階は、その最終盤だと私は考えています。
- 私は過去に「話題」と「テレビ」で買い、13万円を1万円にしました。原因は銘柄選びではなく、手順を飛ばしたことでした。
まずは、いま気になっている銘柄について「自分は誰の言葉でこれを知ったか」を思い出してみてください。答えが「人に勧められたから」なら、いったん手を止める価値があります。
相場で勝った話は、みんなが話します。乗らなかった話は、誰も自慢しません。それでも私は、乗らなかった日のほうが、資産を守ってくれたと考えています。
▶ この記事を動画でも解説しています(約9分30秒):
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余談:最近、気になっている道具の話
投資とはまったく関係のない余談です。読み飛ばしていただいて構いません。
相場の話ばかり書いていると気が張るので、最近ネットで見かけて気になっている道具を2つだけ書いておきます。どちらもまだ使っていません。使った感想ではなく、「気になっている」という段階の話です。
ひとつは、頭皮と体に使う塩のスクラブ(粒の入った洗浄料)です。汚れがよく落ちるという動画を見て、試してみてもいいかもしれないと思いました。
もうひとつは、ざるが一体になった調理ボウルです。茹でた麺を入れてそのまま湯を切ったり、野菜を洗って水を切ったりできるようで、便利そうだと感じました。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品への投資を推奨するものではありません。株価・指数などの数値は2026年7月24日時点のものです。投資判断はご自身の責任のもとで行ってください。
本記事は情報提供を目的としており、投資助言・勧誘を目的とするものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
