現金比率30%は多いのか、少ないのか——現金を4つに分けたら、本当の比率は17%でした【生活防衛資金の決め方】
結論を先に書きます。
現金比率は、あなたが「決めるもの」ではありません。現金を用途ごとに仕分けた結果、あとから出てくる数字です。
だから、比率が多いか少ないかで悩む前にやることがあります。持っている現金を4つに分けることです。分母を間違えたまま比率を議論しても、答えは全部ズレます。
「現金比率は何%がいいですか」という問いは、投資の話で最もよく出てくるもののひとつです。
そして、返ってくる答えもだいたい決まっています。「年齢と同じ%を債券に」「現金は30%くらい」「生活防衛資金は生活費の6か月分」。どれも間違ってはいません。ただ、どれもあなたの数字を見ていません。
この記事では、比率を先に決めるのをやめて、仕分けから始める方法を書きます。最後に、自分の数字を入れて計算できるツールも置きました。
結論:比率で悩む前に、現金を4つに分ける
現金には、性格の違うお金が混ざっています。混ざったまま合計すると、実態より多く見えます。
分け方はこの4つです。
| 分類 | 中身 | 動かせるか |
|---|---|---|
| ① 生活用 | 次の給料日までの運転資金。家賃、食費、光熱費 | 動かせない |
| ② 防衛資金 | 働けなくなっても暮らせる現金。生活費の3〜6か月分 | 動かせない |
| ③ 中期資金 | 使う予定が決まっているお金。車の買い替え、引越し、学費 | 動かせない |
| ④ 投資用余剰 | 上の3つを引いて、まだ残っているお金 | ここだけ動かせる |
現金比率を語るときの分母に入れていいのは、④だけです。
①②③は、名前は「現金」でも、投資の判断材料としては現金ではありません。使い道がすでに決まっている、予約済みのお金だからです。
モデルケースで計算してみます
30代前半、会社員、独身、賃貸。生活費は月20万円。この人の資産がこうだったとします。
表面上の現金比率 = 600 ÷ 1,800 = 33.3%
33%。多いでしょうか。少ないでしょうか。
この時点では、まだ判断できません。600万円の中身が分かっていないからです。仕分けてみます。
①生活用40万円、②防衛資金120万円、③中期資金200万円。ここまでで360万円が埋まりました。残った④投資用余剰は240万円です。
では、本当の現金比率を出します。分母から、予約済みの360万円を外します。
33%が17%になりました。お金は1円も動いていません。数え方を変えただけです。
もしこの人が「現金33%は多すぎる。減らそう」と考えて株を買い足していたら、買った原資は防衛資金か中期資金です。車の買い替え代で株を買っていたことになります。
「現金は30%が目安」が効かない理由
よく見かける目安は、だいたいこの3つです。
- 年齢と同じ%を債券・現金に置く(30歳なら30%)
- 現金は資産の20〜30%
- 生活防衛資金は生活費の6か月分
3つ目だけは、この記事のやり方と同じです。金額で決めているからです。上の2つは比率で決めているので、あなたの生活費がいくらかを一切見ていません。
極端な例を出します。総資産1,800万円の人が2人いて、片方は月の生活費が15万円、もう片方は35万円だとします。「現金30%」なら、どちらも540万円です。でも必要な防衛資金は90万円と210万円で、2倍以上違います。同じ比率でも、片方は余りすぎ、片方は足りていません。
AIに聞いても、同じ答えしか返ってきません
いまは生成AIに「現金比率は何%がいいですか」と聞けば、すぐ答えが返ってきます。試すと、やはり「20〜30%」「年齢と同じ%」と返ってきます。
これはAIが悪いのではありません。入れた情報の範囲でしか答えられないからです。あなたの生活費も、来年の車検も、転職の予定も渡していないなら、返ってくるのは一般論だけです。
逆に言えば、渡す情報を変えれば答えは変わります。この記事でやるのは、その渡す情報を作る作業です。
比率は答えではなく、結果です
ここが、この記事でいちばん言いたいところです。
「いつ・何に使うか」が先に決まれば、比率は自動で出てきます。
私は8月に、新窓販国債と個人向け国債の違いを書きました。あのときの結論は「どちらが得か」ではなく「何年置くかを先に決めるべき」でした。年数が決まれば、どちらを買うかは自動的に決まるからです。
今回は、その一段手前の話です。年数を決めるより前に、そのお金が何のためのお金なのかを決める。順番はこうなります。
- 何のためのお金かを決める(=4分類)
- いつ使うかを決める(=年数)
- 置き場が決まる(=商品)
- 比率が結果として出る
多くの人が悩んでいるのは4番です。でも4番は、1〜3番が決まれば計算するだけの数字です。
出口の自由度を、数万円の金利で売らない
仕分けが終わると、次に出てくるのが「じゃあ、そのお金はどこに置くのか」です。
ここで気をつけたいことがひとつあります。利回りを求めて、防衛資金を縛らないことです。
防衛資金は、利回りで選んではいけません
個人向け国債は、発行後1年たてば国が額面で買い取ってくれます。元本割れしない、安全な置き場です。
ただし、裏を返せば最初の1年は換金できません。防衛資金は「働けなくなった今日」に使うお金です。1年待てるなら、それは防衛資金ではありません。
防衛資金120万円を国債に置いて、普通預金より年0.5%多く受け取れたとします。差は年6,000円です。その6,000円のために、1年間ほどけない状態を買っていることになります。
私はこれを、割に合わないと考えています。
私は、防衛資金を使い切ったことがあります
偉そうに4分類を書いていますが、私自身、この②を空にしたことがあります。
2026年6月のボーナスの記事で、私はこう書きました。少し前に生活防衛資金を使ってしまい、そのボーナスは補填でほとんど消える、と。
そのとき、買い替えたかったヘッドセットは見送りました。防衛資金がゼロの状態で買い物をする気には、どうしてもなれなかったからです。
このとき実感したのは、防衛資金は「使うためのお金」ではなく「持っていること自体が仕事をするお金」だということでした。あると、判断が落ち着きます。無いと、金額の大小に関係なく落ち着きません。
だから私は、②を利回りで縛る気になれません。暴落で売らされる人と売らされない人の違いも、結局はここでした。相場の知識ではなく、家計側に余白があるかどうかです。
中期資金は、使う時期で選び分ける
③中期資金は、防衛資金と違っていつ使うかが分かっています。だから、その年数に合わせて置き場を選べます。
| 使う時期 | 置き場 | 理由 |
|---|---|---|
| 1年以内 | 普通預金 | 個人向け国債は最初の1年は換金できません。ここは利回りを諦める場所です |
| 1〜3年 | 個人向け国債 固定3年 | 期間がぴったり合います。1年経てば額面で換金できます |
| 3〜5年 | 個人向け国債 固定5年 | 2026年8月時点では、税引後の利回りがいちばん高いのがここでした(1.642%) |
| 時期が未定 | 個人向け国債 変動10年 | 金利が上がれば追随します。ただし利回りは固定5年より低い(1.490%)=「決めなくていい」を買っている形です |
ここは正直に書いておきます。変動10年は、固定5年より利回りが低いです。2026年8月の実数で、税引後1.490%と1.642%。0.152ポイントの差があります。
それでも変動10年が選択肢に残るのは、政策金利がまだ上がる途中だからです。上がり続ければ、いつか固定5年を追い抜きます。追い抜くかどうかは誰にも分かりません。
だから、時期が決まっているなら固定。決まっていないなら変動。利回りで選ぶのではなく、決まっているかどうかで選ぶのが筋だと思っています。
実践:あなたの数字でやってみる
ここまでの手順を、そのまま計算できるようにしました。金額は万円で入れてください。数字はどこにも送信されません。
入力した数字はこのページの中だけで計算され、どこにも送信されません。
手を動かす順番
- 月の生活費を出す。家賃・食費・光熱費・通信費・保険。1か月ぶんの銀行口座とカード明細を見れば出ます
- 何か月分を防衛資金にするか決める。会社員なら3〜6か月、自営業なら6〜12か月が一般的な目安です
- 使う予定を全部書き出す。車検、引越し、家電の寿命、帰省費用。金額と時期をセットで
- 引き算する。残ったものが投資用余剰です
3番がいちばん面倒で、いちばん効きます。ここを書き出さないと、中期資金がまるごと「投資できるお金」に見えてしまうからです。
余剰が思ったより少なかった人へ
計算して「投資に回せるお金がほとんどない」となった場合、それは失敗ではありません。正しい数字が出ただけです。
そのときに効くのは、比率をいじることではなく入金力を上げることです。最初の1000万円は投資では作れないという話や、貯蓄率は手取り÷5でいいという暗算式は、そのための記事です。
ちなみに私は、月5万円を貯めようとして生活が詰んだことがあります。防衛資金を作る前に貯蓄率を上げすぎると、今度は生活側が壊れます。
余剰が出たら、置き場を用意しておく
仕分けが終わって④が残ったなら、次はその置き場です。私の主軸はインデックスの積立ですが、口座は用途で使い分けています。以下は私が使い分けている2社です(保有と推奨は別物です。ご自身の目的で選んでください)。
まとめ
- 現金比率は決めるものではなく、仕分けた結果として出てくる数字です
- 現金は4つに分ける。生活用・防衛資金・中期資金・投資用余剰
- 比率の分母に入れていいのは、投資用余剰だけ。モデルケースでは33%が17%になりました
- 「現金30%」型の目安は、あなたの生活費を見ていません。金額で決めるほうが正確です
- 防衛資金は利回りで縛らない。1年ほどけない状態を、年6,000円で買うことになります
- 中期資金は「決まっているかどうか」で選ぶ。時期が決まっていれば固定、未定なら変動
比率の正解を探すのをやめて、自分の予定を書き出す。順番を変えるだけで、悩んでいた問題のほうが消えます。
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置き場をもっと詳しく知りたい方へ
家計側の余白を作りたい方へ
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出典:財務省「個人向け国債」(中途換金の条件・中途換金調整額の計算方法)、総務省「家計調査」(2025年・単身世帯の消費支出は月173,042円)、および当サイト2026年8月21日の記事で用いた2026年8月時点の各国債の実数。
本文中の金額は説明のためのモデルケースであり、筆者個人の資産額ではありません。国債の利回りは発行回号ごとに変わります。購入前に必ず財務省および取扱金融機関の最新情報をご確認ください。
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本記事は情報提供を目的としており、投資助言・勧誘を目的とするものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
