moomoo証券の処分で分かった、証券会社を「手数料」だけで選んではいけない現実【2026年6月】

moomoo証券の行政処分を受け、証券会社を手数料でなく出口の自由度で選ぶ重要性を伝えるアイキャッチ。月城ミオが落ち着いた表情で注意を促す 投資戦略・制度

moomoo証券(ムームー証券)が、2026年6月19日に金融庁・関東財務局から行政処分(法律違反をした金融機関に国が出す是正命令)を受けました。3カ月間の一部業務停止です。

ニュースの見出しだけを見ると「危ない証券会社なんだ」という印象を持つかもしれません。でも、私がこの記事で一番伝えたいのは、それではありません。

結論から言います。証券会社は「手数料の安さ」や「キャンペーン」ではなく、態勢の成熟度と”出口の自由度”で選ぶ。これが、今回の処分が私たち個人投資家に突きつけた本当のテーマです。

私の主軸口座はSBI証券ですが、この基準を満たす大手なら、正直どこを選んでも大きくは外しません。なぜそう言えるのか、処分の中身を一つずつ、図解でほどいていきます。

【結論】「moomooが危険」という話ではありません

まず、一番大事な誤解を先に解いておきます。

moomoo証券は、金融庁に登録された正規の証券会社です。米ナスダック上場の香港系オンライン証券大手・富途控股(フートゥー・ホールディングス、テンセント元幹部が2012年に創業した会社)の日本子会社にあたります。

そして、あなたが預けたお金や株は分別管理(証券会社の財産と顧客の財産を分けて保管する仕組み)されており、万が一の時は投資者保護基金(証券会社が破綻しても一人1,000万円まで補償する制度)で守られています。

つまり今回は、「会社が潰れて資産が消える」という話ではありません。問題になったのは、会社の経営・内部管理の態勢顧客対応のずさんさです。

だから私は、ここで「moomooは危ない、逃げろ」と煽るつもりはありません。煽ったほうが記事は読まれますが、それは事実の重さに合っていないからです。代わりに、この一件が映し出した「証券会社の選び方」という構造を、落ち着いて見ていきます。

【経緯】3カ月の業務停止までに何が起きたか

moomoo証券は、米国株の売買手数料が業界最安水準というのを武器に、急拡大してきました。アプリの国内ダウンロード数は、2025年11月に200万件を突破しています。

その「急拡大」と「態勢の遅れ」が、どう重なって処分に至ったのか。時系列で並べると、流れがひと目で分かります。

2022年10月 日本でアプリ配信を開始 2024年4月 日本株取引を開始/同月から出庫を一律拒否 2025年2〜5月 NISA対象外を「対象」と虚偽表示 米国ETF・ETN 77銘柄/59顧客が売買 2025年5月27日 いったん販売を停止 2025年11月〜2026年1月 同じ過ちを再発(米国ETF 1銘柄) ※2025年11月13日に国内200万DL突破 2026年6月5日 証券取引等監視委員会が処分勧告 2026年6月19日 行政処分(3カ月の業務停止)
moomoo証券の処分までの流れ。赤が問題行為、黒が処分。「急拡大→問題→一度止めたのに再発→処分」が読み取れます(出典:関東財務局・金融庁 2026年6月19日発表、moomoo証券プレスリリース)

注目してほしいのは、2024年4月です。日本株の取引を始めて顧客を一気に増やしたまさにその月から、後述する「出庫の一律拒否」が始まっています。

そして2025年5月に一度問題を止めたのに、同じ年の11月に同じ過ちを繰り返している。この「再発」が、今回の処分を重くしました。

【何が悪い】4つの違反は、ひとつの根から生えている

当局が認定した法令違反は、大きく4つに分かれます。まず一覧で整理します。

違反 何をしたか どの法律
① NISA虚偽表示 NISA対象外の米国ETF・ETN77銘柄を「対象」と注文画面に表示して販売。59顧客が売買。一度止めたのに再発 金融商品取引法38条1号(虚偽告知)
② 出庫の一律拒否 他社口座へ株を移す申請を、2024年4月以降ずっと一律で拒否(投信は同年9月以降) 金融商品取引法43条(善管注意義務)
③ マネロン対策放棄 口座開設を断った延べ1,531人について「疑わしい取引」の検討すらしていなかった 犯罪収益移転防止法
④ システム態勢の不備 脆弱性の放置など、サイバー対策を含むシステムリスク管理が6項目で不十分 経営管理・内部管理態勢の不備
moomoo証券の4つの違反(出典:関東財務局 2026年6月19日発表)。ETN(指数に連動する外国の債券。NISA対象外)

一番重いのが①です。NISAは制度として対象商品と対象外商品が決まっているのに、対象外のものを「対象」と画面に表示して売り、しかも一度止めたあとに同じことを再発させました。

是正のやり方も問題でした。当局は「著しく杜撰(ずさん)」と表現しています。課税口座への振替か取引の取消かの二択を顧客に迫り、1人だけ年間投資枠を直して残り58人は2025年12月まで放置するという不公平もありました。

ここで私が立ち止まったのは、この4つがバラバラの不手際ではないという点です。図にすると、こうなります。

ひとつの根 営業を優先し、態勢が追いつかなかった ①NISAを 虚偽表示 ②出庫を 一律拒否 ③マネロン 対策の放棄 ④システム 態勢の不備
4つの違反は、ひとつの根「営業優先・態勢不足」から生えている(筆者作図)。新規口座獲得を優先する一方で、コンプライアンスとシステム管理の人手が追いつかなかった構図です

当局の認定をひとことで言えば、「業容拡大を優先し、コンプライアンスとシステム管理に精通した人材の配置を怠った」。営業ドリブンで急拡大したネット証券のガバナンスが追いつかなかった、という典型的な構図です。

【影響】誰が、どう困るのか

では、これは「誰に」「どう」効くのか。読者が一番知りたいところなので、立場ごとに切り分けます。

立場 どう影響するか
既存ユーザー 口座も取引もそのまま使えます。止まったのは「新規口座開設の勧誘・受付」だけです。資産が凍結される話ではありません
対象外をNISAで買った60人 本来非課税で使えるNISA枠が、対象外商品で埋まりました。課税口座への振替か取消を迫られ、税務申告にも影響します
これから口座を作る人 2026年9月18日まで、新規開設ができません
出庫を断られていた人 他社へ株を移そうにも移せませんでした。別の証券会社へ乗り換えたくても、出口が塞がれていたということです
処分の影響を立場別に整理(出典:関東財務局 2026年6月19日発表をもとに筆者作成)

派手なのは①のNISA虚偽です。でも私が「これは根が深い」と感じたのは、むしろ④の出庫拒否のほうでした。次の章で、その理由を話します。

【本質】入口は派手に、出口は静かに

私はこのブログで、少し前に「出口の自由度」という話を書きました。守るべきは資産の種類ではなく、いつでも逃げられる自由のほうだ、という視点です。

今回の出庫拒否は、まさにそれの証券会社版でした。

急拡大したネット証券は、「入口」──口座開設キャンペーン、手数料の安さ──に資源を集中しがちです。一方で「出口」──他社への移管(出庫)──は、地味なので後回しにされやすい。

moomoo証券は、自社サイトで「出庫を可能にする予定」と表示しながら、検査の時点でシステムの開発計画も予算措置も、何ひとつ用意していませんでした。入口は派手に見せて、出口は静かに塞いでいた、ということです。

これは、囲い込みです。安さやキャンペーンで人を集める力が強いほど、出口の有無は見えにくくなります。

もうひとつ、制度の事実を押さえておきます。NISAの対象・対象外は、租税特別措置法という法律で決まっています。証券会社の注文画面に出る「対象商品」という表示は、最終的な保証ではありません。今回は、その表示が間違っていた。だからこそ、最後は自分で確認する習慣を持つしかない、という話になります。

【どうする】証券会社は何で選ぶか

ここまでが「事実」と「構造」です。最後に、私たちが今日からできる「行動」に落とします。叩いて終わりにはしません。矢印を会社ではなく、私たち読者の作法に向けます。

3つの作法

1. 「おすすめ」を見たら、一度だけ「これは案件か」を疑う。
良し悪しを決める前に、発信者の立ち位置(利益相反があるか)を確認する習慣です。スポンサーがついた推奨は、出庫の自由度や態勢の成熟度といった”地味だが効く”論点を語りにくいものです。

2. 手数料やキャンペーンより、態勢の成熟度と出口の自由度で選ぶ。
今回まさに、この地味な軸が問題になりました。安さは比べやすく、態勢は比べにくい。だからこそ、ここを意識的に選定基準に入れます。

3. NISAの対象かどうかは、注文画面ではなく制度で確認する。
今回の60人は、画面の表示を信じた結果でした。最後の一歩だけは、自分で確かめる。

では、どこを選ぶか

「危ないところを避ける」の裏返しは、「安心して使えるところを知っておく」です。私が普段から信頼している大手を、経済圏の軸で整理しました。

独立系 SBI証券 最大手・万能 松井証券 サポート・少額 通信系・経済圏 楽天証券 楽天ポイント マネックス(ドコモ) 米国株・個別株 auカブコム(KDDI) 外資 サクソバンク証券 外国株・海外商品 の取扱いが広い
信頼できる大手を経済圏の軸で整理(筆者作成)。いずれも金融庁登録の大手で、出庫の一律拒否や態勢の未成熟とは無縁です。あとは自分の使うサービス圏で選べば、大きなズレは出ません

ここで、保有と推奨を分けて書いておきます。私が実際に使っているのと、読者のあなたが選ぶべきものは、必ずしも同じではありません。

  私(Hiro)の場合 読者へのおすすめ
主軸 SBI証券 自分の経済圏(楽天・ドコモ・au)で選んでOK
選んだ理由 取扱いの広さと使い慣れ 態勢が成熟し、出庫の自由度があること
保有≠推奨。私はSBIですが、この基準を満たす大手なら、あとは経済圏で選べばよいという考え方です

口座を「用途で使い分ける」なら(私の主軸はSBIですが、ここは正直に)

私はSBI証券を主軸にしていますが、米国株や個別株を深く触りたいならマネックス証券、サポートや少額・相談を重視するなら松井証券、外国株や海外商品の幅広さならサクソバンク証券、と用途で見るのも合理的です。どれも金融庁登録の大手で、出庫の自由度も確保されています。保有=推奨ではありません。気になった口座を、ご自身で比べてみてください。

マネックス証券 米国株・個別株に強いネット証券 松井証券 サポート・少額取引に強い老舗ネット証券 サクソバンク証券 外国株・海外商品の取扱いが広い外資系ネット証券

関連書籍

きみのお金は誰のため」— 元ゴールドマンのトレーダーが書いた、お金と社会の関係を物語で考え直す一冊(ビジネス書グランプリ2024総合1位)。「おすすめ」の裏側を見抜く目を養いたい人に。

まとめ

今回の処分から、私が持ち帰ったことを整理します。

  • moomoo証券の処分は「会社が危ない」ではなく、態勢と顧客対応のずさんさの問題です。資産は分別管理と投資者保護基金で守られています。
  • 4つの違反は、「営業優先・態勢不足」という一つの根から生えています。特に出庫の一律拒否は「出口の自由度」を奪う、根の深い問題です。
  • 証券会社は手数料やキャンペーンではなく、態勢の成熟度と出口の自由度で選ぶのが、1年後も古びない基準です。

まずは、あなたが今使っている証券口座が「他社へ出庫できるか・そのコストはいくらか」を、一度だけ確認してみてください。それが、囲い込みから自由でいるための、いちばん地味で確実な一歩です。

私はSBIですが、この基準を満たすなら、どこを選んでも大きくは外しません。大事なのは銘柄でも手数料でもなく、いつでも出口に歩いていけるという、その自由のほうです。

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▼ この記事の内容を、約10分の動画でも解説しています。
【動画版】moomoo証券の処分が映した「証券会社の選び方」(約10分)

※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品への投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任のもとで行ってください。記載の処分内容は2026年6月19日時点の関東財務局・金融庁の公表に基づきます。

【免責事項】
本記事は情報提供を目的としており、投資助言・勧誘を目的とするものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
この記事を書いた人
hiro

投資歴2007年から約18年。VOO・QQQ・金(GLDM)・eMAXIS Slim S&P500・オルカン・個別株を保有。「絶望買い×インデックス投資」で暴落局面こそ買い増すスタイル。長期的なアメリカ経済への信頼を軸に運用しています。AI×投資で資産運用ツールを開発中。完成次第フリーで公開予定。

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