金利が上がって、ドルが強くなりました。
それなら、ドル建てで持っている VOO のほうが、円建ての投資信託より勝っているはずです。私はそう思って、自分の口座の中で起きていることを数えてみました。
結果は逆でした。3年で6万2,049円、投資信託の勝ちです。しかも差を作っていたのは、信託報酬でも経費率でもありませんでした。
この記事では、2023年から2025年までの3年間を、実際の株価・為替・基準価額・配当の一次データで再現します。読み終わるころには、「どちらが安いか」ではなく「どちらが動かしやすいか」で選ぶ理由が分かります。
結論:100万円・3年で6.2万円、投資信託の勝ちでした
先に答えを書きます。
2022年12月30日に、Vanguard S&P 500 ETF、通称VOO(アメリカの主要500社にまとめて投資できる上場投資信託)と、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)、通称スリムS&P500に、それぞれ100万円を入れます。
3年後の2025年末、評価額はこうなりました。
| 年末 | スリムS&P500 | VOO(円換算) | 差 |
|---|---|---|---|
| 2022年末(出発点) | 1,000,000円 | 1,000,000円 | ±0円 |
| 2023年末 | 1,346,326円 (+34.63%) |
1,331,415円 (+33.14%) |
−14,911円 |
| 2024年末 | 1,895,314円 (+40.78%) |
1,830,109円 (+37.46%) |
−65,205円 |
| 2025年末 | 2,192,126円 (+15.66%) |
2,130,077円 (+16.39%) |
−62,049円 |
3年通算は、119%と113%でした
3年通算のリターンは、スリムS&P500が+119.21%、VOOが+113.01%です。
どちらも資産は2倍を超えました。この3年間のアメリカ株が、それだけ強かったということです。
VOOの内訳も見ておきます。ドル建てでは+81.01%でした。そこに為替が乗ります。1ドル132.92円から156.41円へ、+17.68%の円安です。
つまり、円安はきちんとVOOに味方していました。それでも届かなかった、というのが今回の話です。
次のグラフは、両者の評価額が3年でどう伸びたかを示しています。
差がはっきり開いたのは2024年でした
年ごとに見ると、動きが見えてきます。
2023年末の差は1万4,911円でした。まだ誤差のような大きさです。それが2024年末に6万5,205円まで開きます。
面白いのは2025年です。この年だけは、VOOの騰落率のほうが上でした。+16.39%に対して、スリムS&P500は+15.66%です。
それでも通算は逆転できませんでした。一度開いた差は、あとから縮めにくいということです。
差を作ったのは、信託報酬ではありませんでした
ここからが本題です。
投資の比較記事は、たいてい「信託報酬が安いほうが勝つ」で終わります。ところが今回は、そうなりませんでした。
コストでは、VOOのほうが安いのです
まず、持っているだけでかかる費用を並べます。
スリムS&P500の信託報酬(投資信託を持っている間、毎日少しずつ差し引かれる運用手数料)は、年0.0814%(税込)です。日本の投資信託としては最安の水準にあります。
一方、VOOの経費率(ETFを持っている間にかかる運用手数料。信託報酬にあたるもの)は年0.03%です。
つまりコストではVOOのほうが安いのです。差は年0.05%ほど。3年で0.15%、100万円なら3,000円程度にすぎません。
コストで勝っているほうが、総合では6万円負けました。ここが今回いちばん大事なところです。
6万2,049円の内訳は、4つに分かれます
では何が差を作ったのでしょうか。分解した結果が次の表です。
| 差を作った要因 | 金額 | 性質 |
|---|---|---|
| ① 買えなかった端数が3年ねむった | 17,853円 | 1株単位でしか買えない |
| ② 配当を再投資できなかった | 15,620円 | 現金のまま働かなかった |
| ③ 配当への日本の税金20.315% | 16,345円 | 受け取るたびに引かれる |
| ④ 測定のズレ(基準価額の1営業日差) | 12,231円 | 私の測り方の誤差 |
| 合計 | 62,049円 | — |
この表には、信託報酬の差が入っていません。入れると、VOOの側にわずかな有利がつくだけです。
次のグラフで、4つの大きさを見比べてみてください。
測定のズレ1万2,231円は、私の測り方の誤差です
④について、先に正直に書いておきます。
投資信託の基準価額(投資信託の値段。1万口あたりの金額で表示されます)は、前の営業日のアメリカ市場の終値をもとに計算されます。そこに、その日の為替が当てられます。
つまりVOOの終値とは、1営業日ぶんずれるのです。年末という区切りで測ると、このズレがそのまま差に混ざります。
試しにVOO側を1営業日前の株価で計算し直すと、差は5万159円になりました。数字は動きますが、勝ち負けは変わりません。
ここを黙って合計に含めると、差を大きく見せる記事になってしまいます。私は自分の数字にも同じ厳しさを向けたいので、誤差は誤差として分けて出しました。
3年間、配当は一度も1株になりませんでした
4つの要因のうち、①と②はもともと同じ根っこから出ています。
VOOは1株単位でしか買えません。これに尽きます。
100万円をドルに換えると7,523.55ドルでした。VOOは1株351.34ドルです。21株買って、145.41ドルが余りました。
この145.41ドルは、3年間ずっと現金のままでした。買えないからです。
配当利回りが低いと、現金は意味のある量に育ちません
では、配当で埋まらなかったのでしょうか。ここが今回いちばん驚いたところです。
21株が3年で受け取った配当は、税引前で422.70ドルでした。
ここから税金が引かれます。アメリカで10%が源泉徴収(受け取る前に自動で差し引かれること)され、残った金額に日本で20.315%がかかります。手取りは303.14ドル。合計の税率は28.283%です。
最初の端数145.41ドルと合わせても、3年後の手元の現金は448.55ドルにしかなりません。
2025年末のVOOは、1株627.13ドルです。
届きませんでした。3年間、一度も1株になりませんでした。
理由は単純です。VOOの配当利回りは1.3%前後しかありません。株価のほうが速く上がっていくので、現金が1株ぶんに育つより先に、1株の値段が逃げていくのです。
私はこれを「端数が困る」という話だと思っていました。違いました。利回りが低いから、そもそも動かせるだけの現金にならない。これが正しい理解です。
金額が増えると端数の損は消えます。でも2%は消えません
ここで当然、こう思うはずです。「100万円が中途半端なだけでは?」と。
そのとおりです。なので投入額を変えて計算し直しました。
| 投入額 | 買えた株数 | 余った端数 | 3年後の差 |
|---|---|---|---|
| 30万円 | 6株 | 149.02ドル | −4.90% |
| 100万円 | 21株 | 145.41ドル | −2.83% |
| 1,000万円 | 214株 | 48.73ドル | −2.00% |
| 3,000万円 | 642株 | 146.18ドル | −2.00% |
30万円だと−4.90%まで悪化します。6株しか買えず、端数の比重が重くなるからです。
逆に金額が増えると端数は薄まります。そして−2.0%あたりで止まりました。3,000万円でも同じでした。
つまりこういうことです。端数の損は金額が増えれば消えます。でも2.0%は消えません。
残った2.0%の正体が、配当への日本の税金と、再投資できないことです。投資信託は受け取った配当をファンドの中で自動的に再投資します。このとき日本の20.315%はかかりません。税金を払うのは、売って現金にするときです。
これを課税の繰り延べ(税金を払うタイミングを先送りできること)と言います。今回の差の本体は、ここでした。
なお、アメリカの10%は投資信託でも引かれています。ファンドが現地で徴収されるからです。「二重課税だからETFが損」ではなく、「日本の20.315%を先送りできるかどうか」が分かれ目だ、というのが正確な言い方になります。
私は結局、ドルを下ろして円に換えました
ここまで数字の話をしてきました。ここからは、私自身がこの3年で実際にやったことを書きます。
配当は下ろせると、最近まで知りませんでした
私は投資歴18年です。VOOはコロナショックを起点に、足掛け6年持っています。
その私が、恥ずかしい話をします。
VOOの配当は、基本的に放置していました。少し溜まったら1株買い増す、という程度です。配当利回りが低いので、長いあいだドルのまま置きっぱなしでした。
そして最近になって、この配当は下ろせるのだと知りました。ずっと再投資するものだと思い込んでいたのです。
18年やっていても、知らないことは残ります。
「手間だった」というのが、正直な感想です
それで実際に下ろしてみました。円に換えて使いました。
感想を一言で言うと、手間だったです。
ドルのまま置いておくか、円に換えるか。換えるならいつのレートか。その判断が、いちいち発生します。金額はたいしたことがないのに、考える回数だけは一人前にかかります。
私は1年ほど前、この同じブログで「円換算の手間が初心者の最大の壁になる」と書きました。ドルも円も、元を正せばS&P500——VOOを初心者に薦めない3つの理由という記事です。
1年後、その壁を自分で踏みました。理屈で書いていたことを、実際にやってみて分かった格好です。
ひとつ補足させてください。私は「少し溜まったら1株買えた」と書きました。今回の検証では3年間1株も買えていません。矛盾しているように見えます。
種明かしは単純です。私は21株より多く持っていたからです。同じ商品でも、金額の規模で挙動が変わります。持っている量が少ないほど、この記事の話は重くのしかかります。
それでも私は、VOOを売りません
ここまで読むと、「VOOを売って投資信託に乗り換えるべきだ」と聞こえるかもしれません。
そうではありません。
私の保有と、読者への推奨は別のものです
私が持っているものと、これから始める人に合うものは、同じではありません。表にして分けます。
| 項目 | 私(投資歴18年)の実際 | これから始める方への検討材料 |
|---|---|---|
| VOO | コロナショック起点で足掛け6年保有。売りません | 「ドル資産を物理的に持ちたい」という明確な動機がある方向け |
| スリムS&P500 | 新NISA開始以降、わずかに保有。買い増すならこちら | アメリカ1本に賭けたい方の第一候補 |
| 配当の扱い | 長く放置。最近ドルを下ろして円に換えた | 自動で再投資される商品なら、この判断自体が発生しません |
| 債券 | 米国債は未保有(税引後で実質5%待ち) | 金利は上がりましたが、私は今も株式を主軸にしています |
買い増すなら、私は投資信託を選びます
私の結論はシンプルです。
VOOは売りません。でも、これから買い増すなら投資信託です。具体的にはスリムS&P500になります。
売らない理由は、売った瞬間に利益へ20.315%の税金がかかるからです。今回の記事が示したのは「投資信託のほうが税を先送りできる」という話でした。それなら、先送りできている含み益を、わざわざ自分から確定させる理由はありません。
そしてもうひとつ。この検証を始めたきっかけは、金利の上昇でした。金利が上がると、債券が安定していて魅力的に見えてきます。
それでも私は株式を主軸に置いたままです。債券は比較的安定していると言われますが、やはり株式のほうがいいというのが、18年やってきた私の考えです。
これから始めるなら、どこで何を買うか
ここまでの話を、行動に落とします。
商品より先に、口座を決めるほうが早いです
今回の6万円の差は、商品の良し悪しから来たものではありません。「1株単位でしか買えない」「配当のたびに税が引かれる」「円に換える判断が発生する」という、持ち方の摩擦から来ています。
この摩擦は、証券口座の選び方でも変わります。米国株の売買手数料、為替手数料、投資信託の取扱本数、そしてクレジットカードでの積立ができるかどうか。ここは各社で差が出るところです。
私の主軸はSBI証券ですが、用途で使い分けています。私が使っているから皆さんもどうぞ、という話ではありません。ご自身の使い方に合うところを選んでください。
商品そのものの比較は、新NISAの投信、結局どれ?|オルカン・S&P500・NASDAQ100・SCHDを1枚で選ぶに早見表をまとめてあります。証券会社の総コスト比較は米国株はどこで買う?“手数料0円”に釣られない証券の選び方をどうぞ。
よくある不安 Q&A
Q. 今VOOを持っています。売ったほうがいいですか?
私は売りません。売れば利益に20.315%の税金がかかります。この記事の結論は「投資信託は税を先送りできる」でした。それなら、先送りできている状態をわざわざ壊す必要はありません。
Q. 為替手数料を入れたら、もっと差が開きますか?
開きます。今回の計算では、両替のコストも売買手数料も入れていません。実際にはVOO側にだけ両替の費用がかかります。この記事の数字は、VOOにとって有利な条件で出したものだとお考えください。
Q. 確定申告で税金は取り戻せませんか?
外国税額控除という仕組みがあります。アメリカで引かれた10%の一部を、日本の税金から差し引ける制度です。今回は使っていません。使えば差は数千円ほど縮みます。ただし、そのために毎年申告する手間が増えます。
Q. 円高になったら結論は変わりますか?
変わる可能性があります。今回の3年は、一貫して円安が進んだ期間でした。ただし、円高になればVOOも投資信託も同じように評価額が下がります。スリムS&P500も為替ヘッジをしていないので、両者は同じ為替を浴びています。今回の差は為替から生まれたものではありません。
Q. 新NISAではどちらが有利ですか?
新NISAのつみたて投資枠で買えるのは投資信託だけです。VOOは成長投資枠でしか買えません。枠の使い勝手という点でも、投資信託のほうが自由度は高くなります。
まとめ
3年間の実データを数えて分かったことを、3つに絞ります。
- 100万円・3年で6万2,049円、投資信託のほうが多く残りました。コストではVOOのほうが安かったのに、総合では負けています。
- 差の正体は端数と税でした。配当は3年で一度も1株になりませんでした。利回りが低いので、現金が育つより先に株価が逃げていきます。
- 金額が増えれば端数の損は消えますが、2.0%は消えません。これは配当への日本の税金を先送りできるかどうかの差です。
まずは、ご自身が持っている米国ETFの配当が、今いくら口座に眠っているかを確認してみてください。使うか、再投資するか、決めていないなら、それが最初に決めるべきことになります。
安いほうを選ぶより、動かさずに済むほうを選ぶ。この3年が私に教えたのは、それだけでした。
この記事で使ったデータの出どころ
基準価額は投資信託協会の公開データ(ISINコード JP90C000GKC6)、VOOの株価とドル円相場はYahoo Finance、VOOの配当履歴はstockanalysis.comを使いました。計算はすべて筆者が行っています。数字はすべて2025年12月末時点のものです。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品への投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任のもとで行ってください。
本記事は情報提供を目的としており、投資助言・勧誘を目的とするものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
