「プロに任せると、年に3%もリターンが変わる」
そんな話を、お金の知識を発信するYouTube「リベラルアーツ大学」、通称リベ大の両学長のライブ配信で耳にしました。
正直、最初は「また営業トークか」と思いました。
ところが調べてみて、私は静かに衝撃を受けました。
その3%の大半は、プロに頼まなくても、自分の設定と規律で取りに行けるからです。
この記事は、初期500万円と毎月3万円を、40年かけて育てて取り崩す仮のシミュレーションです。
「いくら貯めれば出口で安心なのか」「取り崩しはどう設計するのか」を、数字で最後まで追いかけます。
結論から言えば、一人で詰まるのは最後の2つだけでした。
結論:年3%の付加価値、大半は「仕組み」で自力で取れる
先に答えを置きます。
世界最大級の運用会社バンガード(インデックスファンドを世に広めた米国の資産運用会社)は、アドバイザーが顧客にもたらす価値を「アドバイザーズ・アルファ(アドバイザーが生み出す付加価値の考え方)」と呼びます。
その大きさは、条件次第で年あたり最大およそ3%とされています。
ただし、ここは誤解しやすいので先に釘を刺します。
これは「あなたが必ず毎年3%得をする」という意味ではありません。
あくまで「アドバイザーが顧客に提供しうる価値の合計」を試算した数字です。
その内訳は7つの要素に分かれます。
そして私が衝撃を受けたのは、そのほとんどが、最初の設定と仕組みで自分でも取りに行けるという事実でした。

一人で詰まるのは、このうち2つだけです。
ひとつは行動コーチング(暴落で売らず、むしろ買い増す規律)。
もうひとつは出口の取り崩し設計です。
面白いのは、バンガードの試算でもこの2つが最大の項目だという点です。
行動コーチングは年あたり最大およそ1.5%、取り崩しの順序は最大およそ1.1%。
つまり「自力でいちばん難しい2つ」が、「価値がいちばん大きい2つ」と重なっていました。
7つの付加価値を、4つの「仕組み」と2つの「規律」に分ける
アドバイザーズ・アルファの7要素を、私は2つのグループに分けて考えます。
最初に1回設定すれば自動で効く「仕組み」が4つ。
資産配分、低コスト化、リバランス、置き場所(口座の使い分け)です。
毎回の局面で試される「規律」が2つ。
暴落で動じない行動コーチングと、出口の取り崩しです。
残るひとつ、トータルリターン投資(配当狙いに偏らない考え方)は、両者をつなぐ土台になります。
| 付加価値の7要素 | タイプ | 自分で取れるか |
|---|---|---|
| 資産配分 | 仕組み | 取れます |
| 低コスト化 | 仕組み | 取れます |
| リバランス | 仕組み | 取れます |
| 置き場所(口座) | 仕組み | 取れます |
| トータルリターン投資 | 土台 | 取れます |
| 行動コーチング | 規律 | 一人だと詰まる |
| 取り崩し設計 | 規律 | 一人だと詰まる |
では、この器を実際に40年動かすとどうなるか。
私はいつも読者に勧めている配分、円40・ドル40・金20で試算しました。
この配分の根拠は別記事に詳しく書いています。
本記事は、いわば「あの40-40-20を、40年間動かしたらどうなるか」のデモです。
(参考:資産配分は円40・ドル40・金20|暴落に強い黄金比の作り方)
【第一幕】積立期:頭を使わない「仕組み」で2,284万円まで育てる
まずは入口です。
モデルは投資をこれから始める初心者。
初期資金500万円に、毎月3万円を15年間積み立てます。
器の中身は40-40-20。
円40は生活防衛と、暴落時に買い増すための待機資金。
ドル40は全世界株式インデックスファンド、通称オルカンで実装します。
金20はサクっと純金(SBI・iシェアーズ・ゴールドファンド、為替ヘッジなしの愛称)で持ちます。
資産配分:株式比率で「増え方」も「下げ幅」も決まる
資産配分は、最初に決めるだけで一生効き続ける設定です。
過去124年の実績では、株式の比率が高いほど平均リターンは伸びます。
ただし、その分1年の最大下落も深くなります。

だからこそ、自分が眠れる比率を最初に決めることが大事です。
私が初心者に40-40-20を勧めるのは、暴落しても夜眠れる重さだからです。
低コスト化:年0.1%の差が、30年で資産を変える
次に低コスト化です。
信託報酬(投資信託を持っている間ずっと差し引かれる手数料)は、複利の漏れになります。

オルカンの信託報酬は年0.06%前後です。
これを選ぶだけで、低コスト化という付加価値は自動で手に入ります。
窓口で勧められる高コスト商品を避ける。それだけで十分です。
リバランス:これが、私がいちばん「さすが」と思った要素
正直に言うと、私がこの考え方でいちばん勉強になったのがリバランスでした。
リバランスとは、値上がりした資産を一部売り、値下がりした資産を買い増して、決めた比率に戻す作業です。
これをしないと、株式がどんどん膨らみ、知らないうちにリスクの高い人になっていきます。

高騰したときに比率を戻し、暴落したときにも比率を戻す。
この淡々とした作業が、感情を排して「高く売り、安く買う」を自動化してくれます。
新NISAなら、積立先の比率を傾けるだけでリバランスの代わりになります。
40年シミュレーション・前半:2,284万円から3,204万円へ
ここで前提を置きます。
平均リターンを年7%、物価上昇を年3%とした、あくまで思考実験です。
実際の相場はこの通りには動きません。そこは正直にお伝えします。
15年間積み立てた時点で、評価額は約2,284万円。
投じた元本は1,040万円ですから、複利が1,200万円超を上乗せした計算です。
その後5年間は積立をやめ、複利だけで寝かせます。
20年後、評価額は約3,204万円に育ちました。
ここまでは、頭を使う場面はほとんどありません。
配分を決め、低コストを選び、比率を保つ。
4つの「仕組み」は、最初の設定でほぼ自動運転になります。
【第二幕】暴落:ここからが「行動コーチング」の戦場
問題は、この40年のあいだに必ず暴落が来ることです。
そして暴落こそ、一人で最も詰まる場面です。
私はコロナショックのとき、皆がマスクを買いに走るなかで、株を買い増しました。
怖くなかったわけではありません。
ただ私は、下げ相場でむしろ感情が冷たくなる性格でした。
「絶望は買い」を、頭ではなく体で実践した瞬間です。

差は歴然でした。
売らずに続けた人は資産を大きく伸ばし、一度現金にした人は戻りに乗り遅れました。
バンガードが「行動コーチングこそ最大の付加価値」と言うのは、まさにこの一手のためです。
買い増すには「弾」がいる。だから今回は現金もセットで勧めます
ここで正直に告白します。
暴落で買い増すには、買うための現金、つまり「弾」が必要です。
40-40-20の円40は、その弾の置き場でもあります。
そして私自身、その待機現金をまだ十分に作れていません。
これから計画的に積み上げていく途中です。
設計は大体できています。あとは実行し、これで最適解を目指します。
えらそうに語る私も道半ばです。
だからこそ、買い増しの推奨と一緒に、現金の準備もセットで勧めます。
弾のない正論ほど、暴落の現場で無力なものはないからです。
【第三幕】取り崩し期:定率4%+ガードレールで、出口を破綻させない
40年の最後、もうひとつの難所が来ます。
出口、つまり取り崩しです。
取り崩し開始時の資産は約3,204万円。
ここから毎年、残高の4%を引き出す「定率4%」で設計します。
注意したいのは、世間で有名な「4%ルール」とは別物だという点です。
定額4%ルールは、初年度の引き出し額を固定し、以後は物価に合わせて増やす方式。
一方の定率4%は、毎年の残高に対して4%を引く方式です。
この違いが、出口の運命を分けます。
1年目は月10.7万円。20年後はむしろ残高が増えていた
取り崩し1年目は、3,204万円の4%で年約128万円。
月にならすと約10.7万円です。
定率なので、資産が育てば引き出し額も増えます。
10年目は月約13.6万円、20年目は月約17.8万円。
そして20年間取り崩しても、残高は約5,480万円にむしろ増えていました。
なぜ減らないのか。
引き出す4%より、成長の7%のほうが大きいからです。
残高を食い潰すどころか、緩やかに増えていく構造になります。
ちなみに、出口の余裕は入口の初期資金でほぼ決まります。
| 初期資金(月3万円積立は共通) | 取り崩し1年目の月額 |
|---|---|
| 100万円スタート | 月 約5.5万円 |
| 300万円スタート | 月 約8.1万円 |
| 500万円スタート | 月 約10.7万円 |
クライマックス:出口直後に暴落が来ても、定率なら枯渇しない
では、最悪のシナリオを試します。
取り崩しを始めた直後に、▲35%、翌年▲15%の暴落が来た場合です。
これをシークエンス・オブ・リターン・リスク(取り崩し開始直後の暴落が、その後の資産寿命を大きく縮めるリスク)と呼びます。
出口で最も怖い罠です。
結果はこうでした。
| 出口の方式 | 開始直後に暴落が来た場合 |
|---|---|
| 定額4%ルール(初年度固定+物価調整) | 17年目で資産が枯渇 |
| 定率4%+ガードレール | 20年後も枯渇せず |
定額4%ルールは、暴落で資産が沈んでも同じ金額を引き出し続けます。
だから残高が削れ、17年目で底を突きました。
一方の定率4%は、残高が沈めば引き出し額も自動で縮みます。
月10.7万円が、暴落時には自動で月4〜5万円ほどに下がる。
つらい年は引き出しを止める、というガードレールを足せば、なお折れません。
地味です。でも破綻しません。
「絶望で動じない」という同じ思想が、入口の買い増しだけでなく、出口の取り崩しにも一貫して効くのです。

引き出す順番も付加価値の一つです。
私の場合は、課税口座から先に崩し、新NISAは複利を最後まで温存します。
なお、ここで紹介した「定率4%+ガードレール」は、初心者向けにかなり噛み砕いた簡略版です。
私自身が実際に使う出口ルールは、相場に応じて率を変えるもっと細かい設計です。
詳しく知りたい方は、こちらに数字で整理しています。
(参考:資産運用の出口戦略|人生の航路は計算で決める)
始める器は、自分の証券口座から。私の保有と読者向けは分けます
この40年デモを自分で再現するなら、入口は証券口座の開設です。
ここで、私の保有と読者へのおすすめは分けてお伝えします。
| 枠 | 私(Hiro)の保有 | 読者へのおすすめ実装 |
|---|---|---|
| 株式の中核 | VOO・QQQ(米ドル建てETF) | オルカン(信託報酬0.06%前後) |
| 金 | GLDM | サクっと純金 |
| 円 | 待機現金(積み上げ中) | 生活防衛+買い増し用の現金 |
口座開設のひと言メモ(私の使い分け)
私の主軸はSBIですが、用途で口座は使い分けています。これは保有の紹介であって、皆さんに同じ銘柄を勧めるものではありません。米国株や個別株まで広く触れたいならマネックス証券、少額から始めたい・サポート重視なら松井証券が向いています。
よくある不安に、先に答えておきます
「定率」と「定額」、結局どっちがいいのですか?
枯渇を避けたいなら、私は定率を推します。
定率は残高に連動するため、理屈の上では資産がゼロになりません。
ただし不作の年は引き出し額が減るので、その分の現金クッションは持っておきたいところです。
月17.8万円もらえるなら、それで生活できますか?
ここは冷静にいきましょう。
今回の月額は名目の金額です。
物価が年3%上がるなら、20年後の17.8万円の購買力は、今の感覚よりずっと小さくなります。
そしてこれは「これ一本で暮らす」設計ではなく、公的年金に上乗せする「自分年金」のモデルです。
この数字、本当に出るのですか?
出るとは約束できません。
これは平均年7%が続いた場合の仮のシミュレーションです。
現実の相場は上下に大きく振れます。
だからこそ、暴落で折れない仕組みと規律を、先に用意しておく価値があります。
関連書籍
「DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール」(ビル・パーキンス著)— ためるより「使い切る」出口を考えるための一冊。取り崩しの先にある目的を見つめ直せます。
まとめ:絶望で動じない設計は、買うときも下ろすときも同じ規律
最後に、この記事の要点を整理します。
- アドバイザーの付加価値は最大およそ年3%ですが、その大半は配分・低コスト・リバランス・置き場所という仕組みで、自力で取りに行けます。
- 一人で詰まるのは行動コーチングと取り崩しの2つだけで、ここがいちばん価値の大きい部分でもあります。
- 出口は定率4%+ガードレールなら、開始直後の暴落でも枯渇しにくく、定額4%ルールより折れにくい設計になります。
まずは、自分の入口を決めてみてください。
初期資金はいくらで、毎月いくら積み立てるか。
それを40-40-20の器に入れてみる。そこからすべてが始まります。
絶望で動じない設計は、買うときも、下ろすときも、たったひとつの同じ規律でできています。
私もまだ現金の弾を作っている途中です。一緒に、出口まで設計していきましょう。
あわせて読みたい(読者タイプ別)
- これから始める初心者の方へ:初心者向け解説:VOO(バンガードS&P500 ETF)とは?
- 配分の根拠を知りたい方へ:資産配分は円40・ドル40・金20|暴落に強い黄金比
- 出口を本気で設計したい方へ:資産運用の出口戦略|人生の航路は計算で決める
- 窓口や高コスト商品が不安な方へ:ファンドラップ徹底解説:初心者が手を出してはいけない理由
▶ この記事を約10分の動画でも解説しています(5章構成)。
【動画版】年3%の付加価値、大半は自分で取れる|500万+月3万を40年シミュレーション
※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品への投資を推奨するものではありません。記載のシミュレーションは平均年7%・物価年3%を仮定した思考実験であり、将来の成果を保証するものではありません。投資判断はご自身の責任のもとで行ってください。
本記事は情報提供を目的としており、投資助言・勧誘を目的とするものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
