特定口座に、含み益の乗ったVOOや投資信託が眠っていませんか。
「NISAに移した方が得なのか。でも売ったら税金を取られる」。この迷い、私も長い間持っていました。
正直に言います。私は「利益が載っているから、移すと損する可能性が高い」と思い込んでいました。計算機を自分で作って、自分の数字を入れたら、勘違いだったと分かりました。
この記事には、その計算機(無料シミュレーター)をそのまま置いてあります。評価額・含み益率・今後の入金予定を入れるだけで、「移さない・一部だけ移す・全部移す」のどれが最適か、金額つきで答えが出ます。
結論:分岐は「含み益」ではなく「今後の入金」です
先に答えを言い切ります。
特定口座(利益に約20%課税される通常の口座)からNISA(少額投資非課税制度)への乗り換えで、得か損かを決めるのは含み益の大きさではありません。今後あなたがいくら入金するかです。
私が作ったシミュレーターで、同じ条件の玉を比べてみます。評価額200万円・含み益100%(買値の2倍)・年5%で10年運用のケースです。
- 今後の入金が少ない人が移す → 約13万円の得
- 年360万円の満額ペースで入金する人が移す → 約10万円の損
同じ玉、同じ相場です。違いは入金だけ。符号が反転します。
仕分けはこの一問です。
「今後の新規入金だけで、NISAの生涯枠1,800万円を埋めきれるか?」
- 埋めきれない → 移す方が得です
- 満額級のペースで埋めきる → 移すと損です
- その中間 → 「一部だけ移す」が最適になります
なぜそうなるのか。順番に計算で示します。
「移す」の中身——税金は売却額ではなく、利益にだけかかります
最初に操作の正体を押さえます。特定口座からNISAへ、株や投資信託をそのまま移す制度はありません。
特定口座で売る → 利益に20.315%の税金が確定する → その現金でNISAで買い直す。この3ステップだけです。
同じ商品を買い直すなら、持っている中身は変わりません。動くのは相場ではなく、税金のタイミングだけです。
ここで、私自身がしていた勘違いをひとつ告白します。「100万円分売ったら、税金で約80万円しか買い直せない」と思っていました。
これは間違いです。税金は売却額ではなく、利益の部分にだけかかります。
含み益100%の玉なら、100万円分売っても利益は50万円。税金は50万円×20.315%で約10万円です。約90万円で買い直せます。8割になるわけではありません。
制度の前提も表で確認しておきます。
| 項目 | 現行NISAのルール |
|---|---|
| 年間投資枠 | つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円=年360万円 |
| 生涯の非課税枠 | 1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで) |
| 売却した枠 | 翌年に買値ベースで復活(年間枠の範囲内で再利用) |
| 損益通算 | できない(NISA内の損失は税務上ゼロ扱い) |
| 外国税額控除 | 使えない(米国株配当の現地10%は払い切り) |
なお、米国ETF(米国市場に上場する投資信託)を売ると、譲渡損益には為替の損益も含まれます。この落とし穴は為替差益の「幽霊レート」の記事に書きました。
よくある説明——「含み益が大きい人は移すと損」の落とし穴
この話題を調べると、だいたい同じ整理に行き着きます。「移すと損しやすい条件」として、次の3つを並べるものです。
- ① 想定リターンが低い
- ② 含み益が大きい
- ③ 今後の新規入金が多い
3つ当てはまるほど損、という読み方になります。足し算の発想です。
私がこのテーマを調べ直したきっかけは、リベ大の両学長(登録者1,000万人超の家計・投資系YouTuber)の動画でした。結論は「理屈では移す方が得。ただ心理面のリスクがあるから無理には勧めない」という趣旨の、ざっくりした概要説明です。
入口としては、どちらも間違っていません。でも「で、私の場合はいくら得なんだ?」には答えてくれません。
だから、自分で計算機を作りました。そして分かったのは、この3つの条件は対等ではないということです。
計算機の答え——3条件は「足し算」ではなく「掛け算」です
含み益だけでは、絶対に損になりません
まず新規入金がゼロの人を考えます。この場合、移す得は必ずプラスになります。計算すると、きれいな式に畳まれます。
移す得 = 買値 ×(期間中の成長倍率 − 1)× 20.315%
例えば買値100万円・年5%・10年なら、100万円×0.63×20.315%で約13万円の得です。
注目してほしいのは、この式に「含み益」が入っていないことです。得の源泉は買値、つまり元本です。
含み益が大きいと、移すときに払う税金が増えます。でもそれは得が小さくなるだけで、マイナスには反転しません。①のリターンも②の含み益も、得を縮める要因にすぎないのです。
損に反転させる犯人は、③の新規入金だけ。移した玉が、これから入金するはずだった非課税枠を奪ったとき、初めて損が生まれます。②の悪影響も、③があるときにだけ拡大します。足し算ではなく、掛け算です。
入金額でこれだけ変わります
評価額200万円・含み益100%・年5%・10年で、今後の入金予定だけを変えて計算しました。
| 今後10年の入金予定 | 最適な移し方 | 移さない場合との差 |
|---|---|---|
| 0円 | 全部移す | +12.8万円 |
| 計1,200万円(月10万円) | 全部移す | +12.8万円 |
| 計2,400万円(月20万円) | 132万円だけ移す | +4.6万円(全部移すと+1.3万円に減少) |
| 計3,600万円(満額ペース) | 移さない | 全部移すと−10.2万円 |
面白いのは3行目です。月20万円ペースの人の最適解は「全部」でも「ゼロ」でもなく、「132万円だけ移す」でした。
答えは二択ではありません。「新規入金で埋まらずに余る枠のぶんだけ移す」。これが計算機の出した最適解です。
あなたの数字で確かめてください
ここまでの数字は、あくまで例です。あなたの評価額・含み益率・入金予定で、答えは変わります。下のシミュレーターに入れて確かめてください。最適な移し方と金額が、その場で出ます。
特定口座→NISA いくら移すのが得か?シミュレーター
| 特定口座の評価額(万円) | |
| 含み益率(%) | |
| 今後の入金予定・トータル(万円) | |
| 想定年利(%・長期平均) | |
| 想定ブレ幅(%・1年の標準偏差) S&P500の目安は15前後 | |
| 運用期間(年) |
※概算です。新規入金は期間で均等割りし、つみたて投資枠→成長投資枠の順に充当。移す分は成長投資枠の空きの範囲で毎年刻んで売却→買い直し(税20.315%は利益部分にのみ課税)。期末に全額を清算して手取りを比較。勝率は「年平均リターン±ブレ幅」の乱数で1,000通りの相場を作り、移した場合が移さない場合を上回った割合。配当・為替・売買コストは含みません。将来を保証するものではありません。
短期は「税金の払い損」リスクがあります
ひとつ注意点があります。年5%はあくまで長期の平均です。3年や5年の短期では、平均を割ることも普通にあります。
移す・移さないの比較では、相場のブレ自体はほぼ打ち消し合います。どちらも同じ商品を持ち続けるからです。残るリスクはひとつ。高値で利益を確定して税金を払った後に、相場が下がって終わることです。消えた利益に、税金だけ払った状態になります。
上のシミュレーターは、このリスクも計算します。年平均5%・ブレ幅15%で1,000通りの相場を作り、「移した方が得に終わる確率」を出した結果がこちらです。
3年では69%、20年では88%。長く持てる玉ほど、移す判断は堅くなります。
もうひとつ、この分布には良い偏りがあります。負けるときの損は5万〜7万円ほどで頭打ちなのに、勝つときの得は期間とともに伸びていきます。下は浅く、上は深い形です。
この計算機の限界も正直に書きます
シミュレーターは万能ではありません。前提を4つ開示します。
- 期末に全部売る前提です。売らずに持ち続ける(相続まで含む)資金なら、特定口座の課税はさらに先送りされ、移す得は表示より縮みます
- 配当は無視しています。配当のぶんは実際にはNISA側が少し有利なので、上とある程度打ち消し合います
- 相場のブレは教科書的な分布で作っています。現実の暴落はもっと極端なので、勝率はやや楽観寄りかもしれません
- 税率20.315%とNISA制度は現行のまま固定です。将来の制度変更は織り込めません
つまりこれは、符号(得か損か)と桁(数万円か数十万円か)を信じる道具です。1万円単位の精度を求める道具ではありません。
私の答え合わせ——勘違いしていたのは、私でした
ここからは私自身の話です。私はVOO(Vanguard S&P 500 ETF、通称VOO)とQQQ(Invesco QQQ Trust、通称QQQ)を特定口座で持っています。2020年のコロナショックで買ったもので、利益が大きく載っています。
だから「移すと税金で損する可能性が高い。このままが得策」と考えていました。6年間、そう思い込んでいました。
計算機を作って、自分の数字を入れました。答えは逆でした。含み益が大きいことは、移さない理由になっていませんでした。
私の入金ペースでは、NISAの生涯枠1,800万円は新規入金だけでは埋まりません。枠が余る側の人間です。余る枠を、税金を先に払ってでも既存の玉で埋める方が、計算上は得でした。
正直、この結果は少し悔しかったです。感覚で「損しそう」と6年間判断を止めていたものが、数時間の計算で覆ったのですから。
では、どうするか。私はタイミングを見計らって移していく方針に変えました。急ぎません。理由は2つあります。
1つ目。前倒しで払う税金は、売るときの含み益に比例します。高値で移すほど税金は重く、下げた局面で移すほど軽くなります。「絶望は買い」を信条にしてきた私にとって、これは同じ話の裏面です。皆が売りたくなる下げ局面こそ、口座の引っ越しには一番安い日です。
2つ目。先ほどの勝率が示すとおり、慌てて一括で動く理由がどこにもありません。成長投資枠は年240万円。どのみち数年がかりで刻むことになります。
私の状況と、読者のみなさんへの提案は分けて書きます。
| 私(Hiro)の場合 | 読者のみなさんへ |
|---|---|
| VOO・QQQを特定口座で保有。生涯枠は入金だけでは埋まらない側 | まずシミュレーターで自分がどちら側か確かめる |
| 下げ局面を使い、成長投資枠で数年かけて刻んで移す方針 | 移す場合も一括にせず、年間枠の範囲で刻む |
| ドル建てETFは為替差益・外国税も絡む(私は許容) | 円建て投信(オルカン・スリムS&P500など)ならこの複雑さはなし |
今日からできる仕分け——3つの質問に答えるだけです
行動は3ステップに畳めます。
質問1。今後の新規入金だけで、生涯枠1,800万円を埋めきれますか?
- 埋めきれる(満額級ペース) → 移さないでください。あなたの枠は新しいお金で埋めるのが最適です
- 埋めきれない → 質問2へ
質問2。その玉は、期間内に使う予定がありますか?
売らずに一生持ち続けるつもりの資金は、移す得が計算より縮みます。いずれ使う予定の玉から順に移すのが実務的です。
質問3。いくら移しますか?
シミュレーターの「最適額」が目安です。移すと決めたら、守ることは2つだけ。一括で動かないこと。下げ局面を使うこと。高配当の米国ETFだけは、NISAで外国税額控除(米国で引かれた税金を取り戻す仕組み)が使えなくなる点に注意してください。配当1%前後のVOOなら影響は年0.1%ほどの脇役です。
なお、NISA口座をこれから作る人・移す先を整える人向けに、私が使い分けている証券会社を置いておきます。米国株・海外ETFの取り扱いならマネックス証券、サポート重視なら松井証券という使い分けです。私の主軸はSBI証券ですが、用途で選んで問題ありません。
まとめ:感覚で止まっていた6年を、計算機は数時間で動かしました
- 移す得か損かの分岐は含み益ではなく「今後の新規入金」です。含み益は得を縮めるだけで、損には反転させません
- 最適解は「全部かゼロか」ではなく「余る枠のぶんだけ移す」。金額はシミュレーターで出せます
- 移すなら急がず、下げ局面で、年間枠で刻む。期間が長いほど勝率は上がります(3年69%→20年88%)
まずは上のシミュレーターに、ご自身の評価額と入金予定を入れてみてください。答えは3分で出ます。
感覚は6年間、私を止めました。計算は数時間で、私を動かしました。
余談:現場の夏と、首を冷やす機械
本題とは関係ない余談です。この夏、会社にソニーのREON POCKET 6(レオンポケット6。首の後ろに装着する小型の冷温デバイス)を使っている人がいます。
ウォーキングのために1駅手前で降りて歩く人で、「これがないと歩けない。手放せない」と言っていました。私はまだ使っていませんが、炎天下の現場を知る身として、首を直接冷やす発想は理にかなっていると感じます。気になる方はどうぞ。
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🎥 【動画で見る】特定口座からNISAに移すべきか?計算機で答えを出しました
※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品への投資を推奨するものではありません。税制・NISA制度は2026年7月時点の情報です。投資判断はご自身の責任のもとで行ってください。
本記事は情報提供を目的としており、投資助言・勧誘を目的とするものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
