【無料シミュレーター】あなたは年いくら使える?──増やせるのに「崩せない」投資家のための、最適な取り崩し設計【DIE WITH ZERO】

黒いセーラー服の月城ミオが、山なりに上がって最後にゼロへ向かう資産残高の曲線(使い切りのカーブ)を手のひらに乗せて示すイラスト。背景に砂時計とコイン、¥マーク。増やせるのに崩せない人向けの取り崩し戦略・設計の記事のアイキャッチ。 投資戦略・制度

正直に告白します。私は今、お金を「増やす」ことはできても、「使う」ことができていません。

口座の残高が増えていくのは、もちろん嬉しい。でも、いざ取り崩すとなると、手が止まります。崩すのが、怖いのです。

この記事は、その「崩せない」という感覚の正体を解剖し、怖くても少しずつ使えるようになるための、現実的な設計を提案するものです。投資歴18年で、ようやく増やす技術が身についた私が、次にぶつかった一番大きな壁の話です。

📊 まず1分で「あなたの現在地」を知る

下のシミュレーターに今の数字を入れるだけ。100歳まで使い切る前提で、年にいくら使えるか、そして目標に届くかが一目で分かります。なぜこの「使い切り設計」がベストなのか——その理由は、この先で順番に解説します。

取り崩しシミュレーター(使い切り設計)

詳細設定(退職年齢・寿命・想定リターン)

※実質リターンを一定とした概算です。実際はリターンの変動・寿命・税金で変わります。投資判断はご自身の責任で。

数字は出ましたか。黒字でも、赤字でも、大丈夫です。大事なのは、まず「現在地」を知ること。ここから、なぜこの「使い切り設計」がベストなのかを、順番に解き明かしていきます。

  1. 結論:崩せない恐怖は「正常」です。だから設計で外す
  2. なぜ、増やせるのに使えないのか
    1. 理由1:複利は「絶対値」が大きいほど効くから
    2. 理由2:減ったら「取り返せない」という不安
    3. 理由3:「まだ足りない」という感覚が消えない
  3. 崩せないままだと、何を失うのか
    1. お金の「価値」は、若いほど高い
    2. 貯めすぎは、立派な「機会損失」
  4. 怖くても使える、取り崩しの設計【4ステップ】
    1. ① 「定額4%」をやめる——下落時は崩さない
    2. ② 「崩す」前に「入金を緩める」
    3. ③ 「これで十分」のラインを先に決める
    4. ④ 若いうちから「使う筋肉」を鍛える
    5. 【補足】崩すなら、この順番で
  5. 「いくら・いつ」崩すか——もったいない崩し方を避ける
    1. 少なすぎる取り崩しは、かえってもったいない
    2. 年金が始まる「前」にこそ、厚く使う
  6. 数字で出す、私のベストな取り崩し設計
    1. 4%ルールは「使い切る」ためのルールではない
    2. 1/N法は「使い切れる」が、晩年に偏る
    3. 私のベスト=「前半厚め」の逓減
    4. そこに「暴落ガードレール」を一枚かぶせる
  7. そもそも、いくら貯めればいい?——目標は「逆算」で決める
    1. 「使い切る」前提なら、必要額は一気に下がる
    2. 私の場合を、正直に計算してみた
    3. 目標が決まれば、ゴールまでの距離も見える
    4. あなたの「年いくら使えるか」を計算してみる
  8. 正直に言うと、私もまだ途中です
  9. まとめ:増やす技術の次は、使う技術

結論:崩せない恐怖は「正常」です。だから設計で外す

先に結論をお伝えします。「資産を取り崩すのが怖い」というのは、異常な臆病さではありません。複利の仕組みを理解している人ほど当然に持つ、正常な感覚です。

だから、根性で乗り越えようとしても無理です。怖さを「気合い」ではなく「設計」で外す。具体的には、次の4つの順番で進めます。

  • ① 「定額4%」をやめる — 下落時は崩さない変動ルールにして、怖さの根を断つ
  • ② 「崩す」前に「入金を緩める」 — 取り崩しより心理的に楽な一手から始める
  • ③ 「これで十分」のラインを先に決める — 増やす旅に終点を置く
  • ④ 若いうちから「使う筋肉」を鍛える — お金の価値は、若いほど高いから

そして「結局いくら崩すのか」も、数字で比較しました。結論を先に言うと、「前半厚めの逓減(60代6.5%→70代5%→80代4%)」が、健康なうちに一番使えて、しかも使い果たさない、最もバランスの良い崩し方でした。記事の後半で、4つの方法を数字で比較しながら解説します。

一つずつ、なぜそうなのかを見ていきます。

この記事の内容は、約12分の動画(音声・図解つき)でも解説しています。

なぜ、増やせるのに使えないのか

まず、敵の正体をはっきりさせます。私が自分の感情を観察して気づいた、「崩せない」理由は3つありました。

理由1:複利は「絶対値」が大きいほど効くから

複利(ふくり。利益が利益を生んで雪だるま式に増える仕組み)は、元になる金額が大きいほど、生み出す利益も大きくなります。1,000万円の5%は50万円ですが、3,000万円の5%は150万円です。

つまり、資産が育つほど「1年放置するだけで生まれる金額」が大きくなる。ここから取り崩すというのは、将来の大きな果実を、自分で刈り取ってしまうように感じられます。だから手が止まるのです。

理由2:減ったら「取り返せない」という不安

取り崩して残高が減り、さらに相場が下がったら——。その状態から元の水準に戻すのは、現役で入金していた頃よりずっと難しくなります。攻めの入金が止まった資産は、回復力が落ちるからです。

この「取り返せないかもしれない」という不安が、崩すブレーキを踏ませます。これも、リスクを正しく理解しているからこその、まっとうな反応です。

理由3:「まだ足りない」という感覚が消えない

そして一番やっかいなのが、これです。いくら増えても「まだそれほど貯まっていない」という感覚が消えない。私自身、正直まだこの感覚の中にいます。

気づけば、目的が「貯めること」から「とにかく増やすこと」へすり替わっている。手段だったはずの資産運用が、いつの間にか目的になっている。これこそが、多くの人が一生お金を使えないまま終わる"売れない術中"の正体だと、私は考えています。

崩せないままだと、何を失うのか

「使わずに増やし続ければいいじゃないか」と思うかもしれません。でも、それには見えにくい大きな代償があります。

お金の「価値」は、若いほど高い

同じ100万円でも、それで買える経験の価値は、年齢によってまったく違います。30代で行く旅行と、80代で行く旅行。体力も、感動も、一緒に行ける人も同じではありません。

お金そのものの額は変わらなくても、それを「使って得られる価値」は、健康と時間が残っているうちほど高い。これは『DIE WITH ZERO』(ダイ・ウィズ・ゼロ。資産をゼロにして死ぬことを目指す考え方を広めた、ビル・パーキンスの著書)が突きつけた、痛い真実です。

同じ100万円で買える「経験の価値」は年齢とともに下がる 30代 50代 70代 80代
このグラフは、同じ金額でも「使って得られる経験の価値」が年齢とともに下がることを示しています(イメージ図)

貯めすぎは、立派な「機会損失」

極端な例で考えてみます。仮に80歳で10億円が残ったとします。これは一見、大成功に見えます。でも、もし使い切れずに死ぬのなら、その大半は「働きすぎ・我慢しすぎ・使わなすぎ」だったことの証拠でもあります。

断っておくと、これは私の実際の資産額ではなく、あくまで思考実験です。要は、貯めすぎもまた、人生の時間を犠牲にした機会損失だということです。減らないお金は、安心の保険であると同時に、使われなかった人生の選択肢でもあるのです。

「貯め続ける」と「途中から使う」の資産イメージ 資産 年齢 → 貯め続ける(使い切れず残る) 途中から使う(人生に使い切る) 取り崩し開始
このグラフは、増やし続けると資産が使い切れずに残り、途中から使い始めると人生で活かせることを示しています(イメージ図)

怖くても使える、取り崩しの設計【4ステップ】

ここからが本題です。「崩すのが怖い」という正常な感覚を、設計の力で少しずつ外していきます。これは私が一から発明したものではありません。『DIE WITH ZERO』の考え方を軸に、私が今、自分のために組み立てている設計です。正直に言えば、これで綺麗に着地できるかは、まだ分かりません。それでも挑戦したい、現実的な4ステップです。

① 「定額4%」をやめる——下落時は崩さない

有名な「4%ルール」(毎年、資産の4%を取り崩す出口戦略)。でも、毎年きっちり4%を「定額」で抜くのは、私も怖い。なぜなら、相場が下がっている年にまで、決まった額を売らされるからです。

そこで私は、残高に連動させて率を変える「変動定率法」を使っています。大きく上がった年は多めに(6%)、小幅な下落の年は控えめに(3%)、大きく下げた年は最小限(1%)に絞る。「下がっている時は売らない」と決めておくだけで、崩す恐怖はぐっと小さくなります。複利が一番効いてほしい局面で、元本を守れるからです。詳しい設計は出口戦略の記事にまとめています。

② 「崩す」前に「入金を緩める」

それでも「元本に手をつける」のが怖い人へ。私のおすすめは、いきなり取り崩すのではなく、まず「増やす積立」の一部を「今使う予算」に振り替えることです。

たとえば毎月10万円を積み立てているなら、そのうち2万円を「今の経験」に回す。これは資産を売る取り崩しではなく、入金の配分を変えるだけです。だから心理的なハードルが、ぐっと低い。複利の土台は残したまま、お金の価値が高い「今」に少しずつ使い始められます。これが、貯まるスピードを少し落としてでも使う、という発想です。

コツは、年齢とともに「使う側」の比率を少しずつ上げていくことです。30代は「増やす8:使う2」、50代は「6:4」というように、健康と時間が残っているうちほど、使う比率を厚くする。いきなり全部を切り替えるのではなく、ダイヤルを少しずつ回す感覚です。これなら、崩す恐怖と向き合わずに、使う習慣だけを先に育てられます。

このテーマの「教科書」

「貯めすぎ・使わなすぎ」という現代人の盲点を、最初に言語化してくれたのが『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』(ビル・パーキンス 著・ダイヤモンド社)です。「45〜60歳に資産を取り崩し始める」など、崩せない人の背中を押す具体的なルールが詰まっています。出口を考え始めたら、一度は読んでおきたい一冊です。

③ 「これで十分」のラインを先に決める

「まだ足りない」という感覚から抜け出すには、増やす旅に「終点」を置くしかありません。「資産がこの額になったら、増やすのを緩めて、使う・守るへギアを切り替える」という上限を、先に決めておくのです。

上限が無いと、人は永遠に「まだ足りない」と感じ続けます。それが、先ほど書いた"売れない術中"です。『DIE WITH ZERO』も、45歳から60歳のどこかで取り崩しを始めるよう勧めています。「いくらまで増やすか」を決めることは、「いつから人生を使い始めるか」を決めることと同じなのです。

では、その「十分」はどう決めるのか。私が現実的だと思うのは、金額そのものでなく「年間支出の何年分か」で考える方法です。たとえば「1年に使う額の25年分」が一つの目安になります(これは年4%取り崩しの裏返しの数字です)。さらに、公的年金で賄える分を差し引けば、本当に自分の資産で支える必要がある額は、思ったより小さくなることもあります。大事なのは、青天井の「もっと」をやめて、自分なりの着地点を一度、紙に書いてみることです。

④ 若いうちから「使う筋肉」を鍛える

最後に、これが一番大事かもしれません。取り崩しは、70代になって急にできるようにはなりません。何十年も「貯める・増やす」だけを鍛えてきた人が、ある日いきなり上手に使えるはずがないのです。

だから、若いうちから「使う筋肉」を鍛えておく。年に1回でいい。「これは自分への投資だ」と決めた体験(旅行・学び・人に会う・道具)に、まとまったお金を使ってみる。金額の大小ではなく、「貯めたお金を、自分の人生のために使う」という行為そのものに慣れておくことが、将来の自分を救います。

【補足】崩すなら、この順番で

実際に取り崩す段になったら、どの口座から売るかで、手元に残る金額が変わります。私が考える順番は、次の通りです。

順番 崩す口座 理由
1番目 特定口座(課税口座) 利益に約20%課税される口座。先に使って軽くする。損失とぶつけて節税も可能
2番目 NISA成長投資枠 非課税。つみたて枠より柔軟なので、先に動かす
3番目 NISAつみたて投資枠 低コストの優良インデックスを、最も長く非課税で複利運用できる枠。最後まで温存
取り崩しの順番と理由(制度は2026年6月時点。詳細はご自身の状況で確認を)

考え方はシンプルです。「課税される口座から先に使い、非課税の恩恵が一番大きく育つ場所を、最後まで残す」。特に最後のつみたて投資枠は、長期・低コストのインデックスを非課税で複利運用できる、いわば一番おいしい器です。ここを最後まで取っておくのが、私の結論です。

「いくら・いつ」崩すか——もったいない崩し方を避ける

4ステップで「崩す恐怖」を外したら、次は「いくら・いつ」崩すかです。ここにも、見落としやすい落とし穴があります。

少なすぎる取り崩しは、かえってもったいない

崩しすぎは、枯渇が怖い。でも、その逆も問題です。怖がって、あまりにも少ない額しか崩さないと、使える絶対値が小さすぎて、人生の質はほとんど変わりません

たとえば、月に1万円だけ多く使えても、体験できることは大きくは変わらないかもしれません。売却の手間や税金をかけて、ほんの少しだけ抜く。それでは効率も悪い。取り崩しは、「使って、人生が実際に変わる最小単位」を意識すべきなのです。変動定率法で「大幅高なら6%」と決めた年は、ためらわずに、まとまった額を意味のある体験に充てる。怖さから最小限に縮こまるのは、別の意味での「もったいない」です。

年金が始まる「前」にこそ、厚く使う

もう一つ、順序を間違えやすいのがこれです。多くの人は「年金が出てから、余った分で楽しもう」と考えます。でも私は、順序が逆だと思っています。

退職してから、年金が本格的に出るまでの期間。ここは、まだ体力も時間もあり、かつ収入の柱がまだ立っていない時期です。資産を使うなら、この"年金前"の時期こそが黄金期になります。年金という後半の収入が始まれば、資産への依存はむしろ下がる。だからその前に、若くて元気なうちの体験へ、資産を厚く回すのです。

誤解のないように書くと、私は年金を設計の柱にはしていません。出るものは、ありがたく受け取る程度に考えています。だからこそ「年金前に厚く使う」というのは、年金を当てにする話ではなく、「使える時に、使う」を実践するという意味なのです。

数字で出す、私のベストな取り崩し設計

では結局、どう崩すのが一番いいのか。言葉だけでは決められないので、前提を置いて数字で比較しました。

前提は、65歳で取り崩し開始・資産3,000万円・実質リターン年4%(物価上昇を引いた後の保守的な数字)・95歳までの30年間とします。比べたのは次の4つです。

取り崩し方 累計で使えた額 前半10年で使えた額 95歳時の残高
①定額4%(毎年120万円) 3,600万円 1,200万円 2,731万円
②定率4%(残高×4%) 3,518万円 1,191万円 2,859万円
③1/N法(残高÷残り年数) 5,608万円 1,201万円 0万円
④前半厚め 6.5→5→4% 3,597万円 1,725万円 1,978万円
取り崩し方の比較(前提:65歳・3,000万円・実質リターン年4%・30年。一定リターンで単純化した一例です)

4%ルールは「使い切る」ためのルールではない

まず驚いたのが、①②の4%ルールです。30年使い続けても、95歳の時点で2,700万〜2,900万円も残ります。元本3,000万円が、ほぼ丸ごと残る計算です。理由は単純で、年4%のリターンがある資産から4%だけ抜けば、ほとんど減らないからです。

4%ルールは、もともと「資産を枯渇させない」ための守りのルールです。「使い切る」ためのものではない。だから、これに従う限り、私たちは一生お金を使い切れません。崩せない人がさらに4%ルールを守ると、二重に使えなくなるのです。

1/N法は「使い切れる」が、晩年に偏る

③の1/N法(毎年、残高を残りの想定年数で割って取り崩す方法)は、累計5,608万円と一番多く使え、95歳でほぼゼロになります。理論上は「ゼロで死ぬ」に最も近い。

ただし弱点があります。取り崩し額が晩年に偏るのです。初年は100万円なのに、85歳では219万円。お金の価値が一番高い若い時期に少なく、体力が落ちた晩年に大金を使う設計になってしまう。これは「若いうちほどお金の価値は高い」という原則に逆行します。

私のベスト=「前半厚め」の逓減

そこで私がベストだと考えるのが、④の前半厚めの逓減です。60代は6.5%、70代は5%、80代は4%と、残高に率をかけて取り崩す。年代が上がるほど率を下げます。

結果、前半10年で使える額が1,725万円と、4%ルールの約1.4倍。体力も時間もある"黄金期"に、一番お金を使えます。それでいて95歳に約2,000万円を残すので、長生きリスクへの備えも確保できる。「使い切る」と「使い果たさない」のちょうど良い着地点が、ここにあります。

「前半10年」で使えた額(健康な時期にいくら使えるか) ①定額4% 1,200万 ②定率4% 1,191万 ③1/N法 1,201万 ④前半厚め 1,725万
このグラフは、最も価値の高い「前半10年」に使える額を比較しています。④前半厚めが突出しています(同条件の試算)

そこに「暴落ガードレール」を一枚かぶせる

最後に、この④に私の変動定率の発想を重ねます。前の年に資産が大きくマイナスだった年は、率を一段下げる(たとえば6.5%→5%へ)。逆に大きく増えた年は、決めた範囲で少し多めに使う。「下がっている年は、崩す額を絞る」。これを一枚かぶせるだけで、暴落が早い時期に来ても枯渇しにくくなります。

もちろん、これは実質リターンを一定とした単純化モデルです。現実にはリターンは上下し、寿命も読めません。だからこそ、年金と現金クッションを「これ以上は減らさない」下限の安全弁として持ったうえで、上のルールで取り崩す。これが、今の私のベストな結論です。

そもそも、いくら貯めればいい?——目標は「逆算」で決める

ここまで「どう崩すか」を見てきました。でも、もっと手前に大事な問いがあります。そもそも、いくら貯めれば十分なのかです。

私が思う、一番やってはいけないこと。それは「やみくもに貯めること」です。ゴールを決めずに走るから、いくら増えても「まだ足りない」と感じ続ける。だから、まず決めるべきです。「欲しい額」ではなく、「必要な額」を。これが、すべてのスタートラインです。

「使い切る」前提なら、必要額は一気に下がる

ここで効いてくるのが、この記事の主題「使い切る」という発想です。多くの人は、無意識に「資産を減らさずに、利益だけで暮らす」金額を目標にしています。でも、それは必要以上に高いゴールです。

たとえば年300万円で暮らしたい場合。利益だけで暮らす(永久保存)なら7,500万円必要ですが、65歳から100歳までで使い切る設計なら、5,800万円で足ります。同じ暮らしなのに、目標が1,700万円も下がる。「使い切る」と決めるだけで、必要額はこれだけ軽くなるのです。

使いたい年額 使い切る設計(35年) 利益だけで暮らす(永久保存)
年300万円約5,800万円7,500万円
年500万円約9,700万円1億2,500万円
年2,000万円約3.88億円5億円
必要額の比較(65歳→100歳の35年・実質リターン年4%で使い切る場合。一例です)

私の場合を、正直に計算してみた

恥ずかしながら、私自身もこの罠の入口にいます。「年2,000万円もあれば十分に暮らせる。だったら5億円貯めればいい」と、漠然と考えていました。利益だけで暮らす発想です。

でも、100歳までに使い切る設計で計算し直すと、必要額は約3.88億円でした。"5億"という思い込みより、1億円以上も少なくて済む。この1億円は、私が「貯めなくてよかったお金」です。言い換えれば、そのために余計に働き、使うのを我慢する必要はなかった、ということです。

必要額は、前提で動きます。同じ年2,000万円・使い切りでも、実質リターンが3%なら4.43億円、4%なら3.88億円、5%なら3.44億円。リターンを保守的に見るほど、多めに必要になります。だから「いつまでに・年いくら使い・何%で運用するか」を決めて、初めて目標額が出るのです。

目標が決まれば、ゴールまでの距離も見える

必要額(ゴール)が決まると、今度は逆算で「あと何年で届くか」が見えます。たとえば目標2億円なら、毎月30万円を年5%で積み立てて約27年。月50万円なら約20年です。

ゴールが見えれば、過剰に働き続ける理由も、過剰に怖がる理由も消えます。「ここまで来たら、もう増やすより使う側だ」と、自分で線を引けるからです。やみくもに貯める不安から抜け出す唯一の方法は、この「逆算」なのだと、私は考えています。

あなたの「年いくら使えるか」を計算してみる

具体的な金額は、記事冒頭のシミュレーターで試せます。今の「現在の投資資産・年間の入金額・年齢・貯めたい目標金額」を入れて、100歳まで使い切る前提で年にいくら使えるか、そして目標に届くかを確かめてみてください。

正直に言うと、私もまだ途中です

えらそうに4ステップを書きましたが、白状すると、私自身もまだこの術中から完全には抜け出せていません。今も「増やす」局面の真っ最中で、取り崩しは正直、上手にできていません。

正直ついでに言うと、軸にしている『DIE WITH ZERO』も、読んだのはずいぶん前で、細かい内容はもう覚えていません。それでも、「貯めすぎもまた損だ」という考え方だけは、今も私の中心に残っています。きれいに実行できる自信はありません。でも、この考え方は正しいと思うので、何とか挑戦したい。そう思っています。

でも、「自分は今、手段を目的化しているかもしれない」と気づけたこと。それが第一歩だと思っています。気づかないまま走り続ければ、80代で使い切れない資産だけが残ります。気づいた今からなら、少しずつ「使う側」の練習を始められます。

増やすことに必死だったあなたへ。そろそろ、稼ぐためでも増やすためでもなく、「使うため」のお金の設計を、一緒に始めてみませんか。崩す順番(特定口座→NISA成長投資枠→NISAつみたて投資枠)さえ間違えなければ、設計はそれほど難しくありません。怖いのは、設計が無いまま、ただ漠然と残高だけを眺め続けることのほうです。

シミュレーターで「届かない」と出た方へ——運用環境を整える

差を埋める鍵は、入金力 × 時間 × 低コストな運用環境です。取り崩しの自由度(売りたい商品を、売りたい順番で、低コストで売れるか)は口座選びで決まります。私の主軸はSBI証券ですが、用途で使い分けています。米国株・個別株に強いマネックス証券、サポート手厚く少額・相談向けの松井証券が定番。外国株を厚めに持つならサクソバンク証券(取扱の広さが強み)も選択肢です(保有≠推奨。ご自身の出口設計で選んでください)。

マネックス証券の口座開設 松井証券の口座開設 サクソバンク証券の口座開設

「現在地」を正しく知る道具——お金の見える化

冒頭のシミュレーターは、入れる数字が正確なほど当たります。毎月の入金力(収入−支出)と、今の資産額。この2つを"見える化"しておくと、取り崩し期の管理もぐっと楽になります。

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まとめ:増やす技術の次は、使う技術

増やすことができるようになったのは、立派な成長です。でも、それはゴールではなく、折り返し地点でした。次に必要なのは、ためらいなく「使う技術」です。

  • 崩せない恐怖は正常です。複利の絶対値・取り返せない不安・「まだ足りない」感覚が原因で、気合いでは外せません。
  • 怖さは設計で外します。①下落時は崩さない変動ルール ②崩す前に入金を緩める ③「これで十分」の上限を決める ④若いうちから使う筋肉を鍛える。
  • 崩す率は「前半厚めの逓減」がベストでした。60代6.5%→70代5%→80代4%。健康な前半10年で4%ルールの約1.4倍使え、95歳に約2,000万円を残せます。4%ルールは"減らさない"設計で、使い切れません。
  • お金の価値は、若いほど高い。貯めすぎもまた、人生の時間を使った機会損失です。

まずは、来月の積立のうち、ほんの少しだけを「今の自分の経験」に振り替えてみてください。それが、増やすだけの人生から、使える人生への、小さくて確実な第一歩になります。

お金は、墓場までは持っていけません。だからこそ、増やす技術と同じくらい真剣に、使う技術を設計する。それが、投資の本当のゴールだと、私は考えています。

※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品への投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任のもとで行ってください。取り崩し率などの数値は一例であり、将来の成果を保証するものではありません。

【免責事項】
本記事は情報提供を目的としており、投資助言・勧誘を目的とするものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
この記事を書いた人
hiro

投資歴2007年から約18年。VOO・QQQ・金(GLDM)・eMAXIS Slim S&P500・オルカン・個別株を保有。「絶望買い×インデックス投資」で暴落局面こそ買い増すスタイル。長期的なアメリカ経済への信頼を軸に運用しています。AI×投資で資産運用ツールを開発中。完成次第フリーで公開予定。

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