金の売却に税金はいくらかかる?——年50万円まで「ゼロ」にできる売り方と、現物→NISAの順番【純金積立の出口】

金の売却にかかる税金と、現物から新NISAへ移す売り方を解説する記事のアイキャッチ 投資戦略・制度
机の上の金地金と電卓。売るときの税金を計算し直す

金の記事は、買い方の話ばかりです。どの商品がいいか、いつ買うか、何割持つか。私自身、そういう記事を何本も書いてきました。

ところが売る話になった途端、急に情報が減ります。金を売ったときの税金は、株や投資信託とまったく別のルールで動きます。それを知らないまま出口に立つと、取らなくていい税金を払うことになります。

私は2000年代後半に、それまで積み立てていた金を解約したことがあります。そのとき「税金を持っていかれた」と記憶していました。今回あらためて計算し直したところ、その税金は、税金であったはずがありませんでした

この記事では、金を売る順番と税金の仕組みを整理します。読み終えたときには、まだ売る予定がない方でも「自分はどう売るか」を先に決められる状態になります。

結論:売る順番は「毎年消える控除から」です

先に答えを書きます。金を現物と投資信託の両方で持っている場合、売る順番は現物が先、投資信託が最後です。

より正確に言うと、こうなります。

現物(金地金)を、年間の利益50万円以内で毎年売る。新NISAで持っている投資信託は、最後まで手をつけない。

理由は税率の高さではありません。2つの「枠」の性質が違うからです。

消える枠と、戻ってくる枠

金地金(きんじがね。金の延べ棒や純金積立で持つ現物の金)を売ったときには、年50万円の特別控除があります。この控除は、その年に使わなければ翌年に繰り越せません。使わなかった年の50万円は、消えます

一方、新NISAの非課税枠は、売っても翌年に買った値段の分だけ復活します。急いで使う必要がありません。

2つの枠は、性質がまるで違います 現物の特別控除(年50万円) 使わないと、その年で消えます 1年目 2年目 3年目 毎年リセットされて戻ります → 使わない年は、丸ごと捨てている =だから、先に使う 新NISAの非課税枠 売っても翌年に復活します 生涯1,800万円の枠 売った分は翌年に戻ってきます → 待っても失われない =だから、後に回す
左は使わないと消える枠、右は待っても失われない枠。順番は自動的に決まります

使わないと消えるものから先に使う。待っていても減らないものは後に回す。順番は、税率を比べる前に決まっています

これは、株で決めているルールと同じ形でした

私は資産を取り崩す順番を「特定口座が先、NISAは最後」と決めています。NISAの複利を最後まで働かせたいからです。

今回、金について計算してみたところ、答えは同じ形をしていました。課税される口座から先に手をつけて、非課税の口座は温存する。新しい原理を覚える必要はありませんでした。

金の買い方・商品の選び方については、金投資、米国ETFは選ばない。私が「サクっと純金」一択にした理由に書いています。この記事は、その出口側にあたります。

なぜ現物が先なのか——金地金の税金の仕組み

金地金を売って出た利益は、譲渡所得として総合課税の対象になります(国税庁 タックスアンサー No.3161)。株式や投資信託の20.315%という分離課税とは、まったく別の計算です。

計算の流れは3段階です。

  1. 売った金額から、買ったときの金額と売却の費用を引きます(=譲渡益)
  2. そこから特別控除50万円を引きます
  3. 保有期間が5年を超えていれば、残りを半分にします

この金額が給与などの所得に合算され、所得税と住民税がかかります。

ここで効いてくるのが2段目です。年間の利益が50万円以内なら、この時点で課税対象がゼロになります。税率がいくらであっても、かける相手がゼロなら税金はゼロです。

投資信託を特定口座で持っている方へ

金の投資信託を新NISAではなく特定口座で持っている場合は、税率の比較が必要になります。投資信託は利益に対して一律20.315%、現物は総合課税だからです。

計算すると、境目は課税所得900万円のあたりに来ます。

課税所得限界税率の目安現物(5年超)が有利な範囲
〜695万円15.1〜30.4%利益がいくらでも現物が有利
695〜900万円33.5%利益がいくらでも現物が有利
900〜1,800万円43.7%利益714万円まで現物が有利
1,800〜4,000万円50.8%利益249万円まで現物が有利
4,000万円〜55.9%利益183万円まで現物が有利

※復興特別所得税(所得税額の2.1%)を含む目安です。実際には利益の半額が所得に加算されるため、加算後に上の段階へ移ると税率が変わります。正確には加算後の課税所得で判定してください。

ほとんどの方は上の2行に入ります。つまり特定口座で投資信託を持っている場合でも、やはり現物が先という結論になります。

私の答え合わせ——「税金を持っていかれた」記憶の正体

ここからは、私自身の話です。

2000年代後半、それまで積み立てていた金を解約しました。売値は数十万円でした。そのときの記憶として、私はずっと「税金を持っていかれた」と思っていました。

今回この記事を書くにあたって、当時の金額を計算し直しました。結果は、私の記憶とかみ合いませんでした。

そもそも、代金から税金は引かれません

まず制度の話です。金地金の売却に、源泉徴収はありません。給与や配当と違い、代金から税金が差し引かれる仕組み自体が存在しません。譲渡所得は、自分で確定申告して納める税金です。

つまり「売った代金から税金が引かれていた」という記憶は、制度上ありえないことになります。

次に金額です。当時の金価格は1グラム2,000円から3,000円ほどでした。売値が数十万円なら、そこから買ったときの金額を引いた利益は、50万円の特別控除に収まる規模です。控除に収まれば、課税対象はゼロになります。

仮に購入時の記録が一切残っていなかった最悪のケースで計算しても、税額は1万円台にとどまりました。「持っていかれた」と感じるほどの税金は、どう計算しても出てきません

では、何が引かれたのか

私の記憶が完全な作り話とも思えません。実際に手元に戻った金額は、想定より少なかったはずです。

候補は、税金ではないものです。金の売買には、価格差と手数料が必ずかかります。田中貴金属工業(国内最大手の貴金属地金商)が公表している実額を見ると、規模感が分かります。

項目金額(2026年7月28日時点)
店頭小売価格(買うとき)23,731円/g
店頭買取価格(売るとき)23,374円/g
その差(スプレッド)357円/g
買取1件あたりの別途手数料(100g以上500g未満)16,500円
同(20g以上50g未満)4,400円

出典:田中貴金属工業「日次金価格推移」および「売買別途手数料」。手数料は2026年7月時点の料金表であり、私が売却した当時の料率とは異なる可能性があります。

買った瞬間に1グラムあたり357円分は目減りしています。そこに1件あたり数千円から1万6,500円の手数料が乗ります。数十万円の売却なら、合計で数万円が引かれる計算です。

金額の桁は、私が「税金」だと思っていたものとほぼ重なります。断定はできません。当時の明細は残っていないからです。ただ、税金でなかったことだけは、計算からはっきりしました。

売った理由すら、覚えていません

正直に書いておきます。私はその金を、なぜ売ったのかも覚えていません。たぶん、別の何かに使いたかったのでしょう。

売った理由を覚えていない人間が、引かれた金額の内訳だけ正確に記憶しているはずがありません。私が20年近く抱えていたのは、記録ではなく印象でした

この記事を書くまで、それを疑ったことがありませんでした。

純金積立の人が知っておく3つのルール

毎月コツコツ積み立てている場合、売るときの計算は少し特殊になります。押さえるべきは3つです。

1. 古い分から売れたことになります

純金積立で売却するとき、先に取得した分から順番に売ったものとして扱われます(東京国税局の文書回答事例)。いわゆる先入先出です。

ここが効きます。年50万円以内という小さな単位で売るぶんには、出ていくのは一番古いロットだけです。積立を長く続けているほど、その古い分は5年を超えています。つまり売り始めは、自動的に「保有5年超=課税対象は半分」になります

もし売却量が増えて、5年を超えた分を使い切り、新しい分にまで届いた年はどうなるか。そのときは50万円の特別控除が、全額課税される短期の利益から先に差し引かれます(所得税法33条5項)。

どちらに転んでも、計算は納税者に有利な側に働きます。

2. 取得費は「総平均法に準ずる方法」で出します

毎月違う値段で買っているので、1グラムいくらで買ったのかを決める必要があります。使うのは総平均法に準ずる方法です。積み立てた金額の合計を、積み立てた重さの合計で割ります。

三菱マテリアルも公式サイトで同じ説明をしています。実務では、業者が発行する年間報告書に平均取得単価が記載されているはずです。

3. 買ったときの記録を捨ててはいけません

取得費が分からないと、実務上は売却価格の5%を取得費とみなして計算されることが多いようです。

※この5%という扱いは、国税庁が金地金について明記しているものではありません(もともとは土地建物に関する規定です)。税理士事務所や買取業者の解説では広く紹介されていますが、確定的な取り扱いとして書くことは避けます。適用の可否は税務署にご確認ください。

もしこの扱いになると、何が起きるか。100万円で売れば、95万円が利益とみなされます。実際には値上がりしていなくても、課税されることになります。

記録を捨てた人は、儲かっていなくても税金を払う可能性があります。私の20年前の売却も、まさに記録が残っていないケースでした。

金の位置づけを整理したい方へ

『今こそ、ゴールド投資!』(池水雄一・日本貴金属マーケット協会代表)は、なぜ金を持つのかを歴史と経済の流れから説明した1冊です。売り方を考える前に、そもそも自分が何のために持っているのかを言葉にしておくと、出口の判断がぶれにくくなります。

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洗い替え——現物を年50万円ずつ売って、NISAへ移す

ここからが実務です。「年50万円以内で売る」と言われても、売ったお金をどうするのかという問題が残ります。

金の保有量を減らしたくないなら、売った分を買い戻すことになります。これを洗い替えと呼びます。買い戻し先の選び方で、結果はまったく変わります。

現物を売って現物を買い戻すのは、勧めません

同じ現物で買い戻すと、その分の保有期間が振り出しに戻ります。取得日が新しくなるからです。5年を超えていた金が、また5年以内の扱いに戻ります。

つまりこの方法は、今年の控除50万円と引き換えに、買い戻した分が長期に戻るまでの5年を差し出す取引です。加えてスプレッドと手数料も毎回かかります。無条件には勧められません

買い戻し先を新NISAにすると、この問題が消えます

売った資金で、新NISAの成長投資枠を使って金の投資信託を買います。私が持っているのは、SBI・iシェアーズ・ゴールドファンド(為替ヘッジなし)、愛称サクっと純金です。

こうすると何が起きるか。

毎年、消える控除を使って非課税口座へ移していきます 現物(課税口座) 利益50万円ぶんだけ 毎年売る 税金ゼロ 同額を買い戻す 金の保有量は 変わりません 新NISA(非課税) 以後の値上がりは 非課税になります 買い戻し先が現物ではないため、5年のカウントがやり直しになりません。 =課税口座の含み益を、毎年消える控除を使って、非課税口座へ移す動きです。
現物→新NISAの移し替え。保有量を保ったまま、課税される場所から非課税の場所へ移していきます

買い戻す先が現物ではないので、5年のカウントがやり直しになりません。しかも移した分は、その後どれだけ値上がりしても非課税です。

いくら売れて、何年かかるのか

ご自身の保有量で計算できるようにしました。数字を入れて確かめてみてください。

洗い替えシミュレーター——年いくらまで「税ゼロ」で売れるか

※保有5年超・その年に他の総合課税の譲渡益がない前提の概算です。復興特別所得税を含む目安の税率であり、譲渡所得の半額が加算されて所得の段階を跨ぐ場合は実際の税額が変わります。正確な計算は税理士・税務署にご確認ください。

初期値(保有200g・平均9,000円/g・買取23,374円/g)で計算すると、年間およそ34.8グラムまで税金ゼロで売れます。全量を移し終えるまで約6年、一括で売った場合にかかるはずだった税金は約36万円でした。

買い戻し先の口座についても触れておきます。サクっと純金を買えるのは、SBI証券・楽天証券・マネックス証券・松井証券の4社です。すでにお持ちの口座があれば、それで足ります。

買い戻し先の成長投資枠を用意しておく

私の主軸はSBI証券ですが、用途で使い分けています。米国株まで視野に入れるならマネックス証券、少額から始めてサポートを重視するなら松井証券が有力です。どちらも口座開設・維持は無料です。

マネックス証券の口座開設 松井証券の投資信託

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この方法の弱点と、向き不向き

いいことばかりではありません

弱点を順番に挙げます。

  • 成長投資枠を金で埋めることになります。その枠は、S&P500やオルカンには使えなくなります。非課税の恩恵は期待リターンが高い資産ほど大きいので、ここは正面から悩むべき論点です
  • 売却額は利益より大きくなります。「利益50万円ぶん」を売るには、元本を含めたもっと大きな金額を売ることになります。枠の消費は思ったより速く進みます
  • スプレッドと手数料は残ります。税金がゼロになっても、売買のコストは毎回かかります

1つ目が一番重い制約です。新NISAは、国が用意した非課税の器です。その限られた器を、値上がりを狙う資産ではなく守りの資産に使っていいのか——これは私自身、まだ完全には整理できていません。

今の私の答えは、こうです。金の目標比率は30%と決めています。決めた比率を守るための移し替えなら、器の使い道として筋が通ります。比率を超えて金を買い増すために枠を使うなら、それは目的が変わっています。

保有量が少ない人は、数年で終わります

正直に書いておきます。この「毎年50万円ずつ」という方法は、保有量が大きい方には数十年続く長い計画になります。

一方、私自身の金は目標30%に対してまだ数パーセントしかありません。実行すれば数年で売り切って終わります。自分には短期で終わる話を、長く効く話として売るつもりはありません。

それでも今のうちに書いておく理由があります。売り方を決めるのは、売る直前では遅いからです。記録を残す、5年を数える、口座を用意する。どれも買っている段階でしかできません。

よくある不安に答えます

年50万円ずつに分けるのは、脱税になりませんか

なりません。特別控除は毎年使えるように制度が作られています。使える年に使うことは、制度が想定している行動です。

実態としては1回の取引なのに、書類の上だけ複数年に分けるような行為は別です。実際に別の年へ売却を分ける分には、問題ありません。

税務署に把握されますか

年間の売却額が200万円を超えると、業者が税務署へ支払調書を提出します(所得税法225条1項14号・2012年1月から)。これは金額の基準であり、重さの基準ではありません

把握されるから困る、という話ではありません。正しく申告すれば済みます。むしろ記録が残る前提で設計したほうが、後から慌てずに済みます。

新NISAで含み損なのに、買い増していいのですか

私のサクっと純金は、いま含み損を抱えています(2026年7月時点)。高値で一括購入したためで、判断としては失敗でした。

ここで知っておくべきことが1つあります。新NISAの損失は、損益通算も繰越控除もできません。含み損の投資信託を売っても、税金の面では何の効果もありません。売って損を確定させる意味がないということです。

そして私は、下がっている局面で積立をやめません。安く買える期間が続いているだけだと考えているからです。

なお、もともと投資信託しか持っていない方には、この記事の「順番」は関係ありません。新NISAなら売っても非課税、特定口座なら20.315%です。急いで動く理由はありません。

まとめ

  • 金地金の売却益は総合課税の譲渡所得です。年50万円の特別控除があり、保有5年超なら課税対象は半分になります。
  • 売る順番は現物が先、新NISAの投資信託が最後です。理由は税率ではなく、現物の控除が毎年消えるのに対しNISAの枠は翌年戻ってくるからです。
  • 純金積立は古い分から売れたことになるため、売り始めは自動的に5年超の扱いになります。ただし取得費の記録がないと、儲かっていなくても課税される可能性があります。

まずは、ご自身が持っている金の取得記録が残っているかを確認してみてください。話はそこから始まります。

私は2000年代後半に金を売って、税金はほとんど取られていませんでした。年50万円の特別控除に収まっていたからです。当時それを知っていたわけではありません。知らないまま、正解を踏んでいただけでした

そして2020年に積立を再開してから、私はまだ一度も売っていません。つまり、この控除を一度も使っていません

次に売るときが、知って売る最初の一回になります。

動画でも解説しています

この記事の内容を、7分49秒の動画にまとめました。章ごとに耳に残す数字を1つだけ置いてあるので、手が離せないときは音声だけでも追えます。

動画版(7分49秒):第1章 結論/第2章 2つの枠/第3章 私の答え合わせ/第4章 積立の3ルール/第5章 新NISAへの移し替え

私の保有と、読者の方への提案は分けて書きます

私(Hiro)の実際読者の方への提案
現物三菱マテリアルの純金積立(2020年に再開・少額)すでに現物をお持ちなら、まず取得記録の確認から
投資信託サクっと純金を新NISA成長投資枠で保有(含み損)新NISAで買えるかどうかを、口座の対象商品で確認
売却再開後は一度も売っていません売る予定がなくても、順番だけ先に決めておく
目標比率30%(現状は数パーセント)比率は各自の設計次第。金は主役にはなりません

三菱マテリアルは私が使っている業者として社名を挙げていますが、読者の方に勧めているわけではありません。手数料や最低積立額は各社で異なります。

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※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品への投資を推奨するものではありません。税務の取り扱いは個別の事情により異なります。実際の申告にあたっては税理士または所轄の税務署にご確認ください。投資判断はご自身の責任のもとで行ってください。

【免責事項】
本記事は情報提供を目的としており、投資助言・勧誘を目的とするものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
この記事を書いた人
hiro

投資歴2007年から約18年。VOO・QQQ・金(サクっと純金)・eMAXIS Slim S&P500・オルカン・個別株を保有。「絶望買い×インデックス投資」で暴落局面こそ買い増すスタイル。長期的なアメリカ経済への信頼を軸に運用しています。AI×投資で資産運用ツールを開発中。完成次第フリーで公開予定。

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