2026年7月1日、Anthropic(アンソロピック。対話型AI「Claude(クロード)」を作る米国のAI企業)の最上位モデル「Claude Fable 5(フェイブル・ファイブ)」が、世界中のユーザーに戻ってきました。前月、アメリカ政府の輸出規制(国の安全保障を理由に技術の海外提供を制限する仕組み)でいったん止まっていたものが、復活したのです。
私は、この知らせを素直にうれしく思いました。早く使いたい、とも思いました。私の手元で実際に動いたのは翌日の7月2日で、私はすぐに使い始めました。
Fable 5の使用料は、正直に言って安くありません。それでも私は、料金以上の価値があると考えます。その価値とは、「より深く考え、今まで以上の答えを引き出せる」ことです。
この記事では、AIを「投資の思考の相棒」として使うと何が変わるのかを、AIにあまり詳しくない方に向けて説明します。3つのモデルの違いと、他社との比較を通して、投資にどう役立てるかまで翻訳します。
結論:AIは「答えを出す機械」ではなく「一緒に深く考える相棒」です
先に結論をお伝えします。投資でAIを使うときの正解は、私の中でははっきりしています。
AIに答えを出させるのではなく、AIと一緒に深く考える。特に投資では、「裏取り」と「リスク発見」にAIが効きます。見落としを拾い、反対意見をぶつけてくれる相棒として使うのです。
そして、いつも最上位モデルを使う必要はありません。日常の軽い作業は主力モデルで十分、難しく重い読み込みほど最上位モデルの「深さ」が効く。この使い分けが、料金と価値のバランスを取る鍵になります。理由を、私の実体験から説明します。
Fable 5が復活した——ただし「非対称」に戻りました
まず、何が起きたのかを短く整理します。発端は、AIの安全装置をすり抜ける手口(ジェイルブレイク)が見つかったことでした。これを受けて2026年6月12日、アメリカ政府がFable 5などへのアクセスを止めるよう指示しました。
この脆弱性がどれほど危険だったかは、政府とAnthropicで見方が分かれています。政府は重大なリスクと判断し、Anthropicは「実演で確認できたのは、すでに知られた軽微な脆弱性がわずかに出た程度」と説明しています。片方だけを信じず、両論があると知っておくのが大切ではないでしょうか。
6月30日に規制は解除され、7月1日にFable 5は世界へ戻りました。一方で、同じ土台の姉妹モデル「Mythos 5(ミトス・ファイブ)」は、米国内の重要インフラを守る組織などに限定的に戻っただけです。Fableは世界へ、Mythosは米国内だけ。復活は非対称のまま進みました。
私は締め出された当事者でしたが、戻ってきたら素直に喜びました。ここで一つだけ覚えておきたいのは、スイッチを握っているのは自分ではない、という事実です。この点は、後半の「1社に賭けない」という話につながります。
私の使い方:AIに「決算書の裏取り」をさせています
ここからが、この記事の核心です。私が投資でAIをどう使っているか、実例でお話しします。
私は最近、あるロケット企業SpaceX(スペースX)のS-1を、Opus 4.8(オーパス。Fableの一つ下の上位モデル)に読ませてみました。S-1とは、米国で新しく上場する企業が当局に出す届出書で、事業内容やリスクが細かく書かれた、日本の「目論見書」に近い書類です。
ところが、Opus 4.8は借り入れ(負債)の項目を見落としました。さらに、株式を発行して集めたお金の使い道も見過ごしました。この「借り入れ」と「株式発行」の意味こそ、私が別の記事で投資リスクとして深掘りした核心部分でした。
つまり、AIでも見落とします。ここが大事なところです。AIは万能ではありません。だからこそ私は、より深く読むFable 5に、こうした見落とし=リスクを拾ってほしいと期待しています。重い開示書類を読むような「難所」でこそ、最上位モデルの深さが生きるからです。
誤解しないでいただきたいのは、私はAIに最終判断をさせているわけではない、という点です。AIは「裏取りの相棒」であって、決めるのは私です。自分の見立ての穴を探させ、反対意見をぶつけさせる。その往復で、一人で考えるより深いところまで行けます。これが「今まで以上の答えを引き出す」の中身です。
3モデルの使い分け:日常は主力、難所は最上位
では、どのモデルをいつ使えばよいのでしょうか。Claudeの主要3モデルを、飛行機にたとえて整理します。ちょうど「Claude Sonnet 5(ソネット・ファイブ)」も新しくなったので、この3つで比べます。
| モデル | たとえ | 考えの深さ | 速さ | 向いている場面 |
|---|---|---|---|---|
| Sonnet 5 | 主力の旅客機 | 十分(前世代の最上位級) | 速い | 日常の調べ物・下書き。今は割引価格 |
| Opus 4.8 | ファーストクラス | とても深い | 中くらい | しっかり考えたい分析・相談 |
| Fable 5 | 試作の超音速機 | 最も深い | じっくり(長考型) | 重い開示書類の読み込みなど難所 |
3つの差は、ひとことで言えば「タスクの長さと難しさ」で開きます。短い定型作業なら、どれもほぼ同じ答えを返し、差はほとんど出ません。逆に、S-1のような長く複雑な書類を読むほど、Fable 5の深さが効いてきます。だから日常はSonnet 5で十分、難所だけFable 5、という使い分けが賢い選択になります。
料金は、賢さに比例して上がります。出力にかかるおおよその料金(100万文字あたり、ドル建て)を並べます。強いほど高い、という関係が見えます。だからこそ「いつも最上位」ではなく「ここぞで最上位」が、費用対効果の答えになります。
もう一つ、公式の注意書きも紹介しておきます。Fable 5は、Opus 4.8よりもはるかに速く使用量を消費します。月額プランで使う場合、同じ「持ち時間」でも、最上位モデルに任せるほど早く尽きるということです。日常の軽い作業まで任せていると、肝心の難所の前に残量がなくなります。ここでも答えは同じで、「いつも最上位」ではなく「ここぞで最上位」です。
初心者の方は、まず無料枠や安いプランで主力モデルから始めて問題ありません。「ここは絶対に見落としたくない」という難所に出会ったときだけ、最上位を頼る。それで十分に価値を受け取れます。
私の財布の話:7月8日、Proプランに切り替えます
正直に、私自身の財布の話もします。私はいま、月額の上位プラン「Max(マックス)」を使っていますが、7月8日に、月20ドルの標準プラン「Pro(プロ)」へ切り替えると決めました。Maxは、プログラム開発をひっきりなしにするような使い方でないと、使い切れないのです。実際、私は使い切れませんでした。私の使い方なら、20ドルのProが一番コスパが良い——両方を実際に使ってみての結論です。
Fable 5は、Proに「使った分だけ支払うクレジット」を少し足して使います。ただ、これも正直に言うと、使った分だけ払う方式は、あまり好きではありません。使用料を気にしながらの作業になるからです。どれくらい使うかは作業の中身次第で、やってみないと分かりません。それでも使い続けたいのは、単純に優秀だからです。たとえるなら、有名大学卒の優秀な人材は欲しいけれど、フルタイムで雇うお金はない——だから、ここぞという難所だけ来てもらう。そんな感覚です。
切り替えまでの今週は、無料で使える枠を使って「どの難所ならFable 5の深さが本当に効くのか」を検証しています。検証してから、足す金額を決める。投資と同じ順番です。
他社と比べると:トップは僅差、プロは「1社に賭けない」
視野を広げて、他社のAIとも比べます。2026年7月時点で、最前線を争う主なモデルは次のとおりです。
| 会社 | 主力モデル | 得意 |
|---|---|---|
| Anthropic | Claude Opus 4.8(最上位はFable 5) | 文章・コード。人間の評価で首位級 |
| OpenAI | GPT-5.5 | 道具を使いこなす作業に強い |
| Gemini 3.1 Pro | 値ごろ。無料枠が広く長文に強い |
Fable 5に近い他社モデルはどれか。位置づけとしては、OpenAIやGoogleの旗艦モデル(GPT-5.5、Gemini 3.1 Pro)が近い相手です。ただしFable 5は、それらより一段上の「最難関特化・プレミアム帯」に置かれ、料金も一段高く設定されています。
注目したいのは、トップ集団の実力差が、過去いちばん小さくなっている点です。人間の投票で順位を付ける有名なランキングでも、上位モデルは僅差の中にひしめいています。「どれか1つが圧倒的」という時代ではありません。
だからこそ、最良の成果を出しているチームほど、1社のAIに固定していません。文章はClaude、調べ物はGemini、汎用や予算重視はGPT、と仕事ごとに使い分けています。これは投資の知恵とそっくりではないでしょうか。「どれが一番か」を当て続けるのは難しいから、潮流全体にまとめて乗る。私がずっと大事にしてきた「出口の自由度」とも、同じ発想です。
もう一つの使い道:AIは「作る道具」にもなります
AIの価値は、考える相棒だけではありません。アプリやツールを「作る道具」にもなります。私は以前、プログラミングの専門家ではないのに、AIの力を借りて数日で鉄道の遅延情報サービスを作った経験があります。
いまも、便利なアプリをいくつか構想中です。詳しくはまだ書けませんが、作り込むときのプログラム作成では、Fable 5のような最上位の力が効く場面が来ると考えています。
投資家にとって、これは小さな話ではありません。AIで作る力は、副業や作業の効率化という「攻めのエンジン」になり得ます。固定費を下げ、時間を生み、その分を投資の種銭に回す。守り(節約)と攻め(種銭づくり)の両方に、AIは効いてきます。
ちなみに、私が「作る」ときに使っているのは、Claude Code(クロード・コード)という、Claudeに開発作業を任せられるAnthropic公式の道具です。プログラミングの専門家でなくても、日本語で指示すれば動くものを組み立ててくれます。体系的に学んでみたい方には、次の3冊が助けになります。AIの進化は速く、細かい仕様は出版後にも変わっていきますが、どれも土台の考え方から学べる本として選びました。
Claude Codeを学ぶ3冊(レベル別に選べます)
・「Claude CodeによるAI駆動開発入門」(平川知秀著/技術評論社)— 初めての方はここから。環境づくりから安全な使い方まで、手を動かして学べます。
・「開発効率をアップする!Claude Code実用入門」(大澤文孝著/マイナビ出版)— 基本操作から自動化まで段階式で学べる、2026年5月刊行の情報が新しい一冊です。
・「実践Claude Code入門―現場で活用するためのAIコーディングの思考法」(西見公宏・吉田真吾・大嶋勇樹著/技術評論社)— 使いこなしの「思考法」まで踏み込む、慣れてきた方向けです。
買うなら「出口の自由な」証券口座で
AIで潮流を深く理解したうえで、実際に投資として乗るなら、器えらびが大切です。私が重視するのは、手数料の安さだけではありません。いざというときに資産を自由に動かせるか(出口の自由度)です。
正直にお伝えします。私自身の主軸はネット証券のSBIですが、用途で使い分けています。以下は私の保有そのままの推奨ではなく、「出口の自由度」で選ぶときの選択肢です(保有と推奨は別物です)。
用途で選ぶ証券口座(私の主軸はSBI。以下は使い分けの選択肢です)
・マネックス証券… 米国株・個別株を幅広く扱いたい人向け。
・松井証券… サポートが手厚く、少額から・相談しながら始めたい人向け。
・サクソバンク証券… 取扱いの幅が広く、より多くの外国株に触れたい人向け。
最後に、私の本音も正直に書きます。私は、Claudeを作るAnthropicが将来もし上場したら、「遊び枠」で少しだけ買いたいと思っています。毎日この道具を使っている、という一次体験があるからです。ただし消えても哲学が揺るがない金額の話で、コア(中核)の資産は1ミリも動かしません。これは私個人の判断で、読者のみなさんに勧めるものではありません。
「AIの潮流を、いち投資家としてどう捉えるか」を深めたい方には、次の2冊が助けになります。
関連書籍(テーマを深める2冊)
・「生成AIで世界はこう変わる」(今井翔太著/SB新書)— 東京大学・松尾研究室の研究者が、AIの未来と規制のあり方を平易に解説しています。
・「この一冊で全部わかる ChatGPT & Copilotの教科書[改訂第2版]」(中島大介著/SBクリエイティブ)— 潮流に「乗る」ための実務が分かる、2026年の最新版です。
まとめ
今回学んだことを、3つに整理します。
- AIは答えを出す機械ではなく、一緒に深く考える相棒です。投資では特に、裏取りとリスク発見に効きます。
- AIでも見落とします。だから難所ほど最上位モデルの「深さ」が効き、日常は主力モデルで十分です。使い分けが費用対効果の答えです。
- トップ集団は僅差で、プロは1社に固定していません。AIでも投資でも、1つに賭けず潮流にまとめて乗るのが賢い選択です。
まずやってみてほしいのは、気になる銘柄の決算書や開示資料を、AIに読ませて「見落としているリスクは?」と聞いてみることです。答えを鵜呑みにせず、自分の考えを深める相棒として使ってみてください。
締め出された私が、復活を素直に喜んだ7月2日。私はさっそくFable 5を使い始めました。料金は安くありません。それでも「今まで以上に深く考えられる」なら、私には十分に価値があります。AIも投資も、1つに賭けず、深く考えて選び続けます。
あわせて読みたい(AIに読ませた「借り入れ」の意味・出口の自由度)
▶ 動画版(約13分・5章でやさしく解説)はこちら:AIで投資を“深く考える”時代──復活したClaude Fable 5と、3モデルの賢い使い分け
※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品への投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任のもとで行ってください。
本記事は情報提供を目的としており、投資助言・勧誘を目的とするものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
