「貯金って、毎月いくらすればいいんだろう」。新NISA(少額投資非課税制度。投資の利益に税金がかからない国の制度)を始めた人ほど、この問いで一度つまずきます。
私の答えは、ひとつの暗算式です。貯蓄率(%)=月の手取り(万円)÷5。手取り30万円なら30÷5で6%、月18,000円。これだけです。
なぜこんな低い数字なのか。それは私自身が、若い頃に手取り20万円弱で月5万円も貯めて、生活を詰まらせたからです。1年で100万円は貯まりました。でも、まったくゆとりがありませんでした。あのときの自分に、この「÷5」を渡したかった。そう思っています。
この記事では、その失敗から導いた貯蓄率の決め方を、早見表とグラフで具体的にお見せします。読み終えるころには、あなた自身の「毎月いくら」が暗算で出せるようになります。
結論:貯蓄率は「手取り(万円)÷5」でいい
先に答えを出します。毎月いくら貯蓄に回すかは、次の式ひとつで決めてください。
貯蓄率(%)= 月の手取り(万円)÷ 5
振替額 = 手取り × その貯蓄率(給料日に自動で先取り)
手取りの金額を5で割るだけ。手取り25万円なら5%、35万円なら7%、50万円なら10%です。暗算で出せることが、この式の地味な強みです。
具体的な金額は、次の早見表で確認してください。
| 月の手取り | 貯蓄率(手取り÷5) | 毎月の貯蓄額 |
|---|---|---|
| 15万円 | 3% | 4,500円 |
| 20万円 | 4% | 8,000円 |
| 30万円 | 6% | 18,000円 |
| 50万円 | 10% | 50,000円 |
| 75万円 | 15% | 112,500円 |
ポイントは2つあります。1つ目は、この式が決めるのは「給料から強制的に先取りする土台の貯蓄」だということ。2つ目は、残業代やボーナスはこの式に一切入れないこと。理由はこのあと順番に説明します。
なぜ”÷5″なのか——固定額の自動積立が「家計を詰まらせる」から
「毎月3万円ずつ自動で積み立てよう」。よくあるアドバイスです。でも、この固定額こそが落とし穴になります。
先取り貯蓄(給料が入ったら先に貯蓄分を抜き、残りで暮らす方法)は、強制力があるほど貯まります。ここは私も賛成です。ただ、金額の決め方を間違えると一気にしんどくなります。
残業が多い月の感覚で金額を決めると、収入が落ちた月に効く
たとえば手取りが残業代で60万円まで膨らんだ月に、「よし、10%の6万円を自動積立に」と決めたとします。
問題は、残業のない月です。手取りが30万円に戻っても、設定した6万円は容赦なく引き落とされます。すると実質の貯蓄率は6万円 ÷ 30万円 = 20%。生活がぐっと締まります。これが「自動積立がしんどい」の正体です。
同じ手取り30万円の月でも、「÷5」なら貯蓄額は1.8万円(6%)。負担は3分の1以下です。手取りに式が貼りついているので、収入が落ちれば貯蓄額も自動で軽くなります。下のグラフで比べてみてください。
昇給したときは逆に働きます。手取りが増えれば貯蓄率も自動で上がるので、生活を膨らませる前に貯蓄が締まります。これは「支出は収入の額まで膨らむ」というパーキンソンの法則(手元のお金は、あればあるだけ使ってしまうという経験則)への防御にもなります。
私の失敗——手取り20万円弱で月5万円貯めて、生活が詰んだ
なぜ私が「率は低くていい」と言い切れるのか。自分が逆をやって失敗したからです。
働き始めたころ、私の手取りは20万円あるかないかでした。それなのに、毎月5万円を貯蓄に回していました。ボーナスもほとんど使わず、まるごと貯金に。
結果、1年で100万円が貯まりました。数字だけ見れば優等生です。でも、生活はかなり厳しかった。友人の誘いも、ちょっとした外食も、いちいち我慢する。貯まっていく残高を見ても、心はまったく豊かになりませんでした。
あのとき私は、手取り20万円弱で貯蓄率25%(5万円÷20万円)をやっていたわけです。今の「÷5」で計算すれば、手取り20万円の適正は月8,000円(4%)。1年で約10万円です。
100万円と10万円。差は大きい。でも私は今、はっきりこう考えます。あの1年は、もっとゆとりを持って暮らすべきだったと。削りすぎて続かない強制貯蓄より、軽くても止まらない強制貯蓄のほうが、長い目で見れば強い。これが18年かけて出した結論です。
実践——「÷5」を回す3つの手順
では、どう実装するか。順番が大事です。
手順1:まず「生活防衛資金」を土台にする
投資の前に、生活防衛資金(病気や失業に備える、数か月分の生活費の現金)を用意します。これが土台です。土台のないうちは、「÷5」で先取りした分も、まずは現金として貯めてください。
土台が固まってから、投資へ加速する。私の「絶望は買い(暴落時こそ買い増す姿勢)」も、この順番と同じで、足元が固まってから攻めます。
手順2:「÷5」の額を、給料日に自動で先取りする
生活防衛資金ができたら、「÷5」で出した額を毎月の自動積立に設定します。新NISAのつみたて投資枠で、インデックスファンド(市場全体にまとめて分散投資できる低コストの商品)を淡々と買うのが王道です。
口座は、用途で使い分けるものです。私自身の積立は手数料の安いネット証券で実質0円ですが、米国株や個別株を厚めに見たい人、サポートや少額相談を重視したい人には、別の選び方もあります。下に2社を挙げておきます(私が使っているから勧める、という話ではありません。口座の「性格」の違いです)。
先取り自動積立の「受け皿」になる証券口座(用途で選ぶ)
どちらも口座開設・維持は無料です。米国株・個別株を厚めに見るならマネックス証券、サポートや少額・相談を重視するなら松井証券、という性格の違いがあります。私の主軸とは別に、用途で持つのは合理的です。
手順3:残業代・ボーナスは「式の外」に置く
ここが、この式のいちばん大事な部分です。残業代・ボーナス・臨時収入は、「÷5」の計算に一切入れません。
この第二の財布は、丸ごと「使う側」に回します。自己投資、自分へのごほうび、家族との思い出。私の場合は、実用書を買ったり、毎日の仕事で使うAIに課金したり。便利な道具にためらわず使うことが、結局いちばん効くお金の使い方だと感じています。
こうして「締める財布(手取り÷5)」と「使う財布(賞与・残業代)」を分けると、矛盾が消えます。土台の貯蓄は強制で締めつつ、増えた収入の果実はちゃんと人生に使える。「貯められない」と「使えない」を、同じ財布で混ぜないことがコツです。
| 第一の財布(締める) | 第二の財布(使う) | |
|---|---|---|
| 対象 | 毎月のベース手取り | 残業代・ボーナス・臨時収入 |
| ルール | 手取り÷5を自動で先取り | 式の外。使う前提 |
| 行き先 | 生活防衛資金→新NISA積立 | 自己投資・思い出・ごほうび |
そして、この強制貯蓄にはもう1つの顔があります。好況や昇給の局面で、貯蓄が自動的に積み上がる。その原資が、次の暴落で買い向かう弾薬になります。締めつけが目的ではなく、「絶望は買い」に飛び込むための余力づくり。家計術が、そのまま投資戦略につながります。
「締める」と「使う」を考えるための2冊
「アート・オブ・スペンディングマネー」は、世界的ベストセラー『サイコロジー・オブ・マネー』の著者モーガン・ハウセルが、”どう使うか”だけを掘り下げた一冊です。第二の財布の使い道に迷ったときに。もう1冊は、先取りした種銭をどの投資信託に置くか迷う人へ。新NISAの商品選びの判断材料になります。
よくある不安Q&A
Q. 「÷5」は少なすぎませんか?一律10%という目安も聞きます
たしかに、お金の教育で有名な両学長(書籍『お金の大学』などで知られる発信者)のように、「一律で◯割を貯めよう」という分かりやすい目安もあります。削りすぎを防ぐ、という問題意識は私もまったく同じです。
違いは、一律か連動かだけです。下の表のように、「÷5」と「一律10%」は手取り50万円でぴったり交差します。それ未満では「÷5」のほうが緩く、それ以上では締まります。
つまり「÷5」は、収入が少ない人ほど無理をさせず、増えてきたら自動で締める。一律の目安を、丸めずに連続でやっているだけです。どちらが正しいという話ではなく、自分の手取りで暗算したい人には「÷5」が向いています。
Q. 上限なしだと、手取りが増えるほど貯めすぎになりませんか?
計算上はそう見えます。でも、現実の手取りで暴れることはありません。日本の手取りの大半が収まる月20〜60万円の帯では、貯蓄率は4〜12%。むしろ穏当な水準です。式が過激な数字を出すのは月75万円を超えてからで、そこに届く人は、自分で配分を考えられる人です。
正直に言えば、理屈の上では月500万円で貯蓄率100%(生活費ゼロ)という破綻点があります。ただ、そこに当てはまる人はこの式に従いません。現実の家計では、実害はありません。
Q. ボーナスは貯金しなくていいんですか?
生活防衛資金がまだ薄い段階では、ボーナスを土台づくりに充てて構いません。土台ができたあとは、第二の財布として「使う側」に回す。これが私の考えです。貯蓄率の最大化が目的ではなく、使いたいときに使える状態をつくるのが目的だからです。
まとめ:貯蓄率は「手取り÷5」、強制で、でも締めすぎず
最後に、この記事の要点を整理します。
- 貯蓄率は「月の手取り(万円)÷5」で決める。手取り30万円なら6%、暗算で出せます。
- 固定額ではなく率で連動させる。収入が落ちた月に自動で軽くなり、自動積立が家計を詰まらせません。
- 残業代・ボーナスは式の外。締める財布と使う財布を分けると、「貯められない」と「使えない」が同時に解けます。
まずは、あなたの手取りを5で割ってみてください。出てきた金額を、給料日に自動で先取りする設定にするだけです。少額でも、止まらない仕組みのほうが、いつか必ず効いてきます。
削りすぎて続かなかった、20万円の手取りで月5万円を貯めていたあの頃の私へ。貯金は「我慢」ではありません。未来の自分のための「弾薬」です。だから、軽くて構いません。止めないことだけを、守ってください。
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「÷5」で先取りした種銭は、低コストのインデックスファンドで淡々と。浮いたお金を投資の弾薬に変えるのが、この家計術のゴールです。
🎥 動画でも解説しました(約10分):貯蓄率は「手取り÷5」でいい|月5万円貯めて生活が詰んだ私の結論
※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品への投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任のもとで行ってください。
本記事は情報提供を目的としており、投資助言・勧誘を目的とするものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
