金を、1g18,000円で買い増す。そう先に決めました。
2026年9月11日の田中貴金属の店頭小売価格は、1g 23,769円(税込)です。18,000円は、そこから約24%下です。
来るとは思っていません。来ないとも思っていません。この記事に書くのは「来たら、どう買うか」だけです。
数字は、特に断りのない限り2026年9月11日時点のものです。
結論:円高と金安が同時に来ないと届かない。だから指値を置きます
先に答えを書きます。
- 日本の金の値段は、ドル建ての金価格と為替の2つで決まります。税込18,000円に届くのは、1ドル140円なら金が3,640ドル(今より−17%)、155円なら3,280ドル(−25%)まで下がったときです
- 金を下げる力と、円を高くする力は、ふだんは逆を向きます。2つが同時に来る「窓」は短いです。今年いちばん安かった8月3日の値段は、2営業日後には3%以上戻っていました
- 短い窓は、店頭の現物や投資信託では取りにくいです。値段が決まるのが朝9時30分だったり、翌営業日だったりするからです。そこで私は、東証の純金上場信託(コード1540)に指値を置きます
- 三菱マテリアルの純金積立と、新NISAで持っているSBI・iシェアーズ・ゴールドファンド(為替ヘッジなし、愛称「サクっと純金」)は、これまでどおり続けます。窓は指値で、面は積立と投信で取ります
5月に書いた「サクっと純金一択」の立場は変わっていません。積み立てる器はサクっと純金のまま、値段を決めて待つ役割だけ、ETFを1つ足します。
→ 金投資、米国ETFは選ばない。私が「サクっと純金」一択にした理由
なぜ18,000円なのか——高値で一括買いした平均を下げる値段です
理由は、私の失敗から来ています。
7月の記事に書いたとおり、私はサクっと純金を取得単価2万8千円台で、一度にまとめて買いました。7月の時点で基準価額は2万3千円台、2割近いマイナスでした。
→ GLDMのデメリット3つ——私が買わなかった理由【2割の含み損も公開】
このマイナスは、待っていても平均の値段は下がりません。下げるには、安いところで買い足すしかありません。
たとえば、2万8千円で買ったのと同じ金額を18,000円で買い足すと、平均はおよそ21,900円になります。基準価額が2万3千円台にあれば、全体では含み損が消える計算です。
だから18,000円は、「そこまで下がりそうだから」ではなく、「そこで買えば失敗の平均を薄められる値段」です。予想ではなく、値段です。
ちなみに、田中貴金属の店頭小売価格が18,000円台だった日は、2025年10月以降の日次には1日もありません。その間でいちばん安かったのは、2025年10月2日の20,194円です。
円建ての金は「金」と「為替」、2つの値段でできています
ニュースで見る「金1g◯円」は、次の計算でほぼ出ます。
円建て(税抜・1g) = ドル建て金価格(1トロイオンス) ÷ 31.1035 × 為替(円/ドル) 田中の店頭小売(税込) ≒ 円建て(税抜) × 1.1
1トロイオンスは31.1035gです。9月11日の実数で確かめると、ロンドンの金価格4,386ドル×153.55円で税抜21,654円、1.1倍して23,820円。田中の店頭小売23,769円との差は0.2%でした。
つまり、「18,000円」と決めることは、「金は何ドル」「円は何円」の2つを同時に決めることです。これを表にしました。
| 金(ドル)\ 為替 | 140円 | 145円 | 150円 | 155円 |
|---|---|---|---|---|
| 4,400ドル | 21,785円 | 22,563円 | 23,341円 | 24,119円 |
| 4,000ドル | 19,805円 | 20,512円 | 21,219円 | 21,927円 |
| 3,800ドル | 18,815円 | 19,487円 | 20,159円 | 20,830円 |
| 3,600ドル | 17,824円 | 18,461円 | 19,098円 | 19,734円 |
| 3,400ドル | 16,834円 | 17,435円 | 18,037円 | 18,638円 |
色がつくのは、左下の角だけです。4,000ドルでは、140円まで円高になっても19,805円で、18,000円台には届きません。
片方だけで届かせようとすると、もっと極端になります。
- 円高だけで届かせる(金は4,386ドルのまま):1ドル116円
- 金安だけで届かせる(為替は153.55円のまま):金が3,315ドル、今より−24%
金の−24%は、ありえない数字ではありません。今年の金は、1月29日の5,405ドルから7月16日の3,994ドルまで、半年で26%下げています。ただ、そのとき円は162円台で、7月16日の店頭小売は23,450円(三菱マテリアル)。18,000円どころか、2万円にも遠い値段でした。
片方だけ当たっても、届かない。それが円建ての金です。
金を下げる力と、円を高くする力は、逆を向きます
ここが、窓が短くなる理由です。
9月10日に、ちょうどいい例がありました。米国の10年債の利回りが、前日の4.83%から4.95%へ上がった日です。同じ日、ロンドンの金価格は49ドル、1.12%下がりました。
金は利息を生みません。預金や債券の金利が上がると、金を持っている理由が相対的に弱まり、売られやすくなります。
ところが、米国の金利が上がると、ドルも買われやすくなります。ドルが買われれば、円安です。つまり、同じ「米国の金利上昇」が、金を下げて、円も安くする。円建てで見ると、2つの力が打ち消し合います。
2つが同時に「下」に来るのは、米国の事情とは別に、円を高くする力が乗ったときです。たとえば円買いの為替介入や、日銀の利上げです。
今年の窓は、8月3日の1日でした
7月30日に日本が、31日には日米がそろって、円買い介入に動きました。1ドル163円台だった円は、8月3日には157円台まで高くなっています(日中は一時155円26銭)。同じころ、金は7月の安値圏の4,000ドル前後にいました。
円高と、安い金。2つが重なった8月3日、三菱マテリアルの店頭小売は22,620円で、これが今年の最安値です(田中貴金属は22,624円)。
ところが、その窓はすぐ閉じました。円は157円台のまま動かなかったのに、金が4,028ドルから4,336ドルへ戻り、店頭小売は8月5日に23,383円、8月7日には24,057円です。いちばん安い日から、2営業日で3.4%、4営業日で6.4%戻っています。
そして8月3日の22,620円でさえ、18,000円からは25%以上も上です。18,000円に届くには、あのときより深い円高と金安が、同じ日に重なる必要があります。
9月17日の午前3時(日本時間)に、米国のFOMCの結果が出ます。「FRBは利上げでインフレに対応する」という前提が保たれるかどうかで、金と為替の動き方は変わります。どちらに転んでも、私の値段は動かしません。
→ FOMCと日銀の結果が出る前に「持ち方は変わるか」を答えた記事
窓が短いなら、問題は値段より「手の速さ」です
値段を決めても、その値段で買えなければ意味がありません。そこで、金を買う道具ごとに、1日だけの窓を取れるかを並べました。
| 道具 | 値段の決まり方 | 1日の窓 | コスト・税 | 私の役割分担 |
|---|---|---|---|---|
| 店頭の現物(田中・三菱マテリアル) | 田中は営業日の9時30分と14時に公表。大きく動いた日は時間外にも変更 | × 夜中の一瞬は取れない | 売買の差(9/11は356円)。売却益は総合課税、特別控除50万円、5年超は1/2 | 純金積立を続ける(触らない) |
| 金の投資信託(サクっと純金) | 15時までの注文が、翌営業日の基準価額で約定 | × 1日で戻る円高は間に合わないことがある | 実質年0.15〜0.18%程度。新NISAで保有 | 数日続く円高・金安のときに「面」で買う |
| 純金上場信託(1540) | 東証の取引時間中の市場価格。指値が置ける | ○ 置いておけば刺さる(ただし期限つき。下の注意を参照) | 信託報酬 年0.44%。売却益は20.315% | 18,000円相当に指値を置く(窓を取る) |
純金上場信託(現物国内保管型)は、三菱UFJ信託銀行が運用するETFで、「金の果実」シリーズの1本です。国内の金庫にある金を裏付けにしていて、株と同じように証券会社で売買できます。
コストは、サクっと純金より高いです。信託報酬が年0.44%で、長く積み立てる器としては割高です。だから積立はサクっと純金のまま。1540は、値段を決めて待つためだけに使います。
指値は「1口」で計算します
ここで間違えやすい点があります。1540の値段は1口あたりの価格で、1gあたりではありません。1口に入っている金は、9月11日時点で0.9334gです。上場時は1gでしたが、信託報酬を払うために少しずつ減っています。
1540の値段は、消費税を含まない金の値段に近い動きをします。店頭小売の税込18,000円を1540に置き換えると、次のとおりです。
税込18,000円 ÷ 1.1 = 税抜 約16,364円(1g) 16,364円 × 0.9334g = 1口 約15,270円 (9月11日の1540の終値は1口 20,050円)
1口あたりの金は毎日わずかに減りますし、市場価格は基準価額から数%ずれることもあります(9月11日は終値が基準価額より1.6%安い水準)。指値は、置く日の数字で計算し直します。
指値は「置きっぱなし」にはできません
もう1つ、注文を出す前に知っておきたい制限があります。東証の銘柄には、1日に動ける値段の幅(値幅制限)があります。幅は前の日の終値で決まり、1540の値段なら、終値が2万円以上で上下5,000円、2万円未満で上下4,000円です。
たとえば終値が19,900円の日の翌日は、15,900円より下には値段がつきません。その日のうちに有効な注文(当日中)では、15,270円の指値はそもそも出せません。
私が使うSBI証券では、有効期間を決める「期間指定」の買い注文なら、その日の値幅より下の指値も受け付けてくれます。値段が下がって指値が値幅の中に入った日に、はじめて市場に出ます。ただし有効期間は最長15営業日です。一部だけ約定した場合も、残りは翌日に持ち越されずに消えます。
だから私は、期限が来たら置き直しながら待ちます。証券会社によって扱いは違うので、ご自身の口座のルールを確かめてから置いてください。
出典:SBI証券 ヘルプ「注文入力方法(現物・信用新規)」「当社注文ルール」、同「呼値・制限値幅について」(2026年9月15日確認)
「指値で拾った分を現物に替える」は、少額では使えません
1540は金の延べ棒に交換できます。ただし1kgからで、9月11日時点で1kgに1,072口が必要です。しかも交換するときに消費税10%と手数料がかかり、税金の上では売ったものとして扱われます。
窓で拾う数口を現物に移す橋としては、使えません。長く持つ金は積立の現物と投信、窓で拾った分はETFのまま持つ、と分けて考えています。
私の配置と、原資
原資は、8月の記事で現金を4つに分けたうちの「投資用余剰」、つまり買い場のために置いてある待機資金だけです。生活用、防衛資金、使う予定の決まった中期資金からは出しません。
→ 現金比率30%は多いのか——現金を4つに分けたら、本当の比率は17%でした
窓が短いということは、その日に買える量も、置いておいた指値の分だけということです。それで十分だと考えています。18,000円の一段は指値の分だけ。残りは積立と投信で、値段を当てずに積み上げます。窓を逃しても、積立は止まりません。
読者の方へ:先に決めておく4つのこと
私の数字をまねる必要はありません。ただ、金を「下がったら買いたい」と思っているなら、次の4つを先に書き出しておくと、ニュースに振り回されにくくなります。
- 買い増す値段を、円建てで1つ決める(田中の店頭小売なら税込か、など、どの値段で測るかも)
- その値段を「金は何ドル」「円は何円」に分解する(図1の式で、片方だけでは届くかを見る)
- 窓が短いなら指値、長いなら面で買う道具を選ぶ
- 原資を先に分けておく(生活防衛資金から出さない)
| 項目 | 私(投資歴18年) | 読者の方への考え方 |
|---|---|---|
| 金の器 | サクっと純金(新NISA)+三菱マテリアルの純金積立 | まずはサクっと純金などの低コストな投信を、少額で積み立てる |
| 金の比率 | 目標30%。実際はまだ届いていない | 20%前後から。金は利息を生まないので、持ちすぎない |
| 1540の指値 | 税込18,000円相当に置く | 買い増す値段を決めた人だけの上乗せ。積立の代わりにはしない |
まとめ:値段は、先に置いておく
金1g18,000円は、高値で一括買いした私の平均を下げるための値段です。9月11日の店頭小売23,769円から、約24%下にあります。
その値段に届くには、円高と金安が同じ日に重なる必要があります。1ドル140円なら金3,640ドル、155円なら3,280ドル。金を下げる力と円を高くする力はふだん逆を向くので、重なる窓は短く、今年いちばん安かった8月3日の値段も2営業日で3%以上戻りました。
だから私は、積立と投信は面で続け、1日の窓は1540の指値で取ることにしました。原資は待機資金だけで、買えるのは指値の分だけ。それで十分です。
来るかどうかは分かりません。来なければ、積立を続けるだけです。値段を先に置いておく考え方は、米国債で「税引後5%」を置いているのと同じです。
→ 米国債|ストリップス vs クーポン、私はストリップス派の理由【2026年9月SBI最新データ】
※ 本記事の価格は、特に断りのない限り2026年9月11日時点です。金価格は田中貴金属工業・三菱マテリアルの公表価格、ドル建て金価格はLBMA、1540は三菱UFJ信託銀行の公表資料、税は国税庁タックスアンサー No.3161・No.1463 によります。表や計算は筆者の試算で、実際の売買価格や税額とは異なることがあります。金価格・為替は日々変動します。投資判断はご自身の責任でお願いします。
【指値を置くには、証券口座が要ります】
純金上場信託(1540)は、株と同じように証券会社で売買します。私の主軸はSBI証券ですが、これから口座を作るなら米国の商品にも強いマネックス証券、相談しながら進めたいなら松井証券が有力です。口座開設・維持は無料です。
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