私は野村證券に口座を持っています。勤務先の従業員持株会(社員が給料から積み立てて自社株を買う制度)の、株の受け皿として使っている口座です。
持ち始めてから何年も経ちます。それなのに私は、その口座で外国のETFを買うといくらかかるのか、一度も見たことがありませんでした。
この記事を書くために、初めて手数料表を開きました。そこには、私が想像していたよりずっと厳しい数字が並んでいました。
この記事では、野村證券のNISA(少額投資非課税制度)成長投資枠で買える米国ETFの全リストと、その8本を「野村の口座で」買うといくらかかるのかを、2026年9月6日時点の公式ページの数字だけで整理します。
結論:買えるのは8本。でも私なら、野村では1本も買いません
先に結論を書きます。
野村證券のNISA成長投資枠で買える米国ETF(証券取引所に上場していて、株のように売買できる投資信託)は、8本だけです。
ただし私がこの記事で言いたいのは、8本のどれを選ぶかではありません。その8本のどれを選ぶかより先に、「その口座で買うといくらかかるのか」を見るべきだ、ということです。
野村の本・支店で10万円分のETFを買うと、売買手数料は7,810円かかります。率にすると7.81%です。そして71,000円以下の買い付けには、11.00%という料率が設定されています。
VOOは良いETFです。私自身、別の証券会社で6年間持ち続けています。でも野村の口座に置いた瞬間、それは良いETFではなくなります。
これは野村の会社としての良し悪しの話ではありません。商品と口座の組み合わせの話です。
まず事実:買える8本の全リスト
野村證券の公式ページ「外国ETF(海外ETF)- NISA(成長投資枠)対象 -」に掲載されている全銘柄です。2026年9月6日時点で、掲載されている銘柄コードは8件でした。
| 区分 | 銘柄名 | 略称 | 対象指数 | 経費率 |
|---|---|---|---|---|
| グローバル | バンガード トータル・ワールド・ストックETF | VT | FTSE グローバル・オールキャップ指数 | 0.06% |
| 北米・中南米 | State Street SPDR S&P 500 ETF | SPY | S&P500指数 | 0.0945% |
| 北米・中南米 | バンガード S&P500 ETF | VOO | S&P500指数 | 0.03% |
| 北米・中南米 | インベスコ QQQ信託シリーズ1 | QQQ | Nasdaq100指数 | 0.18% |
| 北米・中南米 | バンガード トータル・ストック・マーケットETF | VTI | CRSP US トータル・マーケット指数 | 0.03% |
| スペシャリティ | State Street SPDR S&P 米国高配当株式ETF | SDY | S&P ハイ・イールド・ディビデンド・アリストクラッツ指数 | 0.35% |
| スペシャリティ | バンガード 米国増配株式ETF | VIG | S&P U.S. Dividend Growers Index | 0.04% |
| スペシャリティ | バンガード 米国高配当株式ETF | VYM | FTSE ハイディビデンド・イールド指数 | 0.04% |
経費率とは、ETFを持っているあいだ毎年かかる運用コストのことです。年率で表され、日々の基準価額から自動的に差し引かれます。
なおVYMとVIGは、2026年2月1日に経費率が引き下げられました。VYMは0.06%から0.04%へ、VIGは0.05%から0.04%へ変わっています。QQQも2025年12月の投資家の投票を経て、0.20%から0.18%になりました。
「野村に取扱いがない」ものも書いておきます
この8本に入っていない有名どころを挙げます。HDV、SCHD、SPYD、DVY、JEPI、JEPQ、債券ETFのBNDとAGG、金ETFのGLDMなどです。
ここで言葉を正確に使いたいと思います。これらは「NISAで買えない」のではありません。「野村に取扱いがない」だけです。
この2つはまったく別の話です。私は以前、HDVが新NISA成長投資枠から外れた記事で、「買えない」には層があると書きました。今回、その層がもう1つ増えます。
第1層から第3層までは「買えるか買えないか」の話です。第4層だけが「買えるけれど、買う意味があるか」の話になります。この記事はその第4層を扱います。
8本を畳むと、5系統しか残りません
8本という数字は、多いようで多くありません。中身を見ると重なりがあるからです。
8本のうち、まったく同じ指数を追いかけている組み合わせが1つあります。SPYとVOOです。どちらもS&P500指数(米国の代表的な企業500社の株価を指数にしたもの)に連動します。
つまり8本といっても、追いかけている指数は7つです。さらに投資対象の性格でまとめると、5系統になります。
配当系の3本は、性格がはっきり分かれています。VYMは利回りの高さ、VIGは増配を続けている企業、SDYは25年以上連続で増配している企業を集めた指数です。
ただしSDYだけは経費率0.35%で、VYMとVIGの0.04%に対して約9倍のコストがかかります。詳しい比較は高配当ETF4本の比較記事に書きました。
7万1,000円でも75万円でも、手数料は同じ7,810円です
ここからが本題です。この8本を野村の口座で買うと、いくらかかるのでしょうか。
売買手数料とは、株やETFを売り買いするたびに証券会社に払う手数料のことです。持っているあいだ毎年かかる経費率とは別に、買うときと売るときの2回かかります。
野村の本・支店の外国株式(外国ETFを含む)の手数料は、次のように決まっています。すべて税込です。
- 71,000円以下 ―― 11.00%
- 71,000円超 75万円以下 ―― 7,810円(定額)
- 75万円超 500万円以下 ―― 1.0450%
- 500万円超 1,000万円以下 ―― 0.8250% + 11,000円
この表を最初に見たとき、私は2段目で手が止まりました。
7万1,000円買っても、75万円買っても、払う手数料は同じ7,810円です。
金額は10.6倍も違うのに、手数料は1円も変わりません。しかも71,000円に11.00%を掛けると、ちょうど7,810円になります。段と段はきれいにつながっています。
つまりこの手数料表は、少額で買う人ほど不利になるように設計されています。設計として一貫していて、そこに不正確なところはありません。ただ、少額で積み上げていく個人の買い方とは、はっきり向きが違います。
11%の段は、机上の空論ではありません
「71,000円以下なんて、そんな少額で買わないだろう」と思うかもしれません。ところが、そうでもないのです。
VTの株価は1株161.73ドルでした(2026年9月4日の終値)。1ドル156.17円で計算すると、1株およそ25,257円です。
ETFは1株から買えます。つまりVTを1株だけ買うと、11.00%の段にそのまま乗ります。手数料はおよそ2,778円です。
ちなみにVOOは1株708.01ドル、およそ110,568円でした。こちらは7,810円の段に入るので、率にすると約7.06%になります。
同じETFなのに、口座区分で手数料が4段階に割れます
ここで話が少し変わります。野村の中でも、口座の区分によって手数料が違います。
本・支店の口座には「オンラインサービスからの外国株式取引は上記手数料から20%割引」という注記があります。さらに野村には、オンライン専用支店(ネット&コール)という別の口座区分があり、そこは手数料表そのものが違います。
同じVOOを、同じNISAの成長投資枠で買っても、これだけ変わります。
| 買う場所 | 10万円 | 75万円 | 240万円 |
|---|---|---|---|
| 野村 本・支店(店頭) | 7,810円 (7.81%) |
7,810円 (1.04%) |
25,080円 (1.045%) |
| 野村 本・支店 (オンライン発注・20%引) |
6,248円 (6.25%) |
6,248円 (0.83%) |
20,064円 (0.84%) |
| 野村 オンライン専用支店 | 2,389円 (2.39%) |
5,866円 (0.78%) |
15,420円 (0.64%) |
| 主要ネット証券のNISA (SBI・楽天など) |
0円 | 0円 | 0円 |
240万円は、NISA成長投資枠の年間上限です。この枠をETFで一括して使うと、野村の本・支店では買うだけで25,080円かかります。売るときも同じ率なので、往復で5万円を超えます。
面白いのは、どの口座区分が安いかは金額によって逆転することです。およそ2万7,000円より下では、本・支店のオンライン発注のほうがオンライン専用支店より安くなります。オンライン専用支店には2,389円という下限があるからです。
だからこそ、一般論では決まりません。自分が買う金額で、自分の口座の表を見るしかありません。
信託報酬の安さで取り返すには、152年かかります
ここで「でもETFは信託報酬が安いのだから、長く持てば取り返せるのでは」という反論が出てきます。もっともな疑問なので、計算してみます。
信託報酬とは、投資信託を持っているあいだ毎年かかる運用管理費用のことです。ETFの場合は経費率と呼ばれます。
VOOの経費率は0.03%。日本の投資信託であるeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の信託報酬は年0.0814%(税込)です。差は年0.0514%しかありません。
この差で売買手数料を取り返すのに何年かかるか。計算するとこうなります。
| 買い方 | 手数料率 | 取り返すまで | 売る分も含めると |
|---|---|---|---|
| 本・支店でVTを1株 | 11.00% | 214年 | 428年 |
| 本・支店で10万円 | 7.81% | 152年 | 304年 |
| 本・支店で240万円 | 1.045% | 20.3年 | 41年 |
| オンライン専用支店で240万円 | 0.64% | 12.5年 | 25年 |
この年数は、買う金額では決まりません
この表を作っていて、1つ気づいたことがあります。
75万円で買っても240万円で買っても、取り返すのにかかる年数はどちらも約20.3年で同じでした。金額が3倍以上違うのに、年数が変わらないのです。
理由は単純です。取り返す年数は、次の式で決まるからです。
取り返す年数 = 売買手数料の料率 ÷ 信託報酬の差
金額は分子にも分母にも同じように効くので、割り算をすると消えてしまいます。残るのは料率だけです。
これは楽天SCHDと本家SCHDを比べた記事で見つけた構造とまったく同じです。あのときも、分岐点は金額に関係なく一定でした。コストの比較では、金額ではなく料率だけを見ればよい場面があります。
ETFの長所である「経費率の低さ」は、たしかに本物です。しかしその長所は、売買手数料がほぼゼロであることを前提にして初めて意味を持ちます。前提が変わると、長所は長所として働きません。
では投資信託なら安全か——成長投資枠は最大5.5%です
「ETFがだめなら、同じ指数の投資信託を買えばいい」。これは半分正しくて、半分は注意が必要です。
野村の成長投資枠で投資信託を買う場合、公式ページには「お申込み金額に対して最大5.5%(税込み)の購入時手数料」と書かれています。ETFの1.045%より、上限だけ見ればずっと大きい数字です。
一方、つみたて投資枠には「購入時手数料はございません」と明記されています。手数料の景色は、枠によっても変わります。
抜け道はあります。ただし条件つきです
公式ページには、こういう一文もあります。
つみたて投資枠対象銘柄を成長投資枠で購入する場合、積立投資のみの取り扱いとなります。
そして野村證券でも、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)とオルカンは買えます。私も確認しました。どちらも「積立取り扱い」の表示がありました(2026年9月4日時点)。
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の購入時手数料は0.00%、信託報酬は年0.0814%(税込)、信託財産留保額はありません。これは販売する証券会社ではなく、その投資信託自体が決めている条件です。
つまり野村の口座で米国の指数を持ちたいなら、ETFではなく、つみたて投資枠の対象になっている投資信託を積立で買うほうが、はるかに合理的です。ただし一括では買えません。
商品の良し悪しは、置く場所で変わります
ここまでの話を1行にまとめます。
VOOは良いETFです。でも野村の口座では、良いETFのままではいられません。
私は以前、新窓販国債と個人向け国債を比べた記事で、商品を選ぶ前に「そのお金をいつ使うか」を先に決めるべきだと書きました。今回も構造は同じです。銘柄より先に、器を決めるという話です。
誤解のないように書いておきます。これは野村證券という会社の批判ではありません。私は以前、証券会社の選び方の記事で「手数料の安さだけで証券会社を選んではいけない」と書きました。その考えは今も変わっていません。
野村の態勢や、資産が守られる仕組みを疑ってはいません。私が言いたいのは、手数料は単独の判断軸にはならないけれど、無視していい軸でもないということです。見るべきは、商品と口座の組み合わせです。
私の場合と、読者のみなさんの場合を分けて書きます
| 項目 | 私(投資歴18年)の場合 | 読者のみなさんへ |
|---|---|---|
| 野村の口座 | 持株会の株の受け皿。閉じる選択肢がない | 持っていること自体に費用はかかりません |
| NISAをどこに置くか | 野村には置いていません | 売買手数料が無料の証券会社が有力です |
| 米国ETF | VOOを別の証券会社の特定口座で6年保有中 | 初心者の方には投資信託をおすすめしています |
| 新規の買い付け | 投資信託に寄せています | eMAXIS Slim S&P500やオルカンが定番です |
私がVOOを持ち続けているのは、ドル建ての資産を物理的に持ちたいという理由があるからです。同じ理由がない方には、VOOではなくスリムS&P500を勧めています。
米国ETFを「買う理由がある」口座で持ちたい方へ
この記事で見てきたとおり、米国ETFの長所は、売買手数料がほぼかからない口座に置いて初めて生きます。マネックス証券はNISA口座での米国株の国内取引手数料が0円で、円から米ドルへの為替手数料も0銭です。ただし売却時には現地手数料が別途かかり、米ドルを日本円に戻すときは1米ドルあたり25銭の為替手数料がかかります。この記事の趣旨からいえば、ここまで確かめたうえで選ぶのが筋だと考えています。なお私の主軸は別の証券会社です(保有と推奨は別物として書いています)。
まとめ:選んでいない口座のことは、調べていませんでした
この記事で分かったことを整理します。
- 野村證券のNISA成長投資枠で買える米国ETFは8本で、指数で見ると7つ、性格でまとめると5系統です。
- 本・支店では7万1,000円買っても75万円買っても手数料は同じ7,810円で、少額ほど不利な階段になっています。
- ETFの経費率の安さで売買手数料を取り返すには、10万円の買い付けで152年かかります。
最後に、この記事を書いた本当の理由を書きます。
私はこの口座を何年も持っていました。それなのに手数料表を開いたのは、今回が初めてでした。自分で選んだ口座ではないから、調べていなかったのです。
同じことを、私は以前もやっています。従業員持株会の記事を書いたとき、自分が退職金規程を一度も開いたことがないと気づきました。選んでいないものについて、私たちは驚くほど無関心でいられます。
だから提案はひとつだけです。今日、ご自身が使っている証券会社の手数料ページを、一度だけ開いてみてください。野村かどうかは関係ありません。乗り換える必要もありません。ただ、自分がいくら払う場所にいるのかを、知っておくだけでいいのです。
置く場所が変われば、同じ商品の意味は変わります。商品を調べる前に、器を見る。それだけで、選び方はずいぶん変わります。
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※本記事の手数料・銘柄情報は、2026年9月6日時点の野村證券公式ページの記載に基づいています。経費率は各運用会社の公式開示、株価は2026年9月4日終値、為替は1ドル156.17円(2026年9月6日)で計算しました。手数料や取扱銘柄は変更される場合がありますので、実際のお取引前には必ず最新の公式情報をご確認ください。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品への投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任のもとで行ってください。
本記事は情報提供を目的としており、投資助言・勧誘を目的とするものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
