副業のインボイス登録、私はしていません|2026年10月に控除は70%へ、2027年4月に税率が3つになります

副業のインボイス登録は必要か。2026年10月に控除は80%から70%へ 投資戦略・制度

「インボイスの登録、したほうがいいのでしょうか」。副業を始めた人が、最初につまずくところです。

私は登録していません。理由は単純で、一度も求められたことがないからです。

そして2026年3月、この制度は法律で作り直されました。しかも、厳しくなる予定だった部分が緩められています

この記事では、2026年10月に何が変わるのかを整理します。2027年4月に税率が3つになると何が起きるのかも見ていきます。

そのうえで、自分に登録が必要かをどう見分ければいいのかまで書きました。消費税に詳しくない人が読んでも分かる言葉にしています。

結論:登録が要るかどうかは、売上ではなく「取引先」で決まります

先に答えを書きます。

インボイス(正式名称は適格請求書。消費税の計算に使える形式の請求書のこと)の登録が必要かどうかは、あなたの売上規模ではほとんど決まりません。

決まるのは、あなたに仕事を出している相手が、消費税をどう納めているかです。

痛むのは、あなたではなく発注した側だからです

消費税には仕入税額控除(自分が受け取った消費税から、自分が払った消費税を差し引ける仕組み)があります。

ここで引くためには、原則としてインボイスが要ります。あなたが登録していないと、発注側はその分を引けません。

つまり、あなたが登録していないことで損をするのは、あなたではなく発注側です。だから「登録してほしい」という声は、相手側の事情から出てきます。

相手の状況によって、こう分かれます。

  • 発注側が課税事業者(消費税を納めている事業者)で、原則どおりに計算している → 痛む → 求められやすい
  • 発注側が簡易課税や特例で計算している → そもそも引く額が売上から決まるので痛まない → 求められにくい
  • 相手が消費者(ブログの読者、動画の視聴者など) → インボイスを必要としない

私の副業はブログ、note、ツールの販売です。お金を払ってくれる相手は、ほとんどが読者と広告配信の仕組みでした。だから声がかからなかったのだと考えられます。

インボイスは、予定どおりに終われませんでした

ここからが、私が調べていて一番おどろいた部分です。

2026年10月、控除は80%から「70%」になります

登録していない事業者から仕入れても、しばらくは一部を引いてよい仕組みがあります。経過措置(急に変えると混乱するので段階的に移す仕組み)と呼ばれるものです。

この割合は、当初の予定では2026年10月に80%から50%へ一気に下がるはずでした。

ところが、2026年3月31日に成立・公布された令和8年度税制改正で変わりました。

50%ではなく70%に緩められ、終了は2029年9月から2031年9月へ2年延びました

時期 当初の予定 改正後(現在)
2026年9月30日まで 80% 80%
2026年10月1日〜2028年9月30日 50% 70%
2028年10月1日〜2030年9月30日 50% 50%
2030年10月1日〜2031年9月30日 —(終了済み) 30%
完全に引けなくなる日 2029年10月1日 2031年10月1日
登録していない事業者からの仕入れで、発注側が引ける割合(出典:令和8年度税制改正)

下のグラフは、当初の予定と改正後の実際を重ねたものです。

引ける割合は、下がる予定が緩められました 80% 70% 50% 30% 0% 2026年10月 2023.10 2026.10 2028.10 2030.10 2031.10 当初の予定(2029年で終了) 改正後(2031年まで延長)
縦軸は、登録していない事業者からの仕入れで発注側が引ける割合です。灰色の破線が当初の予定、青の実線が令和8年度税制改正後の実際です(出典:令和8年度税制改正)

2割特例は終わり、個人事業者だけ「3割特例」が始まります

もうひとつ作り直された部分があります。

2割特例(登録して課税事業者になった小規模事業者が、納税額を売上の消費税の2割で済ませられる負担軽減措置)です。

これは国税庁の案内どおり、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日が属する課税期間で終わります。個人事業者の場合は2026年分の確定申告が最後です。

ただし、そのまま終わりではありませんでした。個人事業者に限り、3割特例が新しく設けられています。

項目 2割特例 3割特例(新設)
納める額 売上の消費税の2割 売上の消費税の3割
対象 個人・法人とも 個人事業者のみ(法人は対象外)
使える期間 個人は2026年分まで 2027年分・2028年分
届出 不要(申告書に書くだけ) 不要(申告書に書くだけ)
2割特例と3割特例の比較(出典:国税庁、令和8年度税制改正)

負担は2割から3割へ増えます。それでも、原則どおりの計算に一気に戻すことは見送られました。

つまり、設計どおりには進まなかったということです

この制度が始まるとき、財務省は試算を示しています。

平成31年(2019年)2月26日の国会答弁によると、インボイス導入による増収の見込みは約2,480億円でした。

複数の税率を導入すると税収が約1兆890億円減るため、その一部をここで賄う設計です。

インボイスで賄う想定だった金額 複数税率による税収減 1兆890億円 インボイスで賄う分 2,480億円 課税事業者になると想定された数 約161万事業者 1事業者あたりの負担増 約15万4千円
インボイス導入時の試算。棒の長さは金額に比例しています(出典:第198回国会 財務金融委員会第3号・平成31年2月26日答弁)

対象となる免税事業者は、およそ372万とされました。そのうち企業間の取引をしている4割、約161万事業者が課税事業者になると見込まれています。

2,480億円を161万で割ると、1事業者あたり約15万4千円です。

ただし、これは7年前の想定にすぎません。

実際には、経過措置は緩められて2年延び、2割特例は3割特例に姿を変えました。

納まり具合も想定どおりではありません。前日の記事でも触れましたが、令和6年度に新しく発生した滞納は9,925億円です。

このうち消費税が5,298億円と53.3%を占め、税目別で最も多くなっています。

滞納が発生する割合そのものは1.2%と低い水準です。それでも税目としては消費税が最も多く、新しく発生した滞納額は前年度から24.1%増えました。

「誰が得をしているのか」という問いへの、私が出した答えはこうです。設計どおりに得をした人がいなかったから、何度も作り直されているのではないでしょうか。

ここは私の受け取り方になりますが、緩和と延長は「うまくいっている制度」に起きることではないと考えています。

制度を設計した側から見れば、経過措置は早く終わらせたいはずです。それでも2年延ばしたということは、予定どおりに進めると無理が出ると判断されたのだと読めます。

そしてこの2年の延長は、私たち側の準備期間が2年増えたという意味でもあります。あわてて結論を出さなくてよくなった、と言い換えることもできます。

私は登録していません。求められたことがないからです

ここからは私自身の話です。

正直に書きます。私は消費税のことを、よく分かっていませんでした。

投資は18年やっています。信託報酬の差が30年でいくらになるかは計算できます。それでも、自分の副業が消費税でどの位置にいるのかは、はっきり答えられませんでした。

私の副業は、ブログ・note・ツールの販売です。売上は1,000万円にはるか手前で、免税事業者の水準にとどまっています。所得税の確定申告は雑所得としてしています。

そして取引先から登録番号を求められたことは、一度もありません

調べ始めたきっかけは、正直に言うと不満でした

制度への興味から調べ始めたわけではありませんでした。

「手間がかかるわりに、納める額は小さい。この制度は誰が得をしているのだろう」。ずっとそう思っていました。

納税義務が免除されるならそのままでいたい、というのが本音です。同じことを考えている人は、少なくないのではないでしょうか。

ただ、不満のまま置いておくと判断ができません。だから数字を調べました。

分かったのは、私が制度の外側にいたということでした。怖がる必要も、あわてて登録する必要もなかったわけです。

制度が怖いのは、中身を知らないからではありません。自分がどちら側にいるかを知らないからです。

なぜ求められる人と、求められない人がいるのか

下の計算機で、その理由が数字になります。

あなたが登録しないまま請求した場合に、発注した側が引けなくなる金額を時期別に出しています。

取引先が「引けなくなる金額」の計算機

税率10%の取引を想定しています。金額を変えると自動で計算されます。

※ 令和8年度税制改正後の割合で計算した概算です。実際の税額は端数処理などで前後します。

税抜30万円を請求した場合、消費税は3万円です。

発注側が引けない額は、2026年9月までは6,000円でした。10月からは9,000円に増えます。2031年10月には3万円の全額になります。

この金額が相手にとって無視できない大きさになったとき、「登録してもらえませんか」という話が出てきます。

逆に言えば、相手が消費者だったり、この金額を気にしない計算方法をとっていたりすれば、話は出てきません。私に声がかからなかったのは、そういうことでした。

2027年4月、税率が3つになる見通しです

ここに、もう一段の変更が乗ってきます。

2026年7月30日、高市首相は食料品の消費税率を2027年4月から2年間、8%から1%に引き下げる方針を表明しました。

実現すれば、日本の消費税率は1%・8%・10%の3種類になります。

インボイスの記載は、2区分から3区分になります

インボイスには、税率ごとに分けた金額と、税率ごとの消費税額を書く決まりがあります。

いまは8%と10%の2区分です。ここに1%が加われば、区分は3つに増えます。

請求書の様式、会計ソフトの設定、レジの税率マスタを、それぞれ直す必要が出てきます。

ただし、注意点があります。

この方針はまだ法律になっていません。政府は8月上旬に方針を閣議決定し、秋の臨時国会に法案を提出する見通しです。

そして、税率が3つになったときにインボイスをどう書くかという具体的な取扱いは、国税庁からまだ示されていません。法案が成立してから案内が出る流れになります。

ですから今の段階でできる準備は、様式を作り替えることではありません。自分がこの制度の内側にいるのか、外側にいるのかを先に確かめておくことだと考えられます。

登録すべきか、3つの質問で見分けられます

私が調べた結果、判断はこの3つに集約できました。

質問 「はい」なら
① 取引先から登録番号を聞かれたことがありますか 相手が痛んでいます。条件を含めて相談する場面です
② 売上の相手は、消費者ではなく事業者が中心ですか 今後求められる可能性があります
③ 課税売上高が1,000万円を超える見込みがありますか いずれ課税事業者になります。登録の損得は小さくなります
副業でインボイス登録が必要かを見分ける3つの質問

登録すると、実際いくら納めることになるのか

判断の材料として、金額を出しておきます。ここが分からないまま迷っている人が多いところです。

仮に、年間の課税売上が税込330万円だったとします。税率10%なので、売上に含まれる消費税は30万円です。

登録して課税事業者になった場合、納める額はこうなります。

  • 2026年分(2割特例)→ 30万円の2割で6万円
  • 2027年分・2028年分(3割特例・個人のみ)→ 30万円の3割で9万円
  • 2029年分以降 → 特例が切れるため、原則どおりの計算か簡易課税に移ります

登録しなければ、この納税は発生しません。免税事業者のままだからです。

では、登録しなかった場合はどうなるでしょうか。

2026年10月からの控除割合は70%です。引けない残りは30%なので、同じ30万円の消費税に対して9万円が相手の負担になります。

ここで、数字が一致します。

3割特例で自分が納める9万円と、登録しないことで相手が引けなくなる9万円は、まったく同じ金額です。

2027年分の特例は売上税額の3割、同じ時期の控除の取りこぼしも3割です。つまり同じ金額を、どちらが持つかの話にしかなっていません。

消えてなくなるわけでも、増えるわけでもありません。だから「登録してほしい」という依頼は、本来なら値段の話とセットになるはずです。ここを分けて考えると、交渉の余地が見えてきます。

3つとも「いいえ」だった場合

私の考えはこうです。

いま登録の判断に時間を使うより、売上を作る側に時間を使ったほうが確実です。

登録が必要になるのは、相手が痛むほどの取引が生まれてからです。その順番が逆になっている人が、けっこう多いのではないでしょうか。

私自身、この制度を調べて出た結論は「まだ関係がなかった」でした。関係が生まれるところまで育てるほうが先だと考えています。

私が使っているもの

このブログは ConoHa WING のベーシックプランで動かしています。ドメイン・暗号化・テーマ込みで、月におよそ1,000円です。

売上が立つ前に必要なのは、登録番号ではなく、置き場所のほうでした。始め方は「副業ブログの始め方【2026】」に手順で書いています。

よくある不安

登録しないと、取引を切られますか

相手が引けない金額を負担することになるため、条件の見直しを申し入れられる場合はあります。

ただし、一方的に取引を打ち切ったり、消費税分を勝手に差し引いたりする行為には、独占禁止法や下請法の問題が生じ得ます。求められたら、まず金額を確認して話し合う場面だと考えられます。

いま登録すると、2割特例は使えますか

個人事業者の場合、2割特例が使えるのは2026年分の確定申告までです。

2027年分と2028年分は、代わりに3割特例が使えます。ただし、これは個人事業者だけで、法人は対象外です。

食料品の1%は、もう決まったことですか

まだ決まっていません。2026年7月30日に首相が方針を表明した段階です。

法案は秋の臨時国会に提出される見通しで、成立していません。数字が動く可能性は残っています。

まとめ

  • インボイスの登録が要るかどうかは、自分の売上ではなく取引先が消費税をどう納めているかで決まります。
  • 制度は予定どおりに進んでいません。2026年10月の控除割合は50%の予定が70%に緩められ、終了は2031年10月へ2年延びました。
  • 2027年4月に税率が3つになる見通しですが、法案は未成立で、インボイスの具体的な書き方も国税庁から示されていません。

まずは、直近1年の請求先を思い出してみてください。相手が消費者中心なのか、事業者中心なのか。それだけで、自分がこの制度の内側にいるか外側にいるかが分かります。

制度は3年で何度も作り直されました。振り回されないための一番の方法は、制度を追いかけることではなく、自分の位置を知っておくことだと考えています。

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動画でも解説しました(約12分)。この記事の内容を5章に分けて音声で解説しています。制度が作り直された経緯を、順を追って追いかけられるように作りました。

第1章 一度も求められなかった/第2章 予定どおりに終われなかった制度/第3章 誰が得をするのか/第4章 税率が3つになります/第5章 私は登録しません

※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品への投資を推奨するものではありません。また、税務上の判断は個別の事情によって異なります。具体的な取扱いは国税庁の案内や税務署、税理士にご確認ください。投資判断はご自身の責任のもとで行ってください。

【免責事項】
本記事は情報提供を目的としており、投資助言・勧誘を目的とするものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。