NISA(少額投資非課税制度)の金融機関を変えられる窓は、変えたい年の前年10月1日から、当年9月30日までです。
今年NISAで1回でも買い付けをしていれば、2026年分はもう変えられません。変えられるのは2027年分で、その受付が10月1日に開きます。
そこで、対面4社(野村・SMBC日興・大和・みずほ)とネット4社(SBI・楽天・マネックス・松井)を並べてみました。結論を先に書きます。
変える理由があるのは、3種類の人だけです。
- NISAで米国ETFを買う人
- 単元未満株(1株単位)で高配当株を買う人
- 対面4社にNISAを置いていて、①か②に当てはまる人
オルカンやS&P500の投資信託を積み立てているだけなら、8社のどこにいても手数料の差はゼロです。変えなくていい、というのがこの記事の答えになります。
そのうえで、調べているあいだに3つ、想定していなかったことが出てきました。順番に書きます。
「9月30日が締切」は、正確ではありません
制度の条文はこうなっています。金融庁のNISA特設サイトから引用します。
「変更後の金融機関の非課税口座にNISA口座を設けようとする年(年分)の前年10月1日からその年の9月30日の間に提出する必要があります」
ここだけ読むと、締切は9月30日に見えます。ところが各社の実務は、そうなっていません。
楽天証券は、公式ページにこう書いています。9月15日0:00から9月30日23:59までは、金融機関変更の手続きができません。つまり2026年分の実質的な締切は9月14日23:59です。制度の日付より、16日早く閉まります。
参考までに、今回の8社には入っていないSBIネオトレード証券は、2026年分の受入期限を9月11日必着としています。
書類が動く時間が、日付に入っていません
締切が前倒しになる理由は、手続きが2段階だからです。まず今の金融機関で「勘定廃止通知書」(そのNISA口座での買い付けをやめたことを証明する書類)を受け取り、それを新しい金融機関に提出します。書類が郵便で往復します。
SMBC日興証券は、日興イージートレードの電子帳票で変更届出書を出せますが、勘定廃止通知書が郵送で届くまで約1週間かかると案内しています。大和証券にいたっては、8社のなかで唯一「まず電話で窓口に連絡してください」から始まります。書面手続きです。
マネックス証券は、翌年の年始から新しい会社で取引したいなら12月中旬までに手続きをと案内しています。10月1日に窓が開いてから、2か月半しか余裕がない計算になります。
「9月30日まで」という日付は、書類が動く時間を計算に入れていない日付です。9月に入ってから思い立つと、会社によっては間に合いません。
証券8社を並べました
下の表が本体です。網掛けの行が「差が出る行」で、網掛けのない行は8社で差がつきません。
| 項目 | 野村 | SMBC日興 | 大和 | みずほ | SBI | 楽天 | マネックス | 松井 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 米国株・ETFの 取扱銘柄数 |
外国ETFは 8本 |
取扱あり 一覧未公表 |
約2,000 | 135 | 4,263 | 4,496 | 5,035 | 5,014 |
| 米国株・ETFの 売買手数料(NISA) |
71,000円以下は 11.00% |
未公表 | 0.891〜 0.297% |
最大1.155% 最低2,750円 |
0円 | 0円 | 0円 | 0円 |
| 為替手数料 (円→ドル/ドル→円) |
未公表 | 未公表 | 未公表 | 未公表 | 0銭/0銭 | NISAは かからない |
0銭/25銭 | 0銭/0銭 |
| 単元未満株 (新規に1株買えるか) |
○ まめ株 1.10% |
○ キンカブ 100円〜 |
△ 1株は 別会社 |
○ | ○ S株 | ○ かぶミニ | ○ ワン株 | × 売却のみ |
| 成長投資枠の 投資信託 |
未取得 | 未取得 | 未取得 | 85本 | 1,263本 | 1,483本 | 1,315本 | 1,278本 |
| オルカン・S&P500の 積立(つみたて枠) |
8社とも買えます。購入時手数料は0円、信託報酬も同じです ―― ここに差はありません | |||||||
| 金融機関変更の 手続き |
Web+郵送 | 電子帳票 通知書は約1週間 |
電話→書面 | 未確認 | 未確認 | Web可 9/14締切 |
Web可 | 未確認 |
表を作りながら、手が止まった箇所が3つありました。
対面4社のなかで、野村8本と大和約2,000銘柄が並んでいます
2日前に書いた記事のとおり、野村證券のNISA成長投資枠(投資信託だけでなく個別株やETFも買える枠)で買える外国ETFは8本です。VT、SPY、VOO、QQQ、VTI、SPYD、VIG、VYM。公式のラインナップページに、その8本だけが載っています。
私はこれを「対面証券だから少ない」と理解していました。ところが大和証券は、2025年6月8日からオンライントレード経由でNISA口座でも米国株を取り扱っており、ETFを含めて約2,000銘柄あります。みずほ証券は135銘柄です。
同じ「対面4社」のなかで、桁が3つ違います。
私は4月28日の記事で、銀行のNISAには商品数・手数料・取引時間の3つで劣位があると書きました。あの構造は銀行には当てはまります。ただし「対面証券」でひとくくりにすると、事実とずれます。会社ごとに見るしかありません。
一覧サイトの「取扱あり」を信じると、間違えます
単元未満株の行です。大手のまとめサイトを見ると、松井証券は「単元未満株の取扱あり」と書かれています。
松井証券の公式ページには、こう書いてあります。
「売却のみ受付けます。」「単元未満株式の買増しは、電話でのみ受付けます。」
つまり新規に1株から買うことはできません。8月12日に高配当株の1株買いを書いたときと、状況は変わっていませんでした。
「取扱あり」と「新規に買える」は、別のことです。1株買いのために松井へ移ったら、目的が果たせません。
大和証券も同じ種類の注意が要ります。1株から買える「ひな株」は、大和コネクト証券という別の会社のサービスです。大和証券に口座があっても、1株を買うには口座をもう1つ作ることになります。
入口の手数料はそろいました。出口はそろっていません
ネット4社は、NISAでの米国株・ETFの売買手数料をすべて0円にしました。為替手数料も、円をドルに替えるところは各社ほぼ0銭です。入口の競争は、決着がついています。
ところが、ドルを円に戻すときは違いました。
- 松井証券:米ドルと円の両替が、往復とも0銭(2023年12月に恒久無料化)
- マネックス証券:円→ドルは0銭、ドル→円は1ドルあたり25銭
私は6月13日の記事で、守るべきは資産の種類ではなく「出口の自由度」だと書きました。6月22日のmoomoo証券の記事でも、証券会社は手数料ではなく態勢と出口で選ぶ、と書いています。
入口だけ見て比べると、出口の差を見落とします。買うときの表は各社が大きく出しますが、売って円に戻すときの表は、同じ大きさでは出てきません。
差が出る取引は、2つしかありません
ここが、この記事でいちばん言いたいところです。
8社で手数料の差が出る取引は、「米国ETFの買い付け」と「1株単位の買い付け」の2つだけです。投資信託の積立には差がありません。だから、投資信託しか買わない人には、動く理由がそもそも存在しません。
金額にすると、こうなります。
同じ30万円でも、分けて買うほど高くなります
②の数字には、続きがあります。
野村の本・支店の外国株式手数料は、71,000円以下が11.00%、71,000円超75万円以下が7,810円の定額です。ということは、同じ年30万円を1回でまとめて買えば7,810円で済みます。12回に分けると33,336円です。4.3倍になります。
積み立てるという行為そのものが、この手数料表といちばん相性が悪い、ということです。少額を何回にも分けて買う人ほど、料率が跳ね上がります。
私は18年で、一度も変えていません
ここまで書いておいて、正直に書きます。私はNISAの金融機関変更を、一度もやったことがありません。
私のNISA口座はSBI証券です。VOOとQQQを6年持っている特定口座も、同じSBI証券にあります。野村證券にも特定口座がありますが、そちらは従業員持株会の受け皿で、NISAは置いていません。マネックス証券の口座は休眠したままです。
変えなかったのは、面倒だったからではありません。変える理由が、一度も立ち上がらなかったからです。米国ETFはSBIで0円で買えて、投資信託の積立にも差がない。動く先がありませんでした。
ただし、証券会社そのものは乗り換えています
正確に書いておきます。4月29日の記事で、私は「マネックスからSBIに乗り換えた」と書きました。これはNISAの金融機関変更ではありません。使う会社の主軸を移しただけです。
そのとき、マネックスの口座は解約していません。今も休眠したまま残っています。私がこの記事で「口座は増える」と書いているのは、自分がそれをやったからです。
もし私のNISAが野村にあったなら、10月1日に手続きをすると思います。私は米国ETFを買うので、①に当てはまります。上の33,336円は、私が実際に払うことになる金額です。
変更のコストは、手数料ではありません
ここが、この記事の核です。
NISAの金融機関を変えても、保有している商品は移せません。制度上、NISA口座から別のNISA口座への移管はできません。古い口座にそのまま残り、非課税のまま持ち続けることも、売ることもできます。焦って売る必要はまったくありません。
ただし、口座は残ります。変更のコストは手数料ではなく、口座が1つ増えることです。
私の実感を書きます。いま私の手元には、積極的に使っていない証券口座がいくつかあります。困ってはいません。ただ、あまりいい気持ちではありません。どこに何がいくらあるのか、全部を即答できる状態ではないからです。
これは損ではありません。数字にも出ません。それでも、6月20日に書いた「投資のゴール」の方向とは、はっきり逆を向いています。管理する物を増やす方向に進んでいます。
10年後、自分の資産がどこにいくらあるか把握できる自信がある人だけが、変えていいと思います。
「乗り換えは普通のイベント」ですが、「軽いイベント」ではありません
私は4月29日のネット証券の選び方で、「最初の1社は完璧じゃなくていい」「乗り換えは普通に起きるイベント」と書きました。その考えは変えていません。1社目で人生が決まるかのように悩む必要はない、というのは今もそう思います。
ただ、今回8社を並べて分かったことを足しておきます。乗り換えは年に1回しかできず、しかも口座が残ります。普通に起きるイベントですが、軽いイベントではありません。
変える理由がある3種類の人
差額の計算式は、1行です。
年間の米国ETF買付額 ×(今の会社の料率 − 移る先の料率)
私の基準は年1万円です。これを下回るなら、口座を1つ増やす価値はないと考えています。上の②の例は33,336円ですから、はっきり超えます。9月7日の記事で書いたとおり、料率は金額が大きくなるほど下がるので、自分の金額で計算しないと答えは出ません。
手続きで気をつける3点
- 2027年1月の積立が空くことがあります。手続きが年をまたぐと、1月分の買い付けに間に合いません。12月中旬までに終わらせてください(マネックス証券の案内)。
- 古い口座の商品は売らないでください。移管はできませんが、非課税のまま持ち続けられます。「移せないから売る」は、いちばんもったいない選択です。
- 会社ごとの締切を、必ず自分で見てください。楽天は9月15日から今年分が止まります。日興は通知書の郵送に約1週間、大和は電話が起点です。
証券会社の口座そのものの選び方は、6月17日に総コストで比較した記事と4月29日のネット証券の選び方に書いています。あわせて読んでみてください。
私の主軸はSBI証券ですが、証券会社は用途で使い分けるのが合理的です(私の保有=万人への推奨ではありません)。上の表のとおり、米国株の取扱銘柄数ならマネックス証券が8社で最多で、円とドルの両替が往復とも0銭なのは松井証券だけでした。どちらもNISAでインデックス投信を積み立てられます。
よくある不安 Q&A
Q1. 今年もう買っています。2026年分は本当に変えられませんか
変えられません。金融庁の原文は「変更届出書を提出する日以前に、変更前の金融機関のNISA口座で既に上場株式等の受入れをしているときは、その年分についての金融機関の変更はできません」です。売却は関係ありません。買い付けの有無だけで決まります。10月1日から2027年分の手続きをしてください。
Q2. 変えたら、今の口座はどうなりますか
残ります。中の商品は非課税のまま持ち続けられますし、売ることもできます。ただしその口座で新しく買うことはできません。使わない口座が1つ増える、という状態になります。
Q3. 手数料ゼロのネット証券に移したほうが得ではありませんか
投資信託の積立しかしないなら、得にはなりません。差がゼロだからです。米国ETFか1株買いをするなら、上の式で自分の金額を計算してみてください。年1万円に届かないなら、私は口座を増やしません。
Q4. 対面証券は、やめたほうがいいということですか
そうは書いていません。moomoo証券の記事で書いたとおり、手数料だけで証券会社を選ぶと別のリスクを引きます。今回も、大和証券は約2,000銘柄を扱っていました。「対面だから」で決まる話ではなく、自分が何を買うかで決まる話です。
まとめ
- NISAの金融機関を変えられるのは前年10月1日から当年9月30日。今年買い付けていれば2026年分は変えられず、2027年分の受付が10月1日に開きます。
- 「9月30日が締切」は正確ではありません。楽天は9月14日23:59で閉まり、日興は通知書の郵送に約1週間、大和は電話が起点です。書類が動く時間は、制度の日付に入っていません。
- 8社で差が出る取引は「米国ETFの買い付け」と「1株単位の買い付け」の2つだけです。投資信託の積立に差はありません。だから、積立だけの人は変えなくていいのです。
- 変更のコストは手数料ではありません。保有商品は移管できず、口座が1つ増えます。これは損として数字に出ませんが、確実に増えます。
まず、自分が今年NISAで買い付けたかどうかを思い出してください。買っていれば、話は2027年分です。焦る必要はありません。
そのうえで、自分が去年1年間に米国ETFを何円買ったかを見てください。ゼロだったなら、この記事は読み飛ばして大丈夫です。変えるかどうかを決める前に、変える理由があるかを見る。順番はそちらが先です。
手数料はいつか横並びになりますが、増えた口座は横並びになりません。10年後まで残るのは、料率ではなく口座のほうです。
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※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品への投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任のもとで行ってください。過去の実績は将来の成果を保証しません。記事中の数値は2026年9月9日時点のものです。手数料・取扱銘柄数・受付期間は変更されることがあるため、実際の手続き前に各社の公式ページで必ずご確認ください。
本記事は情報提供を目的としており、投資助言・勧誘を目的とするものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

