先に告白しておきます。
私は数十万円分のオルカンを売りました。理由は、遊ぶ金が欲しかったからです。
教育費でも、住宅の頭金でも、医療費でもありません。使いたいから使った、それだけです。そしてそのとき、相場がいくらだったかを見ていません。
「利益確定はいつすればいいですか」という質問に、私はもう相場の話で答えなくなりました。売る理由は、相場の側にはないからです。この記事では、その理由と、止めるときの順番を書きます。
結論:売る理由も止める理由も、相場側にはありません
先に答えを書きます。
利益確定は、相場の都合ではなく家計の都合で決めるものです。
「そろそろ高いから売ろうか」「下がってきたから止めようか」。この考え方には、共通する問題があります。判断の主語が自分ではなく相場になっていることです。
| 売る・止める理由になるもの | 理由にならないもの |
|---|---|
| 使う予定ができた(学費・住宅・車・旅行) | 高くなったから |
| 収入が減った、支出が増えた | 下がりそうだから |
| 必要な金額に届いた | みんなが売っているから |
| 単純に、使いたくなった | ニュースが不安だから |
左の列には、共通点があります。すべて自分の側で起きたことです。右の列は、すべて自分の外で起きたことです。
そして右の列を理由にすると、困ったことが起きます。売り時を他人に決められるようになるのです。
私は「遊ぶ金欲しさ」にオルカンを売りました
ここで、自分の話をします。
私はオルカン(全世界株式のインデックスファンド)を数十万円分、売りました。理由は遊ぶ金が欲しかったからです。
教育費のためでも、住宅資金のためでもありません。書いていて格好がつかないのですが、事実なので正直に書きます。
そのとき、相場は見ていません
大事なのはここです。売るときに、チャートを開いていません。
高いか安いかを考えませんでした。「いま売り時だろうか」とも思いませんでした。使いたい金額が決まっていて、そのぶんを売った。それだけです。
もし相場を見ていたら、たぶん売れませんでした。上がっていれば「もっと上がるかも」と思い、下がっていれば「戻ってから」と思うからです。相場を判断材料にした瞬間、売る決断は永久に先送りになります。
後悔しているかというと、していません
売った後に相場が上がったかどうかは、正直よく覚えていません。それは判断の良し悪しと関係がないからです。
私は「増やすため」ではなく「使うため」に売りました。目的が果たされた以上、その売却は成功しています。
投資の目的は、資産額を最大化することではありません。使いたいときに使えるお金を持っていることです。18年投資を続けてきて、ここだけは変わりませんでした。
かんたん解説:オルカンとは
正式名称は「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」です。世界中の株式にまとめて投資できる投資信託で、これ1本で先進国から新興国まで分散されます。新NISAのつみたて投資枠でも買えます。
そもそも、なぜ長期では上がるのでしょうか
「売らずに持ち続ければ上がる」とよく言われます。ただ、その根拠の説明が雑だと、いざというときに握力が持ちません。
「人口が増えるから」を根拠にしてはいけません
よく見かけるのが「人類が増え続ける限り株価は上がる」という説明です。分かりやすいのですが、この根拠は弱いと考えています。
人口を根拠にすると、答えられない質問が出てくるからです。では人口が減っている日本の株式はどうなのか。人口がピークを迎えた後はどうなるのか。ここで詰まります。
上がる理由は「企業の利益が伸びるから」です
株価の長期的な上昇を支えているのは、人口そのものではなく企業の利益です。そしてその利益は、3つの要素から伸びます。
- 生産性:同じ人数でより多くを作れるようになります。技術がその役割を果たします
- インフレ:物価が上がれば、企業の売上も名目上は増えます
- 再投資:稼いだ利益の一部が次の設備や研究に回り、また利益を生みます
この3つは、人口が横ばいでも成立します。だから私は「人類が増える限り」ではなく、「人類が経済活動をやめない限り」と考えています。
この言い方なら、人口が減る国の企業が最高益を出す現実とも矛盾しません。反論に耐える根拠を持っておくことが、握力になります。
「安く買って高く売る」の土俵から降りました
売る理由を相場に置かないと決めた背景には、もう1つの経験があります。
安く買って高く売る、という技術を私は持っていません。持っていないことを認めるまでに、ずいぶん時間がかかりました。
当てにいくと、勝ち負けの土俵に上がることになります
相場の方向を当てて売買しようとすると、自動的に「当たったか外れたか」で自分を採点することになります。
この採点は苦しいものです。売れば「まだ上がるかも」と思い、売らなければ「あのとき売っておけば」と思う。どちらを選んでも後悔が残る構造になっています。
私はこの構造から降りることにしました。為替の記事でも同じことを書きました。方向を当てる土俵から降りるという考え方です。
降りると何が起きるか。判断の材料が「自分の家計」だけになります。家計は自分で把握できます。相場は把握できません。把握できるものだけで決める、という話です。
相場を理由にすると、売り時は永久に来ません
もう少し踏み込みます。相場を売る理由にすると、構造的に売れなくなります。
考えてみてください。上がっているときに売ろうとすると「まだ上がるかもしれない」と思います。下がっているときに売ろうとすると「戻ってからにしよう」と思います。
つまり上がっても下がっても、売らない理由が用意されているのです。相場を基準にする限り、この2つの言い訳から逃げられません。
実際、私の周りで「利益確定のタイミングが分からない」と言う人は、たいてい上がっているときも下がっているときも売っていません。タイミングを待っているのではなく、基準がないから決められないのではないでしょうか。
家計を基準にすると、ここが解けます。子どもの学費が必要になった、車を買い替えることにした、旅行に行きたくなった。これらはすべて、いつ起きたかがはっきりしています。だから決められます。
止めるときには、順番があります
ここからは積立の話です。
生活が苦しくなったら積立を見直すべきです。これは正しいのですが、いきなり「停止」に飛ぶ人が多すぎます。
私は停止したくなかったので、減額しました
私自身、積立額を減らしたことがあります。そのときも、停止という選択肢は選びませんでした。
積立は続けてこそ価値がある。そう考えていたので、頑張って減額にしました。正直に言うと「頑張って」という表現がぴったりの状況でした。楽ではありませんでした。
それでも止めなかったのは、一度止めると再開の合図がなくなると分かっていたからです。減額なら、毎月の引き落としが続きます。習慣が切れません。
苦しくなったときの順番
| 順番 | やること | この順番にする理由 |
|---|---|---|
| 1 | 減額する | 習慣が切れません。金額は後から戻せます |
| 2 | 最低金額まで下げる | 月100円でも「続いている」ほうが再開しやすくなります |
| 3 | 停止する | ここまで来て初めて止めます。再開の日付を決めておきます |
| 4 | 売却する | 最後の手段です。ただし後述のとおり、詰みではありません |
大事なのは、この順番も相場とは無関係だということです。相場が良かろうが悪かろうが、苦しければ減らします。苦しくなければ続けます。
もう1つ、順番を守る実利があります。売却は4番目にあるという点です。積立を止めるより先に売ってしまう人がいますが、順番が逆です。積立の停止は将来の投資を減らすだけですが、売却はすでに走っている複利を止めます。
売る順番そのものにも設計があります。どの口座から先に崩すかで手取りが変わる話は、金の売却の記事にまとめています。
減額は、思っているより簡単です
実務的な話をします。積立額の変更は、ネット証券なら管理画面から数分で終わります。電話も窓口も要りません。
多くのネット証券では月100円から積み立てられます。つまり「減らす」の下限は、ほとんどゼロに近いところにあります。3万円が苦しいなら1万円に、1万円が苦しいなら1,000円にできます。
ここで効いてくるのが手続きの心理的なコストです。変更が面倒だと感じると、人は「もう止めてしまおう」と極端な方に倒れます。逆に数分で終わると分かっていれば、減額という中間の選択肢を選べます。
減らした後に戻すのも、同じ数分です。減額は決断ではなく調整だと考えてください。
売っても、人生は詰みません
ここまで「売っていい」と書いてきましたが、それを制度が後押ししてくれます。
新NISAの枠は、翌年に戻ります
新しいNISAには、非課税で保有できる限度額が生涯で1,800万円あります(うち成長投資枠は1,200万円まで)。年間の投資枠は、つみたて投資枠120万円と成長投資枠240万円をあわせて年360万円です。
そして重要なのがここです。金融庁の説明にはこう書かれています。
商品を売却した場合、翌年以降売却した商品の簿価(取得金額)の分だけ非課税投資枠が復活し、再利用が可能になります。
つまり売っても枠は消えません。翌年以降に、買ったときの値段(簿価)の分だけ戻ってきます。
これが意味するのは、出口の自由度です。売ったら終わりの制度なら、「売る=失敗」になります。けれど枠が戻るなら、売却は失敗ではなくただの資金移動になります。
私が遊ぶ金のために売れたのも、この制度設計があったからです。
私の実際と、読者への提案は分けて書きます
| 私(筆者)の実際 | 読者への提案 |
|---|---|
| オルカンを遊ぶ金のために数十万円売却。相場は見ていません | 使う目的があるなら売って構いません。目的がないなら売る必要もありません |
| 積立は減額したことがあります。停止はしていません | 苦しいときは、まず減額から。停止は3番目です |
| コロナ暴落では買い増しました(相場で増やした経験はあります) | 下落時の買い増しは余力がある人だけの選択肢です |
| 相場を理由に減らしたことは一度もありません | 相場が理由になりそうなときほど、一度立ち止まってください |
積立額の変更について
減額も再開も、ネット証券なら管理画面から数分で終わります。窓口に行く必要も、誰かに理由を説明する必要もありません。手続きが面倒だと、止めるほうを選んでしまいます。この手軽さ自体が、続けるための仕組みになります。
私の主軸はSBI証券ですが、用途で使い分けています。これから口座を作るなら、積立の設定変更のしやすさも見ておくと後で効きます。
まとめ
- 売る理由も止める理由も、相場側にはありません。あるのは家計側だけです。
- 止めるときには順番があります。まず減額、次に最低額、それから停止、最後に売却になります。
- 新NISAは売っても枠が戻ります。翌年以降に、簿価の分だけ復活します。
いま「そろそろ売ろうか」と考えている方は、一度だけ自分に聞いてみてください。その売却は、家計に何か起きたから考えているのでしょうか。それとも、相場が動いたから考えているのでしょうか。
後者なら、たぶん今日売る必要はありません。前者なら、相場を見ずに売って構いません。
私は遊ぶ金のために売りました。格好はつきませんが、後悔はしていません。使うために貯めてきたお金を、使いたいときに使えたのですから、これ以上の結果はありません。
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※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任のもとで行ってください。NISAの制度内容は2026年8月時点のもので、最新の情報は金融庁のサイトでご確認ください。
本記事は情報提供を目的としており、投資助言・勧誘を目的とするものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
