米国債のストリップ債と利付債の比較|リスク・リターンを徹底解説

米国債のストリップ債と利付債の特徴を示す比較チャート 投資戦略・制度

日銀が金利を引き上げたのを受けて、改めて米国債を比べてみた。米国債には2種類ある——利払いのないゼロクーポン債(ストリップ債)と、半年ごとに利息が入る利付債だ。

残存期間と利回りが同じなら、どちらが有利なのか。答えは「投資目的と税制の扱い次第」だ。ただし筆者はゼロクーポン債派で、その理由は明確にある。

2つの米国債の基本的な違い

項目 利付債(クーポン債) ゼロクーポン債(ストリップ債)
購入価格 額面近辺 大幅ディスカウント(例:額面100を30で購入)
途中のキャッシュフロー あり(半年ごとに利息) なし
再投資リスク あり(利息の再投資先で利回りが変動) なし(複利が購入時点で確定)
満期時の受取 額面(利息は途中で受取済み) 額面(差額が丸ごとリターン)
金利変動への感応度 中程度 高い(デュレーションが長い)
利付債 vs ゼロクーポン債 基本比較(筆者作成)

最大の違いは「税金の扱い」だ

この2つの本質的な差は、税金のかかるタイミングだ。

利付債は半年ごとに利息を受け取るたびに20.315%が源泉徴収される。毎月分配型ファンドに近い構造だ。受け取るたびに課税されるため、手取りを再投資しても「税引き後」の金額からの複利スタートになる。トータルで払う税金が多くなり、最終的な受取額も少なくなる。

ゼロクーポン債は満期(または売却)まで課税されない。その間、税引き前の金額がそのまま複利で増え続ける。課税繰延の効果が、長期になるほど大きく効いてくる。

課税繰延の効果(100万円・年利5%・30年・税率20.315%)

ゼロクーポン債(満期一括課税)→ 税引後 約346万円

利付債(毎回課税・同利率再投資)→ 税引後 約321万円

→ 30年で約25万円の差。期間が長く利率が高いほど差は拡大する

実際のシミュレーション比較(2025年1月時点)

条件:160万円(約1万ドル)・利回り4.57%・為替1ドル156円

種別 満期受取総額 運用益 備考
ゼロクーポン債 3,120,400円 +1,599,205円 途中の課税なし
利付債 2,661,596円 +1,073,416円 半年ごとに約24,000円の利払いあり
差額 458,804円 525,789円 ゼロクーポン債が多い
2025年1月時点のデータで筆者が試算。為替・金利は変動するため参考値

どちらが誰に向いているか

タイプ 向いている債券 理由
高齢者・年金生活者 利付債 半年ごとの利息が生活費の補填になる。今お金が入ることの価値が課税繰延の恩恵を上回る
長期保有できる人 ゼロクーポン債 課税繰延+複利確定の効果が長期で効く。満期まで寝かせられるなら圧倒的に有利
途中売却の可能性がある人 利付債 ゼロクーポン債は金利上昇局面で途中売却すると価格が大きく下落するリスクがある
投資家タイプ別の向き不向き(筆者作成)

鉄則:公定歩合が高い時に買う

ゼロクーポン債・利付債ともに、買った時点で満期までの利回りが確定する。つまり、政策金利(公定歩合)が高い局面で仕込むのが鉄則だ。

特にゼロクーポン債では、この判断の精度が最終リターンを決定的に左右する。利付債なら半年ごとの利息を、その後の高金利環境で再投資できる余地があるが、ゼロクーポン債は購入時の金利が30年間ロックされる。

FRBが利下げに転換する前——長期金利がピーク圏にある局面——が、ゼロクーポン債の最も合理的な仕込みどきだ。

筆者が米国債(ストリップス債)を見送った経緯

実は、米国債を買おうと思って、SBI証券で連日調べた時期がありました。狙っていたのはゼロクーポン債(ストリップス債)で、残存期間15年から20年強のものです。

少し用語の補足をします。

ゼロクーポン債(ストリップス債)とは、途中の利払いがない債券のことです。額面より割り引かれた価格で買い、満期(償還日)に額面の100%が戻ってきます。たとえば額面100ドルの債券を45ドルで買い、20年後に100ドルで償還される、というイメージです。差額の55ドルが、20年間の利息に相当します。

既発債とは、すでに発行されて市場で流通している債券のことです。SBI証券で個人が買える米国国債のほとんどは、この既発債です。新発債(新規発行の債券)は、米国の入札制度を通じて発行されるため、日本の個人投資家には基本的に出回りません。

狙っていた条件と、現実の利回り

私が探していたのは、年率5%以上の利回りを得られる長期ゼロクーポン債でした。しかし、いくら探しても5%以上の銘柄は見つかりません。

これは私の感覚の問題ではなく、市場の現状と整合します。SBI証券の公式情報によれば、2025年10月時点で残存約20年の米国国債(ストリップス債)の最終利回りは約4%前後でした(出典: SBI証券「じぶん年金をつくろう〜米国国債(ストリップス債)のおすすめ運用手法!」2025年10月)。

つまり、長期金利がさらに上昇する局面が訪れない限り、5%という条件はまず手に入らないと判断しました。

「債券は安定」のイメージは正確ではない

債券について「株と違って値動きが穏やかで安定している」と書かれることがあります。確かに短期債(残存期間が数年程度の債券)はそうです。しかし、長期のゼロクーポン債は別物です。

ここも補足します。債券の価格は、市場金利が上がると下落し、市場金利が下がると上昇します。これは利付債もゼロクーポン債も同じです。ただし、残存期間が長い債券ほど、金利変動による価格変動が大きくなります。

実例として、2022年に米国の長期金利が急上昇した際、長期米国債ETF(TLTなど)は一時マイナス30%超の下落を経験しました。S&P500の同年下落幅(マイナス18%程度)を上回る下げ幅です。「債券は安全」という一般的なイメージとは、現実が違うことが分かります。

満期まで持ち切れば額面100%で戻ってくるとはいえ、途中の評価額は大きく動く。ゼロクーポン債を保有している間、何度も含み損を見ることになる可能性があります。

インフレリスクという根本問題

仮に5%の利回りが手に入ったとしても、もう一つ大きな問題があります。インフレリスクです。

固定金利の債券は、満期まで「決まった金額」しか返ってきません。20年後に額面100ドルが戻ってきても、その間に物価が2倍になっていたら、購買力としては半分になっているわけです。

私が米国債を見送った最大の理由は、ここにあります。今後20年でインフレが激しく進む可能性がそれなりにあると考えているからです。アメリカの財政赤字、日本の円安基調、世界的な金融緩和の余波を見ると、過去30年のような低インフレ環境が続く保証はありません。

変動金利の債券であれば、インフレに合わせて利率が見直されるため、ある程度はリスクを吸収できます。しかし、固定金利の長期ゼロクーポン債は、インフレが進むほど実質的な価値が削られていきます。

結論: 資金があっても、今は買わない

正直なところ、資金に余裕があれば一部買ってみるのも面白いとは思います。米ドル建てで20年後に確実に額面が戻ってくる商品は、ポートフォリオの安定資産として一定の役割を果たすからです。

ただ、現状は次の3つの理由で見送りました。狙った利回り(5%以上)の銘柄が見つからない、長期ゼロクーポン債は途中の価格変動が大きい、固定金利のためインフレが進むほど不利になる、という点です。

代わりに、株式インデックス(VOOやS&P500投資信託)で運用しています。インデックスはインフレを織り込んで企業利益が伸びる傾向があるため、長期では債券よりインフレ耐性が高いと考えているからです。

ゼロクーポン債が悪い商品というわけではありません。残存期間や金利水準、自分の投資目的との相性次第です。私の場合は、現時点では条件が合いませんでした。

筆者の結論

筆者はゼロクーポン債派だ。理由は3つある。

  1. 満期まで税金がかからない——課税繰延の効果を複利でフル享受できる
  2. 複利が購入時点で確定する——再投資リスクがゼロ。仕組みがシンプルでわかりやすい
  3. 長期で寝かせておける資金に最適——老後資金・教育資金など「ゴールが明確な資金」に向いている

利付債は「今すぐお金が必要な人」や「途中で売却する可能性がある人」には合っている。高齢者で年金収入がある人が生活費の補填として使うなら理にかなった選択だ。

いずれにせよ、金利が高い今の環境は米国債を検討するには悪くないタイミングだ。リスクは為替だけが問題になる——それは「神のみぞ知る」領域だが。

より詳しい100銘柄ランキングと最適投資ゾーンの解説はこちら → 米国債投資 徹底比較|ゼロクーポン債 vs クーポン債【ランキング&最適ゾーン解説】

【免責事項】
本記事は情報提供を目的としており、投資助言・勧誘を目的とするものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
この記事を書いた人
hiro

投資歴2007年から約18年。VOO・QQQ・金(GLDM)・eMAXIS Slim S&P500・オルカン・個別株を保有。「絶望買い×インデックス投資」で暴落局面こそ買い増すスタイル。長期的なアメリカ経済への信頼を軸に運用しています。AI×投資で資産運用ツールを開発中。完成次第フリーで公開予定。

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