S&P500に投資している人が、いま一番よく目にする数字があります。上位10社だけで、指数全体の37.64%という数字です(2026年8月11日時点)。
500社に分散しているつもりが、実質は10社に賭けているのではないか。そう感じた方は多いと思います。
その受け皿として名前が挙がるのが、500社を全部同じ比率で持つETFです。しかも2026年に入ってから、そちらのほうが成績で勝っています。
乗り換えたくなる年です。だから私は、23年分のデータを自分で計算しました。この記事では、その結果と、それでも私が乗り換えない理由をお伝えします。
結論:私は等加重に乗り換えません。理由は3つです
先に結論から書きます。
比較する2本を先に決めておきます。
1本目はVanguard S&P 500 ETF、通称VOOです。500社を、会社の大きさに応じた比率で持ちます。
2本目はInvesco S&P 500 Equal Weight ETF、通称RSPです。同じ500社を、全部同じ比率で持ちます。
このVOOからRSPへ、私は乗り換えません。
理由は3つです。
1つ目は、23年通算でほぼ引き分けだったからです。RSPが登場した2003年5月から2026年8月までの年率は、RSPが11.00%、S&P500側が11.36%でした。差は0.36ポイントしかありません。
2つ目は、等加重が「広い分散」ではなく「別のベット」だからです。全部同じ比率にするという行為は、中小型の会社に多く賭ける行為と同じ意味になります。分散が増えるのではなく、賭ける対象が変わります。
3つ目は、引き分けの勝負に払う通行料が7倍から18倍になるからです。VOOの経費率は年0.03%です。RSPは年0.20%、日本の投資信託で買うと年0.53%になります。
ここから先は、この3つを数字で分解していきます。
RSPとは何か——同じ500社を、全部0.2%ずつ持つETF
まず、RSPがどういう商品かを整理します。怪しい商品ではありません。むしろ、よくできた商品です。
中身はS&P500と同じ500社です
RSPが持っている会社は、VOOと1社も違いません。どちらもS&P500の構成銘柄そのものです。
違うのは比率だけです。VOOは会社の大きさ(時価総額)に応じて比率を決めます。RSPは500社すべてを一律0.2%にします。500分の1が0.2%だからです。
年4回、全部を0.2%に戻します
株価は毎日動きます。ですから放っておくと、比率は0.2%から離れていきます。
そこでRSPは四半期ごと、つまり年4回、全銘柄を0.2%に戻す作業をします。これがリバランス、つまり比率の再調整です。この年4回の作業こそが、後で出てくるコストと構造の話の出発点になっていきます。
規模とコストは、まともな水準です
| 項目 | VOO | RSP |
|---|---|---|
| 中身 | S&P500の500社 | S&P500の500社(同一) |
| 比率の決め方 | 会社の大きさに応じて自動 | 全社0.2%ずつ |
| 比率を戻す作業 | 原則なし(自動追随) | 年4回 |
| 経費率(年) | 0.03% | 0.20% |
| 純資産総額 | 約9,974億ドル | 約1,000億ドル |
純資産が約1,000億ドルというのは、ETFとして十分な規模です。いきなり運用が終わる心配をする水準ではありません。
つまりRSPは、選択肢として真面目に検討する価値のある商品です。私が乗り換えない理由は、商品の質とは別のところにあります。
23年の成績——期間で答えが反転します
ここが、この記事で一番お伝えしたい部分です。
「等加重と時価総額加重、どっちが勝つのか」という問いには、切り取る期間によって正反対の答えが出ます。
最初の10年は、等加重の圧勝でした
RSPが登場したのは2003年5月です。そこから10年間の年率は、RSPが9.81%、S&P500側が7.47%でした。等加重が2.34ポイント勝っています。
この10年だけを見せられたら、等加重が優れていると結論したくなります。
直近10年は、時価総額加重の圧勝です
ところが2016年8月からの10年間は、逆になります。RSPが12.17%、S&P500側が15.41%です。今度は時価総額加重が3.24ポイント勝っています。
通算すると、ほぼ引き分けになります
23年3か月を通しで計算すると、RSPが11.00%、S&P500側が11.36%になります。ほぼ引き分けです。
年ごとに見ると、揺れの大きさが分かります
| 期間 | RSP(等加重) | VOO(時価総額加重) | 勝者 |
|---|---|---|---|
| 2026年(年初来) | 13.38% | 12.85% | RSP |
| 2025年 | 11.18% | 16.39% | VOO |
| 2024年 | 17.66% | 26.31% | VOO |
| 2023年 | 4.95% | 20.76% | VOO |
| 過去5年(年率) | 9.99% | 14.12% | VOO |
| 過去10年(年率) | 12.16% | 15.48% | VOO |
2023年は15ポイント以上の差でVOOが勝ちました。その2年後の2026年は、RSPが勝っています。
この揺れが、等加重の本質です。安定して勝つのではなく、勝つ年と負ける年が交互に来ます。
「どちらが優れているか」は、質問の形が間違っています
ここまでの数字を並べると、ひとつのことが見えてきます。
等加重が勝った最初の10年と、時価総額加重が勝った直近10年。この2つは、大きい会社が伸びた時代か、そうでない時代かの違いだと私は考えています。
つまり「等加重と時価総額加重、どちらが優れているか」という問いは、相場予想を言い換えただけではないでしょうか。次の10年で大きい会社と小さい会社のどちらが伸びるか、を当てにいく行為と同じ意味になります。
私は相場予想をしません。ですから、この問いに答えを出す立場を取りません。答えを出さずに済む側、つまり市場が決めた比率に乗る側を選んでいます。
違いはリターンではなく、構造にあります
成績がほぼ引き分けなら、判断の材料は成績ではありません。中で何が起きているかです。
時価総額加重は「選ばない」仕組みです
VOOのような時価総額加重には、比率を決める人がいません。会社が伸びれば、その会社の比率は勝手に上がります。縮めば勝手に下がります。
私はこの仕組みを、こう理解しています。伸びる企業に多く投資するのは、普通に考えて理にかなうやり方です。小さな会社が成長すれば、その会社への投資も自動で増えていきます。誰かが判断する必要はどこにもありません。
インデックスファンド(市場全体に自動で分散投資できる金融商品)が安い理由も、ここにあります。以前に書いた記事で整理したとおり、安さの源泉は「選んでいないこと」です。
等加重は「年4回選ぶ」仕組みです
一方でRSPは、四半期ごとに全銘柄を0.2%へ戻します。この作業を具体的に言い換えると、こうなります。
値上がりした会社を売り、値下がりした会社を買い戻す。これを年4回、機械的に繰り返します。
逆張りを自動でやってくれる仕組み、と言うこともできます。ただし裏を返すと、インデックス投資が安かった理由そのものを、わざわざ捨てていることになります。
等加重の実体は、中小型への傾斜です
500社を同じ比率にすると、何が起きるでしょうか。
時価総額7.92%のNVIDIAも、指数の中で小さい会社も、同じ0.2%になります。つまり相対的に、小さい会社の比重が上がります。
これは「分散が広がった」のではありません。大型株から中小型株へ、賭ける対象を移したという意味になります。分散が増えたように見えて、実際には別のベットへ乗り換えている、というのが私の理解です。
年4回の売買は、経費率の外側にもコストを生みます
もうひとつ、表に出にくい話を書いておきます。
時価総額加重のETFは、比率が勝手に動くので、売買をほとんど必要としません。一方で等加重のETFは、年4回、全500銘柄を売り買いして比率を戻します。
売買には、売値と買値の差(スプレッド)や執行の手数料がかかります。これらは経費率0.20%という表示の外側で発生する費用です。
ですから実際の負担は、表示されている経費率よりわずかに大きくなると考えられます。金額としては大きくないかもしれません。ただ、「選ばない」設計にはそもそも存在しなかった費用である点は、知っておいて損がないと思います。
関連書籍
「インデックス投資は勝者のゲーム」— 時価総額加重という考え方が、なぜ「選ばない」設計になっているのか。その原典です。等加重を検討する前に読むと、比較の軸が定まります。
通行料の解剖——0.03%と0.53%の距離
ここまでで、成績はほぼ引き分け、構造は別物だと分かりました。最後にコストを見ます。
買い方によって、通行料は4段階に分かれます
| 商品 | 形態 | 年あたりのコスト | VOOとの差 |
|---|---|---|---|
| VOO | 米国ETF | 0.03% | — |
| RSP | 米国ETF | 0.20% | 約7倍 |
| MAXIS S&P500均等ウェイト上場投信 | 東証ETF | 0.22% | 約7倍 |
| インベスコ S&P 500イコール・ウェイト・ファンド(愛称:均等力) | 日本の投資信託 | 0.53% | 約18倍 |
私が投資信託を選ぶときの基準は、年0.2%が限界、できれば0.1%以下です。RSPはちょうど限界の位置にあります。日本の投資信託で買う均等力は、その2倍以上になります。
15年10か月で、実際にどれだけ差がついたか
VOOが登場した2010年10月から2026年8月までを実測しました。100万円を置いておいた場合の結果です。
VOOは870万円、RSPは658万円でした。差は213万円です。
ここで正直に補足します。この213万円は、コストの差だけで生まれたものではありません。この15年10か月は、たまたま時価総額加重に有利な期間でした。構造の差とコストの差の、合計です。
ですから「コストが7倍だから213万円損する」という説明は正確ではありません。正確に言えるのは、コストの差は確実に効き、構造の差は期間次第で反転するということです。
確実なほうを取るのか、反転に賭けるのか。判断はここで分かれます。
正直に言うと、私は等加重を検討すらしませんでした
ここまで数字を並べてきましたが、私自身の話を正直に書きます。
VOOは、哲学で選んだのではありません
私は投資歴18年で、VOOをコロナショックの2020年から6年持っています。ただ、VOOを選んだ理由は哲学ではありませんでした。
調べていたら、VOOにたどり着きました。単純に人気投票で上位だったからです。そして海外駐在の方たちが、VOOかそれに近いものを買っていました。私はそれに飛び乗っただけです。
勝っている人の真似をしました。それ以上でも以下でもありません。
等加重には、たどり着きませんでした
ですから正確に書くと、私は等加重を「検討して捨てた」のではありません。検討の土俵にすら上げていませんでした。
この記事を書くために、18年目にして初めて等加重を真剣に調べました。そして分かったのは、飛び乗った判断が結果的に正しかった、ということです。
調べれば調べるほど、VOOの優秀さが分かりました。全米に賭けるという意味では、等加重はやはり不利だと私は考えます。
上位10社37%を、私は怖いと思っていません
最後に、この記事の出発点だった集中の話に戻ります。
NVIDIAが7.92%、Appleが6.74%、Microsoftが5.63%です。そこにAlphabet(通称:google)の5.47%、Amazonの4.01%が続きます。上位10社を足すと37.64%になります。
この数字を、私は「これが市場の答え」として受け止めています。誰かが恣意的に決めた比率ではありません。世界中の投資家が売り買いした結果、そこに落ち着いた比率です。
怖いから比率を人の手で均す、という発想を私は取りません。市場が出した答えを、そのまま受け取ります。
それでも等加重を選びたい方へ——買い方は3つあります
ここまで私の結論を書いてきましたが、等加重を選ぶことが間違いだとは考えていません。
等加重が合理的になるのは、次のような場合ではないでしょうか。上位数社への集中がどうしても受け入れられない場合。あるいは、次の10年は2003年からの10年のように中小型が伸びる、と自分で判断している場合です。
その場合の買い方は3つあります。コストは前の章の表のとおりです。
- RSP(米国ETF・年0.20%)…ドルのまま持ちたい方、すでに米国株の口座がある方に向いています。
- MAXIS S&P500均等ウェイト上場投信(東証ETF・年0.22%)…円のまま、日本株と同じ感覚で売買したい方に向いています。
- 均等力(日本の投資信託・年0.53%)…新NISAの成長投資枠で毎月積み立てたい方に向いています。コストは最も重くなります。
3つのうちどれを選んでも、中身は同じ指数です。違うのは、通行料と買いやすさの組み合わせだけと考えてよいのではないでしょうか。
私の保有と、読者の方の選択肢は分けて考えてください
| 観点 | 私(投資歴18年)の実際 | これから始める方への考え方 |
|---|---|---|
| S&P500の持ち方 | VOOを2020年から保有。等加重は未保有 | 円建ての投資信託(eMAXIS Slim 米国株式など)で十分 |
| 上位集中への対処 | 株式の中では対処しません。金(ゴールド)など別の資産で受けています | まず「どこまで下がったら不安か」を決めるほうが先です |
| 等加重の評価 | 買いません。ただし商品としては真面目に評価しています | 選ぶなら「別のベット」だと理解した上で |
上位集中が怖いという気持ちは、否定するつもりがありません。ただ私の場合は、その不安を株式の中で解決しようとはしていません。株式は株式のまま持ち、別の資産で受けています。
選択肢を自分の目で並べたい方へ
この記事の結論は「私はVOOを持ち続けます」です。ですが、その判断は自分の口座で選択肢を並べて初めて自分のものになります。米国ETFを実際の画面で比べたい場合、米国株の取扱いに強い証券会社があると確認が早く済みます。
まとめ
この記事でお伝えしたことを整理します。
- 等加重と時価総額加重の23年通算は、11.00%と11.36%でほぼ引き分けです。最初の10年は等加重が勝ち、直近10年は時価総額加重が勝ちました。期間で答えが反転します。
- 等加重は「広い分散」ではなく「中小型への別のベット」です。全社を同じ比率にする行為が、賭ける対象を変えています。
- コストは0.03%から0.53%まで、買い方で18倍の開きがあります。リターン差は期間で反転しますが、コスト差は毎年確実に効きます。
まずは、ご自身が持っているS&P500の商品の上位10社比率を、一度だけ確認してみてください。その数字を見て「これが市場の答えだ」と思えるなら、乗り換える必要はありません。どうしても落ち着かないなら、そのときに等加重を検討材料に加えれば十分です。
集中が怖いという感情は正しいものです。ただ、その感情の受け皿が株式の中にあるとは限りません。
動画版もあります(約14分)
この記事の内容を、5章に分けて音声で解説しました。等加重が勝った10年と負けた10年、通行料の階段まで、画面を見なくても分かるように話しています。
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※本記事のリターン数値は、Yahoo Financeの月次調整後終値(配当込み)をもとに筆者が計算したもので、2026年8月14日時点のものです。経費率・純資産総額は2026年8月時点の公表値です。為替の影響は含めていません。過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品への投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任のもとで行ってください。
本記事は情報提供を目的としており、投資助言・勧誘を目的とするものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
