4月の「あと0.054%」から5か月。表面の5%は来て、私はまだ米国債を買っていません
米国債の話を書きます。最初に正直に書くと、私はいまも米国債を保有していません。注文も出していません。
この記事の最初の版は、2026年4月30日に書きました。そのときSBI証券で買える米国ストリップス債の最高利回りは4.946%。私は「最低でも年利5%」を購入ラインにしていたので、「あと0.054%。私は待ちます」と書きました。
その5%は、1か月もしないうちに来ました。5月22日に5.111%が出ています。そして2026年9月11日時点では、SBI証券のストリップス債46本のうち25本が表面利回りで5%を超え、最高は5.363%(2048年5月15日償還・残存21.7年)です。
それでも、私は買っていません。理由は、4月に書いた「5%」が税引前の数字だったからです。
ストリップス債の利益には、満期に20.315%の税金がかかります。いまの最高5.363%も、税引後の年率に直すと4.65%です。5月に私はラインを「税引後で5%」と定義し直しました。表面の利回りでいうと、およそ5.7%です。
9月11日時点で、そのラインまで税引後であと0.35%ポイントあります。
この記事では、ストリップス債とクーポン債の違いを基礎から整理したうえで、9月のSBI証券のデータで2つを並べ直します。税引後で並べ直すと、4月に書いた「短期ならクーポン」という棲み分けも変わりました。
4月から9月までの経緯は、次の3本に書いています。
- 5月:米国債ストリップス債、5.111%が来た日——「規律を動かさない」と書いた私が出した答え
- 8月:米国債30年が利回り5.2%、19年ぶりの高さでも私が買わない理由
- 8月末:利上げ観測が強まった日、米国債30年の利回りは下がりました——私の指値5.7%まであと0.53%
なぜ「5%」なのか — 4つの根拠
5%という数字には、4つの背景があります。4月の版では3つでした。4つ目の「税」を、あとから足しています。
① 株式の「4%ルール」を明確に上回りたい
FIRE運動で有名な「4%ルール」は、株式ポートフォリオから毎年4%を取り崩しても、長期では資産が枯れにくい、という研究結果です。これを裏返すと、株式の長期実質リターンの安全圏が約4%ということでもあります。
もし米国債に資金を振り分けるなら、この4%を明確に上回る利回りが欲しい。そうじゃないと、わざわざ債券に置き換える意味が薄い。1%程度のクッションを上乗せして、5%を最低ラインに置いています。
② インデックス投資の長期平均と並ぶ・上回りたい
S&P500の長期平均リターンは年7〜10%と言われますが、悪い年も含めて長く慣らせば、おおよそ年5%程度の実質リターンに収まると言われます(過去データの話で、未来を保証するものではありません)。
米国債を買うとは、本来株式に投資できる資金を、その期間ずっと債券に振り向けるということ。インデックス投資の長期平均と並ぶ、もしくは上回らないと、機会費用としての旨みが薄い。これが2つ目の理由です。
③ 米国債は「価値を生まない商品」だから、プレミアムが必要
これは大事な視点なので少し丁寧に書きます。米国債は、米政府が発行する借金です。つまり、新しい価値を生む経済活動の対価ではありません。
一方、株式は、企業が事業活動を通じて価値を生み出した結果として配当や株価上昇をもたらします。生産的な活動の対価です。
つまり米国債は本質的に「価値を生まない、ディフェンシブな商品」。だから、価値を生む株式と同程度の利回りなら、株式の方が魅力的になってしまう。
たとえば米国の高配当株ETF(VYM・HDV・SPYDなど)は、年3〜4%の配当に加えて株価成長の余地もあります。「定期的に現金が欲しい」が目的なら、米国債のクーポンより高配当株のほうが合理的です。成長性ゼロのディフェンシブ商品より、成長性のある配当商品が良いに決まっている。
米国債を選ぶなら、この「価値を生まないというハンディ」を補って余りあるプレミアムが乗っていないとおかしい。だから5%超え、というのが私の結論です。4月の4.9%では、まだ「価値を生まないハンディ」の方が勝っていました。
④ 税——4月に書いた5%は、税引前でした
ここは正直に書きます。4月の版で、私は表面の利回りと、税金を引いた後の利回りを区別していませんでした。
①〜③の根拠は、どれも「自分の手取り」で考えるべき話です。4%ルールは手取りの取り崩しの話ですし、S&P500との比較も手取りで比べるのが筋です。それなのに、比べる相手の米国債だけを税引前の数字で見ていました。
投資歴18年で、表面と手取りを混ぜていた。いま読み返すと、恥ずかしいくらい生っちょろい書き方でした。
ストリップス債を特定口座(源泉徴収あり)で満期まで持つと、償還差益(買った値段と、満期に戻る額面との差)は「上場株式等に係る譲渡所得等」として20.315%が源泉徴収されます(国税庁 No.1510)。為替の差益も含めて、円で計算されます。
では、表面5%は税引後でいくらになるのか。次のグラフです。
ストリップス債なら、表面5%は30年持っても税引後4.41%、10年なら4.15%です。4%ルールは上回りますが、「1%のクッションを乗せて明確に上回る」には届きません。
右端の3.98%は、5%に0.79685を掛けただけの数字です。これは毎年利息を受け取り、そのたびに課税される場合の計算で、ストリップス債には当てはまりません。ストリップス債は満期まで税金が先送りされるので、年率にすると税の効きが薄まります。
税の先送りは、30年で約42万円の差になります
この「先送り」がどれくらい効くのか。100万円を年5%で30年運用した場合で比べます。
| 税金のかかり方 | 30年後の税引後の受取 |
|---|---|
| ストリップス債(満期に1回だけ課税) | 約365万円 |
| 利息を毎年受け取り、そのたびに課税して再投資 | 約323万円 |
同じ5%でも、税金をいつ払うかだけで約42万円違います。これが、私がストリップス派である理由の土台にあります。
だから5月に、ラインを「税引後5%」に置き直しました
5月22日に5.111%が出たとき、私はこの計算をして、買いませんでした。税引後で4.47%だったからです。そのとき、ラインを「税引後で5%」と定義し直しています。
ただし、税引後5%に必要な表面の利回りは、残りの年数で変わります。
| 満期までの年数 | 税引後5%に必要な表面の利回り |
|---|---|
| 10年 | 約6.00% |
| 15年 | 約5.87% |
| 20年 | 約5.78% |
| 25年 | 約5.70% |
| 30年 | 約5.63% |
私が「表面およそ5.7%」と書いているのは、残存25〜30年のストリップス債を想定した数字です。10年なら6%近く要ります。「米国債は5.7%から」とだけ覚えると、短い年限で足りなくなります。
表面利回りと年数を入れて税引後の年率を出す計算機は、8月の記事に置いてあります。
クーポン債とストリップス債の違い(基本構造)
米国債を買うとき、大きく2種類あります。専門用語を使わず、貯金のたとえで仕組みを書いてみます。
クーポン債(利付債)— 毎年利息をもらいながら満期を待つタイプ
たとえば、額面100ドル・利率4%のクーポン債を98ドルくらいで買ったとします。
- 毎年4ドルの利息(クーポン)が口座に入ってくる
- 満期が来ると100ドルが戻ってくる
銀行の定期預金で「毎年利息をもらいながら、満期に元本が戻る」感覚に近いです。途中で現金が入ってくるので、定期収入が欲しい人向け。
ストリップス債(ゼロクーポン債)— 安く買って、満期にまとめて受け取るタイプ
同じ額面100ドルのストリップス債を、たとえば30ドルで買ったとします。
- 途中の利息はゼロ。買ってから満期まで、何ももらえない
- でも満期になると、100ドルが戻ってくる
つまり「30ドル払って、寝かせていたら100ドルになる」という構造です。途中の利息がない代わりに、買値が大幅に安い。「割引券で買って、満額で精算される」とイメージするとわかりやすいかもしれません。
違いを一言でまとめると:
- クーポン債 → 途中で利息を受け取りながら、満期に額面を受け取る
- ストリップス債 → 途中は何もなし、満期にまとめて額面を受け取る
どちらの商品も、米国財務省の信用力という土台は同じ。違いは「お金の受け取り方」だけです。あとは、どちらが自分の投資スタイルに合うかの話になります。
米国債の魅力と、私が見ているリスク
米国債は、世界で最も信用力の高い金融商品のひとつです。発行体は米国財務省。元利金の支払いは米ドル建てで保証され、信用リスクは事実上ゼロに近い。
ただ、日本人投資家から見ると、米国債には2つの大きなリスクが常につきまといます。
- 為替リスク:満期で受け取るのは米ドル。円安なら得、円高なら損。30年寝かせる前提なら、為替の振れは無視できません
- 金利リスク:保有中に金利がさらに上がれば、市場価格は下落します(満期まで持てば額面で戻りますが、途中売却なら損する可能性あり)
未来の金利は誰にも見えません。だから私は、「いま入る入口の金利」が高ければ高いほど安心、というシンプルな指標で見ています。それが「税引後で5%」という個人的ライン。理屈というより、自分が後悔しないための心理的バーです。
私がストリップス派の3つの理由
① 複利が「自動で」効く
ストリップス債は、内部で利息が再投資されているのと実質同じ構造です。買った瞬間から満期まで、何もしなくても複利で増えていく。
クーポン債で同じ複利効果を得ようとすると、半年ごとに受け取るクーポンを同じ利回りで再投資する必要があります。でも、その時の金利が下がっていれば、再投資できる利回りも下がる。これを再投資リスクと呼びます。ストリップス債にはこのリスクが構造的に存在しません。
② キャッシュフロー管理がシンプル
クーポン債だと、半年ごとに少額の米ドルが口座に入ります。これを「再投資する」「為替で円転する」「次のクーポン債を買う」など、何かしらアクションが必要です。
ストリップス債なら、買って寝かせて、満期日に一度だけ受け取るだけ。「ほったらかし」と最も相性が良いのがストリップス債です。
③ クーポンが欲しいなら、別の商品で十分
毎年現金が入ってくる魅力はわかります。ただ、それが目的なら米国の高配当株ETF(VYM・HDV・SPYD等)のほうが合理的だと私は思っています。前の「根拠③」で書いたように、ディフェンシブな債券より、成長性のある配当商品のほうが魅力的だからです。
クーポン債は、株と債券の2つの間に挟まる中途半端なポジションに見えてしまう。これが、私がストリップス派になる3つ目の理由です。
なお、高配当ETFは新NISAとの相性が銘柄ごとに違います。HDVは新NISAの成長投資枠から外れました。4本の違いはVYM・HDV・SPYD・DVYの比較にまとめています。
簡易計算式(自分で利益を計算してみる)
SBI証券の販売ページを見るたびに数字が変わります。最新の価格で自分の利益を概算する式を覚えておくと便利です。
ストリップス債の場合
受取倍率 = 100 ÷ 単価 利益(額面$100あたり) = 100 − 単価 円換算利益 = 利益 × 為替レート × 投資数量
例:単価30で買うと、満期に約3.33倍になって戻る。$1,000投資すれば約$3,333(為替を考慮しなければ)。
クーポン債の場合(再投資なし・単純合計)
受取総額(額面$100あたり) = 利率% × 残存年数 + 100 利益(額面$100あたり) = 受取総額 − 単価
※クーポンを再投資しない前提の単純計算。実際の利回り(YTM)は再投資込みなので、表の「利回り」を使うほうが比較には正確です。
100万円シミュレーションの簡易式
【ストリップス債】 満期受取(円) = 100万円 × (100 ÷ 単価) 例:単価31.77のストリップス → 100万円 × (100 ÷ 31.77) ≈ 約315万円 【クーポン債】(再投資前提) 満期受取(円) = 100万円 × (1 + 利回り%)^ 残存年 例:利回り5.303%・残存24.0年 → 100万円 × (1.05303)^24.0 ≈ 約344万円 【税引後】 税引後の利益 = 利益 × (1 − 0.20315) 例:単価31.77のストリップス → 利益215万円 × 0.79685 ≈ 約171万円 税引後の受取は 100万円 + 171万円 ≈ 約271万円
※ 為替が買ったときと満期で同じ、という前提の概算です。4月の版は1ドル=150円で固定していましたが、2026年9月11日の三菱UFJ銀行の仲値(TTM)は154.65円です。為替が買ったときと同じなら、受取の倍率はレートに関係なく同じになります。実際には為替変動・手数料がかかります。
【2026年9月・SBI証券】ストリップス債 残存期間別ベスト5
「単純に利回り順」で並べると、20年代後半の銘柄ばかりが並びます。それでは比較になりません。残存期間が長いほど金利変動・為替変動・人生イベント変動のリスクが累積するので、最高利回り=最適とは限らないからです。
ここでは残存期間の帯ごとに、それぞれの最高利回り銘柄を選びました。「自分が何年寝かせられるか」「どんな目的で寝かせるか」を起点に選んでください。9月版では、右端に税引後の年率を足しています。
| 残存帯 | 償還日 | 残存 | 単価 | 利回り | 100万円→満期受取 | 利益(目安) | 想定用途 | 税引後の年率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 短期(5〜10年) | 2036/5/15 | 約9.7年 | 63.53 | 4.750% | 約157万円 | +約57万円 | 教育費・近未来資金 | 約3.93% |
| 中期(10〜15年) | 2041/5/15 | 約14.7年 | 47.79 | 5.099% | 約209万円 | +約109万円 | 住宅頭金・進学費 | 約4.31% |
| 中長期(15〜20年) | 2046/5/15 | 約19.7年 | 35.46 | 5.342% | 約282万円 | +約182万円 | 退職前の蓄え | 約4.60% |
| 長期(20〜25年) | 2048/5/15 | 約21.7年 | 31.77 | 5.363% | 約315万円 | +約215万円 | 老後資金の本丸 | 約4.65% |
| 超長期(25〜30年) | 2051/11/15 | 約25.2年 | 26.61 | 5.331% | 約376万円 | +約276万円 | 後世への資産 | 約4.66% |
4月との違いを1行で書くと、最高利回りは4.946%(2051/2/15)から5.363%(2048/5/15)へ、0.417%ポイント上がりました。4月に5%を超える銘柄は1本もありませんでしたが、9月は46本中25本(2040年5月償還〜2056年5月償還)が5%を超えています。
それでも、右端の税引後の年率は最高でも4.66%です。表面では5%を超えた銘柄が25本あっても、税引後5%に届いた銘柄は1本もありません。
形は4月と同じです。残存20年前後で利回りがピークになり、それより長くなると5.331%、最長の2056年償還では5.189%とむしろ下がります。「長く待てば利回りが上がる」とは限らない構造は、9月も変わっていません。
30年寝かせるリスク(為替・自分の人生・米国そのもののリスク)を考えると、20〜25年帯が最も投資効率と現実性のバランスが取れた領域、というのが私の見立てです。
なお、販売利回りは証券会社で違います。同じ9月11日時点で、2045年2月15日償還のストリップス債は、SBI証券では5.325%、GMOクリック証券では5.363%と表示されていました。買う段階になったら、複数の画面で見比べる価値があります。
【2026年9月・SBI証券】クーポン債 残存期間別ベスト5
同じく残存期間別で選びました。クーポン債の場合、「低クーポン・大幅ディスカウント」の銘柄が高利回りになる傾向があります(性質的にストリップス債に近い)。
| 残存帯 | 償還日 | 残存 | 利率 | 単価 | 利回り | 100万円→満期受取 | 利益(目安) | 想定用途 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 短期(5〜10年) | 2036/5/15 | 約9.7年 | 4.375% | 96.86 | 4.783% | 約157万円 | +約57万円 | 中期の定期収入 |
| 中期(10〜15年) | 2041/5/15 | 約14.7年 | 2.250% | 70.92 | 5.087% | 約207万円 | +約107万円 | 教育費フロー |
| 中長期(15〜20年) | 2046/5/15 | 約19.7年 | 2.500% | 66.33 | 5.270% | 約275万円 | +約175万円 | 退職前後の収入 |
| 長期(20〜25年) | 2050/8/15 | 約24.0年 | 1.375% | 47.11 | 5.303% | 約344万円 | +約244万円 | 実質ストリップス的 |
| 超長期(25〜30年) | 2052/5/15 | 約25.7年 | 2.875% | 66.53 | 5.268% | 約374万円 | +約274万円 | 老後の年金代替 |
長期帯の2050/8/15(利率1.375%・単価47.11)は、4月に続いて9月も帯の最高利回りでした。半額以下の価格で買って毎年1.375%の利息も入る、という「実質ストリップス債に近い」商品です。クーポン債の高利回り銘柄は、こういう構造のものに偏ります。
クーポン債の場合、利益は「受け取るクーポンを同じ利回りで再投資できれば」という前提つきです。実勢では再投資レートが下がるリスクがあるので、表の数字は理論上限と考えてください。
データから見えるストリップス優位(100万円シミュレーション)
ストリップス債とクーポン債で100万円を投資したらいくらになるかを並べました。
4月の版では、帯ごとの最高利回り同士を比べていました。ただ、それだと償還日がずれて、比べる年数が変わってしまいます(たとえば9月の長期帯は、ストリップスが21.7年、クーポンが24.0年)。そこで9月版は、同じ償還日の銘柄同士で並べ、税引後の列を足しました。
| 償還日(残存) | ストリップス | クーポン | 差(税引前) | 差(税引後) |
|---|---|---|---|---|
| 2036/5/15 (約9.7年) |
税引前 約157万円 税引後 約146万円 (利回り4.750%) |
税引前 約157万円 税引後 約143万円 (利率4.375%・利回り4.783%) |
ほぼ同じ | ストリップス +約2万円 |
| 2041/5/15 (約14.7年) |
税引前 約209万円 税引後 約187万円 (利回り5.099%) |
税引前 約207万円 税引後 約182万円 (利率2.250%・利回り5.087%) |
ストリップス +約2万円 | ストリップス +約5万円 |
| 2046/5/15 (約19.7年) |
税引前 約282万円 税引後 約245万円 (利回り5.342%) |
税引前 約275万円 税引後 約230万円 (利率2.500%・利回り5.270%) |
ストリップス +約7万円 | ストリップス +約15万円 |
| 2048/5/15 (約21.7年) |
税引前 約315万円 税引後 約271万円 (利回り5.363%) |
税引前 約305万円 税引後 約249万円 (利率3.125%・利回り5.279%) |
ストリップス +約10万円 | ストリップス +約22万円 |
| 2055/5/15 (約28.7年) |
税引前 約439万円 税引後 約370万円 (利回り5.228%) |
税引前 約430万円 税引後 約324万円 (利率4.750%・利回り5.217%) |
ストリップス +約9万円 | ストリップス +約46万円 |
注目してほしいのは2点です。
① 税引前で見ると、差は小さい — 同じ償還日なら、利回りの差は0.01〜0.08%ポイントほどしかありません。100万円あたりで最大でも約10万円です。4月の版で「短期(5〜10年)はクーポン債のほうが有利」と書きましたが、9月の同じ償還日同士では、9.7年でもほぼ同じでした。
② 税引後で見ると、差は倍以上に開く — 9.7年で約2万円、19.7年で約15万円、28.7年では約46万円。クーポン債は利息を受け取るたびに課税されるので、複利で回せる元手がそのつど削られます。ストリップス債は満期まで税引前の金額のまま回り続けます。
つまり9月のデータでは、「5年以下ならクーポン、10年以上ならストリップス」という4月の棲み分けは、税引後で見ると成り立ちませんでした。同じ償還日なら、短くても長くてもストリップス債が上です。年数が長いほど、その差が大きくなります。
クーポン債を選ぶ理由は、利回りではなく「途中で現金を受け取りたいか」のほうにあります。
結論:表面の5%は来ました。それでも買っていない理由
4月の版の結論は「金利上昇シナリオを待つ」でした。そこから5か月で、何が起きたかを書きます。
米国債の利回りは、実際に上がりました
4月に私は、地政学リスクや財政赤字の拡大で米国債の利回りが上がる道筋を書きました。そのシナリオどおりの理由だったかは分かりません。起きたことだけを書くと、次のとおりです。
米国債30年の利回りは、4月30日の4.98%から9月11日には5.35%になりました(米財務省)。10年債は4.40%から4.96%です。日本でも、10年国債の利回りが9月11日に一時3.000%をつけています。
それを「当たった」とは書きません。私が予想したから上がったわけでも、理由まで読めていたわけでもありません。起きた、というだけです。
その間に、私がしたこと・しなかったこと
5月22日、SBI証券に表面5.111%のストリップス債が並びました。4月に書いたラインを、表面では超えています。私は電卓を叩き、税引後で4.47%と出たので、買いませんでした。このとき、ラインを「税引後で5%」と言葉にし直しています。
7月29日、米国債30年の利回りが5.2%台に乗り、19年ぶりの高さと報じられました。私は今度は、口座の画面すら開いていません。5.2%は税引後で4.6%前後。5月に一度計算していたので、ニュースの数字だけで届いていないと分かったからです(8月2日の記事)。
8月28日、ウォーシュFRB議長がジャクソンホールで初めて講演しました。利上げの観測が強まった日に、30年債の利回りは逆に下がっています。そして記事を書くために数字を並べていて、自分がラインの3分の1しか決めていなかったことに気づきました(8月30日の記事)。
「待つ」も投資のうち
「あと少しなんだから買えばいいじゃないか」と言われそうですが、私はラインを下げません。理由は、4つの根拠を組んで決めたラインだからこそ、動かしてはいけないと思っているからです。
動かし始めると、4.9%でも「いい線だ」、4.7%でも「悪くない」、4.5%でも「まあ買うか」とずるずる下がります。これは投資判断の規律としていちばん危ない。自分のルールを動かさない訓練として、ラインはラインとして置いています。
「表面5%」を「税引後5%」にしたのは、ラインを動かしたことになるのか
ここは自分でも引っかかっていました。4月には「5%は5%として置いています」と書いています。それを5月に「税引後5%」に変えたのは、ラインを動かしたことにならないのか。
私の答えは、動かしたのではなく、直したです。
①〜③の根拠の中身は、4月から変えていません。変えたのは、その根拠に合わせて計算するときの「5%」が、表面なのか手取りなのか、という定義だけです。しかも直した方向は、表面で5.111%が来ても買わない、厳しい側でした。ラインを下げて買う理由を作ったのなら、それは動かしたことになります。今回はその逆です。
それでも、4月の時点で決めておくべきでした。そこは言い訳しません。
ラインに届いても、まだ3分の1しか決まっていません
8月30日の記事に書いたことを、ここにも残しておきます。
債券を買う判断には、①利回り ②原資(何を手放して買うのか) ③期間(30年、満期まで持てるのか)の3つが要ります。私が決めていたのは①だけでした。
この2週間で、②と③は整理できていません。正直に書くと、まだ空欄のままです。現金を厚く持っているわけではないので、買うならVOOを売るか積立を止めることになります。30年という期間も、安全マージンを取ったDie With Zero(使い切って終える考え方)とぶつかります。
だから、いまの私にとって「税引後5%」は、買う約束ではなく、考え始める合図です。9月11日時点で、その合図まで税引後であと0.35%ポイントあります。
私の保有と、読者の方への考え方
| 項目 | 私(投資歴18年) | 読者の方への考え方 |
|---|---|---|
| 米国債 | 未保有・注文も出していない。税引後5%まで待つ | 表面利回りに飛びつかず、税引後と年数で計算する。外貨建て・長期の商品なので、初めの1本には向きません |
| 資産の中核 | VOO・QQQ(ドル建てETF) | 新NISAで、eMAXIS Slim 全世界株式(オルカン)などの低コスト投信を積み立てる |
| 口座 | 米国債は新NISAの対象外。買うなら特定口座 | 同じく特定口座になり、償還差益に20.315%かかる前提で考える |
円建てで考えたい方と、今週の金利
外貨建てで30年、という時点で合わない方も多いと思います。円建てで元本が守られる選択肢は、新窓販国債と個人向け国債の違いに実数で比べています。
今週は、米国のFOMC(9月15〜16日・結果は日本時間9月17日の早朝)と、日銀の金融政策決定会合(9月17〜18日)が続きます。結果が出る前に「持ち方は変わるか」を答えた記事はこちらです。
9月17日のFOMCの結果と、ラインまでの距離(2026年9月18日 追記)
FOMCは9月17日(日本時間)に0.25ポイントの利上げを決め、政策金利は3.50〜3.75%から3.75〜4.00%になりました。採決は12対0の全会一致です。翌18日には日本銀行も0.25ポイント上げ、1.25%程度になっています。
では、私が待っている米国債の利回りはどうなったか。上がるどころか、下がりました。
| 9月16日(FOMC当日) | 9月17日(結果の翌日) | |
|---|---|---|
| 米国債10年 | 5.01% | 4.94% |
| 米国債30年 | 5.35% | 5.29% |
短い金利を上げると、インフレが抑えられる。だから長い金利は下がる。債券市場はそう受け取った、ということです。利上げは、私が待っている数字を近づけてはくれませんでした。
9月17日の30年物5.29%を、この記事と同じやり方で税引後に直すと約4.68%です。私のライン(税引後で実質5%=表面でおよそ5.7%)までは、あと0.41ポイントあります。9月11日の時点では0.35ポイントでしたから、この1週間でラインから遠ざかりました。
私は今も米国債を買っていません。そして、証券会社に注文も出していません。ラインは「買う約束」ではなく「考え始める合図」だからです。
結果が出た週に私が何をして、何をしなかったかは、こちらに書きました。→ FOMCは3.75〜4.00%、日銀は1.25%へ——4つのマスを先に書いておいた私が、結果の日に触らなかったもの
※ 本記事のデータは2026年9月11日時点のSBI証券公式情報をもとに作成しています(4月の数字は2026年4月時点)。米国債の単価・利回りは日々変動します。最新情報はSBI証券の公式ページでご確認ください。米国財務省の公式情報はTreasuryDirectでも確認できます。税引後の数字は筆者の試算で、実際の課税関係はご自身でご確認ください。投資は自己責任でお願いします。
関連記事:S&P500投信とVOO ETFについて、私のポートフォリオの中身はこちらでも触れています。米国経済全体に賭ける派の私が、なぜ債券にも興味を持っているか、合わせて読むと文脈が繋がります。
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