本記事にはアフィリエイトリンクを含みます。
リベ大の動画で、「コロナ禍で買った株が、利回り25%ぐらいになっている」という話が出ていました。銘柄は三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)です。
この25%は、コロナ禍の安い買値に対して、今の配当がいくらかという数字です。動画の中でも、今の株価ではなく買った時の株価に対する利回りだ、とはっきり言っています。
では、同じ株を今日買う人の利回りはいくらか。2026年9月24日の終値で計算し直すと、約2.7%でした。25%ではありません。
9月末の配当の権利付き最終日は、9月28日(月)です。この週に「利回り25%」という数字だけを見て買う人が出ます。買う前に、自分の値段で計算し直してください。
結論:同じ96円の配当でも、割る値段が違う
先に、全体を1枚にします。
配当はどちらも同じ96円です。違うのは、何円で割るかだけです。
コロナ禍に買った人は403円で割るので23.8%。今日買う人は3,573円で割るので2.7%。同じ株、同じ配当なのに、利回りは約9倍違います。
2つの「利回り」を分ける
ここで、言葉を2つに分けておきます。
- 配当利回り(現在利回り)=年間配当 ÷ 今の株価。今日買う人の利回りです。証券会社の画面やニュースで「配当利回り」と書いてあるのは、ふつうこちらです
- 取得単価ベースの利回り(通称YOC=Yield on Cost)=年間配当 ÷ 自分が買った値段。もう持っている人だけの数字です。7月の記事では「取得利回り」と呼びました
動画の25%は、後者です。
動画は何と言っていたか
話の出どころは、リベ大の公式切り抜き動画「学長が今月から高配当株投資を始めるなら?」(2026年9月12日公開)です。9月24日の夜の時点で、約65万回再生されていました。
動画の後半で、コロナの時に買った三菱UFJの利回りが25%ぐらいになっている、という話が出てきます。あわせて、これは今の株価ではなく買った時の株価に対する利回りだ、と説明しています。
さらに、今この瞬間に利回り25%の株があるわけではなく、今なら4%ぐらいを狙う方がいい、という趣旨のことも言っています。
つまり、動画そのものは2つの利回りを分けて話しています。間違ったことは言っていません。長く持った人が手にした結果として、25%は正しい数字です。
この記事で扱うのは、動画の中身ではなく、「25%」という数字だけが切り取られて届いたときのことです。
今日の値段で計算し直す
三菱UFJの数字を並べます。今期(2027年3月期)の年間配当は、会社の予想で96円(中間48円・期末48円)です。
| 項目 | コロナ禍に買った人(例) | 9月24日に買う人 |
|---|---|---|
| 買値 | 403円(2020年3月末の終値) | 3,573円(2026年9月24日終値) |
| 年間配当(今期予想) | 96円 | 96円(同じ) |
| 利回り | 23.8%(取得単価ベース) | 2.69%(現在利回り) |
| 税引後(20.315%) | 19.0% | 2.14% |
学長が実際にいくらで買ったかは、動画では出てきません。表の403円は、「例えば2020年3月末の終値で買っていれば」という仮定です。2020年3月の安値380円で計算すると25.3%になり、動画の「25%ぐらい」とほぼ合います。
今日買う人の数字は2.69%です。特定口座なら、税金を引いて2.14%。NISAの成長投資枠で買えば税金はかからないので、2.69%のままです。
100株なら、買うのに357,300円かかります。1年でもらえる配当は9,600円、税引後で7,650円ほどです。
なぜYOCは上がっていくのか
YOCは、分母が買った日で止まり、分子だけが動く数字です。
三菱UFJの年間配当は、2020年3月期の25円から、今期予想の96円まで増えました。403円で買った人の利回りを年ごとに並べると、こうなります。
403円で買った時点では、配当25円で利回りは6.2%でした。そこから配当が増えるたびに、同じ403円で割るので、利回りだけが上がっていきました。YOCは、時間が作る数字です。
そしてその間に、株価も403円から3,573円まで、約8.9倍になりました。配当は約3.8倍です。株価のほうが配当より速く上がったので、今日の値段で割った利回りは2.7%まで下がっています。
YOCが高いのは、「株価も配当も上がった」結果です。今日買う人は、その上がった後の値段で買うことになります。
よくある3つの見方
見方A:「長く持てば、利回り25%になる」
動画が示しているのはこれで、長く持った人の結果としては正しい話です。ただ、それは2020年に買って、6年持った人の結果です。今日買う人が同じ25%を手にするには、配当が今の約9倍になる必要があります。
見方B:「YOCは意味のない数字」
これも言いすぎです。7月の記事で書いたとおり、もう持っている人にとっては、売るかどうかを考えるときの参考になります。意味がないのではなく、持っている人にしか意味がない数字です。
見方C:「権利付き最終日に買って、配当だけもらう」
これは次の章で計算します。結論から言うと、ほぼ差し引きゼロで、税金の分だけ不利です。
9月28日に買って、配当だけもらうとどうなるか
9月30日が権利確定日の株は、9月28日(月)の取引終了時に持っていれば、配当を受け取れます。翌日の9月29日(火)が権利落ち日です。
9月に確定するのは中間配当の48円です。権利落ち日には、理論上はその48円分だけ株価が下がります。配当は税金が引かれて入ってきますが、値下がりは含み損として残ります。配当だけを取りに行っても、得にはなりません。
なお、夜間のPTS取引(証券会社の私設取引所)を使う場合は、権利付き最終日が9月25日(金)になる証券会社があります。夜に取引するなら、自分の証券会社の案内で日付を確認してください。
私の見方:物差しを「今」に置く
先に書いておくと、私は高配当株を個別では持っていません。インデックス投資が中心です。なので、これは「高配当株をやるなら」という人に向けた話です。
動画を見たとき、私はすぐに「取得単価ベースの数字だ」と気づきました。
ただ、気づくかどうかと、数字に動かされるかどうかは別の話です。「25%」という数字は、それだけで目に残ります。しかもそれが、権利付き最終日の直前の週に届きます。「分かっていても、25%と聞くと動きたくなる」という人がいてもおかしくない週です。だから、この週に書いておくことにしました。
昨日の記事で、道具を続けるかどうかは「稼げたか」ではなく「同じ値段で中身が良くなったか」で決める、と書きました。過去の成績ではなく、今の値段と今の中身で測る、という話です。
配当株も同じです。25%は過去の買値の成績で、今日の自分には関係ありません。今日の自分に関係あるのは、今日の値段で割った2.7%だけです。
そして、同じ数字が立場で意味を変えます。
- 持っている人にとって、YOCは「売らずに持ち続けるか」を考える材料になる
- これから買う人にとって、YOCは「買う理由」にならない
コロナ禍が買い時だったと分かったのは、今だからです(投資のベストタイミングは、後からしか分かりません)。25%は、あの時に買って何もしなかった人の結果です。今から始める人は、同じ「何もしない」を、今の値段から始めるしかありません。
高配当株を、今の値段で試してみるなら
三菱UFJは100株で約36万円です。1株から試したいなら、マネックス証券のワン株(単元未満株)が使えます。NISAの成長投資枠なら売買とも手数料0円です。100株単位でじっくり買うなら、松井証券も候補です(松井証券は単元未満株の買付には対応していません)。私の主軸はSBI証券で、これは用途で選ぶための候補です。
買う前の3行チェック
「利回り◯%」という数字を見たら、買う前にこの3つだけ確かめてください。
| 確かめること | 三菱UFJの場合(2026年9月24日) |
|---|---|
| ① その利回りは、誰の買値で割った数字か | 「25%」はコロナ禍の買値で割った数字 |
| ② 今日の値段で割ると何%か | 96円 ÷ 3,573円 = 2.69% |
| ③ 税引後で何%か | 特定口座なら 2.14%(NISAなら 2.69%) |
そのうえで、次のことも決めておきます。
- 権利付き最終日(9月28日)の前に買うなら、権利落ちで株価が下がることを先に計算に入れる。配当目当ての短期売買はしない
- 高配当株を今から持つなら、今日の現在利回りで判断する。YOCは「10年後の自分が見る数字」として取っておく
- 個別株を選ばずに配当を受け取りたいなら、高配当ETFという方法もあります(VYM・HDV・SPYD・DVYの比較)
まとめ
- リベ大動画の「利回り25%」は、三菱UFJをコロナ禍の安値で買った人の、取得単価ベースの利回り(YOC)
- 動画自身も「今の株価に対する利回りではない」と言っている。動画は間違っていない
- 同じ株を2026年9月24日の終値3,573円で買うと、利回りは2.69%(税引後2.14%)
- YOCは、分母(買値)が止まって分子(配当)だけが増える、時間が作る数字。その間に株価は約8.9倍になった
- 権利付き最終日は9月28日(月)。配当だけを取りに行っても、権利落ちで株価が下がり、税金の分だけ不利
- YOCは持っている人には意味があり、これから買う人には買う理由にならない
配当株は、今の値段で測る。25%を見たら、まず自分の値段で割り直す。それだけです。
あわせて読みたい
同じ数字を「持っている人」の側から読みたい方へ
・株価が5倍になった配当株を、売らずに持ち続ける条件は「年3.1%」だった【20年の試算】
リベ大動画の数字を計算し直したシリーズ
・政策金利2.5%でも、普通預金は1.0%です【リベ大動画の数字を全部計算し直しました】
高配当を始める前に
・高配当株は1株から買えます——単元未満株で月3,000円の配当お小遣いを作る手順と、松井では買えない話
・SPYDは「やめとけ」なのか——利回り4.2%の中身は不動産24%でした
・VYM・HDV・SPYD・DVYを2026年最新データで徹底比較
「今の値段で測る」考え方
・回収ゼロでも、AIに月25,300円払い続ける理由——「同じ値段で中身が良くなったか」で決める
・投資のベストタイミングは、後からしか分かりません
・2026年上半期の答え合わせ——一番勝ったのは“何もしなかった人”だった
※本記事の株価は2026年9月24日の終値、年間配当は三菱UFJフィナンシャル・グループの2027年3月期の会社予想(2026年9月24日時点)によります。※2020年3月の株価は月足の終値・安値です。403円は説明のための仮定で、動画の話者が実際に買った値段ではありません。※動画の内容は、リベラルアーツ大学の公式切り抜き動画(2026年9月12日公開)を筆者が要約したものです。※税引後の数字は、特定口座で上場株式等の配当に係る税率20.315%を差し引いた概算です。※権利付き最終日・権利落ち日は、楽天証券の案内(2026年9月末の権利日程)によります。PTSの日程は証券会社によって異なります。※権利落ち日の株価の動きは理論上のもので、実際の株価は相場全体の動きなどでも変わります。※本記事は情報提供を目的としており、特定の銘柄や金融商品の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任のもとで行ってください。本記事にはアクセストレードのアフィリエイトリンクが含まれています。
本記事は情報提供を目的としており、投資助言・勧誘を目的とするものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
