2026年10月26日公開
投資を始めて、19年になりました。19年で一番効いた判断は、自分で考えた手法ではありません。うまくいっている人のやり方を、何も足さずに真似したことです。
2007年に、給料が出たので株を始めました。最初に買った株では惨敗しました。リーマンショックでは動けませんでした。IPOは10年以上申し込み続けて、一度も当たりませんでした。話題の銘柄に飛びついて、数十万円を溶かしたこともあります。
そんな私が、いまはS&P500のETFを持って、ほとんど何もしないで過ごしています。そこにたどり着いたきっかけは、海外に駐在している会社員のブログでした。
この記事では、19年を最初の1年から順に振り返ります。成功した話より、失敗した話のほうが多くなります。19年前の自分が読んだら、遠回りを何年か減らせるように書きます。
先に結論:19年で分かった3つのこと
- 勝ちパターンは、自分で発明しなくていい。私が一番長く迷ったのは、「自分だけの勝ち方」を探していた10年でした。最後は、駐在員のブログに書いてあったインデックス投資を、オリジナルを入れずに真似しました
- 大きな失敗は、どれも「当てにいった」ときに起きている。最初の株、イナゴタワー、コロナのバイオ株。調べずに、話題に乗って、短く勝とうとしたときに負けています
- 暴落で動けるかどうかは、暴落の前に決まっている。リーマンで動けなかった私が、コロナで買えたのは、その間に「次のための資金」を貯めておいたからです
19年の年表
先に、全体を1枚にしておきます。細かい話は、このあと順に書きます。
2007年:給料が出たから、株を始めた
始めた理由は、立派なものではありません。給料が出たので、株をやってみようと思いました。それだけです。
最初に惹かれたのは、IPO(新規公開株)でした。会社が初めて株式市場に上場するときに売り出される株で、抽選で当たると、上場した日に値段が大きく上がることがあります。「当たれば儲かる」という分かりやすさが、魅力でした。
でも、どれにも届きませんでした。何より、抽選に当たりません。
そこで、すでに上場している株を買うことにしました。確か、最初に買ったのはアドミラルシステムという会社です。2003年に東証マザーズ(新興企業向けの市場)に上場した会社で、2009年に「ASJ」に社名を変えています。
なぜその会社だったのか、もう思い出せません。思い出せないということは、ちゃんと調べずに買ったということです。当然、結果は惨敗でした。
19年前の私の買い方を、いまの言葉で言うとこうなります。「上がりそうな気がする」以外の理由が、1つもなかった。
2008年:リーマンショックで、動けなかった
始めた翌年に、リーマンショックが来ました。S&P500(アメリカの代表的な500社で作る株価指数)は、2007年10月の高値から2009年3月の底まで、約57%下がっています。
私が持っていた日本の個別株は、数十万円が数万円になりました。金額だけ見れば小さいかもしれません。でも、投資に回していたお金の大半です。
このとき私は、売ることも、買い増すこともできませんでした。下がっているのは分かっている。でも、何をすればいいのか分からない。ただ画面を見ているだけでした。
リーマンから持ち帰ったのは、1つの決めごとだけです。「次に暴落が来たときのために、お金を貯めておこう」。このときの話は、暴落3回の実録に詳しく書いています。この決めごとが、12年後に効いてきます。
2009〜2019年:迷いの10年
リーマンのあと、コロナまでの約10年。この時期の私を一言で言うと、ずっと「勝ち方」を探していました。
調べて買う。親のおすすめも買う
最初の失敗で懲りたので、今度は調べてから買うようにしました。会社の業績を読んで、チャートを見て、買う。
両親のおすすめの銘柄も買いました。私の両親は、いまも個別株で利益を出し続けています。毎日株価を見て、日経新聞を欠かさず読む人たちです(両親がなぜ勝てるのかは、個別株で勝てる人・勝てない人の差に書きました)。
結果は、勝ったり負けたりでした。大きく勝つこともなく、大きく負け続けることもない。ただ、「これを続ければ勝てる」という手応えは、10年間ずっとありませんでした。
IPOは、一度も当たらなかった
IPOも、積極的に狙い続けました。申し込めるものには申し込みました。
当たったことは、一度もありません。
いま振り返ると、IPOは「当たれば儲かる」の前に「当たらない」が来る仕組みです。人気のある銘柄ほど申し込みが集まり、抽選の倍率が上がります。私が10年かけて分かったのは、「当たらないものを、毎回待っていた」ということでした。
一番の失敗:イナゴタワー
この10年で一番の失敗は、イナゴタワーに乗ったことです。
イナゴタワーは、話題になった銘柄に個人投資家が一斉に群がって、株価が塔のように急に上がり、群れが去ると一気に崩れる値動きのことです。イナゴの群れが畑を食べ尽くして飛び去るのに似ているので、こう呼ばれます。
もう10年以上前の話です。話題の銘柄が出てきて、私は飛びつきました。どの銘柄だったかは、もう覚えていません。覚えているのは、数十万円があっという間に溶けて、損切りしたことです。
やってはいけない、と身に染みました。
……と言いたいところですが、正直に書きます。私はコロナの頃に、もう一度同じことをしています。コロナの薬を研究しているという話題のバイオ株を、人に勧められて、調べずに買いました。13万円が1万円になりました(キオクシアの記事に書いた12万円の失敗です)。
身に染みたはずのことを、10年近く空けてもう一度やる。人間は、そういうものだと思います。だから私は、自分の意志の強さを信用していません。
転機:「どうやったら勝ち続けられるのか」を真剣に考えた
コロナの少し前、私は一度立ち止まりました。勝ったり負けたりを10年以上続けて、それでも手応えがない。どうやったら、勝ち続けられるのか。これを、初めて真剣に考えました。
オニールの本で、海外の「分析」に触れた
最初に影響を受けたのは、ウィリアム・オニールの本です(日本語版は『オニールの成長株発掘法』)。アメリカの投資家で、成長する株を早く見つけて買う方法を書いた本です。
この本は利益の伸びも見ますが、当時の私の目に焼きついたのは、チャートのほうでした。どんな形になったら買うのか。どこまで下がったら売るのか。それが、決まった手順として書いてある。
それまでの私は、なんとなくチャートを眺めていただけでした。オニールの本を読んで、「これが分析か」と思いました。海外の投資家は、こんなふうに手順で考えているのか、と。
駐在員のブログは、インデックスを「当たり前」に語っていた
同じ頃に読んでいたのが、海外に駐在している日本人の会社員のブログです。
そのブログでは、インデックス投資が当たり前のように語られていました。S&P500のような指数にまるごと投資して、長く持つ。特別な手法としてではなく、ごく普通のこととして書いてありました。
私はそれまで、いろいろな勝ちパターンを調べていました。オニールのようなチャートの手法も、親の銘柄選びも、IPOも。そうやって調べた末にたどり着いたのが、駐在員のインデックス投資でした。
オリジナルは、1つも入れなかった
ここで、私は1つだけ決めました。自分のオリジナルを入れない。駐在員のやり方を、そのまま真似する。
それまでの10年、私は「自分だけの勝ち方」を探していました。でも、自分で考えた買い方は、どれも続きませんでした。だったら、すでにうまくいっている人のやり方を、何も足さずにやってみよう。そう考えて、VOO(S&P500に連動するアメリカのETF)を買いました。
いま振り返ると、少し皮肉です。「勝ち続ける方法」を探した答えが、市場に勝つことをやめて、市場をまるごと持つことだったからです。
2020年:コロナで、VOOとQQQを買えた
2020年2月、コロナで市場が崩れました。S&P500は、2月19日から3月23日までの約1か月で、33.9%下がっています。
このとき私は、VOOとQQQ(NASDAQ100に連動するETF)を、ドルで買いました。リーマンのときに決めた「次のための資金」を、ここで使いました。
リーマンで動けなかった私が、コロナで買えた理由は2つあると思います。
- 買うお金があった。リーマンのあとに決めた通り、暴落用のお金を貯めていました
- 買うものが決まっていた。駐在員のブログを真似すると決めていたので、「何を買うか」で迷いませんでした
リーマンのときは、お金も、買うものも、どちらもありませんでした。暴落の日に動けるかどうかは、暴落の前に決まっています。ドラッグストアにマスクの列ができていた頃の話は、マスクではなく株を買った話に書いています。
ただ、同じ時期に、さっき書いたバイオ株の失敗もしています。片手でVOOを買いながら、もう片方の手で話題の株に飛びついていた。2020年の私は、まだ半分しか変わっていませんでした。
2024〜2026年:何もしない、を続けている
2024年に新しいNISAが始まり、私は初日から投資信託の積立を始めました。2025年4月の関税ショックでは、S&P500が2日で約10%下がりましたが、私は何も売らず、何も買い足しませんでした。
いまの私の口座は、こうなっています。
- VOO・QQQ:2020年から、SBI証券の特定口座で持っています
- NISA:S&P500とオルカンの投資信託を、少しだけ持っています
- 積立:毎日数千円ずつ積み立てていましたが、2026年9月から資金の都合で止めています。持っている分は売っていません
積立を止めたのは、相場が怖くなったからではありません。家計の事情です。家計に余力が戻ったら、再開します。
株価は、数日に1回、VOOとQQQを眺めるだけです。19年前、仕事中にも株価アプリを開いていた私からすると、別人のようです。
19年の失敗を、1つの表にする
ここまでの失敗を並べると、こうなります。
| いつ | 何をしたか | 結果 | 原因 |
|---|---|---|---|
| 2007年 | 最初の株(アドミラルシステム) | 惨敗 | 調べずに買った |
| 2008年 | リーマンショック | 数十万円 → 数万円 | 暴落用のお金も、買うものもなかった |
| 2009〜2019年 | IPOに申し込み続けた | 一度も当たらず | 当たらないものを待っていた |
| 10年以上前 | イナゴタワーに飛びついた | 数十万円を損切り | 話題に乗って、短く勝とうとした |
| 2012年〜 | 低解約返戻金型の保険に加入 | 14年で増えたのは約18万円 | 保険で貯めようとした(告白記事) |
| 2020年 | コロナのバイオ株 | 13万円 → 1万円 | 人に勧められて、調べずに買った |
| 2026年 | 日経6万円で追加の買いを止めた | その後11.6%上がった | 高いか安いかを自分で判断した(取り逃した話) |
並べてみて、気づいたことがあります。保険を除くと、失敗はどれも「自分で当てにいった」ときに起きています。上がりそうな株を当てる。抽選を当てる。話題の波を当てる。高値を当てる。
反対に、19年でお金を増やしてくれたのは、自分で何も考えずに真似したVOOと、暴落に備えて貯めておいたお金でした。私の19年は、「当てにいく」のを少しずつやめていく19年だったと思います。
19年前の自分に言うこと
もし2007年の自分に一言だけ言えるなら、こう言います。
「勝ち方は、自分で発明しなくていい。うまくいっている人のやり方を、何も足さずに真似しろ。」
19年前の私は、自分で考えて勝つことに意味があると思っていました。でも、投資で大事なのは、勝ち方の独創性ではありません。同じことを、長く続けられるかどうかです。
付け足すなら、3つあります。
- IPOの抽選を待つ時間で、毎月少しずつ積み立てろ。当たらないものを待つより、確実に買えるものを買うほうが早い
- 話題の株に飛びつきたくなったら、その気持ちが一番危ない。私は2回やっています
- 暴落用のお金を、先に分けておけ。暴落の日に動けるかは、その前の何年かで決まる
いま投資を始めたばかりの人に、私が真似してほしいのも同じです。私のやり方を真似する必要はありません。でも、真似する相手を決めて、何も足さずに続けることは、真似していいと思います。何を買うか迷っているなら、資産運用は2行で終わるという記事に、私の答えを書いています。
真似を始めるなら、口座は1つでいい
私の主軸はSBI証券ですが、松井証券もサブで使っています。ネット証券なので、新NISAでS&P500やオール・カントリーの投資信託を、手数料をかけずに積み立てられます。
動画でも解説しています
この記事の内容を、動画にまとめました。通勤や家事の「ながら聴き」にどうぞ。
まとめ
- 2007年、給料が出たので株を始めた。最初の株は調べずに買って惨敗した
- 2008年のリーマンショックでは動けなかった。持ち帰ったのは「次のためにお金を貯める」という決めごと
- 2009〜2019年は勝ち方を探し続けた10年。IPOは一度も当たらず、イナゴタワーで数十万円を損切りした
- コロナの前に「どうやったら勝ち続けられるか」を真剣に考えた。オニールの本を経て、駐在員のブログのインデックス投資を、オリジナルを入れずに真似した
- 2020年のコロナでVOOとQQQを買えたのは、買うお金と、買うものが先に決まっていたから
- 19年の失敗は、どれも「当てにいった」とき。勝ち方は、自分で発明しなくていい
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