ソフトバンクグループの個人向け社債、1兆円・7年・利率4.75%が、申込期間の途中で完売しました。発行日は今日、2026年9月17日です。
私は申し込みませんでした。そして、ソフトバンクグループに限らず、1社の社債なら何%でも買いません。
「利率が足りないから」ではありません。4.75%を分解して、個人向け国債や米国債と同じ表に並べたら、引っかかっていたのは値段ではなく、貸し手という立場の形だと分かりました。この記事は、その分解の記録です。
数字は、特に断りのない限り2026年9月11日時点のものです。
結論:4.75%の大半は「日本の金利」。それでも私は1社には貸しません
先に答えを書きます。
- 4.75%は、同じ7年の日本国債の利回り(約2.5%)と、ソフトバンクグループ1社分の上乗せ(約2.3ポイント)を足した数字です。2019年の同じ7年債は1.38%でしたが、そこから上がった3.37ポイントのうち2.85ポイントは日本の金利が上がった分で、1社分の上乗せが増えたのは0.52ポイントだけです
- 利子には20.315%の税金がかかるので、手元に残るのは年3.79%です。個人向け国債・変動10年(税引後1.55%)の2倍以上ですが、米国債ストリップスの最高値(税引後4.65%)には届きません
- 固定7年なので、金利がもう1ポイント上がると、途中で売る値段は100万円あたり約94万3,000円まで下がる計算です。持ち続ければ、新しい債券より低い利息を受け取り続けます
- 日本経済新聞は、ソフトバンクグループの財務の余力は「AI相場に連動」すると書いています。私はAIの上がり下がりを、すでに株主としてQQQとVOOで持っています。社債を買うと、同じAI相場に、上がったときの取り分は4.75%で打ち止め、下がったときの痛みだけを引き受ける形で、もう一度乗ることになります。利率をいくら上げても、この形は変わりません。だから私は、何%でも買いません
リベラルアーツ大学(通称リベ大)の動画も、この社債は「ナシ」と答えていました。結論は同じです。ただ、理由が違います。その違いは後半に書きます。
ソフトバンクグループ第70回社債の条件
ソフトバンクグループ(東証9984)は、通信会社のソフトバンクではなく、その親会社にあたる投資会社です。AI関連の会社への投資を中心に、世界の企業の株を持っています。
条件は、同社が8月24日と9月4日に出したお知らせで、すべて公開されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | ソフトバンクグループ株式会社 第70回無担保社債(愛称:福岡ソフトバンクホークスボンド) |
| 発行総額 | 1兆円 |
| 利率 | 年4.75%(税引前)。仮条件4.30〜4.90%から9月4日に決定 |
| 期間 | 7年(償還は2033年9月16日)。利払いは毎年3月17日と9月17日 |
| 申込・発行 | 申込9月7日〜16日、払込(発行)9月17日 |
| 購入単位 | 100万円 |
| 資金の使い道 | 国内社債の償還資金と、ABBのロボティクス事業の買収資金の一部 |
| 格付け(発行体) | JCR:A(見通しネガティブ)/S&P:BB+/Fitch:BB+ |
| 購入特典 | ホークスの「お父さん応援隊長 サイドポケットトートバッグ」(購入者全員) |
日本経済新聞によると、国内企業の個人向け社債としては過去最大で、4.75%はソフトバンクグループの普通社債として約17年ぶりの高い利率です。ブルームバーグの集計では、2026年に出た個人向け円建て社債の平均利率は2.3%(9月3日時点)でした。
用語を2つだけ整理しておきます。
- 無担保社債:返せなくなったときに貸し手が取り上げられる「担保」が付いていない社債です。個人向けの社債や国債は、ほとんどが無担保です。無担保だから危ない、ということではありません。注意したいのは「劣後」と付いた社債で、会社が倒れたときに返してもらう順番が後ろになります。今回の第70回は、劣後ではない普通の社債です
- 格付け:格付け会社が「約束どおり返せるか」をアルファベットで評価したものです。S&PとFitchの「BB+」は、投機的等級(いわゆるジャンク)の一番上にあたります。国内のJCRは「A」で、投資適格です。同じJCRは日本国債を「AAA」としています
格付け会社によって、投資適格にもジャンクにもなる。これが、ソフトバンクグループという会社の見え方の幅です。
4.75%を分解する:上がった分の大半は日本の金利です
社債の利率は、同じ期間の国債の利回り+その会社1社分の上乗せでできています。国は円を発行できるので、円建ての国債が返ってこないことは、まず考えなくていい。その国債より高い分が、「1社に貸すリスク」に付いた値段です。この上乗せをスプレッドと呼びます。
財務省が公表している国債の利回りで、利率が決まった日の数字を引きます。
2019年の第56回(1.38%)が出たとき、日本の7年国債の利回りはマイナス0.36%でした。つまり1.38%は、ほとんど全部が1社分の上乗せ(1.74ポイント)です。
今回は、7年国債が2.49%まで上がっています。4.75%から引くと、1社分の上乗せは2.26ポイント。9月11日の7年国債(2.545%)で引いても2.21ポイントです。
「17年ぶりの高い利率」と聞くと、ソフトバンクグループが特別に高い利率を払っているように聞こえます。でも、この7年で上がった3.37ポイントのうち、2.85ポイントは日本の金利そのものが上がった分です。1社分の値段は、0.52ポイントしか上がっていません。
4.75%が高く見えるのは、半分以上が「日本の金利が戻ってきた」からです。9月初めには、日本の10年国債の利回りが3%を超えました。
→ 政策金利2.5%でも、普通預金は1.0%です【リベ大動画の数字を全部計算し直しました】
同じ表に載せる:税引後で並べると3.79%です
社債の利子にも、国債の利子にも、20.315%の税金がかかります。だから比べるときは、税金を引いたあとの数字にそろえます。
4.75% × (1 − 0.20315) = 3.79%。100万円なら、税引前の利子は年47,500円、手元に残るのは年37,850円です。
| 商品 | 税引前 | 税引後 | 期間 | 途中で抜けるとき | 返す相手 |
|---|---|---|---|---|---|
| ソフトバンクG 第70回社債 | 4.75% | 3.79% | 7年・固定 | 時価(証券会社が買い取る値段) | 1社(JCR A/S&P BB+) |
| 個人向け国債 変動10年(9月募集) | 1.95% | 1.55% | 10年・半年ごとに見直し | 額面(1年経過後。直前2回分の利子相当を差し引き) | 日本国(JCR AAA) |
| 新窓販国債 10年(9月募集) | 2.94% | 2.39% | 10年・固定 | 市場価格 | 日本国 |
| 米国債ストリップス(SBI証券の最高) | 5.363% | 4.65% | 約22年・固定 | 市場価格+為替 | 米国 |
| (参考)ソフトバンクG ハイブリッド社債 第9回 | 5.12% | 4.08% | 35年(5年後から繰上償還あり) | 時価 | 1社・劣後(JCR BBB+) |
並べると、3.79%の位置がはっきりします。
- 日本国に貸す変動10年(1.55%)の2倍以上
- 米国に貸すストリップスの最高(4.65%)より0.86ポイント低い。ただし米国債には為替の上下が乗ります
- 同じソフトバンクグループでも、返す順番が後ろになる劣後のハイブリッド社債は、税引後4.08%です
数字だけを見れば、「国債より高く、米国債より為替の心配がない」ちょうどいい場所に見えます。1兆円が売り切れたのは、多くの人がそう判断したからだと思います。
→ 米国債|ストリップス vs クーポン、私はストリップス派の理由【2026年9月SBI最新データ】
出口:金利がもう1ポイント上がったら、100万円は約94万3,000円です
表の「途中で抜けるとき」の列が、私が一番気にしたところです。
固定4.75%の7年債を買ったあとで、世の中の金利が1ポイント上がり、新しく出る同じような社債が5.75%になったとします。すると4.75%の社債は、そのままの値段では誰も買いません。1ポイント低い利息の分だけ、値段が下がります。
残り7年のまま金利が1ポイント上がると、理論上の値段は100円あたり94.30円。100万円なら約94万3,000円で、約5万7,000円のマイナスです。税引後の利子1年半分が消える計算です。
楽天証券もSBI証券も、途中で売るときは「時価での売却」と説明しています。証券会社によっては、発行日から6カ月は売れないところもあります。
つまり、固定4.75%の7年債には、金利が上がったときの逃げ道が2つしかありません。
- 売る:値下がりした時価で売る
- 持ち続ける:新しい債券より低い利息を、残りの年数ずっと受け取る
変動10年の個人向け国債は、ここが違います。利率は半年ごとに、10年国債の利回り×0.66で見直されます。そして発行から1年たてば、直前2回分の利子相当(税引後)を差し引いて、額面で国に買い取ってもらえます。利率が低いのは、この逃げ道の代金です。
私は、子ども名義の口座で、この変動10年を勉強用に1口だけ持っています。自分名義の国債はありません。
→ 新窓販国債と個人向け国債の違い|10年で88,084円差・5年で506円差になる理由【2026年8月の実数】
私が何%でも買わない理由:貸し手は、上がった分をもらえません
ここまでは、値段と出口の話でした。数字だけなら、「税引後3.79%で7年動かさない」と決めた人には、選んでいい商品に見えます。
それでも私が「1社なら何%でも買わない」と答えたのは、貸し手という立場の形が、私の持ち方と合わないからです。
7月に、AIの値下げ競争を「客の財布」と「株主の財布」の2つで読みました。社債を買うと、3つ目の財布ができます。貸し手の財布です。
| 財布 | 会社がうまくいったら | 会社がつまずいたら | 私 |
|---|---|---|---|
| 客 | 安く・良いサービスを使える | 別の会社に乗り換える | 遠慮なく安いほうへ動く |
| 株主 | 上がった分に、上限がない | 株価が下がる | QQQ・VOOで、AI相場ごと持つ |
| 貸し手 | 年4.75%で打ち止め | 格下げで時価が下がる。最悪は返ってこない | 持たない |
日本経済新聞は9月4日、ソフトバンクグループの財務の余力は「AI相場に連動」すると書きました。この会社が借金を返せる力は、持っているAI関連の会社の株の値段に左右される、という意味です。
私は、AI相場の上がり下がりを、すでに株主の財布で持っています。QQQとVOOの上位には、AIの主役の会社が並んでいます。
そこに社債を足すと、同じAI相場に、もう一度乗ることになります。しかも今度は、相場が良いときの取り分は4.75%で打ち止めで、相場が崩れたときの痛み(格下げ・値下がり)はそのまま来る形です。
利率を5%、6%と上げても、この形は変わりません。同じ時期の国債より上乗せが大きくなるのは、その会社がより危なく見られたときです。上乗せが増えるほど、下がったときの痛みが来やすくなった値段でもあります。だから私の答えは、「何%なら買う」ではなく「1社なら何%でも買わない」になりました。
ソフトバンクグループが危ない、と言いたいのではありません。7年後にどうなっているかは、私には測れません。測れないものに7年貸すなら、上がった分ももらえる株主の側で持ちたい、というだけです。
5月に、プライベートクレジット(銀行を通さない企業への融資)の記事で、貸し手の側に立つとは「返ってくるかどうかを見続けること」だと書きました。私は1社の返済能力を7年間追い続けるより、インデックスで流れごと持つほうを選びます。
→ Claudeの料金がまた変わる——AIの値下げ競争を”客と株主の2つの財布”で読む
→ プライベートクレジットの「見えない焦げ付き」――リーマンと同じところ・違うところ
リベ大の動画と私:結論は同じ「ナシ」、理由が違います
リベ大の動画でも、「高配当株より魅力を感じた」という視聴者からの質問に、この社債は「ナシ」と答えていました。理由は要約すると、債券は分散して持つのが基本で、1社だけに集中して買うものではない、というものです。
結論には賛成です。ただ、理由が少し違います。
| リベ大の動画(要約) | 私 | |
|---|---|---|
| 結論 | ナシ | ナシ |
| 理由 | 1社に集中しているから(買い方の話) | 上がった分をもらえない形で、すでに持っている相場にもう一度乗るから(立場の話) |
| では、どうすれば | 分散した債券で持つ | 使う予定のあるお金は変動10年、増やすお金は株主の財布で |
「1社だから」だけだと、答えにくい質問が残ります。個人向け国債も、返す相手は日本国1つだからです。
私の答えはこうです。円で暮らしている限り、日本国のリスクからは逃げようがありません。給料も、預金も、年金も円だからです。避けようがないリスクと、自分から選んで取りに行くリスクは、別のものです。ソフトバンクグループ1社のリスクは、後者です。
9月6日の記事でも、リベ大の動画の結論にはそのまま賛成しました。数字や理由を自分で置き直すと、同じ結論でも、次に何をするかが自分の言葉で決まります。
買えなかった人へ:買えなかったことと、買うべきだったことは別です
1兆円が売り切れたので、「申し込もうと思っていたのに間に合わなかった」という人もいると思います。
完売は、この商品を欲しい人が多かったことの証明です。あなたが買うべきだったことの証明ではありません。6月のHDVの記事でも「HDVは良いETFですが、私自身はHDVを持っていません」と書きました。良い商品であることと、自分が持つ商品であることは、別の話です。
それに、ソフトバンクグループは2022年12月以降、個人向けの普通社債を今回を含めて7回出してきました。利率は2.84%、3.04%、3.03%、3.15%、3.34%、3.98%、そして4.75%です。次の発行も、同じ条件ではないにしても、また来る可能性があります。焦って、発行後に証券会社で売りに出たものを追いかける理由はありません。
次に社債の案内を見たら、申し込む前に、次の5つを自分に聞いてみてください。
- 税引後で何%か(表示の利率×0.79685)
- 同じ期間の国債と、何ポイント違うか(その差が「1社分」の値段)
- 途中で売る可能性はあるか(あるなら、金利が上がったときの時価を受け入れられるか)
- その会社を、満期まで追いかけ続けられるか(格付けが変わったら気づけるか)
- その会社の上がり下がりを、すでに株や投資信託で持っていないか
| 項目 | 私(投資歴18年) | 読者の方への考え方 |
|---|---|---|
| ソフトバンクG 第70回社債 | 申し込んでいない。1社の社債は何%でも買わない | 買うなら、上の5つに答えてから。7年動かさないお金だけで |
| 個人向け国債 | 子ども名義で変動10年を1口(勉強用)。自分名義はなし | 数年以内に使う予定のあるお金は、まず変動10年から |
| 米国債 | 未保有。税引後5%を待っている(注文は出していない) | 表面の利回りではなく、税引後で見る |
| 増やすお金 | VOO・QQQ(株主の財布) | 新NISAで、オルカンやS&P500の投資信託を積み立てる |
まとめ:利率ではなく、立場を選ぶ
ソフトバンクグループ第70回社債の4.75%は、7年国債の2.49%と、1社分の2.26ポイントでできています。2019年の1.38%から上がった分の大半は、日本の金利が戻ってきた分です。
税引後では3.79%。変動10年の個人向け国債の2倍以上ですが、固定7年なので、金利がもう1ポイント上がれば、100万円は約94万3,000円でしか売れない計算になります。
それでも、この社債を「値段が安いか高いか」で断る気はありません。私が断ったのは、上がった分は4.75%で打ち止め、下がった分はそのまま引き受ける貸し手の形で、すでに株主として持っているAI相場に、もう一度乗ることです。だから、1社なら何%でも買いません。
完売したものを買えなかった人は、何も失っていません。次の案内が来たら、利率の前に、自分がどの財布で関わるのかを決めてから読んでみてください。
※ 本記事の数字は、特に断りのない限り2026年9月11日時点です。社債の条件はソフトバンクグループの2026年8月24日・9月4日のお知らせと社債明細、格付けは同社IRサイト(9月11日現在)とJCR、国債の利回りは財務省「国債金利情報」、個人向け国債・新窓販国債は財務省の公表資料、報道は日本経済新聞(8月24日・9月4日)とブルームバーグ(9月4日)によります。価格の試算・税引後の数字は筆者の計算で、実際の売却価格や税額とは異なることがあります。金利は日々変動します。投資判断はご自身の責任でお願いします。
【国債や米国債を税引後で比べるなら、証券口座が要ります】
個人向け国債・米国債・社債は、証券会社で買えます。私の主軸はSBI証券ですが、これから口座を作るなら米国の商品にも強いマネックス証券、相談しながら進めたいなら松井証券が有力です。口座開設・維持は無料です。
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免責事項:本記事は筆者個人の経験と分析に基づく情報提供であり、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資判断は最終的にご自身の責任で行ってください。記事内容の正確性には注意していますが、市況等の変化により情報が古くなる可能性があります。
本記事は情報提供を目的としており、投資助言・勧誘を目的とするものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
