「SPYD やめとけ」。そう検索して、この記事にたどり着いた方が多いはずです。
先に立場を書きます。私はSPYDを持っていません。一度も買ったことがありません。
ただし、理由は利回りでも減配でもありません。中身を見て、自分には合わないと判断したからです。
この記事では、SPYDの分配利回り4.21%が何でできているのかを分解します。セクターの比率、分配金の7年分、5年と10年のリターン、そして「月◯円の分配金に必要な元本」まで、すべて数字で出します。
結論:4.2%は「もらえる額」ではなく、選び方の結果です
先に答えを書きます。
SPYDは、S&P500に入っている500社のうち、配当利回りが高い上位80社だけを選んで、均等に持つETFです。ETFとは、株式のようにいつでも売買できる投資信託のことです。
利回りの高い会社だけを選ぶと、業種がかたよります。実際、不動産が24.25%、公益が10.63%で、この2つだけで約3分の1です。
そして、この2つは金利が上がると弱い業種です。つまり4.2%という利回りは、その偏りを引き受けた結果として出ています。
数字はすべて2026年9月11日終値、またはState Street公式の2026年9月10日時点のものです。
SPYDとは何か——S&P500の高配当上位80社を、均等に持つETF
まず、商品の姿を押さえます。
SPYDは、ステート・ストリートという米国の運用会社が出しているETFです。同社はSPDR(スパイダー)というブランドでETFを展開しています。
連動する指数は「S&P 500 High Dividend Index」です。S&P500の中から配当利回りの高い80社を選び、時価総額ではなく均等に組み入れます。
主な数字を並べます。
| 項目 | SPYD | 参考:VOO(S&P500) |
|---|---|---|
| 分配利回り | 4.21%(30日SEC利回りは4.41%) | 1.05% |
| 経費率 | 年0.07% | 年0.03% |
| 銘柄数 | 79 | 518 |
| 純資産 | 約74.8億ドル | 約1.07兆ドル |
| 株価 | 48.49ドル | 702.56ドル |
経費率0.07%は十分に安い水準です。純資産も約74.8億ドルあり、規模で不安を感じる商品ではありません。
問題は、コストでも規模でもありません。中身です。
中身を開くと、不動産24.25%と公益10.63%でした
このグラフは、SPYDの業種別の比率です。
いちばん上が不動産で24.25%です。REIT(不動産投資信託)が中心で、S&P500全体の比率とは比べものになりません。
いっぽうで、情報技術は3.34%しかありません。S&P500では最大の業種ですが、配当利回りが低いため、上位80社にほとんど残らないからです。
高い利回りを選ぶという行為は、同時に業種を選ぶ行為でもあります。
金利が上がると、この2つは同じ方向に動きます
なぜ不動産と公益を分けて見るのか。理由は、どちらも借金をして事業をする業種だからです。
不動産は物件を買うために、公益は発電所や送電網を作るために、大きな資金を借ります。金利が上がると、その利息の負担が増えます。
もう1つあります。投資家から見ると、この2つは「利回りを買う資産」です。国債の利回りが上がると、わざわざ株で利回りを取る理由が薄れます。
実際にその日を見ました。2026年9月11日、日経平均が1,259円下げた日です。保険と海運が上がり、不動産に近い業種と半導体が下がりました。→ 日経1,259円安の日、私のS&P500投信は8円上がっていました
SPYDの中身は、その「下がった側」に寄っています。これは欠陥ではなく、設計どおりの姿です。
「2020年に減配した」は本当か——年で見るか、四半期で見るか
次に、分配金です。検索でよく見るのが「SPYDは減配した」という話です。
結論から言うと、本当です。ただし、どのくらい減ったかは見方で変わります。
このグラフは、2019年から2025年までの年間の分配金です。1株あたりのドル建てで、四半期4回の合計になります。
年合計は−6.5%、四半期は−41.1%でした
年の合計で見ると、2019年の1.7463ドルが、2020年は1.6321ドルになりました。減少率は6.5%です。
翌2021年は1.5493ドルで、さらに5.1%減りました。2年かけて、ゆっくり1割ほど減った形です。
ところが四半期で見ると、景色が変わります。2020年9月の分配は0.2636ドルで、前年同期比41.1%減でした。
さらに大きいのが2021年12月です。0.1276ドルしかありません。同じ年の3月(0.6362ドル)と比べると79.9%減です。
| 年 | 年間分配金(ドル) | 前年比 |
|---|---|---|
| 2019 | 1.7463 | — |
| 2020 | 1.6321 | −6.5% |
| 2021 | 1.5493 | −5.1% |
| 2022 | 1.9834 | +28.0% |
| 2023 | 1.8276 | −7.9% |
| 2024 | 1.8637 | +2.0% |
| 2025 | 1.9570 | +5.0% |
2025年は、2019年より12.1%多く出ています
ここは公平に書きます。分配金は戻っています。
2025年の合計は1.9570ドルで、減配前の2019年より12.1%多い金額です。2026年も、実績のある2回分は前年同期より8.0%増えています。
つまり「SPYDは減配して戻っていない」は事実と違います。正しくは「2年かけて1割減り、その後5年かけて戻った」です。
ただし、四半期ごとの金額は大きく揺れます。毎回同じ額が入ると考えていると、10月の入金を見て驚くことになります。
この「利回りは将来の受取額の予告ではない」という話は、以前に別の角度でも書きました。→ 株価が5倍になった配当株を、売らずに持ち続ける条件は「年3.1%」だった
利回り1位が、リターン1位ではありませんでした
では、資産としてはどう増えたのか。分配金を再投資した前提の年率リターンを並べます。
1年だけ見ると、差はほとんどありません。SPYDが14.18%、VOOが18.54%です。
ところが5年になると、SPYDは8.60%、VOOは12.93%で、差は4.33ポイントに開きます。
10年ではさらに開きます。SPYD 8.34%に対して、VOOは15.36%です。差は7.02ポイントになります。
高配当ETFを4本並べた記事でも、同じねじれが出ていました。利回り1位のSPYDが、5年リターンでは最下位でした。→ VYM・HDV・SPYD・DVYを2026年最新データで徹底比較
念のため書きますが、これは「SPYDが悪い商品」という意味ではありません。利回りとリターンは別の数字だ、というだけです。
月3万円の分配金に必要な元本は、950万円でした
ここからは、使う側の計算です。
米国ETFの分配金には、二段階の税金がかかります。まず米国で10%が引かれ、その残りに日本で20.315%がかかります。
そして口座によって手取りが変わります。特定口座なら確定申告の外国税額控除で米国分をおおむね取り戻せますが、NISAでは米国の10%は戻りません。日本の税金がゼロなので、控除する相手がいないからです。
この仕組みは、VYMの記事で詳しく書きました。→ VYMは新NISAで買える?——つみたて投資枠✕・成長投資枠◯の理由
実際に計算してみてください。
月いくらの分配金がほしいですか?──必要な元本を計算します
SPYDの分配利回り(税引前)と、口座の種類を選んで計算します。米国で10%が引かれ、特定口座ではさらに日本で20.315%がかかります。
※ 分配利回りは変動します。初期値は分配利回り4.21%(2026年9月10日時点・State Street公式)です。為替は1ドル154.65円(2026年9月11日の三菱UFJ銀行の仲値)としています。売買手数料・為替手数料・分配金の増減は考慮していません。特定口座の外国税額控除には限度額があり、全額戻るとは限りません。
初期値のまま計算すると、月3万円の分配金を受け取るには、NISAで約950万円が必要です。特定口座なら約1,073万円になります。
同じ月3万円でも、口座の違いで123万円ほど差が出ます。利回りの数字だけを見ていると、この差は見えません。
私が買わない理由と、買っていい人の条件
最後に、自分の話をします。
私はSPYDを持っていません。理由は3つあります。
1つ目は、中身が金利に寄っていることです。不動産と公益で約3分の1を占める商品は、私が持っているVOOやオルカンと、痛む場面が重なりません。分散のつもりで買うと、別の偏りを増やすことになります。
2つ目は、いま配当を必要としていないことです。私はまだ資産を取り崩す段階にいません。配当を受け取れば、その都度税金がかかります。使わないお金に税金を払うのは、順番が違うと考えています。
3つ目は、持つ理由を1行で書けないことです。「利回りが高いから」は、値段の話であって理由になりません。
それでも、SPYDを買っていい人はいます。私の場合と、読者の方への考え方を分けて並べます。
| 項目 | 私(投資歴18年) | 読者の方への考え方 |
|---|---|---|
| SPYD | 未保有。買ったことがありません | 中身を見て納得できるなら、選択肢に入ります |
| 中核 | VOOとQQQを特定口座で6年。新しく買う分は投資信託 | オルカンかS&P500の投資信託で足ります |
| 買っていい条件 | 取り崩す段階に入ったら、あらためて考えます | 現金収入が要る段階にいて、不動産の比率を納得して受け入れられる方 |
| 置く口座 | — | 配当を使うならNISA、再投資が中心なら特定口座も検討 |
高配当は「悪いもの」ではありません。私にとっては、まだ順番が来ていないだけです。同じことをVYMの記事でも書きました。
中身を確かめてから買いたい方へ
SPYDのような米国ETFは、証券会社によって為替手数料や取扱いが違います。買う前に、セクター比率と分配履歴を自分で確認できる環境にしておくと、利回りだけで決めずに済みます。私の主軸はSBI証券ですが、証券会社は用途で使い分けるのが合理的です(私の保有=万人への推奨ではありません)。米国株まで幅を持たせたいならマネックス証券、少額から相談しながら始めたいなら松井証券が候補になります。どちらもNISAで米国ETFを買えます。
まとめ
- SPYDの分配利回り4.21%は、S&P500の高配当上位80社に絞った結果です。不動産24.25%と公益10.63%で、およそ3分の1を占めます。
- 「2020年に減配した」は本当です。ただし年合計では−6.5%、四半期では−41.1%で、2021年12月は同年3月比−79.9%でした。2025年には2019年比で12.1%まで戻っています。
- 年率リターンは5年でSPYD 8.60%・VOO 12.93%、10年で8.34%・15.36%です。期間を延ばすほど差が開きます。
まずは、自分が買おうとしている商品のセクター比率を見てください。運用会社の公式ページに必ず載っています。上位2業種の合計が3割を超えていたら、その商品は「分散」ではなく「選択」をしています。
利回りは、もらえる額の予告ではありません。何を選んだかの結果です。数字の高さではなく、その数字がどこから来ているかを見てから決めてください。
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※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品への投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任のもとで行ってください。過去の実績は将来の成果を保証しません。分配利回り・セクター比率は2026年9月10日時点、株価とリターンは2026年9月11日終値時点のものです。
本記事は情報提供を目的としており、投資助言・勧誘を目的とするものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
