AGGとBNDを調べたことがあります。自分のためではありません。人に頼まれて調べました。
そのとき見た数字はマイナスでした。だから「これはおすすめできない」と答えました。結果として、その判断は正しかったことになります。
ただ、いま同じ質問をされたら、私は同じ答え方をしません。「過去がマイナスだったから」は、いま使える理由ではないからです。2023年から、この2本は3年続けてプラスになっています。
それでも私は買いません。理由は別のところにあります。
この記事では、まず「BNDとAGGはどちらが良いか」という問い自体を数字で片づけます。そのうえで、本当の分かれ目がどこにあるのかを書きます。
先に結論です
- BNDとAGGは、ほぼ同じ商品です。どちらを選ぶかで悩む時間は、ほとんど価値を生みません
- 本当の分かれ目は「BNDかAGGか」ではなく、「債券ETFか、個別の債券か」です
- 決定的な違いは満期があるかどうか。債券ETFには、元本が返ってくる日が来ません
- 私はどちらも買いません。ただし「債券ETFは駄目」という意味ではありません。私の設計に合わないだけです
BNDとAGGは、どのくらい同じなのか
まず言葉を決めておきます。BNDはバンガード社の「トータル債券市場ETF」、AGGはブラックロック社(iシェアーズ)の「コア 米国総合債券ETF」です。どちらも米国の債券市場全体に、まとめて投資する商品です。
この2本がどれくらい似ているかは、追いかけている指数を見ると分かります。
| BND | AGG | |
|---|---|---|
| 運用会社 | バンガード | ブラックロック(iシェアーズ) |
| 連動指数 | Bloomberg US Aggregate の浮動株調整版 | Bloomberg US Aggregate |
| 経費率 | 0.03% | 0.03% |
| 分配頻度 | 毎月 | 毎月 |
| 分配利回り | 約3.8〜4.0%(算出方法により幅があります) | |
同じ指数です。片方が浮動株調整版というだけで、中身はほぼ重なります。経費率も同じ0.03%。分配頻度も同じ毎月です。
では実際のリターンはどれくらい違ったのか。年ごとに並べます。
| 年 | BND | AGG | 差 |
|---|---|---|---|
| 2020 | +7.71% | — | — |
| 2021 | −1.86% | −1.77% | 0.09pt |
| 2022 | −13.11% | −13.02% | 0.09pt |
| 2023 | +5.66% | +5.66% | 0.00pt |
| 2024 | +1.38% | +1.31% | 0.07pt |
| 2025 | +7.08% | +7.19% | 0.11pt |
差は最大で0.11ポイントです。2023年にいたっては小数第2位まで同じでした。
この2本を比べて「どちらが優れているか」を決めようとするのは、同じ製品の色違いを前に何時間も悩むようなものです。どちらを選んでも、5年後の結果はほとんど変わりません。
だから、悩むべき場所を移します。
その前に——新NISAの成長投資枠では買えません
「どちらを買うか」を考える前に、確認しておくことがあります。
新NISAの成長投資枠には除外ルールがあり、毎月分配型の商品は対象から外れます。BNDもAGGも毎月分配です。
実際、証券会社が公表している成長投資枠の対象米国ETFの一覧に、この2本は入っていません。債券系で対象になっているのは、四半期ごとに分配するEDV(超長期国債)やVTIP(短期インフレ連動債)といった銘柄です。
⚠️ ただし、この手のリストは動きます。私は以前、HDVが新NISAの成長投資枠から外れた件を記事にしました。買えていたものが買えなくなることは、実際に起きています。
最後は必ず、ご自身の証券口座の注文画面で確認してください。制度で決まる話であって、記事や一覧表が保証してくれるものではありません。
課税口座でなら、SBI証券・楽天証券・マネックス証券などで普通に買えます。
私が調べたときの話
冒頭に書いたとおり、私はこの2本を調べたことがあります。コロナのあと、「債券ってどうなんだろう」と思った時期がありました。
ただし、自分が買うために調べたのではありません。人に頼まれて調べただけです。
これは自分でも後から気づいたことなのですが、人のために調べると、見る目が変わります。自分の買い物なら「まあ試しに少し」で済ませられます。でも人に答えるとなると、その人が実際に買うことになる。だから最初から「勧められるかどうか」で見ていました。
そして見た数字はマイナスでした。だから「これはおすすめにならないと思う」と答えました。
それ以降、私はこの2本を調べていません。
2022年に何が起きたのか
上の表で、ひとつだけ桁が違う年があります。2022年の−13%です。
債券は「株より安全」と説明されることが多い資産です。その債券が、1年で13%下がりました。
理由は金利です。金利が上がると、すでに発行されている債券の価格は下がります。低い金利で発行された債券は、高い金利の新しい債券に比べて魅力が落ちるからです。2022年は世界的に金利が急上昇した年でした。
ここまでは、よくある説明です。問題はこの先にあります。
満期がない、という決定的な違い
個別の債券を持っている場合、価格が13%下がっても、慌てる必要はありません。満期まで持てば、額面が返ってくるからです。途中の値下がりは、売らないかぎり関係ありません。
私が米国債でストリップス(ゼロクーポン債)を選んでいるのも、この設計だからです(米国債|ストリップス vs クーポン、私はストリップス派の理由)。満期という出口が、買う前から決まっています。
債券ETFには、この満期がありません。
ETFは中身の債券を入れ替え続けます。満期が近づいた債券を売り、新しい債券を買う。この動きを永久に続けます。だから「この日が来たら額面が返る」という日が、いつまで経っても来ません。
| 個別の債券(ストリップス等) | 債券ETF(BND・AGG) | |
|---|---|---|
| 満期 | ある | ない |
| 元本が返る日 | 買う前から決まっている | 来ない |
| 途中の値下がり | 売らなければ無関係 | 売るときの価格がすべて |
| 出口 | 満期が決めてくれる | 自分で決め続ける |
つまり債券ETFの−13%は、含み損として待っていれば消えるものではありません。金利が下がって価格が戻るのを待つしかないという性質のものです。
5年持って、年率−0.36%
これが理屈ではなく実際に起きていることを、数字で示します。
BNDの5年平均年率リターンは −0.36% です。
5年間持ち続けて、年率でマイナス。分配金を再投資した上での数字です。
もう一度、上の表を見てください。2023年 +5.66%、2024年 +1.38%、2025年 +7.08%。3年続けてプラスだったのに、5年で見るとまだマイナス圏にいます。
2022年の−13%が、それだけ深かったということです。そしてその穴は、まだ埋まっていません。
それでも「過去がマイナスだから買うな」とは書きません
ここが、この記事でいちばん書きたかったところです。
私は人に頼まれて調べたとき、「マイナスだからおすすめしない」と答えました。そして、その答え方は本当は雑でした。
過去がマイナスだったことは、これから下がる理由にも、これから上がる理由にもなりません。私は普段、インデックス投資について「過去のリターンで判断しない」と書いています。その物差しを、自分が債券を見るときには使っていませんでした。
実際、2023年からの3年間は素直にプラスでした。「マイナスだから」を理由にしていたら、この3年を説明できません。
だから理由を置き直します。買わない理由は、値動きではなく構造に置きます。
私のラインに当てると、答えが出ます
私は米国債について、「税引後で実質5%=表面でおよそ5.7%」という購入ラインを決めています。これは動かしません(米国債30年が利回り5.2%、19年ぶりの高さでも私が買わない理由)。
理由は3つです。4%ルールを明確に上回りたいこと。S&P500の長期平均と並びたいこと。そして債券は価値を生まない商品だから、株式以上のプレミアムが要るということ。
この物差しを、そのままBNDとAGGに当てます。
| 数字 | 私の判断 | |
|---|---|---|
| 私の購入ライン | 表面およそ5.7% | — |
| BND / AGG の分配利回り | 約3.8〜4.0% | 届かない |
| 米国債30年(2026年8月時点) | 約5.2% | これでも待っている |
米国債そのものが5.2%でも待っている私が、3.8%の債券ETFを買う理屈はありません。これが構造としての理由です。過去のリターンは関係ありません。
毎月分配だから駄目、ではありません
ひとつ、混ぜてはいけない話があります。
私は毎月分配型のファンドを勧めません。ただしその理由は「毎月配ること」そのものではありません。
日本の毎月分配型投信で問題になってきたのは、運用益が足りないときに元本を取り崩して配るという形です。自分の資産を切り崩して受け取っているのに、増えているように見える。ここが問題でした。
BNDやAGGの毎月分配は、これとは違います。債券から入ってくる利子を、そのまま渡しているだけです。タコ足ではありません。
では何が引っかかるのか。複利です。
受け取った分配金は、自分で再投資しないかぎり複利になりません。毎月受け取るということは、毎月その判断をするということです。ストリップスなら、満期まで自動的に複利が効きます。手を動かす必要がありません。
ここも「良い・悪い」ではなく、自分がどちらの設計を選ぶかという話です。
それでも、債券ETFが要る人はいます
ここまで私が買わない理由を書いてきました。でもそれは、私の設計の話です。
私は今も現役で稼いでいて、S&P500に連動するETFを6年持ち続けています。値動きに耐えられる時間があります。だから債券の出番がありません。正直に言えば、私自身の答えは「オルカン一本でいい」に近いです。
ただ、条件が違えば答えも変わります。
| 私(投資歴18年・現役) | 債券が要るかもしれない人 | |
|---|---|---|
| 状況 | 積立を続けている最中 | 取り崩しが近い/始まっている |
| 下落への耐性 | 時間で吸収できる | 時間が足りない |
| 債券の役割 | 今は無い | 値動きを小さくする |
| BND / AGG | 買わない | どちらでもいい(差は0.11pt) |
そして債券を持つと決めたなら、BNDとAGGのどちらを選ぶかで悩む必要はありません。差は誤差です。それより「なぜ債券を持つのか」を先に決めるほうが、はるかに結果を左右します。
頼まれて調べるときの、3つの見方
最後に、私が実際にやっている手順を残しておきます。誰かに「この商品どう?」と聞かれたときに使えます。
1. 自分のラインと比べる
利回りを見て「高い・低い」と感じるのは、比べる基準がないからです。先に自分の基準を決めておけば、見た瞬間に答えが出ます。私の場合は表面5.7%です。3.8%なら、それだけで終わります。
2. 満期があるかを見る
元本が返ってくる日があるかどうか。これは商品説明の目立つところには書かれていません。ETFなら、まず「ない」と思って構いません。
3. NISAで買えるかを、注文画面で確認する
制度の話は変わります。記事や一覧表ではなく、自分の口座の注文画面が最終確認です。
証券口座について
ここまで書いてきたことは、どれも「自分で数字を見に行けること」が前提になっています。利回りを自分のラインと比べる、満期の有無を確かめる、NISAの対象かを注文画面で見る。どれも口座がないとできません。
私はマネックス証券を使っています。米国債の個別銘柄を扱っているので、「債券ETFと個別債を並べて比べる」という、この記事でやったことがそのまま口座の中でできます。
「BNDとAGGのどちらが良いか」を検索して答えを探すより、自分の基準で数字を見比べられる環境を持つほうが、長い目では効きます。
まとめ
- BNDとAGGは同じ指数のほぼ同じバージョン。経費率も0.03%で同じ、リターンの差は最大0.11ポイント
- 新NISAの成長投資枠では買えません(毎月分配のため)。⚠️最終確認は注文画面で
- 本当の分かれ目は債券ETFか個別債か。決定的な違いは満期の有無
- 2022年の−13%は、満期がないため待っていても自動では戻らない。5年平均年率は−0.36%
- ただし「過去がマイナスだから買うな」とは言いません。3年連続プラスだった事実と矛盾するからです
- 私が買わない理由は3.8%が私のライン(表面5.7%)に届かないこと。構造の話です
- 債券が要る読者はいます。その場合BNDとAGGはどちらでも構いません
動画でも解説しました(約11分)。この記事の内容を5章に分けて音声で解説しています。BNDとAGGの差がどのくらい小さいのか、そして満期がないとはどういうことかを、順を追って追いかけられるように作りました。
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読者のみなさんへ
- 積立を始めたばかりの方——債券を混ぜるかどうかは、まだ考えなくて大丈夫です。まず続けられる金額を決めてください
- 債券を検討している方——「BNDかAGGか」より先に、なぜ債券を持つのかを決めてください。そこが決まれば銘柄はどちらでも構いません
- 取り崩しが近い方——値動きを小さくする目的なら債券には役割があります。ただし満期がないことだけは理解した上で持ってください
※ 本記事は特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。リターン・利回り・経費率は各種データ提供元の公表値に基づきますが、算出方法や基準日により数値が異なる場合があります。新NISAの対象商品は変更されることがあり、最終的な可否はご自身の証券口座でご確認ください。投資判断はご自身の責任のもとで行ってください。
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本記事は情報提供を目的としており、投資助言・勧誘を目的とするものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
