4月24日に、私はこう書きました。「2.9兆ドルのIPO戦争。全員が勝てるわけがない。3社のどれを選ぶかが問われる」と。
それから、たった1ヶ月。私が見ているAI投資の景色は、まるで違うものになりました。
結論から書きます。今は「個別株を選ばなくても、AIブームに乗れる時代」になりました。鍵は、Nasdaq(アップルやエヌビディアなど米国のハイテク企業が多く上場する株式市場)に連動するインデックス投資です。この記事では、なぜそう言えるのかを、この1ヶ月で起きた制度変化と数字で、順を追って解説します。
私は投資歴18年、今もVOO(バンガードS&P500 ETF)を中心に米国インデックスを積み立てている、ごく普通の個人投資家です。そして、この記事を書く調査や壁打ちには、Anthropic(対話AI「Claude」を開発する米国のAI企業)のClaudeを毎日使っています。AIの最前線を「使う側」として日々触れている立場から、今の構造変化を書きます。
- 第1章 4月24日から1ヶ月で激変したAI投資地図
- 第2章 衝撃の逆転——Anthropic 9,000億ドル、OpenAIを超える
- 第3章 SpaceX 6月IPO予定——「宇宙独占の布石」として読む
- 第4章 AIに求められる「深さと早さ」——競争の真の評価軸
- 第5章 海外ポッドキャストが伝える現場の温度感
- 第6章 Nasdaq Fast Entryルール——5月1日施行
- 第7章 S&P500も追随を検討——制度全体の構造変化
- 第8章 「次のMag 7」候補が形成される——ただし全社が上場するとは限らない
- 第9章 私が今、何をしているか——インデックス投資家の現実的対応
- 第10章 残るリスクと注意点——「強欲は様子見」
- 第11章 結び——制度変化は機会、しかし哲学は変えない
- 第12章 米国株を買うための証券会社——マネックスと松井の使い分け
- まとめ
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第1章 4月24日から1ヶ月で激変したAI投資地図
まず、この1ヶ月で何が起きたのかを時系列で整理します。一つひとつは別々のニュースですが、並べると一つの方向を指していることが見えてきます。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 4/24(私の前回記事) | 「2.9兆ドルのIPO戦争、全員が勝てるわけがない」=3社のどれを選ぶかという問い |
| 5/1 | Nasdaqが新ルール「Fast Entry」を施行 |
| 5/6 | AnthropicとSpaceXの計算インフラ提携が報じられる |
| 5/15前後 | Anthropicの評価額が9,000億ドルに到達、OpenAIの8,520億ドルを逆転 |
| 6/12(予定) | SpaceXがIPO(新規株式公開)を予定(あくまで予定で、撤回・延期の可能性は常にあります) |
| 5/24(本記事) | 問いが「3社のどれを選ぶか」から「全部を持つ方法」へ転換 |
事実として、これらは別々の出来事です。けれど私の解釈では、すべてが同じ一点に収束しています。「個別の勝ち馬を当てなくても、Nasdaq100というインデックスを持つだけで、次のAIの勝者が自動的に手元に入ってくる」という構造が、制度として整いつつあるのです。
1ヶ月前の私は「3社のどれを選ぶか」を悩んでいました。今の私は「選ばなくていい」と考えています。順番に説明します。
第2章 衝撃の逆転——Anthropic 9,000億ドル、OpenAIを超える
まず、いちばん象徴的なニュースから。AI企業の評価額で、逆転が起きました。
事実として、Anthropicの評価額は2026年2月のSeries G(企業が未上場のまま機関投資家から大型資金を調達するラウンド)で3,800億ドルでした。それが、わずか3ヶ月後の5月15日前後には9,000億ドルに届こうとしています。約2.4倍です。リード投資家にはDragoneer、Greenoaks、Sequoia(著名な米国ベンチャーキャピタル)、Altimeterなどが名を連ねたと報じられています(出典:Financial Times、Bloomberg、CNBC)。
そして、この9,000億ドルは、OpenAI(「ChatGPT」を開発する米国のAI企業)の評価額8,520億ドル(3月時点)を上回りました。長く「AI=ChatGPT=OpenAI」という印象が強かったなかで、評価額という一つの物差しでは、Anthropicが追い抜いたことになります。
このグラフは、Anthropicの評価額が2026年2月の3,800億ドルから5月の9,000億ドルへと約2.4倍に伸び、OpenAIの8,520億ドルを上回った様子を示しています。
なぜここまで急騰したのか。背景には売上の急成長があります。Anthropicの年間売上は、2025年末の約90億ドルから、2026年には450億ドルへと予測されています(出典:Financial Times、CNBC)。とくにエンジニア向けの「Claude Code」というツールだけで、年間25億ドル規模に達したとも報じられています(出典:Forbes)。私自身、まさにこのClaude Codeを毎日使っている一人なので、この数字には実感が伴います。
ただし——ここは冷静に書きます。私の解釈では、「Anthropicが一歩抜けた」のは事実ですが、最終的な勝者が誰になるかは、誰にも分かりません。OpenAIも依然として世界有数の規模を持つ巨大企業ですし、評価額は人気投票のように上下します。だからこそ、次章以降で述べる「個別株を選ばずインデックスで持つ」という発想が効いてくるのです。
第3章 SpaceX 6月IPO予定——「宇宙独占の布石」として読む
次は、この1ヶ月で最も注目を集めたニュース、SpaceX(イーロン・マスク氏が率いる米国の宇宙開発企業)のIPOです。
3-1 IPOの基本データ(予定であって確定ではない)
事実として報じられている内容を整理します。SpaceXは2026年4月1日に機密版のS-1(米国でのIPO申請書類)を提出したとされ、評価額は1.75兆〜2兆ドル、調達額は最大750億ドルと見込まれています。これは史上最大級で、過去最大だったサウジアラムコの2倍を超える規模です。上場予定日は6月12日、ティッカー(証券コード)はSPCX、個人投資家向けの割当枠は通常の約3倍にあたる30%が用意されると報じられています(出典:Reuters、Yahoo Finance、aifundingtracker.com)。
ただし、これはすべて「予定」です。IPOは直前で撤回・延期されることが珍しくありません。日付や評価額に賭けるような投機は、私はおすすめしません。ここは強調しておきます。
3-2 「AI企業」と見る一般的な見方
多くのメディアは、SpaceXを「AI企業」の文脈で語ります。マスク氏のxAI(同氏が設立した生成AI企業)との統合、NVIDIA(エヌビディア、AI半導体で世界首位の米国企業)の最新チップ採用、そして前述のAnthropicとの計算インフラ提携(5月6日報道)——これらは確かに事実です。
でも、私の解釈では、それはSpaceXの本質ではありません。
3-3 本質は「宇宙インフラの独占」の布石
私が読んでいるSpaceXの本質は、「宇宙インフラの独占」です。ここで記事全体を通じて唯一の比喩を使います。SpaceXが狙っているのは、宇宙をめぐる三位一体の独占だと、私は見ています。
- 輸送の独占——ロケットのFalcon・Starshipで、地上から宇宙へモノと人を運ぶ手段を握る
- 通信の独占——Starlink(SpaceXが運用する衛星インターネットサービス)で、宇宙から地上をつなぐ通信網を握る
- AI処理の独占——xAIで、宇宙から得られる膨大なデータを処理する頭脳を握る
輸送・通信・AI処理。この三つを一社で押さえようとしている、というのが私の読みです(これは私の解釈であって、SpaceXの公式説明ではありません)。AIは、この三位一体の一角にすぎない。だから「AI企業」という括りは、SpaceXを小さく見せてしまうと感じます。
3-4 Starlinkを日本で見かけるようになった実感
抽象論だけでは伝わりにくいので、私自身の実感も書きます。最近、Starlinkを日本で目にする機会が増えました。携帯キャリア各社がStarlinkとの連携を宣伝し始め、SNSでも屋外で実際に使っている動画をよく見かけます。実験段階を越えて、本格普及のフェーズに入ったのだと感じます。
正直に言うと、私自身はインドア派なので、Starlinkを自分が使う場面はあまり思いつきません。でも、キャンプや登山、海の上——電波の届かない場所に行くアウトドア派にとっては、すでに強力な選択肢です。災害時の通信手段としても心強い。庭先やベランダにアンテナを張れば、自宅でも使えます。価格や品質をめぐる競争はこれからですが、「宇宙からの通信」が生活の選択肢に入り始めたのは確かです。
3-5 投資判断としての意味
ここが大事です。SpaceXを「AI企業」として買うなら、その価値はAIブームの熱次第で上下します。でも「宇宙インフラの独占」として読むなら、たとえAIブームが冷めても、輸送・通信の基盤は20年、30年先まで価値が残る。私はそう考えています。
とはいえ、個人投資家がSpaceX単体に賭けるのは現実的に難しい。未上場ですし、上場しても初値が読めません。だからこそ——次章以降で述べるとおり、「Nasdaqに乗る」ほうが、はるかに現実的な選択肢になります。
第4章 AIに求められる「深さと早さ」——競争の真の評価軸
少し視点を変えます。投資の前に、そもそも「AIの競争」が今どこで起きているのかを、使う側の実感から書きます。
4-1 「使うかどうか」は終わった
事実として、AIはもう「使うかどうか」の段階を過ぎました。個人も企業も、当たり前に使っています。次の競争軸は、私の解釈では「どれだけ深く、どれだけ早く」です。
4-2 スピードが命の領域
一瞬の遅れが命やお金に直結する現場があります。自動運転、信号制御、株式トレード(ミリ秒を争う世界)、救急医療、ロボット制御。ここでは「正確だが遅い」では使い物になりません。
正直に書きます。私が毎日使っているClaude——とくにClaude Codeは、本当に便利です。深く考える仕事は抜群に得意で、もうほとんど任せていいとさえ思っています。ただ、瞬時の判断が要る用途——リズミカルな会話、同時通訳、運転、ゲーム——には、まだスピードが足りないと感じます。困っているわけではありませんが、「ここがもっと速くなったら」という期待は強い。私はAIに、その早さの支援が欲しいのです(これは私個人の使用実感です)。
関連書籍
「生成AI投資の教科書[Google Gemini実践編]」ジョン・シュウギョウ著(ソーテック社・1,870円) — AIを「投資される対象」としてだけでなく、「投資のために使う道具」として捉えた実践書。私がClaudeを毎日の調査や壁打ちに使っているように、生成AIを情報整理や分析の相棒にする具体的な手順が学べます。「AIを使う側」に回りたい人の入門に。
4-3 深さが命の領域
逆に、深さが命の領域もあります。長期予測、複雑な意思決定、数学や哲学、論理構造の分析。ここではClaudeの「じっくり考える」力が活きます。OpenAIの推論特化モデル(時間をかけて考えるタイプのAI)も同じ方向です。私の解釈では、「深く考える」AIと「素早く反応する」AIは、別々の進化系統に分かれつつあります。
4-4 ラプラスの悪魔——AI投資の究極の目標
少し哲学的な話をさせてください。AI投資の究極の目標は、「ラプラスの悪魔」に近づくことだと、私は思っています。
ラプラスの悪魔とは、18世紀フランスの数学者ラプラスが考えた思想実験です。「もし宇宙のすべての原子の位置と運動を知る存在がいれば、その存在には未来が完全に見通せるはずだ」という考え方です。現実には、量子の不確実性や複雑系の性質から、完全な予測は理論上不可能だとされています。でも、「少しでもそこに近づこう」とする競争こそが、今のAI開発の本質ではないか——私はそう感じています。投資も結局は「未来をどれだけ確からしく読めるか」の勝負ですから、この方向性は無関係ではありません。
4-5 用途によって最適解が違う=だからインデックス
ここが投資の話につながります。スピード重視なら自動運転やロボットに強い企業、深さ重視ならAnthropicやOpenAI。どちらが最終的に勝つかは分かりません。用途によって最適解が違うからです。
つまり、「どこに投資すれば当たるか」を読むのは、専門家でも至難の業です。だとすれば、当てにいくより、主要なプレイヤーをまとめて持つ——Nasdaqに乗るほうが合理的だ、という結論に私はたどり着きます。
第5章 海外ポッドキャストが伝える現場の温度感
私が情報源として重宝しているのが、Big Technology Podcast(米テック業界の記者アレックス・カントロウィッツ氏が配信する人気ポッドキャスト)です。5月15日・18日の最新エピソードでは、日本のメディアでは拾いきれない論点が議論されていました。
- AnthropicとSpaceXの計算インフラ契約をめぐる、「Anthropic+SpaceX 対 OpenAI」という新しい対立構図
- SpaceXのIPO直前という時期を意識した、各社のマーケティング合戦という見方
- Anthropicの計算需要が爆発的に伸びているという話
- AIによって人員削減が進んでいるという報道の「真贋」をどう見るか
- 大手の提携戦略への賛否
私の解釈では、海外のポッドキャストの面白さは、「どの企業が伸びた」という動向だけでなく、「そのAIは本物か、誇張か」という真贋の議論まで踏み込む点にあります。投資判断をするうえで、こうした温度感は日本語のニュースだけでは得にくい。情報源を一つ持っておく価値があると感じています。
第6章 Nasdaq Fast Entryルール——5月1日施行
ここからが、今回いちばん伝えたい「制度の話」です。地味ですが、構造を根っこから変える話です。
事実として、2026年5月1日、Nasdaqは「Fast Entry」という新ルールを施行しました。ざっくり言うと、超大型のIPO銘柄は、上場してから15営業日でNasdaq100(Nasdaqに上場する金融以外の主要100社で構成する株価指数)に組み入れられるというものです。これまでは最低でも3ヶ月、長いと1年近く待たされていました。対象は、上場時の時価総額が上位40位以内に入るような新規上場銘柄です(出典:Nasdaq公式、Yahoo Finance)。
これが何を意味するか。SpaceXもOpenAIもAnthropicも、上場すれば、すぐにNasdaq100に入る可能性が高い。そうなると、Nasdaq100に連動するファンドは、これらの銘柄を「自動的に、強制的に買う」ことになります。インデックスファンドは指数の構成に合わせて機械的に銘柄を買い付けるからです。
言い換えると、QQQ(Invesco QQQ Trust、Nasdaq100に連動する米国のETF。ETFとは証券取引所で売買できる投資信託のことです)や、eMAXIS Slim 米国株式(Nasdaq100)のような投資信託を持っているだけで、上場直後の大型AI銘柄が、自分のポートフォリオに自動で組み込まれていく。個別株でAIの勝ち馬を当てにいく必要が、薄れていくのです。
第7章 S&P500も追随を検討——制度全体の構造変化
そして、この動きはNasdaqだけにとどまりません。
事実として、S&P500の指数を算出するS&P Dow Jones Indicesも、同様の新ルールを検討していると報じられています。組み入れまでの待機期間を12ヶ月から6ヶ月に短縮し、利益要件(黒字でなければ組み入れない、という条件)を一部免除する方向です(各社報道)。
私の解釈では、これは大きな構造変化です。「次のMag 7」候補が、上場するやいなや、S&P500にもNasdaq100にも自動で組み込まれていく。インデックス投資家にとっては、構造的な追い風です。VOOやeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)を淡々と積み立てているだけで、次世代の主役を取りこぼしにくくなる。
ただし、後の章で述べるとおり、巨大IPOは上場後にいったん株価が下落しやすいという歴史もあります。「自動で入る=必ず儲かる」ではない点は、忘れないでください。
第8章 「次のMag 7」候補が形成される——ただし全社が上場するとは限らない
では、その「次のMag 7」とは何か。まず今のMag 7を確認します。Mag 7とは「マグニフィセント・セブン」、米国市場を牽引する巨大テック7社のことです。
| 区分 | 企業 | 状態 |
|---|---|---|
| 現在のMag 7 | Apple / Microsoft / Alphabet(通称:Google) / Amazon / NVIDIA / Meta / Tesla | 上場済み(S&P500の約3割を占める) |
| 次のMag 7候補 (上場予定) | SpaceX / OpenAI / Anthropic | いずれも上場は「予定」(確定ではない) |
| その他の候補 | Databricks / Cerebras(上場観測) / Anduril(評価額約600億ドル) | 一部は未上場の大型企業 |
補足すると、Databricksは米国のデータ・AI基盤企業、Cerebrasは AI向けの大型半導体を手がける米国企業、Andurilは米国の防衛テック企業です。いずれも「次」を担いうる存在として名前が挙がります。
ここで誠実に書いておきます。これらが全社、予定どおり上場するとは限りません。過去にも、WeWorkは2019年に上場を撤回しましたし、Stripeのように長く上場を見送り続けている大型企業もあります。だから「Nasdaqに乗る」というのは、IPOの日付に賭ける投機ではありません。中長期で米国の主要テックを丸ごと持ち続ける、という戦略です。仮に3社のうち1社が上場しなくても、既存のNasdaq100は十分に強い。そこは安心材料です。
第9章 私が今、何をしているか——インデックス投資家の現実的対応
では、こうした変化を前に、私自身が何をしているか。結論はシンプルで、「ほとんど何も変えていない」です。
- コア(中核)は、S&P500とNasdaq100。ここは変えません。
- 個別株を新たに追加することはしません。
- Fast Entryのおかげで、次のAI銘柄は「待っているだけで自動的に」入ってくる。だから受け身で構えています。
具体的な保有・積立の中身は、QQQやeMAXIS Slim 米国株式(Nasdaq100)、楽天・NASDAQ-100インデックス・ファンドといったNasdaq100連動と、VOOやeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)です。これは私個人の選択であって、読者全員への推奨ではありません。ご自身の状況に合わせて判断してください。
大事なのは、ここで私の論理が一貫していることです。4月24日に「3社のどれを選ぶか」と書いた私が、5月24日に「選ばなくていい」と言う。これは「考えが変わった」のではなく、「制度が変わったから判断が変わった」のです。事実が変われば、結論を変える。それが誠実な投資態度だと思っています。
関連書籍(2冊)
「株式投資 第6版 長期投資で成功するための完全ガイド」ジェレミー・シーゲル著(日経BP・4,180円) — 「長期で見れば、株式はあらゆる資産のなかで最も報われてきた」ことをデータで徹底論証した名著。私が「個別株を当てにいかず、市場全体を長く持つ」という戦略を取る、その理論的な支柱です。
「インデックス投資は勝者のゲーム──株式市場から確実な利益を得る常識的方法」ジョン・C・ボーグル著(パンローリング・1,980円) — インデックスファンドの生みの親、バンガード社の創始者本人による一冊。「市場に勝とうとせず、市場をまるごと持て」という思想の源流です。本記事の「Nasdaqに乗る」の哲学的なルーツが、ここにあります。
第10章 残るリスクと注意点——「強欲は様子見」
ここまで前向きな話が続いたので、リスクを冷静に並べます。私の信条は「絶望は買い、強欲は様子見」。今はどちらかと言えば、市場は「強欲」に傾いていると見ています。
リスク1:巨大IPOは上場後に下落しやすい。事実として、過去の大型IPOは上場から数ヶ月で株価が下がる例が目立ちます(WeWork、Lyft、Uber、Snowflakeなど)。「上場直後に飛びつく」のは、私は避けます。
リスク2:市場心理は「強欲」に傾いている。米CNNの「Fear & Greed Index」(投資家心理を恐怖〜強欲で示す指標)は、2026年5月時点で「Greed(強欲)」圏にあります。私は5月19日のSCHDの記事でも「強欲は様子見」と書きました。皆が買いたがる時こそ、一歩引く。
リスク3:AIバブルの可能性。1990年代末のドットコムバブルとの類似を指摘する声があります。一方で、現在のAIインフラ投資はGDP比で見ると1%未満で、ITバブル期の2〜5%にはまだ届かない、という冷静な指摘もあります(出典:日経新聞ほか)。過熱なのか、まだ序章なのか——判断は分かれています。
リスク4:上場予定はあくまで予定。SpaceXもOpenAIもAnthropicも、上場は確定ではありません。撤回・延期は常にありえます。
リスク5:個人枠30%の意味。SpaceXのIPOで個人枠が通常の3倍用意される、というのは魅力的に見えます。でも、「皆が買える」時こそ冷静に。私は「絶望は買い、強欲は様子見」の原則を、ここでも崩しません。
関連書籍
「AIバブルの不都合な真実」クロサカタツヤ著(日経BP・2,530円) — 「今のAIはバブルであり、いずれ崩れる」という前提に立ち、崩壊後に何が本物として残るのかを論じた一冊。本記事のように前向きな材料を並べた時こそ、こうした冷静な視座を一冊挟んでおくと、判断のバランスが取れます。「強欲は様子見」の解像度を上げてくれます。
第11章 結び——制度変化は機会、しかし哲学は変えない
1ヶ月で、世界は変わります。Anthropicが逆転し、SpaceXが上場へ動き、Nasdaqがルールを変えた。でも、私の長期投資の哲学は、変えません。
制度変化に気負って「乗ろう」と前のめりになるより、Nasdaq100を淡々と持ち続けて、自然に「巻き込まれる」くらいが、私にはちょうどいい。Nasdaq100に連動するETFや投資信託を持っているだけで、次のMag 7が自動的にポートフォリオに入ってくる。個別株でAIを当てにいく必要は、もうありません。
そして今は「強欲」の局面です。だから、今すぐ一括で飛びつくより、淡々と積み立てるほうが、私には合っています。Nasdaqに乗ろう。ただし、急がず、淡々と。
関連書籍
「【改訂版】本当の自由を手に入れる お金の大学」両@リベ大学長著(朝日新聞出版・1,650円) — 投資の前提となる「貯める・稼ぐ・守る・使う」を含めた、お金の総合的な教科書。新NISAの解説も加筆されています。「インデックスに乗る」の前に、家計とお金の土台を一冊で整えたい初心者の方に、最初の一冊として。
第12章 米国株を買うための証券会社——マネックスと松井の使い分け
最後に、実務の話を。「Nasdaqに乗ろう」と思っても、口座がなければ始まりません。主要なネット証券4社を比べて、おすすめの使い分けを紹介します。
| 証券会社 | 米国株 取扱銘柄数(目安) | 新NISA |
|---|---|---|
| SBI証券 | 5,000銘柄超 | 対応 |
| 楽天証券 | 5,000銘柄超 | 対応 |
| マネックス証券 | 5,000銘柄超 | 対応 |
| 松井証券 | 約5,000銘柄(2026年に拡充) | 対応 |
どこも横並びに見えますが、私が「米国株・米国ETFを深く触る人」におすすめしたいのは、この2社です。
▼ 銘柄を深く分析しながら米国株・ETFを買いたい人:マネックス証券
米国株の老舗で、米国ETFの取扱評価が高い1社。とくに無料の分析ツール「銘柄スカウター米国株」は、企業の業績推移を視覚的に追えて秀逸です。Nasdaq100連動のETFはもちろん、これからの「次のMag 7」を自分で調べたい人に向きます。新NISAの成長投資枠にも対応。口座開設・維持は無料です。
▼ 取扱の幅や若年層の優遇を重視する人:松井証券
2022年2月に米国株取引を開始し、約5,000銘柄(業界最多水準)まで取扱を広げてきた1社。創業100年を超える老舗でありながら、25歳以下は現物株の売買手数料が無料という思い切った優遇もあります。新NISAの成長投資枠に対応。若い世代や、幅広い銘柄から選びたい人に向きます。口座開設・維持は無料です。
口座開設はどちらも無料なので、両方持って使い分けるのも一案です。マネックス=銘柄分析を深掘りする、松井=取扱の幅や25歳以下の優遇を活かす。私の使い分けの基準は、このシンプルな2軸です。
まとめ
- この1ヶ月で、Anthropicの評価額が9,000億ドルに達しOpenAIを逆転、SpaceXが6月IPOへ動き、Nasdaqが「Fast Entry」を施行しました。問いは「3社のどれを選ぶか」から「全部を持つ方法」へ変わりました。
- Fast Entryにより、大型AI銘柄は上場後すぐNasdaq100へ組み入れられます。Nasdaq100連動のETFや投資信託を持つだけで、次のMag 7が自動的にポートフォリオに入ってきます。
- ただし上場は「予定」であり、巨大IPOは上場後に下落しやすく、市場心理は今「強欲」です。私は哲学を変えず、急がず淡々と積み立てます。
Nasdaqに乗ろう。個別株を当てにいかなくても、AIブームには乗れる。ただし、急がず、淡々と。一緒に頑張りましょう。
この記事の内容は、動画でも解説しています。あわせてどうぞ。
長尺動画(約25分):YouTube|Nasdaqに乗ろう 完全解説
ショート動画(30秒):YouTube Shorts|1分で分かるNasdaq
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感想やご意見は、ぜひコメント欄で教えてください。「あなたはNasdaqに乗りますか?」——皆さんの考えも聞かせてもらえると嬉しいです。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品への投資を推奨するものではありません。評価額・IPO日程・制度内容は2026年5月時点の各社報道に基づくもので、今後変動・撤回の可能性があります。投資判断はご自身の責任のもとで行ってください。
本記事は情報提供を目的としており、投資助言・勧誘を目的とするものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
