ETFと投資信託、どっちが正解?——発明者本人がETFに反対して会社を追われた話【新NISA・投資歴18年】

同じ中身の入った2つの器(フタ付き=投資信託とフタの開いた=ETF)を見比べる月城ミオ。ETFと投資信託の違いは行動の設計、を象徴するアイキャッチ インデックス投資

迷ったら、投資信託です。ETFと投資信託の本当の違いは、コストや品揃えではありません。「あなたの行動を、どう設計するか」です。

新NISAを始めるとき、ほぼ全員が一度はこの分かれ道で手が止まります。「ETFと投資信託、何が違うの? どっちを買えばいいの?」——比較表を見ても、決められない。それもそのはずで、スペック比較では、ほぼ引き分けになるように出来ているからです。

代わりに、比較表には出てこない決定打を2つお渡しします。ひとつは、インデックスファンドの発明者本人が、ETFに猛反対して自分の会社を追われたという歴史。もうひとつは、ETF(VOO・QQQ)と投資信託の両方を実際に持っている私の、18年の使い分けです。

※用語の整理:投資信託(とうししんたく)は、運用会社にお金を預けてまとめて運用してもらう商品。1日1回の値段で売買します。ETF(上場投資信託)は、投資信託を証券取引所に上場させたもので、株と同じように1日中リアルタイムで売買できます。Vanguard S&P 500 ETF、通称VOOは米国の代表的なETF、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)、通称オルカンは新NISAで一番人気の投資信託です。

結論:初心者は投資信託。ETFは「売買できる自分」を制御できる人の道具

先に結論の中身を言い切ります。

  • これから始める人・積立で増やす人 → 投資信託(オルカンやeMAXIS Slim S&P500)。自動積立・自動再投資という「何もしなくていい仕組み」が、あなたの規律を代行してくれます。
  • ETFが向くのは、暴落の最中に自分の判断で買い向かいたい人、つまり「1日中売買できる」という機能を使いこなす側に回れる人です。

中身はどちらも同じ指数(S&P500や全世界株式)に連動します。違うのは中身ではなく「器」。そして器は、持ち主の行動を変えます。ここが今日の本題です。

もっと言えば——「どっちがいいんだろう?」と手が止まっている時点で、答えはほぼ決まっています。迷うという事実そのものが、いまは器に規律を任せる段階だというサインだからです。

スペック比較は「ほぼ引き分け」——だから決められない

まず、よくある比較を正直にやってみます。先に種明かしをすると、決定打は出ません。

項目 投資信託(オルカン等) ETF(VOO等)
コスト(信託報酬・経費率)年0.05〜0.1%程度年0.03%程度(VOO)でやや安い
中身(連動する指数)同じ。S&P500ならどちらも同じ500社
買い方金額指定OK(月3万円ぴったり)・1日1回の値段株数単位・リアルタイム価格で売買
分配金自動で再投資(複利が勝手に回る)強制的に払い出し→再投資は手動
新NISAつみたて投資枠投信344本が対象(2026年5月時点)ETFはわずか9本
米国ETFの追加コスト為替手数料+米国源泉10%はNISAでは取り戻せない
スペック比較表(2026年6月時点・概算)。コストはETF、手間のなさは投信。引き分けです。

コストの差は年0.05%前後——100万円につき年500円ほどで、近年どんどん縮小しています。実務の手間(金額指定・自動再投資・つみたて枠)は投資信託の圧勝。つまり「どっちが得か」で選ぼうとすると、永遠に決まりません。実装コストの細かい比較は、別記事「ドルも円も、元を正せばS&P500——VOOを初心者に薦めない3つの理由」に書いたので、ここでは先へ進みます。

発明者は、ETFに反対して会社を追われた

ここからが、表の外の話です。

インデックスファンドを発明したのは、米国の運用会社バンガードの創業者ジョン・ボーグル(1929-2019。「インデックスファンドの父」と呼ばれます)。個人投資家が市場全体を低コストで持てる世界を、文字どおりゼロから作った人物です。

そのボーグルが、1990年代の末、たったひとつの商品への参入をめぐって、自分の作った会社で実権を失います。その商品が——ETFでした

彼の反対理由は、技術的な欠陥ではありません。こうです。「1日中売買できる器は、長期投資家を投機家に変えてしまう」。インデックスファンドは「市場全体を、ずっと持ち続ける」ための道具として発明した。それを株のように秒単位で売買できるようにしたら、人は必ず売買してしまう——彼が恐れたのは、器そのものではなく、器を手にした人間の行動だったのです。

この話の何が重要か。ETFと投資信託の論争は、30年前から「スペックの話」ではなく「人間の行動の話」だったということです。発明者本人が、そう言って職を賭けた。だから現代の私たちが比較表で決められないのは、当然なのです。見るべき場所が違うのですから。

(ちなみにこの後、ETF市場はライバル社が制し、バンガード自身もETFを出します。私が持っているVOOがそれです。この皮肉な経緯は前回の記事で詳しく書きました。)

両方持っている私の話——「売りたくなった瞬間」は、一度もない

私の保有を開示します。ETFのVOOとQQQ(Invesco QQQ Trust、通称QQQ=NASDAQ100連動のETF)をコロナショックの頃から6年。投資信託のeMAXIS Slim S&P500とオルカンを、新NISA開始からわずかに。つまり両方の器を、実際に使っています。

正直に言います。「1日中売買できる」ETFを6年持って、売りたくなった瞬間は、一度もありません。コロナの暴落でも、トランプ関税ショックでも、この6月の急落でも。むしろ逆で、暴落のときに湧いてくるのは「買いたい」という衝動です。私はそういう体質(逆張り・コントラリアン)で、18年かけてその規律を作ってきました。

——では、あなたに「ETFでも大丈夫ですよ」と言えるか。言えません。ここが、今日いちばん大事なところです。

私が売りたくならないのは、ETFという器が優れているからではなく、18年分の規律が器に勝っているからです。リーマンで耐え、コロナで買い増し、その結果として「下落=バーゲン」と感じる回路ができている。この回路がない状態で「いつでも売れる器」を持つとどうなるか。2024年8月の急落で、新NISA口座の投げ売りが話題になったのを覚えている方も多いはずです。

器が、行動を設計する 投資信託=自動の規律 毎月決まった日に自動で買う 分配金は自動で再投資 パッと売れない(1日1回の値段) → 仕組みが規律を代行 初心者の味方はこちら ETF=手動の規律 1日中、いつでも売買できる 暴落の最中に指値で買い向かえる 分配金の再投資も自分で判断 → 規律を自分で持ち込む 自由は、訓練した人の道具 同じ中身(S&P500)でも、器が違えば「あなたの行動」が変わる。
図1:投資信託=自動の規律、ETF=手動の規律。発明者が30年前に見抜いた違い。

だから私の使い分けは、こうなっています。これは私の実装であって、推奨ではありません(読者のみなさんへの推奨は右の列です)。

私(投資歴18年)の実装 読者のみなさんへの推奨
ETF(VOO・QQQ)が主軸。暴落時に手動で買い向かうための器。為替・二重課税のデメリットは承知の上で使う 投資信託(オルカン or eMAXIS Slim S&P500)の自動積立。新NISAつみたて投資枠で、仕組みに規律を任せる
投資信託もわずかに保有(新NISA以降)。自動積立の「何もしなくていい強さ」は自分でも体感している 暴落を2〜3回くぐって「下落で買いたくなる」自分を確認できたら、ETFを道具に加えるのは合理的
保有と推奨は別物です。器の選択は「商品の優劣」ではなく「自分の現在地」で決まります。

補足をひとつ。ETFが合理的になる使い方が、暴落時の買い向かいのほかにもうひとつあります。貯めながら、投資の一部を「使いたい」人です。ETFの分配金は強制的に払い出されるので、再投資せずに生活へ回す設計なら、この「自動でお金が出てくる」性質はデメリットではなく機能に変わります。つまり器は、損得ではなく自分の運用ルールから逆算して決めるもの。貯める段階なら投資信託、使う段階に入ったら受け取り型のETF——そう整理しておくと、一生使える地図になります。

実装の現実——制度も「初心者は投信」と言っている

行動の話を制度がきれいに裏付けています。新NISAのつみたて投資枠(年120万円・積立専用の枠)の対象は、投資信託が344本に対して、ETFはわずか9本(2026年5月時点)。長期・積立・分散に向く商品を金融庁が絞り込んだ結果が、ほぼ投資信託なのです。

さらに米国ETF(VOO等)には、私が別記事で書いた実装コストが乗ります。円をドルに替える為替手数料、株数単位でしか買えない端数問題、そして分配金にかかる米国源泉10%は、NISA口座では取り戻せません(課税口座なら外国税額控除という確定申告の手続きで一部調整できますが、NISAは対象外です)。

手順としては、こうなります。

① ネット証券で新NISA口座を開く → ② つみたて投資枠でオルカン(または eMAXIS Slim S&P500)の自動積立を設定 → ③ あとは触らない。3ステップで、ボーグルが設計した「持ち続ける仕組み」が完成します。どれを積み立てるかで迷ったら「新NISAの投信、結局どれ?」で3問診断を用意しています。

投資信託の自動積立も、将来ETFを道具に加えるときも、土台はネット証券の口座です。私の主軸はSBIですが、用途で使い分けるなら米国株・投信に強いマネックス証券か、サポートの手厚い松井証券。どちらも新NISA対応で、オルカンの自動積立が組めます。※口座開設のタイミングを煽るものではありません。

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よくある不安に答えます

Q1. でも、ETFのほうがコストは安いんですよね?

はい、わずかに。ただし差は100万円につき年500円前後まで縮んでいます。一方、自動再投資がないETFは、分配金を手動で再投資し忘れると複利が欠けます。年500円の節約より、再投資の取りこぼし1回のほうが高くつく——初心者にとっての実質コストは、投資信託のほうが安いというのが私の計算です。

Q2. リアルタイムで売買できないと、暴落のとき逃げられなくない?

その「逃げられる機能」こそ、ボーグルが恐れたものです。長期積立において、暴落時にやるべきことは逃げることではなく続けることでした。これはコロナで積立を続けた人の実績が証明しています。即時に売れない器は、欠点ではなく安全装置です。

Q3. いま投資信託を積み立てています。ETFに乗り換えるべき?

不要です。中身は同じなので、乗り換えで得られるのは年500円程度のコスト差と、引き換えの手間・為替・税の複雑さです。乗り換えを考えるくらいなら、積立額を月1,000円増やすほうが確実に効きます。器の乗り換えは、リターンを生みません。

まとめ:器選びは「自分の現在地」を選ぶこと

  • ETFと投資信託の中身は同じです。違いはスペックではなく「行動の設計」——投資信託は仕組みが規律を代行し、ETFは規律を自分で持ち込む器です。
  • 発明者ボーグルは「1日中売買できる器は投機を招く」とETFに反対し、会社を追われました。30年前から、これは人間の行動の話だったのです。
  • ETFを6年持つ私が売りたくなったことが一度もないのは、器ではなく18年の規律のおかげです。だから、これから始めるあなたには投資信託の自動積立を薦めます。

まずは、ご自身の新NISAのつみたて設定を一度開いて、「自動で買い、自動で再投資される仕組み」が動いていることを確認してみてください。それがあなたの規律の代行者です。

器に規律を任せられるうちは、任せればいい。自由は、訓練を終えた人が手に取る道具です。

📖 発明者本人の言葉で読む

ETFへの反対も、2度のクビも、それでも「持ち続けろ」と言い続けた理由も——ボーグルが最後に遺した回想録『航路を守れ——バンガードとインデックス革命の物語』(幻戯書房)で本人の言葉として読めます。書名がそのまま、この記事の結論です。

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※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品への投資を推奨するものではありません。記載の本数・コスト・税制は2026年6月時点の公表情報に基づきます。投資判断はご自身の責任のもとで行ってください。

【免責事項】
本記事は情報提供を目的としており、投資助言・勧誘を目的とするものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
この記事を書いた人
hiro

投資歴2007年から約18年。VOO・QQQ・金(GLDM)・eMAXIS Slim S&P500・オルカン・個別株を保有。「絶望買い×インデックス投資」で暴落局面こそ買い増すスタイル。長期的なアメリカ経済への信頼を軸に運用しています。AI×投資で資産運用ツールを開発中。完成次第フリーで公開予定。

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