投資のゴールは、何かを買うことではありません。「買えるのに、買わない」という自由を手に入れることです。これが、投資歴18年でたどり着いた私の結論です。
新NISA(少額投資非課税制度)で積立を始め、残高はじわじわ増えている。それでも「私は何のために投資しているのだろう」と、ふと立ち止まる。その気持ち、よく分かります。
今日はその答えを、一本の高級時計をめぐる私の失敗談からお話しします。投資のゴールとは、結局「つり革戦争の終焉」です。最後まで読むと、あなた自身のゴールの決め方まで分かります。
結論:投資のゴールは「買える自分」になることです
先に結論を書きます。投資のゴールは、何かを買うことではありません。「買えるけれど、買うかどうかは自分で選べる」という状態になることです。
欲しいものを手に入れる瞬間がゴールなのではありません。「いつでも手に入れられる側に立っている」という事実そのものが、本当のゴールです。買うか買わないかは、その時の自分に委ねればいい。大事なのは、選べる立場にいることです。
そして、ここからが本題です。その「選べる自分」になったとき、人はつり革戦争から降りられます。これには二重の意味があります。詳しくは、私の失敗だらけの時計遍歴とあわせて見ていきましょう。
そもそも「つり革戦争」とは何か
つり革戦争とは、私が勝手に名付けた言葉です。満員電車でつり革を奪い合う、あの光景のことです。ただし戦場は3つの階層に分かれています。
第1の戦場:腕と時計の「見せ合い」
つり革に手を伸ばすと、袖が落ちて前腕があらわになります。手首には腕時計。男にとって時計は、数少ないアクセサリーです。だから無意識に、腕と時計を見せ合う品評会になります。これが表層の戦場です。
第2の戦場:見栄と「他人との比較」
その奥にあるのが、見栄の戦争です。あの人より良い時計を、あの人より上の階層を。他人と比べて勝とうとする心の戦場です。実はこれが一番やっかいで、一番むなしい戦場でした。私自身がそこで長く戦ってきたからです。
第3の戦場:満員電車そのもの
そして最も物理的な戦場が、満員電車そのものです。毎朝、つり革を求めて押し合う通勤ラッシュ。この戦場から降りられたら、最初の2つの戦争も、自然と終わります。なぜそう言えるのか。私の時計遍歴が答えになります。
私の時計遍歴:勝とうとして、むなしくなった話
ここからは、私自身の正直な失敗談です。保有してきた時計を時系列で並べます。読んでいただくと、「買えること」と「満たされること」が別物だと分かるはずです。
| 時期 | 選んだ時計 | 求めていたもの | 結末 |
|---|---|---|---|
| 最初 | パネライ系の大ぶりな時計 | 勝負・存在感 | 戦場に出る覚悟 |
| 検討 | ロレックス | 王道の安心 | 有名すぎて却下 |
| 購入 | ザ・シチズン | 実用・正確さ | 正解なのに、むなしい |
| 現在 | アップルウォッチ | 戦争からの脱出 | 別の戦争に巻き込まれる |
「勝負」から「正解」へ、そして、むなしさへ
最初は勝負でした。大ぶりで主張のある時計を選びました。次にロレックスも考えました。ただ、あまりに有名すぎる。知らない人がいないブランドは、なんだか居心地が悪い。それで見送りました。
行き着いたのが、ザ・シチズンです。年に5秒しかずれない、世界トップクラスの高精度。光発電なので電池交換もいりません。見栄の軸を降りた人間が選ぶ、静かな「正解」です。
ところが、満たされなかった。正解を手に入れたのに、むなしくなったのです。理由はあとで分かりました。時計戦争は、もともと「勝てば満たされる」ゲームではなかったのです。
アップルウォッチで気づいた、もう一つの戦争
次に私はアップルウォッチをつけました。戦争から降りるつもりでした。ところが、新しい戦争に巻き込まれます。今度は見栄ではなく、「注意(アテンション)」の戦争です。
手首に、通知という名の他人の都合が常駐します。しかも届くのは、セールスと銀行の振込履歴ばかり。「これは、私に必要な情報なのか」と疑問がわきました。
デジタルデトックス(スマホなど情報機器から意識的に距離を置くこと)という言葉があります。けれど、スマホを遠ざけても手首にアップルウォッチをつけていたら、意味がありません。私は矛盾に気づいてしまいました。
記事に登場した時計(私が実際に選んだ一本/※おすすめではなく保有の開示です)
「皆さんも買いましょう」という話ではありません。私が見栄の戦争を降りて選んだのが、このザ・シチズンでした。記事に登場した時計を、物語の登場人物として紹介します。
▼ ザ・シチズン(高精度 年差±5秒 エコ・ドライブ)— 静かな”正解”
同じ年差±5秒でも、特別な一本がほしいなら——30周年記念・藍染(あいぞめ)和紙文字板の「ザ・シチズン AQ4100-65M」も美しい一本です。
▼ G-SHOCK(カシオ)—「時間が分かればいい」に誠実な対極
頑丈さの代名詞で、価格も手の届く範囲。金属ケースの「フルメタル GM-B2100BD」、定番スクエア+健康計測の「G-SQUAD DW-H5600MB」あたりが入口です。
▼ Apple Watch — 私が”今”つけている一本(正直な距離感つき)
便利なのは確かです。ただし私は通知をほぼすべてオフにして、「時計+健康記録」の道具として割り切って使っています。手首にまで通知の窓を増やすと、本末転倒だからです。買うなら、その距離感で。→ Apple Watch(最新モデル)
行き着いた北極星と、「買える自分」の作り方
遍歴の果てに、私の北極星が決まりました。パテック フィリップ(スイスの最高峰の時計ブランド。一国の王侯貴族も愛用してきた、時計界の頂点)のノーチラスという時計です。
中でも現行モデルのノーチラス 5811/1G。青い文字盤の、できる限りシンプルな一本です。なぜこれが、私の「投資のゴールの象徴」になったのか。3つの理由があります。
理由1:見栄の対極にある「気づかれない頂点」
1つ目は、見栄の対極にあるからです。素材は金属の塊ですが、知らない人の目には安物にしか映りません。誰にも気づかれない頂点です。これは、ロレックスを「有名すぎる」と却下した私の美学の、完成形でした。
理由2:私が店で経験した「一見さんお断り」
2つ目は、簡単には手に入らないからです。私は実際に正規店へ見に行きました。結果は、丁寧な「一見さんお断り」。聞けば、その店で相応の購入実績を積まないと、紹介すらされない世界だそうです。
悔しい話です。けれど、ここに学びがありました。これは時計を売る商売ではなく、客を選ぶ商売です。だからこそ、たどり着く価値がある。私のゴールにふさわしい高さでした。
理由3:「皆が飽きた頃に買う」=これはバリュー投資そのもの
3つ目が、投資家として一番しびれた点です。私の作戦はこうです。「皆が熱狂しているうちは見送り、皆が飽きた頃に、正規店で定価で買う」。
これはバリュー投資(本来の値打ちより安く放置されたものを買う投資法)そのものです。ウォーレン・バフェット(世界最高の投資家とされる米国の経営者。割安な優良資産を辛抱強く買うことで知られる)の有名な教えに、こうあります。「他人が貪欲なときに恐れ、他人が恐れるときに貪欲であれ」。
時計に翻訳すると、こうなります。「皆が欲しがるときに見送り、皆が飽きたときに買う」。私の投資哲学である「絶望は買い」と、まったく同じ構造です。
今この時計は、中古市場で定価の何倍もの値がつく熱狂のただ中にあります。実際にいくらか。下が、いま見つけた中古の一本です。
中古で、2,000万円超。これが熱狂の実物です。本来の定価は、その何分の一でした。投資家の私が、こんな高値で追いかけるはずがありません。皆が飽きるまで、待てばいいのです。下の図が、私の頭の中にある「買い場」のイメージです。
では、読者は何を買えばいいのか(保有≠推奨の話)
ここで誤解を防ぎます。私はあなたに高級時計を勧めているのではありません。私の時計は、あくまで私個人の物語です。私が保有・検討しているものと、あなたへの推奨は、まったく別です。
| 項目 | 私個人の物語(まねしなくてよい) | あなたがやるべきこと |
|---|---|---|
| ゴールの象徴 | パテックのノーチラス | 自分だけの「象徴」を決める |
| 中身 | 時計という具体物 | 家・旅・時間・早期退職、何でもよい |
| 手段 | 米ドル建てETF中心(投資歴18年) | 低コストのインデックス投信を淡々と |
| 買い方 | 熱狂が冷めるまで待つ | 市場が下げても積立をやめない |
あなたがやるべきは、高級時計選びではありません。自分だけのノーチラス(自由の象徴)を1つ決めること。そして、低コストのインデックスファンド(日経平均やS&P500など市場全体にまとめて分散投資できる投資信託)を、淡々と積むことです。手段は地味でいい。地味だから続きます。
時計を「目標の象徴」として知りたくなった方へ
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よくある疑問 Q&A
Q. つまり「高級時計を買え」ということですか?
いいえ、逆です。大事なのは時計ではありません。あなたにとっての「ノーチラス」を見つけることです。それは早期退職かもしれないし、家族との時間かもしれません。象徴は人それぞれで構いません。
Q. ゴールに着いたら、投資はやめるのですか?
やめません。私はDie With Zero(死ぬときに資産をゼロに近づける、人生で使い切る考え方)に近い立場です。退職してもインデックスへの投資は続けます。エンジンは止めない。これが私の設計です。「老後は守りに入る」という常識には、私は乗りません。
Q. 贅沢を目指すのは、投資の規律に反しませんか?
反しません。お金は、いつか使うためにあります。貯めること自体が目的になると、人生は痩せていきます。使う自由のために、いま規律を守って貯める。これは矛盾ではなく、一本の線でつながっています。
まとめ:自由になれば、もう、つり革は要らない
最後に、つり革戦争の二重の終焉についてです。「買える自分」になったとき、人は2つの戦争から同時に降ります。
- 1つ目は、見栄の戦争の終焉です。買える側に立てば、誰かと勝ち負けを競う必要がなくなります。
- 2つ目は、満員電車の戦争の終焉です。経済的な自由とは、あの通勤ラッシュに乗らなくて済むこと。奪い合うつり革が、人生から消えます。
- そして本当のゴールは、時計を買うことではなく、買える自分になっていること。あとは、その時の自分に委ねればいいのです。
まずは、あなただけの「ノーチラス」を1つ、紙に書いてみてください。次に、そこへ向かう一番地味で確実な道、低コストのインデックス積立を、今日も淡々と続けましょう。
北極星は、たどり着くためではなく、進む方角を狂わせないためにあります。
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【動画版】投資のゴールは「つり革戦争」の終焉だった|投資歴18年が行き着いた答え
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