オルカンとS&P500の両方買いは「分散」にならない——中身は米国8割の自作ファンドだった【新NISA】

オルカンとS&P500の2つの円が重なり米国81.6%を示す月城ミオ。両方買いが分散にならない構造を解説するアイキャッチ インデックス投資

「新NISA(2024年に始まった、投資の利益に税金がかからない制度)で、オルカンとS&P500を両方積み立てています」。

SNSでいちばんよく見る、人気の組み合わせです。

2本に分けているから、1本より分散が効いている。多くの人がそう感じています。

でも、その2本の「中身」を開けたことはあるでしょうか。

この記事は、オルカンとS&P500の両方買いが「分散」になっているのかどうかに、数字で答えます。結論を先に言えば、それは分散ではなく、米国の比率を自分の手で引き上げる行為です。

結論:両方買いは「分散」ではなく、米国を厚くする選択です

先に答えを出します。

オルカンとS&P500を半分ずつ買うと、あなたの資産の中身は米国81.6%になります。

これは「分散された状態」ではありません。むしろ、全世界に投資しているつもりで、アメリカ1国への集中度を高めている状態です。

まず、用語を整理します。

オルカンとは、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)という投資信託の愛称です。世界約47の国と地域、約2,500銘柄にまとめて投資できます。

S&P500とは、アメリカの代表的な大企業500社をまとめた株価指数です。この記事では、その指数に連動するeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)、通称スリムS&P500を指します。

下のグラフは、3つの買い方で「資産の中身」がどう変わるかを示しています。

3つの買い方で「資産の中身」はこう変わる オルカン100% 米国63.2% 先進20.8 半分ずつ 米国81.6% 10.4 S&P500 100% 米国100% 米国 日本 その他先進国 新興国 半分ずつ買うと、日本と新興国は半分に薄まり、米国だけが厚くなります。
3つの買い方による資産の中身の違い(出典:MSCI ACWI 2026年3月末構成比をもとに筆者作成)

真ん中の「半分ずつ」を見てください。

米国が81.6%まで伸び、日本と新興国(これから成長が期待される国々)は、オルカン単体のときの半分に減っています。

分散を増やしたつもりが、逆に薄まっているのです。

なぜ分散にならないのか——2つの中身を開けてみる

理由はシンプルです。オルカンの中身の6割が、すでに米国だからです。

オルカンの中身は、6割がアメリカ

オルカンが連動するMSCI ACWI(エム・エス・シー・アイ オール・カントリー・ワールド・インデックス。世界の株式市場を映す代表的な指数)の国別比率を見てみます。

2026年3月末時点で、米国が63.2%を占めています。日本はわずか5.0%です。

「全世界」という名前ですが、実態は米国が主役の指数なのです。

一方のS&P500は、そのアメリカの株式市場の時価総額(会社の値段の合計)の約8割をカバーしています。

つまり両者は、別物どころか大きく重なっています。上位に並ぶ顔ぶれも、Apple・Microsoft・NVIDIAといった米国の巨大テック企業で、ほぼ共通しています。

半分ずつ買うと、中身はこうなる

では、オルカンとスリムS&P500を50%ずつ積み立てると、中身はどう計算されるでしょうか。

オルカンの米国63.2%と、S&P500の米国100%。この2つを平均します。

地域 オルカン100% 半分ずつ S&P500 100%
米国 63.2% 81.6% 100%
日本 5.0% 2.5% 0%
その他先進国 20.8% 10.4% 0%
新興国 11.0% 5.5% 0%
50%ずつ買った場合の実効配分(出典:MSCI ACWI 2026年3月末構成比をもとに筆者算出)

日本は5.0%から2.5%へ、新興国は11.0%から5.5%へ、きれいに半分になります。

増えたのは米国だけです。

「2本に分けたから安心」という直感は、ここで裏切られます。分散とは、持っている本数ではなく、中身の話だからです。

両親に「オルカンってどう?」と聞かれた話

この話を、私は身近なところで一度考えたことがあります。

両親から「オルカンってどうなの」と聞かれたのです。

私の両親は、個別株(会社を1社ずつ選んで買う投資)で結果を出してきた人たちです。銘柄選びの相談を、むしろ私が受ける側でした。

その両親からの質問でしたが、私はオルカンもS&P500も勧めませんでした。理由は2つあります。

勧めなかった2つの理由

1つ目は、両親には個別株で勝ってきた実力があるからです。無理にインデックス投資(市場全体にまとめて投資する方法)へ切り替える必要を感じませんでした。

2つ目は、時間です。

オルカンやS&P500は、長い時間をかけて持ち続けてこそ力を発揮する商品です。高齢になってから始めるには、時間という味方が足りません。

逆に言えば、時間さえあるなら、オルカンでもS&P500でも、どちらを持ってもいいと私は考えています。

違いは1つだけです。全世界か、アメリカか。その違いです。

日本を含む世界全体の成長に乗りたいならオルカン。アメリカだけを信じるならS&P500。選ぶ基準は、それだけでよいのです。

私自身は、どちらを持っているか

ここで、私の保有と、読者のみなさんへの考えを分けて書きます。私が持っているものを、そのまま勧めるつもりはありません。

区分 中身
私(筆者)の中核 VOO(バンガード社のS&P500 ETF)。つまり米国100%を、自覚して選んでいます。オルカンは以前持っていましたが、今はほとんど持っていません。
迷う人への私の考え オルカン1本。日本を含む全世界に、1本で分散できます。
筆者の保有と読者への考えの分離(ETF=証券取引所で売買できる投資信託)

私が米国100%なのは、「アメリカだけを信じる」と自分で決めたからです。無自覚に全世界のつもりで米国に寄っているのとは、意味がまったく違います。

で、どうすればいいか——選び方は3つだけ

両方買いが「悪」というわけではありません。問題は、それが分散だと勘違いしたまま買うことです。

選び方は、次の3つに整理できます。

(1) 日本を含む世界全体に乗りたい → オルカン1本

(2) アメリカだけを信じる → スリムS&P500 1本

(3) 「米国を厚くしたい」と自覚がある → 両方買いもあり。ただし比率は自分で決める

(3)を選ぶなら、自分の「実効・米国比率」を知ってから決めましょう。下のミキサーで、積立の割合を動かしてみてください。

配分ミキサー——あなたの「実効・米国比率」を見る

オルカンとスリムS&P500の積立比率を動かすと、資産全体の中身がどうなるかを表示します(MSCI ACWI 2026年3月末構成比で計算)。

オルカン 50% スリムS&P500 50%
米国
先進国
新興国

※オルカンの中身: 米国63.2%・日本5.0%・その他先進国20.8%・新興国11.0%(MSCI ACWI 2026年3月末)。スリムS&P500は米国100%として計算。比率は市況で変動します。

積立設定は、証券会社の口座から数分で終わります

方針が決まったら、あとは新NISAのつみたて投資枠で設定するだけです。オルカンもスリムS&P500も、主要なネット証券ならどちらも購入できます。

私自身の主軸はSBI証券ですが、用途によって使い分けています。これから口座を作るなら、次の3社は初心者にも扱いやすい選択肢です。私が使っているから勧めるのではなく、手数料と使いやすさで選んでいます。

つみたて投資枠の口座におすすめの3社

米国株や個別株にも幅を広げたいならマネックス証券、サポート手厚く少額から丁寧に始めたいなら松井証券、多通貨や外国株の品揃えで一歩踏み込みたいならサクソバンク証券が向いています。いずれもオルカン・スリムS&P500を新NISAで積み立てできます。

マネックス証券の口座開設バナー。米国株や個別株に強いネット証券で新NISAのつみたて投資にも対応 松井証券の口座開設バナー。サポートが手厚く少額から新NISAのつみたて投資を始めやすいネット証券 サクソバンク証券の口座開設バナー。多通貨や外国株の品揃えが豊富で一歩進んだ投資に対応するネット証券

4本まとめて比較して選びたい方は、新NISAの投資信託を3つの質問で選ぶ比較ハブ記事もあわせてご覧ください。オルカン・S&P500の1本勝負を深掘りしたい方は、スリムS&P500とオルカンの徹底比較が参考になります。

「全世界か、アメリカか」を考えるための1冊

低コストで市場全体を持ち続けるという発想の原点が、VOOの生みの親ジョン・C・ボーグルの『インデックス投資は勝者のゲーム』でやさしく語られています。オルカンとS&P500、どちらを1本で持つか迷ったときの土台になる名著です。こちらの要約記事でも中身を紹介しています。

『インデックス投資は勝者のゲーム』ジョン・C・ボーグル著の書影。VOOの生みの親が説くインデックス投資の名著

よくある不安に答えます

すでに両方買ってしまいました。売るべきですか?

売る必要はありません。中身が米国に寄っていたとしても、それ自体が損というわけではないからです。

直すのは、今後の積立の割合だけで十分です。オルカン1本に寄せたいなら、次の積立設定からオルカンの比率を上げれば済みます。

なお、新NISAでは売却した分の非課税枠が、翌年に(買ったときの値段をもとに)復活します。あわてて全部売る理由はありません。

オルカン1本だと、米国の成長に乗り遅れませんか?

乗り遅れません。すでに見たとおり、オルカンの中身の63.2%は米国です。

アメリカが伸びれば、その恩恵はオルカンにもしっかり反映されます。「全世界=米国が薄い」という思い込みが、両方買いの出発点なのです。

日本株の上昇も取りたいのですが?

オルカンには日本が約5%含まれています。日本の上昇の恩恵も、少しですが受けられます。

それでも物足りないなら、それこそ「日本を厚くしたい」という自覚的な上乗せの話になります。無自覚な両方買いとは、まったく別の判断です。

まとめ:分散は、本数ではなく中身の話です

今回の記事で押さえておきたいことは、次の3つです。

  • オルカンとS&P500を半分ずつ買うと、中身は米国81.6%になります。分散は増えず、むしろ日本と新興国が半分に薄まります。
  • それは「間違い」ではなく、米国を厚くする選択です。問題は、分散だと勘違いしたまま買うことです。
  • 迷うなら、中途半端にせずオルカン1本が私の考えです。オルカンの中に、すでに米国が6割入っています。

まずは一度、自分の「実効・米国比率」を計算してみてください。この記事のミキサーを動かすだけで、自分がどれだけアメリカに賭けているかが見えてきます。

分散とは、何本持っているかではなく、その中に何が入っているか。両方買いの正体を知ってから、自分の1本を選んでいきましょう。

🎥 動画でも解説しています

オルカンとS&P500の中身を、約12分の動画でも図解しました。文字を読むのが苦手な方、通勤や家事のすきま時間に聴きたい方は、あわせてどうぞ。
オルカンとS&P500を両方買うと、中身は米国8割になる【図解】

※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品への投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任のもとで行ってください。構成比率は2026年3月末時点のMSCI ACWIをもとにしており、市況により変動します。

【免責事項】
本記事は情報提供を目的としており、投資助言・勧誘を目的とするものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
この記事を書いた人
hiro

投資歴2007年から約18年。VOO・QQQ・金(GLDM)・eMAXIS Slim S&P500・オルカン・個別株を保有。「絶望買い×インデックス投資」で暴落局面こそ買い増すスタイル。長期的なアメリカ経済への信頼を軸に運用しています。AI×投資で資産運用ツールを開発中。完成次第フリーで公開予定。

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