米国債ストリップス債、5.111%が来た日——「規律を動かさない」と書いた私が出した答え【投資歴18年・2026年5月版】

黒いセーラー服の月城ミオが電卓を手に、米国債ストリップス債の表面利回り5.111%と税引後4.47%を見比べている。税引後で投資判断する規律をテーマにしたアイキャッチ。 マーケット・相場分析

2026年5月22日、SBI証券のストリップス債一覧に、表面利回り5.111%の銘柄が並びました。ストリップス債(利息部分を切り離した米国債。複利が自動で効くゼロクーポン債)です。

私は2026年4月に「米国債を買うなら表面5%超え。あと0.054%足りない、私は待つ」と書きました。その数字を、ついに超えたのです。

「5%を超えたら買う」と書いた以上、買うのか。それとも、また待つのか。結論から書きます。私はまだ買いません。そして買いラインを、表面5%ではなく「税引後で実質5%」=表面でおよそ5.7%に言語化し直しました。ラインを動かしたのではなく、定義を精緻にしたという話です。この記事では、その計算の全部を見せます。

5/22のSBIデータ:ついに5%を超えました

まず事実からです。2026年5月22日時点のSBI証券で、表面利回り5%を超えたストリップス債は5本ありました。

償還日 残存期間 単価 表面利回り
2046/5/15 約20.0年 36.66 5.089%
2047/8/15 約21.3年 34.31 5.104%
2048/5/15 約22.0年 33.00 5.111%
2049/5/15 約23.0年 31.39 5.109%
2049/8/15 約23.3年 30.97 5.112%
2026年5月22日時点で表面利回り5%を超えたストリップス債(出典:SBI証券)

利回りのピークは残存22〜23年の帯にあります。これを超えると、たとえば残存29年の2055年償還は4.993%まで下がります。

長く待つほど利回りが上がるわけではありません。これは4月にも指摘した構造で、5月の今もそのまま当てはまります。

この中で、単価が33.00とキリの良い2048年5月15日償還(残存22年)を主軸に話を進めます。

表面5.111%で、1,000万円はいくらになるのか

SBI証券の試算ツールで、1,000万円を投資した場合をシミュレーションしました。為替レートは5月22日時点の参考レート159.10円で計算しています。

買付の概要は次の通りです。

  • 受渡金額:62,832ドル
  • 円換算の受渡金額:9,996,571円
  • 買付額面:190,400ドル

22年後の償還(税引前・為替変動なしの前提)はこうなります。

  • 償還金:190,400ドル
  • 円換算の償還金:30,292,640円
  • 償還差益:+20,296,069円(+203.03%

1,000万円が22年後に約3,029万円。3倍を超える計算です。年率に直すと表面5.111%の複利になります。表に出ている利回りが、そのまま再現される素直な数字です。

ここで一度立ち止まります。この3,029万円は「税引前」の数字です。SBIの試算ツールにも「税金および為替スプレッド等を考慮していない」と注釈があります。実際の手取りは、ここから税金が引かれます。これが、私が「まだ買わない」と判断した理由の核心になります。

税引後で計算し直すと、実質4.47%まで落ちます

ストリップス債は、買った価格と満期に戻ってくる価格の差(償還差益)に対して20.315%の税金がかかります。2048年償還のケースで計算します。

  • 償還差益(円換算):20,296,069円
  • 税金(20.315%):4,123,141円
  • 税引後の受取額:30,292,640 − 4,123,141 = 26,169,499円

1,000万円が22年後に約2,617万円。倍率は2.618倍です。これを年率の複利に直すと、約4.47%になります。

表面利回り5.111%だったはずの商品が、手取りでは約4.47%。差は0.64%です。

このグラフは、表面利回りと税引後の実質利回りの差を示しています。

Surface yield 5.111% After-tax 4.47%
表面5.111%と税引後4.47%の差はわずか0.64%。ただし金額にすると税金は約412万円(筆者試算、SBI証券データより)

「たった0.64%」と思うかもしれません。でも22年の複利で見ると、この0.64%は受取額にして約412万円の差になります。新車が1台買える金額です。手取りで考えると、5.111%という見出しの数字は、私の判断材料としては力不足でした。

規律の定義を精緻化する——4月版の答え合わせ

4月に私が5%ラインを掲げた根拠は、3つありました。

  • 株式の「4%ルール」(資産の4%なら毎年取り崩しても資産が尽きにくいという目安)を明確に上回りたい
  • S&P500(米国の代表的な500社で構成する株価指数)の長期平均リターンと並ぶ・上回りたい
  • 米国債は価値を生まない商品だから、株式以上のプレミアム(上乗せ)が要る

この3つは、すべて「自分の手取り」を念頭に置いた数字です。4%ルールは手取りベースの取り崩しの話ですし、S&P500との比較も手取りで考えるのが筋になります。価値を生まない商品にプレミアムを乗せるのも、手取りで考えるべきです。

つまり4月に書いた「5%」は、本来は税引後の実質利回りで考えるべきものでした。正直に書きます。私は、表面利回りと税引後を区別しないまま書いていました。これは私の不正確な記述でした。言い訳はしません。混同していたのです。

ここで問題が生まれます。「ラインを動かさない」と書いた手前、いま表面5.111%が手取り4.47%だからといって、買いラインを引き下げるわけにはいきません。むしろ逆です。ラインの定義を「税引後の実質利回りで5%」と精緻にする必要があります。

ラインを甘くしたのではありません。最初から守るべきだった「税引後5%」というラインを、ようやく言葉にしました。これが5月版の答え合わせです。

逆算:税引後5%に必要な表面利回りは約5.7%

では、ストリップス債で税引後5%を実現するには、表面でいくら必要なのでしょうか。残存期間別に逆算しました。計算の前提は、償還差益に20.315%課税、年率複利で税引後5%(22年で2.925倍)を満たす単価を求める、というものです。

残存期間 必要な単価 必要な表面利回り
20年 32.52 約5.78%
22年 29.28 約5.72%
25年 25.04 約5.69%
税引後5%を満たすために必要な表面利回り(筆者試算、課税20.315%前提)

残存20〜25年の帯で、必要な表面利回りは約5.7%前後に収まります。これが私の新しい買いラインです。次のグラフは、現状の表面利回りと、私が必要とする水準の差を示しています。

Current (5/22) 5.111% My buy line 5.7%
現状の表面5.111%と、税引後5%に必要な表面5.7%。差は約0.6%(筆者試算)

現状の表面5.111%から、必要な水準まであと約0.6%です。あと少し、ではありますが、この0.6%の意味は4月の「あと0.054%」とは別物です。手取りで規律を満たすための0.6%だからです。

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損益分岐点52.51円——もう一つの安心材料

2048年償還について、もう一つの数字に触れます。SBIの試算ツールが計算した損益分岐点の為替です。

買付為替159.10円で買って22年保有した場合、満期の為替がどこまで円高に振れたら元本割れするか。SBIの試算によれば、1ドル52.51円まで耐えられる計算になります。

22年後に1ドル52.51円。この水準を実感として持つために、過去のデータを思い出します。私が投資を始めた2008年のリーマンショック(米国の住宅バブル崩壊から世界に広がった金融危機)のあと、円相場は2011年10月31日に1ドル75円32銭まで進みました。当時「歴史的円高」と呼ばれた、戦後の最高値です。

それでも75円台でした。52円は、その2011年の歴史的円高を、さらに30%以上突き抜けた水準です。つまり、為替の安全マージンは、過去に一度も見たことがない円高水準まで備わっています。利回りが5.7%まで上がれば、単価がさらに下がるので、この円高耐性はもっと強くなります。これも、私が「もう少し待っても問題ない」と考える根拠の一つです。

私が保有しているもの、読者が考えるべきこと

ここははっきり分けて書きます。私の保有状況と、読者のみなさんへの提案は別の話です。私は米国債を直接持てる立場ですが、初心者の方には別の本筋があります。

項目 私(筆者)の場合 読者が考えるべきこと
米国債ストリップス債 未保有。表面5.7%(税引後5%)まで待機中 表面利回りに飛びつかず、必ず税引後で逆算する
資産の中核 VOO(Vanguard S&P 500 ETF)とQQQ(Invesco QQQ Trust)をドル建てで保有 まずは新NISA(少額投資非課税制度)でインデックス投資を継続する
円建ての受け皿 スリムS&P500(eMAXIS Slim 米国株式)を新NISAで積立 信託報酬0.09%前後の低コスト投信を軸にする
筆者の保有と読者への提案は別物です(米国債は新NISAの対象外で、特定口座での購入になります)

米国債のストリップス債は、新NISAのつみたて投資枠では買えません。検討する場合は特定口座での購入になり、償還差益に税金がかかります。だからこそ、表面利回りではなく税引後で「自分が納得できる水準か」を逆算することが、何より大切になります。私はその逆算の結果、まだ待つことを選びました。

関連書籍・おすすめ商品

敗者のゲーム[原著第8版]」— 「勝とうとしない」ことがなぜ最強なのかを説いた古典。待つこと・動かさないことの価値を、データで腹落ちさせてくれます。

まとめ:5/22時点での私の立場

事実を整理します。

  • 米国債ストリップス債2048年償還が表面5.111%まで上昇し、4月の「5%ライン」を表面では超えました。
  • ただし税金20.315%を引いた実質利回りは約4.47%で、私が本来意図していた「税引後5%」には届いていません。
  • 税引後5%を満たす表面利回りは約5.7%で、現状からあと約0.6%の上昇が必要です。

来るかどうかは誰にも分かりません。地政学リスクや米国の財政赤字拡大で表面6%、7%が見える未来もありますし、利回りが下がって5.7%が来ない未来もあります。それでも私は困りません。待っている間も、私の資産はスリムS&P500やQQQや金で動き続けているからです。まずはあなたも、気になる商品の利回りを「税引後でいくらになるか」逆算してみてください。見出しの数字と手取りの数字は、別物です。

規律は、数字に飛びついた瞬間に死にます。表面5.7%が来るその日まで、私はまた静かに待ちます。

▼ この記事の内容を動画でも解説しました(約13分)
米国債ストリップス債、5.111%が来た日──「規律を動かさない」と書いた私の答え【動画版】

※本記事は2026年5月22日時点のSBI証券公式情報(試算ツールを含む)をもとに作成しています。米国債の単価・利回り・為替レートは日々変動します。最新情報はSBI証券の公式ページでご確認ください。本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品への投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任のもとで行ってください。

【免責事項】
本記事は情報提供を目的としており、投資助言・勧誘を目的とするものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。