iシェアーズ・コア米国高配当株ETF、通称HDVが、2026年6月から分配のやり方を変えました。
これまで3か月に1回だった分配が、毎月に変わります。その結果、HDVは新NISA(少額投資非課税制度)の成長投資枠で買えなくなります。
「せっかく積み立てたのに、売らないといけないの?」
そう不安になった方へ、先に結論をお伝えします。今、新NISAでHDVを持っている人は、慌てて売る必要はありません。むしろ売るほうが損になることが多いです。
この記事では、なぜHDVが外れるのか、本当に危ない変更なのか、続けたいならどうすればいいのかを、投資歴18年の私が順番に整理します。
結論:今NISAでHDVを持っている人は、売らなくていい
最初に、いちばん大事なことから言います。
すでに新NISAの中で持っているHDVは、これまで通り非課税のまま持ち続けられます。制度が「売れ」と求めることはありません。
HDV(iシェアーズ・コア米国高配当株ETF。米国の財務が健全な高配当株をまとめて買えるETF)。ETF(株や債券をまとめて買える投資信託の一種で、証券取引所に上場しているもの)です。
今回の変更で起きるのは、次の2つだけです。
- 新しく買う分は、新NISAでは買えず、特定口座などになります。
- すでに持っている分は、NISAの中で非課税のまま継続できます。
中身の銘柄も、1年間にもらえる配当の総額も、長期のトータルリターンも変わりません。変わるのは「配当を受け取る回数」だけです。
なぜHDVは新NISAから外れるのか——明確なルールがあります
「なんとなく毎月分配は嫌われる」という雰囲気の話ではありません。新NISAの成長投資枠には、対象商品のはっきりとした要件があります。
成長投資枠(新NISAの2つの枠のうち、個別株やETF・投資信託を年240万円まで買える枠)のことです。ここでETFや投資信託が対象になるには、金融庁が定めた次の3つをすべて満たす必要があります。
- 信託期間が無期限、または20年以上であること
- 毎月分配型ではないこと
- ヘッジ目的などを除き、デリバティブ(先物などの金融派生商品)を使っていないこと
この要件を満たす商品の一覧は、投資信託協会(正式には資産運用業協会。投資信託のルールを担う業界団体)が毎月リストにして公表しています。
HDVはこれまで分配が四半期に1回、つまり年4回でした。だから②の「毎月分配型ではない」をクリアし、新NISAで買えていました。
それが2026年6月から毎月、年12回に変わります(実施は2026年6月16日〜18日、毎月分配での最初の分配は7月15日)。この瞬間に②に抵触し、対象から外れる——というのが今回の正体です。
線引きの肝は、ここです。アウトになるのは「毎月(年12回)」だけです。隔月(年6回)や四半期(年4回)の分配は対象のままです。HDVは年4回から年12回へ、ちょうどこのラインを越えてしまいました。
図にすると、こうなります。
では、なぜ毎月分配型だけが外されるのか。分配を払い出すたびに再投資に回せるお金が減り、長期の資産形成で効くはずの複利が削られるからです。さらに、元本を取り崩して払う特別分配金(利益ではなく、自分が出したお金が戻ってくるだけの分配)も起きやすい。だから金融庁は「長期の資産形成にそぐわない」と判断しています。
つまりHDVは「良い・悪い」とは関係なく、毎月分配になったという一点だけで、この②の要件に引っかかったのです。
なお、変更が実施されると、新NISA・特定口座・一般口座のいずれでも、約定していない買い注文は取り消される点には注意してください。
「毎月分配=危険」は本当か——HDVは3つの条件に当てはまらない
「毎月分配」と聞いて、身構えた方も多いと思います。私自身、毎月分配型の投資信託は「複利を奪う延命装置」だと、これまで何度も書いてきました。
では、なぜ毎月分配型の投資信託は嫌われるのでしょうか。理由は大きく3つあります。
- コストが高い(信託報酬が高く、長期で複利を削る)
- トータルリターンが低くなりがち(トータルリターン=値上がり益+配当の合計)
- たこ足分配(投資家から預かった元本を切り崩して分配に回すこと)
ところが、HDVはこの3つのどれにも当てはまりません。
| 嫌われる理由 | 毎月分配型の投資信託(典型例) | HDV |
|---|---|---|
| ①高コスト | 年1%超も珍しくない | 年0.08%(非常に低い) |
| ②低トータルリターン | 分配を出しすぎて伸び悩む例が多い | 過去10年で年率約10% |
| ③たこ足分配 | 起こりうる(元本の払い戻し) | 物理的に不可能 |
とくに③が決定的です。たこ足分配ができるのは、運用会社が自由に分配額を決められる投資信託だからです。
HDVは取引所に上場しているETFです。受け取った配当をそのまま投資家に渡すだけで、元本を切り崩して分配を水増しする仕組みが、そもそもありません。
下のグラフは、コストの違いを示しています。
つまりHDVは、”良い”高配当ETFのまま、”悪い”毎月分配型投信を弾くためのルールに、たまたま巻き込まれた——というのが今回の正体です。
それでも、私はHDVを主軸にしていません
ここで正直に書いておきます。HDVは良いETFですが、私自身はHDVを持っていません。
私の主軸は、配当を出さずに自動で再投資してくれる無分配のインデックス投資です。具体的にはVOO(バンガードS&P500 ETF)やQQQ(インベスコのNASDAQ100連動ETF)を、コロナショックを起点に保有しています。
配当として外に出さず、ファンドの中で自動的に再投資されるほうが、複利の効きが最大になるからです。これは私個人の方針であって、読者全員への推奨ではありません。
以前、HDVを含む米国高配当ETF4本を比較した記事も書きました(高配当銘柄4選!おすすめをAIに聞いてみた)。HDVは当時から低コストで安定したETFだと評価しています。
ただし、数字は正直に見ておきます。HDVの過去10年は年率約10%。十分に合格点ですが、市場平均(S&P500)の同じ10年(年率おおむね14〜15%)には負けています。この10年はハイテク・グロース株が主役で、HDVが得意とするバリュー株(利益や資産に対して株価が割安な株)が相対的に弱かったからです。
その代わり、HDVは約75銘柄のディフェンシブ株(生活必需品やヘルスケアなど、不況に強い業種)が中心で、下落局面の値動きがS&P500よりマイルドです。守りに強いETF、という整理になります。
この「市場平均には及ばない」という一点こそ、私がHDVを主軸に置かず、S&P500やオルカン(全世界株式)を中核にしている理由でもあります。攻めの主役はインデックス、高配当は欲しい人が脇に添えるもの、という位置づけです。
では、毎月分配になったHDVに弱点はないのか。もう1つあります。
特定口座で持つ場合、課税のタイミングが年4回から年12回に前倒しになります。配当を受け取るたびに約20%が引かれるため、再投資に回せる金額がわずかに減り、複利がほんの少し削られます。手間も増えます。
たこ足分配のような重い問題ではありません。けれども「無罪」でもない。ここは正直にお伝えしておきます。
| 項目 | 私(筆者)の主軸 | 高配当が欲しい読者向け |
|---|---|---|
| 中核 | VOO・QQQなど無分配インデックス(自動再投資で複利を最大化) | SCHD連動の投信(年4回・新NISA成長枠で買える) |
| HDVの扱い | 未保有(評価はする) | 既存保有はそのままNISAで継続でOK |
新NISAで高配当を続けたいなら、SCHDという選択肢
「それでも新NISAの非課税の中で、高配当を続けたい」
その場合の現実的な答えが、SCHD(シュワブ米国配当株式ETF。10年以上連続で配当を出してきた財務健全な米国株100社に投資するETF)です。
SCHDは分配が年4回のため、毎月分配のルールに引っかかりません。新NISAの成長投資枠で、引き続き買えます。
日本では、SCHDに連動する次の投資信託で買うのが手軽です。ただし、買える証券会社が決まっている点に注意してください。
| 投資信託 | 分配 | 信託報酬 | 買える証券 |
|---|---|---|---|
| SBI・S・米国高配当株式ファンド(年4回決算型) | 年4回 | 年0.1227% | SBI証券 |
| 楽天・シュワブ・高配当株式・米国ファンド(四半期決算型)=楽天SCHD | 年4回 | 年0.1238% | 楽天証券 |
つまりSCHD連動の投信を新NISAで買うなら、SBI証券か楽天証券の口座が必要です。SBI・SCHDはSBI証券、楽天SCHDは楽天証券でしか買えません。マネックス証券や松井証券では、SCHD系は取り扱っていません。
見方を変えると、HDVが新NISAから外れたことで、SCHDの相対的な価値はむしろ上がりました。新NISAの非課税の中で米国高配当を続けたい人にとって、SCHD連動の投信が本命の選択肢になったからです。
マネックス・松井に口座がある人や、もっと広く分散したい人へ
すでにマネックス証券や松井証券に口座がある人、あるいはもっと広く分散した高配当が好みの人には、別の道もあります。VYM(バンガード・米国高配当株式ETF。約590銘柄に広く分散した高配当ETF)です。
VYMは三大高配当ETFの一角で、楽天VYM(楽天・米国高配当株式インデックス・ファンドなど)を通じてマネックス証券・松井証券でも買えます。米国に上場するSCHDやVYMをドルで直接買いたいなら、外国株に強い証券会社という選択肢もあります。
これから新NISAの口座を作る方は、用途に合わせて選んでください。私の保有と読者への推奨は別物として、検討材料としてご覧ください。
新NISAの口座をこれから作るなら(用途別)
※SCHD連動の投信(SBI・SCHD/楽天SCHD)は、SBI証券・楽天証券の専売です。米国に上場するSCHD本体をドルで直接買いたい方は、外国株の取扱が広いサクソバンク証券が選択肢になります。マネックス・松井は米国株やVYM系投信に向きます。つみたて・分散重視ならSBI証券・楽天証券だけでも十分です。
よくある不安Q&A
Q. 今持っているHDVを売って、別の高配当に買い直すべき?
いいえ、急ぐ必要はありません。NISAの中で売ってしまうと、使った非課税枠は戻りません。利益が出ていれば、特定口座で買い直す際にその利益へ課税される場合もあります。慌てて動くほど不利になりやすいです。
Q. 毎月もらえるのは、むしろ嬉しいのでは?
気持ちは分かりますが、1年間でもらえる配当の総額は変わりません。増えるのは回数だけです。特定口座では課税のタイミングが前倒しになり、複利の面ではむしろ不利になります。
Q. 既存保有のNISAの非課税は、いつまで続く?
新NISAの非課税は恒久的で、期限はありません。保有を続ける限り、配当も売却益も非課税のままです。
関連書籍
「改訂版 お金は寝かせて増やしなさい(水瀬ケンイチ)」— 一個人投資家が無分配インデックスを淡々と積み立てた記録。高配当に惹かれたときこそ、もう一度読み返したくなる一冊です。
まとめ
今回のポイントを整理します。
- HDVは毎月分配化により、新NISA成長投資枠の対象から外れます。ただし既存保有はそのまま非課税で継続できます。
- HDVは信託報酬0.08%、たこ足分配が物理的に不可能なETFで、毎月分配型投信の弊害とは無縁です。
- 新NISAで高配当を続けたいなら、年4回分配のSCHD連動投信が現実的な選択肢になります。
まずは、慌てて売らないことです。制度の扱いが変わっただけで、あなたのHDVの中身は何も悪くなっていません。一度立ち止まり、自分が配当を欲しいのか、複利を最大化したいのかを考えてから動いても遅くありません。
制度に振り回されず、自分のルールで持ち続ける。それが、長く市場に居続けるための一番の近道だと私は考えています。
▶ この記事を動画でも解説しています(約12分):
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※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品への投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任のもとで行ってください。
本記事は情報提供を目的としており、投資助言・勧誘を目的とするものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
