投資は、わりと順調です。
新NISA(少額投資非課税制度)でコツコツ積み立て、含み益も育っています。だから、表面上は何の問題もありません。
けれど、です。
ふと、こう思う夜があります。「このペースの増え方で、本当にいいのか」と。そして、もう一つ。「このまま、ずっと働き続けるのでいいのか」と。
これは、投資の解説記事ではありません。一人のサラリーマン投資家が、この先どう生きるかを考えた、自己分析の記録です。同じ不安を抱える方に、少しでも参考になればうれしいです。
投資は順調。なのに、消えない不安があった
私は投資歴18年、ずっとサラリーマンとして働きながら投資をしてきました。いわゆる、サラリーマン投資家です。
その私が、今さらながら気づいたことがあります。私は、雇われることに向いていないのかもしれない、と。
会社では、工夫や改善を求められます。でも、大きな変化を起こすことは、歓迎されません。「変われ、でも変わるな」。この板挟みを、心理学ではダブルバインド(2つの矛盾した要求で身動きが取れなくなる状態)と呼びます。
私が感じていたのは、まさにこの種の窮屈さでした。前に進みたいのに、進む方向を会社に決められている感覚です。
あとで知ったのですが、ナヴァル・ラヴィカントは、この感覚の正体をずばり言い当てていました。
“You’re not going to get rich renting out your time. You must own equity—a piece of a business—to gain your financial freedom.”
(時間を切り売りしていても、お金持ちにはなれません。経済的な自由を得るには、ビジネスの一部=株式を、自分で持つ必要があります)
時間を売る働き方には、限界がある。だから、株式を持つか(=投資)、自分のビジネスを持つか(=副業)。私の不安は、まさにここに根があったのだと、腑に落ちました。
とはいえ、本業を捨てて稼ぐのは、簡単ではありません。当たり前です。だから私は考えました。「何か、良い方法はないか」と。
答えは「2つのエンジン」だった
その問いに、地図をくれたのが、ある一冊の本でした。シリコンバレーの投資家、ナヴァル・ラヴィカントの言葉です。
彼の考えを、私なりに整理すると、こうなります。お金には、性格のちがう2つのエンジンがあります。
| 2つのエンジン | 守りのエンジン | 攻めのエンジン |
|---|---|---|
| 正体 | 投資 | 副業 |
| 役割 | すでにあるお金を守って育てる | お金そのものを新しく作る |
ナヴァル・ラヴィカントは、富についてこう言い切りました。
“Seek wealth, not money or status. Wealth is having assets that earn while you sleep.”
(富を求めなさい。お金や地位ではなく。富とは、自分が眠っている間も稼いでくれる資産を持つことです)
ここで、うれしい話をします。あなたが続けている積立投資は、このナヴァルの富の定義に、すでにぴたりと当てはまっています。
インデックスファンド(市場全体にまとめて分散投資できる金融商品)を持つことは、世界中の会社の一部を持つこと。あなたが眠っている間も、会社が働いてくれます。守りのエンジンとして、これ以上ない優等生です。
では、なぜ私は不安だったのか。理由は、はっきりしています。守りのエンジンは、増えるスピードが、ゆっくりだからです。
下のグラフは、毎月3万円を年5%で運用できたと仮定した試算です。複利は確かに効きます。でも、大きく育つには、長い時間がかかります。
20年で、元本720万円が約1,233万円。立派な複利です。でも、20年です。守りだけでは、私の「このペースでいいのか」という不安には、答えが出ませんでした。
だからこそ、もう一つの「攻めのエンジン」、つまり副業が要る。そう考えたのです。
私が選んだ攻めは「経験を売る」ことだった
では、私にとっての攻めのエンジンは何か。
私の本業は、どちらかと言えば技術を売る仕事です。でも、技術は会社のものです。そこで考えました。技術ではなく、経験を売れないか、と。
18年つづけてきた、投資家としての経験。コロナショックで買い増した話。失敗も、迷いも、全部です。それを言葉にして届ける。そこでたどり着いたのが、このブログでの発信でした。
正直に言います。利益は、まだまだです。大きく勝てているわけでは、まったくありません。
それでも、自分の知識が誰かの役に立つかもしれないと思うと、楽しいですし、ありがたく感じます。そして気づきました。私の強みは、派手な成功ではありません。ただただ、残り続けていること。それ自体が強みなのだと思います。
これも、あとからナヴァル・ラヴィカントの言葉に支えられました。彼は「長く続けられる人と、長く続けられるゲームを選べ」と言います。そして、自分にしか書けない専門性は、流行を追うのではなく、自分の本当の興味や情熱を追ううちに見つかる、とも。
私にとっての本当の興味は、18年やってきた投資そのものでした。流行りのテーマではなく、自分が一番語れる経験を選ぶ。残り続けることが、その複利の入り口だったのです。
もう一つ、大事にしていることがあります。現状のやり方に疑問を持ち、常に試すことです。動画配信を始めたのも、その一環です。とりわけ今は、AI(人工知能)という道具があります。少し前まで一人ではできなかったことが、できるようになりました。
このチャンスを受け止めて、どんどん挑戦する。そして、投資の経験と掛け合わせて発信する。これは、会社ではできませんでした。でも、個人ならできます。それが、私が見つけた攻めの形です。
ナヴァル・ラヴィカントは、こうも言います。「自分のやることで、世界一になれ。世界一になれるまで、やることを定義し直し続けろ」と。私は、世界一の投資家ではありません。でも「18年の投資経験を、初心者にやさしく翻訳して届ける人」と定義を絞れば、そこでなら戦えます。投資と発信の掛け合わせは、私にとっての”定義し直し”でした。
なお、私が持っているものと、これから始める方に向くものは、分けて整理しておきます。中身は同じ「米国の成長に乗る」でも、買い方の手間が違うからです。
| テーマ | 私(筆者)の保有 | これから始める方に向くもの |
|---|---|---|
| 米国株の中核 | Vanguard S&P 500 ETF、通称VOO(米ドル建て) | eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)、通称スリムS&P500(円建て・新NISA対応) |
| 全世界に分散 | 米国集中のため未保有が中心 | eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)、通称オルカン |
ただ、ここまで来ても、悩みは残っていました。「この発信を、ずっと続けられるのか」「本当に、これでいいのか」と。その悩みに、答えをくれたのが、あの本でした。
ナヴァルが私にくれた、答え
ここで、ナヴァル・ラヴィカントの立ち位置を説明します。
彼は、アメリカの投資家であり、起業家です。スタートアップ(生まれたばかりの会社)と投資家をつなぐ「AngelList」の共同創業者で、UberやTwitter(現X)がまだ小さかった頃に出資した、目利きの投資家として知られています。
そして、私が引かれたのは、彼の出自でした。インドで生まれ、9歳で渡米し、決して裕福ではない環境から身を起こした人です。生まれた場所ではなく、考え方で人生を変えた。だから私は、彼がどうやったのかを、自分に落とし込んでみることにしました。試すだけなら、お金はかかりません。
今回のヒントになった本
「シリコンバレー最重要思想家 ナヴァル・ラヴィカント」(エリック・ジョーゲンソン 著/櫻井祐子 訳/サンマーク出版)— 富と幸福を「同じ一つの考え方」で語る一冊です。
※ 英語の原文は、著者が無料で公開しています(「navalmanack」で検索)。翻訳しながらでも読めますが、日本語でじっくり味わいたい方は、書籍版もおすすめです。私は日本語版を手元に置いて読みました。
本を読んで得た気づきは、いくつもありました。ここでは、特に大きかった3つをお伝えします。
① 攻めの最強手段は「コードとメディア」
ナヴァル・ラヴィカントは、攻めのエンジンの最強手段を、こう呼びました。「コードとメディアは、許可のいらないレバレッジだ」と。レバレッジとは、てこ。小さな力を大きく増幅する仕組みです。
ブログや動画は、一度作れば、あなたが眠っている間も働き続けます。これは、投資(守り)とまったく同じ性質です。私がやろうとしていたことは、方向としては間違っていなかった。そう確認できました。
② AIには「手間」を渡す。でも「中身」は渡さない
AIは、強力な道具です。でも、ただAIに任せるだけでは、効率が上がるだけです。当たり障りのない一般論は、世の中にあふれています。
だから決めました。作業はAIに渡しても、「自分にしか書けない中身」だけは、絶対に渡さない、と。私の18年の経験、失敗、迷い。そこだけは、私の手で書きます。
③ 最大の気づき。「誰に向けて書くか」
そして、今回いちばん衝撃を受けたのが、これでした。
“No one in the world is going to beat you at being you.”
(”あなたであること”で、あなたに勝てる人は、世界に一人もいません)
これまで私は、株式投資に興味の薄い人や、始めたばかりの人を、なんとなく大きなターゲットにして書いていました。
でも、それは幻想でした。ナヴァル・ラヴィカントが言っていたのは、こういうことです。顔の見えない大勢ではなく、「過去の自分」に向けて、エールを送れ。
だから、決めました。これからは、18年前の、何も知らなかった自分に向けて書く、と。はるか彼方に置いてきた、あの頃の自分へのメッセージ。それが、多くの人にではなく、ある一定数の人に響けばいい。彼は、そう教えてくれました。
ようやく、たどり着いた答えでした。良い本に出会えた、と思っています。
よくある不安に答えます
投資だけではダメなのでしょうか?
いいえ。守りのエンジン(投資)は、むしろ最優先で続けてください。土台がなければ、攻めも生きません。
この記事は「投資をやめて副業しよう」という話ではありません。「投資は守り、もう一つ攻めがある」という地図を持つだけで、将来への不安の質が変わる、という話です。
副業なんて、私にはできません
攻めのエンジンは、発信とは限りません。本業のスキルを磨くこと、得意を活かした副業を持つことも、立派な攻めです。
ナヴァル・ラヴィカントは、その種をこう表現しました。自分には遊びのように感じるのに、他人には仕事に見えること。それが、あなただけの攻めの種です。
まだ証券口座も持っていません
それなら、まずは守りのエンジンから始めるのがおすすめです。攻めは時間がかかりますが、守りは口座を開いて積立を設定すれば、その日から複利が動き出します。
守りのエンジンを始めるなら(ネット証券)
私の主軸はSBI証券ですが、用途で使い分けています。これは「私が使っている」という話で、必ずこれを選ぶべき、という意味ではありません。米国株や個別株も視野に入れるならマネックス証券、サポート重視・少額から相談したいなら松井証券が、初心者には分かりやすいと考えます。
まとめ:不安の正体は「攻めのエンジンの不在」だった
最後に、この記事の要点を整理します。
- 投資は「守りのエンジン」です。優秀ですが、増えるスピードはゆっくり。だから「このペースでいいのか」という不安が生まれます。
- 不安に答えるのが「攻めのエンジン」=副業です。私はそれを「経験を売る発信」に定めました。大きくは勝てなくても、残り続けることが強みです。
- 攻めの鍵は、AIに手間を渡しても中身は渡さないこと。そして、全員にではなく「18年前の自分」たった一人に向けて書くことです。
まずは、あなたの守りのエンジンを止めないこと。そのうえで、「自分には遊びに感じるのに、他人には仕事に見えること」は何かを、一度考えてみてください。それが、あなただけの攻めの種です。
私の攻めのエンジンは、まだ回り始めたばかりです。それでも、続けます。考えて、調べて、試しながら。あの頃の自分に、手紙を書くつもりで。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品への投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任のもとで行ってください。
🎥 動画でも解説しています
この記事の内容を、約10分・5章でやさしくまとめた動画版です。家事や通勤のながら聴きにどうぞ。
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本記事は情報提供を目的としており、投資助言・勧誘を目的とするものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
