2026年7月17日、日経平均株価は一時4,000円を超えて下がりました。半導体株が総崩れし、キオクシアは1日で16%安。ニュースは「歴史的暴落」の見出しで埋まりました。
この日、私のスマホにも赤い数字が並びました。ただ、心臓が跳ねるような感覚はありませんでした。同じ「半導体暴落」というニュースが、ある人には心臓発作で、ある人には天気予報だったからです。
その違いを分けたものが「分散」です。この記事では、今回の暴落を「持ち方」ごとに数字で答え合わせします。分散とは何のためにあるのか。実データと、私自身の正直な含み損の話で解説します。
結論:半導体が総崩れでも、S&P500は週−1.5%でした
先に答えを言い切ります。
今回の暴落で、資産がいくら減ったかは「何の株を、どれだけ集中して持っていたか」で決まりました。震源に近いほど大きく揺れ、遠いほど小さく揺れる。地震とまったく同じ構造です。
1週間の下落率を並べると、こうなります。
- 半導体ETF(半導体株をまとめた投資商品)= 週−9%前後
- ナスダック100(米国のハイテク中心の株価指数)= 週−2.9%
- S&P500(米国の主要500社の株価指数)= 週−1.5%
- 日本のディフェンシブ株(食品・医薬品など生活必需の業種)= むしろ上昇
同じ1週間、同じ暴落です。それでも、揺れ方はこれだけ違いました。分散とは、震源から距離を取ることでした。
今週、市場で何が起きたのか(30秒で整理)
まず事実を短く確認します。
震源はメモリ半導体(データを記憶する部品)でした。韓国のSKハイニックスが7月16日に約11%安、サムスン電子も8%超の下落。米国のフィラデルフィア半導体株指数(SOX、半導体30社の代表的な指数)は4%を超えて下がり、7月17日には「弱気相場」(高値から20%以上の下落)入りしました。
日本では、キオクシアが1日で16.1%安の52,110円。6月22日につけた高値112,700円の半値以下です。米企業への特許侵害で約370億円の賠償評決が出たことも重荷になりました。日経平均の終値は64,141.12円、下げ幅は2,694円で歴代5位。週間の下げ幅は過去最大でした。
背景にあるのは「AI向けの設備投資が、そろそろ減るのでは」という不安です。原因の深掘りは、ここではしません。この記事で見たいのは「なぜ揺れ方が違ったのか」だけだからです。
「持ち方」別に、いくら下がったのか
ここが今回の心臓部です。震源からの距離を、下落率の勾配として見てみます。
数字を表でも整理します。
| 持ち方(震源からの距離) | 下落率 | 期間 |
|---|---|---|
| キオクシア(震源そのもの) | −16.1% | 1日 |
| SKハイニックス(震源) | −11.5% | 1日 |
| 半導体ETF(SMH) | −9%前後 | 1週間 |
| ナスダック100(QQQ) | −2.9% | 1週間 |
| S&P500 | −1.5% | 1週間 |
| 日本のディフェンシブ株 | 上昇 | 7月17日 |
震源のキオクシアを1銘柄だけ持っていた人は、1日で16%を失いました。S&P500を持っていた人は、1週間かけても1.5%です。同じ地震で、揺れ方が10倍違ったということです。
「半導体は持っていない」は、正確ではありません
今回、私は半導体株の直撃を受けませんでした。ただ、「半導体を1株も持っていないから無事だった」というのは、正確ではありません。
正確には、私はS&P500という指数の中に、半導体を薄く持っています。たとえばメモリ半導体のマイクロン(Micron)は、7月上旬時点でS&P500の構成比第8位、全体の約1.71%を占めていました。指数を持つ以上、半導体が上がれば少し得をし、下がれば少し損をします。
ポイントは「薄さ」です。キオクシア1本なら−16%の直撃ですが、指数の中では1〜2%に薄まります。持っていないから無事だったのではなく、薄く持っていたから、痛くても致命傷にならなかった。これが分散の正体です。
逆に「オルカンとS&P500を両方買えば分散になる」と思っている人は、中身が重複していて分散が薄まっている場合があります。その話はこちらの記事で書きました。今回はその裏返しで、「正しく薄く持てば、暴落が他人事に近づく」という話です。
私のポートフォリオの、正直な答え合わせ
ここからは私自身の話です。勝ち誇る話ではありません。むしろ、痛いところを正直に書きます。
QQQは、痛いです
私が米ドルで持っているQQQ(ナスダック100のETF)は、この暴落でかなり下げました。高値から50ドルは落ちた感覚があり、実際に調べたら約53ドル(−7.1%)でした。体感がほぼ当たっていた。それだけ毎日、値動きを見ていたということです。他人事とはいえ、含み損が膨らむのは、痛いものは痛い。ただ、私は長期で持つと決めているので売りません。
VOOは、よく耐えています
一方、コロナショックから足かけ6年持っているVOO(S&P500のETF)は、よく耐えていました。派手さはありませんが、こういう日にこそ、その地味さがありがたく感じます。
金は、赤字です
暴落耐性の枠として持っている金(ゴールド)は、正直に言うと今も赤字です。高いところで買ったからです。それでも金は、株とは違う理由で動きます。今回の金の下落は「実質金利の上昇」が理由で、株の暴落とは別のエンジンです。
だから私は、金を失敗だとは思っていません。分散は、含み損を消してはくれません。それでも意味があるのは、全部が同時には落ちないからです。
ディフェンシブが強い日は、少し寂しい
今回、食品や医薬品などのディフェンシブ株は上がりました。こういう時に強いのは、高配当株や内需株です。でも、私はそれらを持っていません。
正直に言うと、ディフェンシブが強い日は、少し寂しい気持ちになります。守られている安心と、この乱高下に乗れない蚊帳の外の寂しさが、同居しているからです。「高配当も持っておけば」というのは、単なる無いものねだりかもしれません。完璧な分散を持っている人は、どこにもいないのだと思います。
読者はどう設計すればいいか
では、これから始める人はどうすればいいのか。答えはシンプルです。
オルカンやS&P500の投資信託を1本持っているなら、あなたはもう「震源から遠い場所」に立っています。今回の暴落を見て、慌てて何かを買い足す必要はありません。積立を止める必要もありません。
私の保有と、読者の方への実装は分けて考えるべきです。私は米ドル建てのETFを直接買っていますが、多くの人にとっては、円で買える投資信託の方が手間も手数料も少なくて済みます。
| 役割 | 私(Hiro)の実装 | 読者向けの実装(例) |
|---|---|---|
| 中核(米国) | VOO(ドル建てETF) | eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) |
| 全世界(迷うならこれ) | わずかにオルカン | eMAXIS Slim 全世界株式(オルカン) |
| テック(任意) | QQQ(ドル建てETF) | eMAXIS NASDAQ100インデックス |
要は、全世界か米国の指数を1本、淡々と積み立てる。それだけで、震源から十分に遠い場所に立てます。これから口座を用意する方向けに、私が用途で使い分けている証券会社を置いておきます。米国株・海外ETFならマネックス証券、サポート重視なら松井証券という使い分けです。私の主軸はSBI証券ですが、用途で選んで問題ありません。
分散という考え方をもっと深く知りたい方には、その原典ともいえる一冊があります。バートン・マルキール著『ウォール街のランダム・ウォーカー』(日本経済新聞出版)です。「市場に勝とうとせず、幅広く持って待つ」というインデックス投資の土台を、半世紀にわたって語り続けてきた名著です。
よくある不安(Q&A)
Q. 暴落が来たら、いったん売って避けるべきですか?
私はしません。いつ売っていつ買い戻すかを当て続けるのは、プロでも難しいからです。分散した指数を持っているなら、下がっても薄いダメージで済みます。慌てて売って、回復に乗り遅れる方が痛いと考えています。
Q. 半導体が暴落したなら、指数からも外すべきですか?
その必要はありません。指数は、伸びる業種を自動で多く持ち、縮む業種を自動で減らしていく仕組みです。次の主役が何であれ、指数を持っていれば自動で乗り換えてくれます。「次はどこだ」と探す作業は、指数がすでに肩代わりしてくれています。
まとめ:分散は勝ちません。ただ、死にません
- 暴落でいくら減るかは「何を、どれだけ集中して持っていたか」で決まりました。震源に近いほど大きく揺れます
- オルカンやS&P500を1本持つだけで、あなたは震源から遠い場所に立てます。慌てて売らず、積立も止めないことです
- 分散は含み損を消しません。それでも意味があるのは、全部が同時には落ちないからです
今回の暴落は、私に一つのことを数字で見せてくれました。分散は、勝つための道具ではありません。ただ、死なないための道具です。
ディフェンシブが強い日に少し寂しくなる私も、たぶんこのままで良いのだと思います。派手には勝てないけれど、大きくは負けない。それが、18年続けてたどり着いた場所です。
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この記事の内容は動画でも解説しています。
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※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品への投資を推奨するものではありません。株価・指数のデータは2026年7月17日時点の情報です。投資判断はご自身の責任のもとで行ってください。
本記事は情報提供を目的としており、投資助言・勧誘を目的とするものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
