米国債30年が利回り5.2%、19年ぶりの高さでも私が買わない理由——「税引後5%」で計算し直す【ストリップス派】

19年ぶりの高利回りでも米国債を買わない理由を解説するアイキャッチ マーケット・相場分析
30年物の米国債利回りが19年ぶりの高さに。それでも買わない判断を「税引後5%」の物差しで説明します(2026年7月31日時点)

2026年7月29日、ダウ平均は1,153ドル下げました。2025年4月以来、最悪の1日です。

その3日後、下げ幅の77%が戻っていました

戻らなかったものが、1つだけあります。30年物の米国債利回り、5.2%台。2007年以来、19年ぶりの高さです。

私は米国債を持っていません。買う条件を決めて、待っています。4月は4.946%で見送り、5月は5.111%で見送りました。その数字が、株が騒がれている裏で5.2%台まで来ています。

それでも、私はまだ買いません。表面利回りで5.2%は、私の物差しでは「税引後4.6%」だからです。

この記事では、19年ぶりの高利回りを自分の口座の数字に翻訳する方法を書きます。計算機も置きました。結論は最初に書いたとおりで、私はまだ動きません。

正直に書くと、私も株の下落のほうを見ていました

7月29日、米連邦公開市場委員会(FOMC=米国の金融政策を決める会合)は政策金利を3.5〜3.75%に据え置きました。7会合連続の据え置きです。

注目すべきは票の内訳でした。賛成9、反対3。しかも反対した3人は「利上げすべきだ」という側でした。

市場の反応は速く、ダウ平均は1,153.18ドル安(−2.19%)の51,594.14ドルで引けました。

ここで正直に書いておきます。私が最初に見たのも、株のほうでした。

投資歴18年で、自分では規律を守っているつもりです。それでも、目は派手なほうに行きます。「ダウ1,153ドル安」という見出しと「30年債利回り、19年ぶりの高さ」という見出しが並んでいたら、先に開くのは前者でした。債券の話に気づいたのは、そのあとです。

そして3日経って残っていたのは、後者のほうでした。

もう1つ、この日の下げ方には特徴がありました。よくある「利下げしてくれないから下がった」ではありません。「利上げが後手に回っている」という不満で下がっています。常識と逆向きです。この仕組みは別記事で図解しました。

なぜ金利が上がると株価は下がるのか——米国株下落の”本当の仕組み”を図解で

その下げは、3日で77%戻りました

数字で追うと、こうなります。

日付 ダウ平均 終値 前日比
7月28日(火) 52,747.32 +537.24(+1.03%)
7月29日(水) 51,594.14 −1,153.18(−2.19%)
7月31日(金) 52,485.03 +276.97(+0.53%)
ダウ平均の3日間(2026年7月28日〜31日の終値)。下げ幅1,153.18ドルのうち890.89ドル、77%が戻りました

7月28日の高値までは、あと262ドル。率にして0.5%です。暴落と呼ばれた1日は、3営業日でほぼ往復しました。

日本市場はもっと激しく戻りました。7月31日の日経平均は前日比2,494.59円高の64,362.02円。一時は3,400円を超える上昇で、65,000円台を回復しています。アドバンテストは10.85%高、東京エレクトロンは上期予想を売上1兆5,700億円から1兆6,200億円へ上方修正しました。

ただし、この反発は「全面高」ではありません

ここは正確に書きます。「米IT大手の好決算が反発を牽引した」という説明を見かけますが、実際の決算はまだらでした。

企業 株価の反応 市場が見たもの
マイクロソフト +8.13% 設備投資+84%に対しAzure+40%。投資が需要に裏打ちされていると評価
アマゾン +15% 決算が予想超え。2026年の設備投資は2,200億ドルへ引き上げ
アルファベット(グーグル) −7%超 クラウド+82%でも、設備投資2,050億ドルへの増額と2004年上場以来はじめてのフリーキャッシュフロー赤字が嫌気された
メタ −9.64% 1株利益が予想に未達
アップル 下落 先行き見通しの弱さ、部材コスト上昇、主要事業の減速
2026年7月末のビッグテック決算への株価反応。上げた会社と下げた会社が同居しています

つまり、「好決算だったから全部が上がった」のではありません。市場が見ていたのは、増やした設備投資に見合う需要があるかどうかでした。ある会社は買われ、ない会社は売られています。

アジアの半導体株が反発したのも、「決算が良かったから」ではなく、買われた側が設備投資を積み増したからです。その予算は、いずれ製造装置とメモリの発注になります。だから東京エレクトロンとアドバンテストに買いが入りました。連想の道筋としては、こちらのほうが正確です。

この「下がって、すぐ戻る」は今年ずっと繰り返してきたことでもあります。上半期を数えたら、慌てなかった人が一番勝っていました。

2026年上半期の答え合わせ——日経+35%で一番勝ったのは、”何もしなかった人”だった

戻らなかった数字があります

株が往復しているあいだ、債券市場のほうは戻りませんでした。

7月29日、30年物の米国債利回りは一時5.23%。2007年以来、19年ぶりの水準です。週の終わりの7月31日にかけても長期金利の上昇は続き、10年債は2025年1月以来の高さをつけました。

株は往復した。金利は残った 7月28日 7月29日 7月31日 ダウ平均 52,747 51,594 52,485 30年債利回り 5.2%台(19年ぶり) 戻った 残った 2026年7月28日〜31日。縦軸は模式的な位置で、実際の変動幅を縮尺どおりには描いていません
株価は3営業日で往復し、長期金利は高い場所にとどまりました

債券市場が言っているのは、こういうことです。「インフレを抑えると言うわりに、動きが遅い」。

バンク・オブ・アメリカのエコノミストはこれを「インフレ面での信認ショック」と呼びました。5月22日に就任したばかりのケビン・ウォーシュ議長(前FRB理事、パウエル氏の後任)にとっては、市場から突きつけられた最初の警告です。

ここが、この記事でいちばん言いたいところです。

株の反発は選別的でした。買われた会社と売られた会社があります。でも金利の警告は、全員に同じだけ効きます。住宅ローンにも、企業の借り換えにも、国の利払いにも、そして株式の評価にも効きます。だから私は、株のニュースを見た日ほど債券を見るようにしています。今回は順番を間違えましたが。

「19年ぶりの高利回り」を、私の物差しで測ります

ここから本題です。19年ぶりという言葉は強いですが、強い言葉は投資判断になりません。自分の口座の数字に翻訳する必要があります。

私の買う条件は1つだけです。

米国債は、税引後で実質年5%を超えたら買う。表面利回りでは、およそ5.7%。

この条件に至るまでには経緯があります。

時期 出てきた数字 私の判断
2026年4月 表面4.946% 5%に届かない。買わない
2026年5月22日 表面5.111%(SBI証券) 数字は超えたのに買わなかった。税引後で計算したら4.47%だったため
2026年7月29日 30年債 5.2%台 まだ買わない(この記事)
5月に一度、条件を満たしたはずの数字を見送っています。そのとき条件の定義を書き直しました

5月に何をしたかというと、ラインを緩めたのではなく、定義の穴をふさぎました。それまで私は「5%」としか決めておらず、それが表面利回りなのか税引後なのかを決めていませんでした。表面5.111%を税引後で計算したら4.47%で、もともと考えていた「4%ルールとS&P500の長期平均を明確に上回る」という水準に届いていなかったのです。

買える数字が来たときに買わないと決めたので、規律としてはむしろ厳しくなりました。この経緯は前回の記事に書いています。

米国債ストリップス債、5.111%が来た日——「規律を動かさない」と書いた私が出した答え

ここでよくある計算間違いがあります

私が買うのはストリップス債(ゼロクーポン債)です。利息を受け取らず、額面より安く買って満期に額面を受け取る形の債券です。

ここで多くの人(私も一度やりました)がやる計算はこれです。

表面5.7% × (1 − 20.315%)= 4.54% ← これは間違いです

この式は、毎年利息を受け取って毎年課税される利付債の計算です。ゼロクーポン債は満期まで課税されません。その間ずっと、税引前の金額が複利で回り続けます。税金は最後に1回だけかかるので、年率に直すと税の効きが薄まります。

実際に30年で回すと、こうなります。

表面利回りから、税引後の実質年率へ(30年・ゼロクーポン) いまの30年債 表面 5.22% 30年ぶんの複利のあと 利益に20.315%課税 税引後の実質年率 4.61% 私が買うライン 表面 5.63% 同じ計算をすると 税引後の実質年率 5.00% いまは、表面であと0.41ポイント足りません 税率20.315%・満期まで保有・満期に一括課税・為替の影響は含まない概算
表面5.22%は、税引後では4.61%にしかなりません。私のラインまで表面で0.41ポイント足りない計算です

注意点を2つ書いておきます

1つめ。この「5.7%」という数字は、30年のゼロクーポン債の場合の話です。年数が変わると、必要な表面利回りも変わります。満期までの期間が短いほど、課税を先送りできる期間も短くなるので、必要な表面利回りは上がります。

残存年数 税引後5%にするために必要な表面利回り
10年 5.99%
20年 5.78%
30年 5.63%
同じ「税引後5%」でも、年数によって必要な表面利回りは変わります(税率20.315%・満期一括課税の概算)

ですから「米国債は5.7%から」とだけ覚えると、短い年限に当てはめたときに足りません。年数とセットで持っておく数字です。

2つめ。ニュースに出る「30年債5.2%」は利付債の市場利回りで、証券会社の画面に並ぶストリップス債の販売利回りとは別物です。市場の地合いを測る目安にはなりますが、そのまま自分の買値にはなりません。実際に買うときは、口座で出ている販売利回りで計算し直す必要があります。

ストリップス債と利付債の違いそのものは、こちらに書きました。

米国債|ストリップス vs クーポン、私はストリップス派の理由

私は今回、口座の画面すら開きませんでした

ここが、今回いちばん自分でも意外だったところです。

5月のときは違いました。SBI証券のストリップス債の一覧を開いて、5.111%という数字を見て、電卓を叩いて、それから「買わない」と決めました。手間をかけて出した結論でした。

今回は、開いていません。ニュースで「30年債5.2%台」と見た時点で、届いていないことが分かったからです。

これは自慢ではありません。むしろ逆で、5月に一度きちんと計算しておいたから、今回は計算しなくて済んだという話です。

条件を「税引後5%」という形で決めておくと、表面利回りのニュースを見た瞬間に距離が測れます。5.2%と5.7%の差は0.5ポイント。ここまで来ると、開いて確かめる意味がありません。

18年やってきて思うのは、規律が働いているときほど、やることは減っていくということです。迷っている時期は、毎日口座を開いて、チャートを見て、掲示板を読んでいました。ルールが数字で書けるようになってから、その時間がなくなりました。

今回の3日間で私がやったことは、結局のところ「ニュースを読んだ」だけです。積立の設定はそのまま、売買はゼロ、口座も開いていません。それでいい、と言えるようになるまでが長かったというのが正直なところです。

あなたの「税引後ライン」を計算してみてください

数字は人によって違います。私は税引後5%と決めていますが、目標が4%の人もいれば6%の人もいます。年数も違います。

下の計算機に、表面利回りと残存年数を入れてみてください。満期まで持ったときの税引後の実質年率と、税引後5%にするために必要な表面利回りが出ます。初期値には、いまの30年債の水準を入れてあります。

ゼロクーポン債 税引後利回り計算機

表面利回りと残存年数を入れると、満期まで持った場合の「税引後の実質年率」を計算します(税率20.315%・満期に一括課税・為替の影響は含まない概算です)。

※あくまで概算です。実際には為替、購入時の手数料、途中売却の可能性、外国税額控除の扱いなどが乗ります。それでも「表面と税引後は違う」という一点を体感するには十分だと思います。

よくある疑問

Q. 19年ぶりの高さでも買わないのは、慎重すぎませんか?

そうかもしれません。ただ私にとって米国債は「値上がりを狙う商品」ではなく、置いておくだけの商品です。株式のように成長を取りに行くわけではないので、株式の期待リターンを明確に上回らないと持つ理由がありません。

だから、あえて高いラインを置いています。届かないなら、そのぶんは株式指数に置いておくというだけです。

Q. 円高になったら、利回りが良くても損をしませんか?

為替は当然のリスクです。前回、5.111%のときに計算した損益分岐点は1ドル52.51円でした。ここまで円高が進まなければ、円換算でも元本割れはしないという水準です。

もちろん未来は分かりませんが、「為替が怖い」を漠然と持っておくより、何円までなら耐えられるかを1回計算しておくほうが役に立ちます。

Q. 個人向け国債や債券ファンドではだめですか?

目的が違えば、それでいいと思います。私が米国債ストリップスにこだわるのは、買った時点で満期までの複利が確定するという一点が好きだからです。利息を受け取るたびに課税されて、その都度どこに再投資するか考える手間がありません。

逆に、定期的な現金収入がほしいなら、債券より高配当株ETFのほうが素直だと私は考えています。

まとめ

  • 7月29日のダウ1,153ドル安は、3営業日で77%戻りました。残ったのは30年債利回り5.2%台、19年ぶりの高さです。
  • 株の反発は選別的でした。買われた会社と売られた会社があります。でも金利の警告は全員に効きます。
  • 私の買うラインは税引後で実質5%(30年なら表面5.63〜5.7%)。今回の5.22%は税引後4.61%で、表面であと0.41ポイント足りません
  • ゼロクーポン債の税引後利回りは、表面に0.79685を掛けても出ません。満期まで課税が繰り延べられるぶん、年率では税の効きが薄まります。

読者の方への翻訳を書いておきます。

ほとんどの人は、今回のニュースで何もしなくて大丈夫です。積立を止める理由も、株を売って債券に移す理由も、この数字からは出てきません。私自身、積立の設定は1つも触っていません。

そのうえで、もし債券をいつか買うつもりがあるなら、「いくらになったら買うか」を税引後の数字で先に決めておいてください。先に決めておくと、ニュースを見た瞬間に距離が分かります。決めていないと、19年ぶりという言葉のほうに引っぱられます。

受け皿になる口座の話

もう1つ実務の話をします。外国債券は、扱っている証券会社と扱っていない証券会社があります。同じ銘柄でも販売利回りや最低購入単位が違います。

米国債を見るための口座について

私の主力はSBI証券ですが、米国債やゼロクーポン債は取扱いの差が大きいので、比べられる状態にしておくと判断が早くなります。米国の債券や個別株まで見たいならマネックス証券、少額から始めたい方や電話で相談したい方には松井証券が向いています。私が使っているから皆さんも、という話ではありません。ラインを決めても、その数字が出ている画面を持っていなければ確かめようがない、という意味です。

マネックス証券 米国株や外国債券に強いネット証券 松井証券 サポートに強いネット証券

最後に、この記事を書いているいまも、私はまだSBIの画面を開いていません。

次に開くのは、5.7%が見えた日です。

動画でも解説しています

この記事の内容を、8分7秒の動画にまとめました。章ごとに耳に残す数字を1つだけ置いてあるので、手が離せないときは音声だけでも追えます。

動画版(8分7秒):第1章 ダウは1,153ドル下げた/第2章 3日で77%戻った/第3章 戻らなかった数字/第4章 5.2%は税引後4.6%/第5章 口座を開かなかった

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※本記事の相場・利回りの数値は2026年7月31日時点のものです。市場環境により変動します。本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品への投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任のもとで行ってください。

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本記事は情報提供を目的としており、投資助言・勧誘を目的とするものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。