「米国の高配当ETF、結局どれが一番もらえるの?」——読者の方から一番よく届くのが、この質問です。
ETF(株や債券をまとめて一括で買える投資信託の一種)の中でも、毎年おなじみの4本があります。HDV・DVY・VYM・SPYD。名前が呪文みたいで、正直どれも同じに見えます。
この記事は、私が2025年1月に書いた比較記事を、2026年7月の最新データで全面的に作り直したものです。1年半でルールも数字も大きく動きました。特に大きいのは次の2つです。
- ある1本が、新NISAの成長投資枠で新しく買えなくなりました。
- そして「一番高配当」の1本は、過去5年のリターンでは4本中の最下位でした。
読者の関心は、つきつめると2つだと思います。「今、一番高配当を出しているのはどれか」。そして「新NISAの成長投資枠で買えるのはどれか」。この記事は、その2つに正面から答えます。
先に結論だけ言います。利回りが一番高いのはSPYD(約4.2%)。でも、それは「リターンが一番高い」という意味ではありません。むしろ逆でした。この「ねじれ」を、図と表で最後まで解いていきます。
まず結論:利回りとNISA、この1枚で全部わかる
細かい話に入る前に、答えを先に出します。下の図が、この記事の全部です。
ポイントは3つです。
- 一番高配当はSPYD(分配利回り約4.2%)。次いでDVY、HDV、VYMの順です。
- HDVは、新NISAの成長投資枠で新しく買えなくなりました(2026年6月から)。すでに持っている分は、そのままで大丈夫です。
- そして後で見せますが、利回りが一番低いVYMが、過去5年のリターンでは4本中トップでした。
「高配当ランキング」だけを見て選ぶと、足をすくわれます。理由を順番に説明します。
4本の正体:2026年7月版・12項目の比較表
まずは全体像です。旧版では10項目でしたが、今回は「5年のリターン」と「1口いくらから買えるか」を足して、12項目にしました。数字はすべて2026年7月初旬の実測値です。
| 項目 | HDV | DVY | VYM | SPYD |
|---|---|---|---|---|
| 運用会社 | ブラックロック | ブラックロック | バンガード | ステート・ストリート |
| 連動する指数 | モーニングスター 配当フォーカス |
ダウ・ジョーンズ 米国好配当株 |
FTSEハイディビデンド イールド |
S&P500 高配当 |
| 経費率(年) | 0.08% | 0.38% | 0.04% | 0.07% |
| 分配利回り(実測) | 2.83% | 3.31% | 2.28% | 4.19% |
| 分配の回数 | 毎月 (2026年6月〜) |
年4回 | 年4回 | 年4回 |
| 5年リターン(年率) | 11.6% | 10.5% | 12.1% | 8.7% |
| 銘柄数 | 81 | 105 | 618 | 78 |
| 純資産 | 約2.2兆円 | 約3.7兆円 | 約12.6兆円 | 約1.2兆円 |
| セクターの偏り | エネルギー・ 生活必需品など |
金融・公益 寄り |
全体に分散 (REIT除外) |
不動産27% に集中 |
| 1口いくらから | 約4,500円 | 約25,700円 | 約25,700円 | 約7,800円 |
| 新NISA成長投資枠 (新規買付) |
✕ | △ | ○ | ○ |
株価・利回りは2026年7月2日終値ベース、円換算は1ドル=約161円で計算。5年リターンは分配金再投資込みの年率。数字は市況で変動します。△=証券会社により取扱・NISA対象が異なる。
この表を、性格の違いとして一言でまとめると、こうなります。
- HDV:財務の健全な81社に絞った「守り」型。エネルギーや生活必需品が中心。1口約4,500円と、一番少額から買えます。
- DVY:配当の実績が長い105社。金融や公益寄り。ただし経費率0.38%だけが突出して高いのが弱点です。
- VYM:618銘柄に広く分散する「分散の王様」。経費率は0.04%と最安。不動産(REIT)は除いています。
- SPYD:利回りの高い80社に特化。不動産が27%を占めるなど、セクターの偏りが大きいのが特徴です。
ここで、経費率(運用手数料)だけを図で見てください。長期で効いてくる、地味だけど大事なコストです。
1年半前の私の旧記事では、DVYの経費率を「0.08%」と書いていました。これは誤りで、正しくは0.38%です。当時はAIに聞いた数字をそのまま載せてしまいました。今回、公式データで一つずつ取り直しています。
「一番高配当」の代償:SPYDの4.2%には理由がある
ここが、この記事で一番伝えたいところです。
私はいつも、利回りの高い商品を見たら、一つの問いを立てます。「この利回りは、誰が、何の代金として払っているのか」。
SPYDの答えは、はっきりしています。利回りの高い上位80社だけに絞り込んだ代償です。その結果、不動産(REIT)が27%、生活必需品が15%と、特定の業種にかたよります。分散をあきらめて、利回りを取りにいった設計なのです。
では、その「高利回り」は、リターン(値上がり+配当の合計)につながったのでしょうか。過去5年を見ると、答えは「ノー」でした。
数字で並べると、こうです。
- 利回り1位のSPYDは、5年リターンが年率8.7%で最下位。
- 利回り最下位のVOO(S&P500)は、5年リターンが年率13.1%でトップ。
- 4本の高配当ETFは、全部そろってVOOに負けています。
これは、高配当投資の宿命に近い話です。配当をたくさん出す会社は、成熟して成長が止まった会社が多い。だから株価そのものの伸びは、成長企業をたくさん含むS&P500に届きにくいのです。
「毎月・毎四半期、現金が振り込まれる安心感」には価値があります。でも、その安心感の代金として、トータルの資産の伸びを一部あきらめている——ここは正直に知っておくべきだと、私は考えます。
新NISAで買えるか:HDVが「脱落」した理由
次に、2つ目の問いです。「新NISAの成長投資枠で買えるのはどれか」。
新NISAの成長投資枠(年間240万円の非課税枠)には、金融庁が定めた対象の条件があります。ざっくり3つです。
HDVは長く「年4回」の分配でした。ところが2026年6月から「毎月分配」に変更されました(初回は7月15日)。これで条件2に引っかかり、成長投資枠の新規買付ができなくなったのです。
大事なのは、HDVが悪いETFになったわけではないということです。経費率0.08%は安いままですし、中身も変わりません。上場しているETFは、投資信託でよくある「たこ足分配(元本を取り崩して配る)」が構造上できません。良いETFが、毎月分配型を弾くルールに、たまたま巻き込まれただけです。
この経緯は、別記事で図を使って詳しく書いています。すでにHDVを持っている方は、あわせて読んでみてください。
👉 HDVが新NISA成長投資枠から外れる——でも、慌てて売ってはいけない
買い方の実務:ETFが無理でも「投信」ルートがある
「HDVがダメなら、新NISAで高配当をやる方法はないの?」と思うかもしれません。あります。日本の運用会社が出す円建ての投資信託を使う道です。ETFを直接買うより、少額から自動積立しやすいのが利点です。
| 買い方 | 中身 | コスト(年) | 成長投資枠 |
|---|---|---|---|
| VYM・SPYD(ETFを直接) | 米国ETF | 0.04〜0.07%+為替 | ○ |
| SBI・V・米国高配当 | VYMに連動 | 0.1038% | ○ |
| 楽天・VYM | VYMに連動 | 0.132% | ○ |
| SBI・SCHD/楽天・SCHD | SCHDに連動 | 0.12%前後 | ○ |
SCHD(シュワブ・米国配当株式ETF)は、増配を重視した近年人気の高配当ETF。円建て投信で新NISA成長投資枠から買えます。
なお、DVYについては注意が必要です。マイナーな銘柄のため、証券会社によって取扱いや新NISA対象の扱いが分かれます。そもそも経費率0.38%と割高なので、今から4本の中でDVYをあえて選ぶ理由は、正直に言って薄いと私は考えています。
私は買わない。でも、あなたは買っていい
ここまで数字を並べてきましたが、私自身の話をします。
私はこの4本を、どれも持っていません。中核はVOO(S&P500のETF)とQQQ(ナスダック100のETF)です。理由はシンプルで、さきほど見たとおり、過去5年でVOOが高配当4本すべてに勝ったから。私は配当という現金を受け取らず、値上がりの複利をまるごと再投資する側にいます。
ただし、これは「高配当ETFはダメ」という意味では、まったくありません。保有と推奨は別物です。下の表で、私の選択と、読者の方への考え方を分けて書きます。
| 私(Hiro)の選択 | 読者の方への考え方 | |
|---|---|---|
| 中核 | VOO・QQQ(値上がり重視) | まずは全世界株か米国株の低コスト投信 |
| 高配当ETF | 持たない | 現金の受け取りに価値を感じるなら合理的 |
| 向いている人 | 資産を増やす局面の人 | 取り崩し期・定期的な現金がほしい人 |
資産を取り崩していく世代や、「毎月・毎四半期、口座にお金が入る」ことが投資を続ける支えになる人にとって、高配当ETFは十分に合理的な選択です。
その前提で、4本から選ぶとしたら、私ならこう考えます。
- 長く増やしながら配当も欲しい → VYM。618銘柄の分散と経費率0.04%は、心強い土台です。
- とにかく今の利回りを最優先 → SPYD。ただし不動産への偏りと、リターンが伸びにくい点を承知の上で。
- 守り重視で少額から → HDV。ただし新NISAでは新規で買えないので、特定口座での購入になります。
- DVYは、今からあえて選ぶ理由は薄いと考えます(経費率0.38%)。
そして「新NISAの枠を使って、高配当を長く続けたい」なら、私が一番注目しているのはSCHDの円建て投信です。この理由は、SCHDを単独で深掘りした記事に詳しく書いています。
👉 高配当SCHDを徹底分析した結論——「私は買わない、でもあなたは買っていい」
また、「そもそも利回り10%超のような商品はどうなの?」という疑問には、JEPI・JEPQを解剖した記事が参考になります。高利回りの「正体」を見抜く目は、この4本を選ぶときにも効きます。
👉 JEPI・JEPQとは?”利回り10%超”の正体はカバードコール
おすすめの2冊
高配当投資に入る前に、「そもそもお金と投資の基本」を地に足のついた形で押さえておくと、利回りの数字に振り回されにくくなります。私が読者の方に紹介しやすいのは、この2冊です。
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まとめ:あなたが何を重視するかで、答えは変わる
最後に、目的別の早わかり表でまとめます。
| あなたが重視するもの | 向いているETF |
|---|---|
| 分散と低コスト、増やしながら配当も | VYM |
| 今の利回りを最優先(偏りは承知) | SPYD |
| 守り重視・少額から(新NISAは不可) | HDV |
| 新NISAで高配当を長く続けたい | SCHDの円建て投信 |
| とにかく資産を増やしたい | VOO等のS&P500(高配当ではない) |
「一番高配当はどれか」の答えはSPYD。「新NISAで買えるのはどれか」の答えはVYMとSPYD、そしてSCHD投信。これが2026年7月の結論です。
ただ、利回りの数字は入口にすぎません。その利回りが、何をあきらめた代金なのか。そこまで見てから選べば、あとで「こんなはずじゃなかった」と後悔せずにすみます。私はそう考えて、今日も自分の中核はVOOに置いたままにしています。
この4本の比較と「利回りとリターンのねじれ」は、動画でも図解しています。あわせてどうぞ。
米国高配当ETF・投信を買える主要ネット証券(用途別)
私の主軸はSBI証券ですが、用途で使い分けています。米国株・投信の情報が厚いマネックス証券、サポートが手厚く少額・相談向けの松井証券、外国株の取扱いが広いサクソバンク証券という並びです(保有≠推奨。ご自身の設計で選んでください)。
おまけ:利回り数%を追う前に、私が投資している「もう一つのエンジン」
最後に、少しだけ脱線させてください。
高配当ETFの利回りは、せいぜい年2〜4%です。その数%を追いかけて悩むより、自分の生産性を上げる道具に投資したほうが、リターンが大きいことがあります。私はこれを「攻めのエンジン」と呼んでいます。市場に乗せる守りの投資と、自分の稼ぐ力を上げる攻めの投資。この2つは、両輪です。
たとえば、AIで何かを作れるパソコンが1台あれば、副業の種銭を自分で生み出せます。私が実際にこのブログや自作ツールを作れているのも、身の丈のパソコン1台から始めたからです。この考え方は、別記事に詳しく書きました。
👉 なぜパソコンが必要か——AIで「作る側」に回れる唯一の道具
参考までに、その「攻めのエンジン」になりうる定番のApple製品を、いくつか挙げておきます。高い最上位モデルは不要です。身の丈の標準構成で十分だと、私は考えています。
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あわせて読みたい(新NISA・投資の始め方)
- 新NISAの投信、結局どれ?|オルカン・S&P500・NASDAQ100・SCHDを1枚で選ぶ——高配当より前に、まず土台を決めたい方へ。
- 高配当SCHDを徹底分析した結論【楽天SCHD積立シミュレーター付き】——新NISAで高配当を続ける本命ルート。
- HDVが新NISA成長投資枠から外れる——でも、慌てて売ってはいけない——HDV保有者はまずこちら。
- 米国株はどこで買う?”手数料0円”に釣られない証券の選び方——ETFを直接買う人の口座選び。
【免責事項】本記事は筆者個人の経験と分析に基づく情報提供であり、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。株価・利回り・経費率・分配方針・NISA対象状況は変動し、証券会社によっても取扱いが異なります。投資判断は必ずご自身の責任で、最新の一次情報(各運用会社の公式資料・目論見書)をご確認のうえ行ってください。NISA口座での米国ETF・投信でも、米国側での配当課税(10%)は残ります。
本記事は情報提供を目的としており、投資助言・勧誘を目的とするものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
