「S&P500(米国の代表的な株価指数。アメリカの主要500社にまとめて投資できる)に連動する投資信託を積み立てておけば、それでいい」。
私は今でもそう考えています。私の資産の中核は米国インデックスです。個別株(特定の1社の株)は、基本的に持ちません。
ただ、持たないからといって、見ていないわけではありません。主要な銘柄は、買わなくても定期的にチェックしています。景気に敏感な銀行株、いま中東情勢で動いている造船関連、そしてAI関連。気になる銘柄は定点観測するのが、私の習慣です。
その中で、ずっと目で追っている日本株が1つあります。総合商社です。
きっかけは、投資の神様と呼ばれるウォーレン・バフェット氏(米国の著名投資家。50年以上にわたり市場平均を上回り続けた実績で知られる)が見出し、氏がCEOを退いた今も、その会社バークシャー・ハサウェイが買い増しを続けているからです。みんながアメリカ株を見ている裏で、バフェット氏は日本の商社を「米国の主力投資先と同じくらい大事だ」と語っていました。
※バフェット氏は2025年末にバークシャーのCEOを退き、2026年からは後継のグレッグ・アベル氏が経営を率いています。ただし日本の商社株は、引き続き保有・買い増しの対象です。
この記事では、私が「持たないのに観察し続けている」理由を、原油高・円安・中東情勢という3つの切り口から、初心者の方にもわかる言葉で整理します。先に結論を言うと、私の評価は「中立。ただし高値掴みには要注意」です。煽りません。数字で淡々と見ていきます。
みんながアメリカ株を買う裏で、バフェットの会社は商社を買い増している
まず事実から確認します。バフェット氏が長年率いてきた投資会社バークシャー・ハサウェイ(米国の巨大投資持株会社。保険や鉄道など多くの事業と株式を保有する)は、日本の5大商社の株を持ち続けています。
その保有比率(その会社の株式全体のうち、何%を持っているか)は、2026年に入って全社で10%を超えました。これは「ちょっと買ってみた」という水準ではありません。腰を据えた長期保有の姿勢です。
| 商社 | バークシャーの保有比率 |
|---|---|
| 三菱商事 | 10.8% |
| 三井物産 | 10.4% |
| 伊藤忠商事 | 10.1% |
| 丸紅 | 10%超(2026年5月に到達) |
| 住友商事 | 10%超(2026年5月に到達) |
金額で見ると、もっと驚きます。5社合わせた保有額は、2025年末で約5.48兆円。1年前から約50%も増えています。
2026年2月末に公表された年次報告書で、バークシャーは日本への投資を「米国の主力投資先と肩を並べる、長期の価値創造の機会」と位置づけました。さらに2026年3月には東京海上ホールディングス(日本最大級の損害保険会社)の株も新たに取得しています。
バフェット氏が見込み、引退後もバークシャーがこれだけ日本の地味な業種に本気を出し続けている。私が個別株を持たない主義でも、ここは観察せざるを得ません。
そもそも「総合商社」とは何の会社なのか
用語の整理をします。総合商社とは、「ラーメンからロケットまで」と言われるほど、あらゆるモノやエネルギーを世界中で売り買いし、さらに自ら事業に出資する会社です。
昔は「トレーディング」、つまり仲介して手数料をもらう商売が中心でした。今は違います。資源の権益(油田やガス田を持つ権利)、発電所、食料、コンビニ事業まで、自分でお金を出して保有し、その利益を取り込む「事業投資会社」へと姿を変えています。
ここで日本の構造を思い出してください。日本は、エネルギーも食料も大半を輸入に頼る国です。原油は中東依存度が9割を超えます。
つまり、海外から資源や食料を運んでくる商社は、日本経済にとって「血管」のような存在です。景気の波はあっても、構造的に欠かせない。私個人としては、ここは大手商社の強みだと考えています。
総合商社が「結局どこで儲けているのか」、その仕組みをもう一段くわしく知りたい方には、業界研究の定番書が役に立ちます。
なぜ「今」なのか——原油高・円安・中東情勢の3点で読む
では、なぜ私が「今」改めて商社を観察しているのか。理由は3つです。順番に見ていきます。
1つ目:原油高は、短期では商社の追い風になる
物価が上がる局面で、最初に恩恵を受けやすいのが資源を扱う商社です。仕入れて持っている資源の価格が上がれば、その分だけ利益が乗りやすくなります。
実際、中東情勢の緊迫で、原油の国際価格の代表であるWTI(米国産原油の先物価格)は2026年4月末に一時1バレル110ドルを突破しました。物流が滞ると、モノの値段は跳ね上がります。その値上がりを利益に変えやすいのが商社です。
ただし、注意点があります。原油高が長く続きすぎると、世界全体の景気を冷やします。そうなると商社の商売そのものが縮みます。短期は追い風、長期は逆風。ここは切り分けて考える必要があります。
2つ目:円安は痛いが、ドル主軸なら和らげられる
円安(円の価値が下がること)は、輸入国の日本にとって基本的に痛い材料です。仕入れコストが膨らむからです。
ただ、私自身は資産の中核を、米ドル建てでS&P500やNASDAQ100(米国のハイテク株中心の株価指数)に連動する商品に置いています。だから円安で円の価値が下がっても、ドル建て資産の円換算額はむしろ増え、家計全体のダメージは和らぎます。これはあくまで私個人の設計であり、読者の方に同じ形を勧めるものではありません。
3つ目:そして本命は「中東情勢」
正直に言うと、私が一番ピンと来ている理由はこれです。中東情勢が緊迫し、物流が停滞すると、価格が高騰して商社の利益が出やすくなる。
2026年2月末、米国とイスラエルがイランを攻撃しました。原油輸送の大動脈であるホルムズ海峡(中東の原油の多くが通る狭い海の通り道)の通航が一時ゼロになり、その後ゆるやかに回復しています。この混乱こそ、資源を握る商社の利益が膨らむ局面です。
ただし、これも両刃の剣です。中東情勢が長引けば、世界の商売そのものが頭打ちになります。一時的な値上がり益はあっても、それが続くと景気後退で本業が削られる。だから私は「商社、最高」とは言えません。
| 要因 | 短期 | 長期 |
|---|---|---|
| 原油高 | 追い風(値上がり益) | 逆風(景気を冷やす) |
| 円安 | 逆風(仕入れ増) | ドル資産で各自緩和は可能 |
| 中東情勢 | 追い風(価格高騰) | 逆風(長引けば頭打ち) |
業績で見る5社の実力——「資源組」と「非資源組」で明暗
「5大商社」とまとめて呼ばれますが、中身は5社5様です。観察するなら、この違いを押さえておくと見え方が変わります。
まず純利益(最終的に会社に残る儲け)の3年間の流れを見てください。資源価格が落ち着いたため、資源に強い三菱商事と三井物産は2026年3月期に減益。一方、生活消費に強い伊藤忠商事が、初めて純利益9,000億円台に乗せて首位に立ちました。そして2027年3月期は、三菱商事が1兆円超への大幅回復を見込み、再逆転の計画です。
数字で並べると、こうなります。割安か割高かを判断するPER・PBR、配当利回りも添えました。
| 商社 | 26/3期 純利益 |
27/3期 予想 |
PER 予想 |
PBR | 配当 利回り |
|---|---|---|---|---|---|
| 伊藤忠商事 | 9,003億 | 9,500億 | 13.8倍 | 1.99倍 | 2.34% |
| 三井物産 | 8,340億 | 9,200億 | 15.5倍 | 1.63倍 | 2.78% |
| 三菱商事 | 8,005億 | 1兆1,000億 | 16.4倍 | 1.91倍 | 2.54% |
| 住友商事 | 6,003億 | 6,300億 | 13.2倍 | 1.80倍 | 2.29% |
| 丸紅 | 5,439億 | 5,800億 | 13.9倍 | 1.85倍 | 2.34% |
会社の性格はざっくり2つに分かれます。資源価格の波を受けやすい資源組(三菱商事・三井物産)と、生活消費など景気に左右されにくい事業が中心の非資源組(伊藤忠商事・住友商事・丸紅)です。三菱・三井の2026年3月期の減益は、資源価格が落ち着いた影響そのものでした。
どこが割安で、どこが割高か——「万年割安株」はもう終わった
割安か割高かは、PER(株価が1株あたり利益の何倍かを示す指標。低いほど割安)とPBR(株価が1株あたりの資産価値の何倍かを示す指標。1倍割れが割安の目安)で見ます。
ここでいちばん大事な事実を言います。総合商社は、かつてPBRが1倍を割れることも多い「万年割安株」の代表でした。資産に対して株価が安く放置されていたのです。
ところが今は、5社すべてがPBR1.6〜2.0倍。会社の資産価値の2倍近い株価がついています。PERも13〜16倍と、かつての一桁台から大きく切り上がりました。バフェット氏が築いたバークシャーの買いで人気化し、もう「割安株」ではなくなった——これが、私が高値掴みを警戒する最大の根拠です。
そのうえで5社を相対的に見ると、資産面でいちばん割安なのはPBR1.63倍の三井物産、利益面でいちばん割安なのはPER13.2倍の住友商事です。逆に伊藤忠商事はPBR1.99倍と最も買われており、安定性を市場が高く評価しています。なお、これは銘柄を選んで勧めるための比較ではありません。あくまで「商社という業種の中の違い」を知るための整理です。
地味だけど効く——「配当」という商社の魅力
商社には、もう1つ見逃せない魅力があります。配当(会社が利益の一部を株主に配るお金)の安定感です。
上の表のとおり、足元の配当利回りは株価上昇の裏返しで2%台に下がっています。突出した高配当ではありません。それでも私が評価しているのは、多くの商社が「累進配当」を掲げている点です。
累進配当とは、「業績が多少悪くても、配当を減らさない(できれば増やす)」という会社の方針です。利益が資源価格で上下する商社でも、もらえる配当は減りにくい、という安心感につながります。
実際、三井物産は6期連続の増配(配当を前年より増やすこと)を予定しています。利回りの数字は株価で動きますが、「減らさない」という姿勢が続いている点は、長期で持つ人にとって心強い材料です。バフェット氏が「50年は売らない」と語る背景にも、この安定した株主還元があると考えられます。
それでも私は「買わない」——観察にとどめる理由
ここまで魅力を並べましたが、私は商社株を買っていません。買う予定も、今のところありません。理由を正直に書きます。
理由1:私の主軸はあくまでインデックスだから
私は18年の投資経験のなかで、個別株は「勝てる人が限られる世界」だと結論づけました。今の主軸は米国インデックスの長期積立です。商社が魅力的でも、1社に資金を集中させる個別株投資は、私の規律から外れます。
理由2:バフェットが買い増した今は、株価が高いから
ここが最大の注意点です。世界一の投資家が大量に買い増し、ニュースになった結果、5大商社の株価はすでに大きく上がりました。配当利回りが2%台まで下がっているのは、その裏返しです。
一方で、2026年3月期の決算では、三菱商事と三井物産は資源価格の調整で前年より減益でした。利益が減っているのに、株価は人気で高い。これは、初心者が一番やってはいけない「高値掴み(高くなったところで飛びついて買うこと)」のリスクが高い状態です。
商社を「持ちたい・推奨する」ことと、「私が今いくらでも買う」ことは別問題です。混同しないよう、私の立場と読者の方への向き合い方を分けて整理します。
| 私(Hiro)の場合 | 投資初心者の方への目線 | |
|---|---|---|
| 商社株 | 保有せず・観察のみ | 1点集中は避ける。買うなら少額・分割で |
| 主軸 | 米国インデックス(S&P500・NASDAQ100) | まずは全世界株や米国株の投信から |
| 今の判断 | 中立。高値掴み警戒で待つ | 焦らない。下げた局面で検討 |
とはいえ、「気になる業種を、いつでも調べて少額から触れる環境」を持っておくこと自体は、投資の勉強として価値があります。私が商社や銀行、造船、AI関連を定点観測できるのも、口座を開いていつでも決算や株価、PER・PBRを見られるからです。
日本株・米国株を1つの口座で調べたい方へ
私の主軸はインデックス積立ですが、商社のような個別株を「観察・研究」する口座は分けて持っています。マネックス証券の「銘柄スカウター」なら、この記事で見た業績推移・配当・PER・PBRをまとめて追えます。少額・サポート重視で初心者に優しい松井証券と、用途で使い分けています(保有していること=皆さんへの推奨ではありません)。
そして、バフェット流の「割安で良い会社を長く持つ」という考え方そのものを、マンガでサッとつかみたい方には、こちらが入りやすいです。
まとめ:買わない。でも、日本株を組むなら必ず入れる銘柄として見守る
バフェット氏が惚れ込み、引退後もバークシャーが買い増す日本の総合商社。配当は累進配当で安定し、輸入国・日本に欠かせない構造的な強さもあります。一方で、株価はすでに高く、足元の決算は資源2社が減益。手放しでは勧められません。
- バークシャーは5大商社を全社10%超まで買い増し、年次報告でも「米国の主力投資先と同等」と評価しています。
- 原油高・中東情勢は短期で商社の追い風ですが、長引けば景気を冷やす逆風になります。
- 株価上昇で配当利回りは2%台に低下し、資源2社は減益。高値掴みには注意が必要です。
私のブログのスタンスは「個別株は買わない」で一貫しています。それは変わりません。ただ、正直に書きます。もし私が日本株だけでポートフォリオ(持っている銘柄の組み合わせ)を組むなら、商社株は間違いなく入れます。それくらい、構造的な強さは本物だと考えています。
だからこそ、買わない私も、これからも商社を見守り続けます。派手な追い風に飛びつくのではなく、構造の強さと割高さを天秤にかけながら。その天秤が釣り合う日を、決算と株価を見ながら静かに待ちます。
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※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品への投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任のもとで行ってください。
本記事は情報提供を目的としており、投資助言・勧誘を目的とするものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
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