JPMorgan Chase の CEO ジェイミー・ダイモンが、2026年4月28日、世界最大級の年金運用機関であるノルウェー政府系ファンド(NBIM)の投資会議でこう発言しました。「このままでは、いずれ何らかの債券危機が起こる」「賽はもう投げられている、まだ顕在化していないだけだ」。市場関係者の間で大きな話題になりました。
ふつうの読者なら、不安になるかもしれません。でも、私は動じません。
この記事では、ダイモンが何を警告したのか、なぜそれが重要なのか、そして投資歴18年の私が動じない3つの理由をデータと共にお伝えします。読み終えたとき、あなたが「パニックしなくていい」「むしろ規律を守れば味方になる」という感覚で次の一歩を踏み出せるようにしました。
1. ジェイミー・ダイモンとは誰か(なぜこの警告が重要か)
ジェイミー・ダイモンは、米国最大手の銀行JPMorgan Chase(時価総額で世界トップクラスの金融機関)のCEOです。2005年からトップを務め、20年以上もこの巨大銀行を率いてきました。彼の在任中、JPMorgan の株価は500%以上上昇しています。
特に有名なのは、2008年のリーマンショックを乗り越えた手腕です。多くの大手銀行が破綻したり、政府救済を受けたりする中、JPMorgan は深刻な損失を回避しました。ベアー・スターンズやワシントン・ミューチュアルといった経営危機に陥った金融機関の買収も主導し、米国金融システムを下支えしました。
そのため、彼は「ウォール街の守護者」と呼ばれることもあります。ダイモンの発言は、世界中の機関投資家がリアルタイムで読みます。彼が「危機」と口にすると、それだけで市場が動くこともあります。
つまり今回の警告は、「不安を煽る誰かの発言」ではなく、金融市場の中枢にいる人物が、世界最大級の運用機関を前に語った言葉です。だからこそ、無視はできません。同時に、過剰反応する必要もありません。なぜなら、彼自身が「対処できないとは思っていない」とも言っているからです。
2. NBIM 発言の全体像 ── 5本の警告を読み解く
ダイモンが NBIM 投資会議(対談相手は NBIM CEO のニコライ・タンゲン氏)で語った内容は、大きく5つに分けられます。
発言1: 核心の警告
「The way it’s going now, there will be some kind of bond crisis, and then we’ll have to deal with it.」
(このままでは、いずれ何らかの債券危機が起こり、その時になってから対処することになる)
発言2: 成熟した判断とは
「I’m not that worried we’ll be able to deal with it. I just think maturity should say you should deal with it, as opposed to let it happen.」
(対処できないとは思っていない。ただ成熟した判断としては、起きるに任せるのではなく、事前に対処すべきだ)
発言3: 3重リスクの指摘
「The level of things that are adding to the risk column are high, like geopolitics, oil, government deficits.」
(リスク要因は高水準で積み上がっている──地政学、原油、政府赤字)
発言4: インフレ警告
「I don’t know how the world running deficits like this isn’t inflationary… That die may have been cast, it just hasn’t happened yet.」
(世界がこれだけ赤字を出してインフレにならない理由がわからない。賽はもう投げられている、まだ顕在化していないだけだ)
発言5: クレジットリセッション警告
「We haven’t had a credit recession in so long, so when we have one, it would be worse than people think.」
(クレジットリセッションが長期間起きていない。だから起きた時は、人々が思うよりも悪化する)
「賽はもう投げられている」というのは、ローマ帝国のカエサルがルビコン川を渡るときに言ったとされる言葉です。「もう引き返せない」という意味で使われます。ダイモンほどの人物が、これほど強い表現で警告した重みは小さくありません。
なぜダイモンがここまで言うのか。背景には米国の財政状況の悪化があります。次のグラフを見てください。
米国議会予算局(CBO)の予測では、米国連邦債務の対GDP比は2026年の101%から、2036年には120%に達する見込みです。これは平時としては歴史的に高い水準です。
さらに、債務が増えると利息の負担も増えます。
2022年に約4,850億ドルだった利息支払いは、2025年には9,700億ドルへと、わずか3年で約2倍に膨らみました。これが「債券危機」の構造的な土台です。
3. 動じない理由1: 危機予告は「いつ」を教えてくれない
ここから、私が動じない理由をお話しします。
ひとつ目の理由は、シンプルです。危機予告は「いつ起こるか」を教えてくれないからです。
ダイモン自身も、こう言っています。「リスク要因は高水準で積み上がっているが、それらは消えるかもしれないし、消えないかもしれない。どんな出来事の組み合わせが問題を引き起こすかは分からない」。つまり、確率は高いがタイミングは不明ということです。
歴史を振り返っても、暴落の前後を「ぴたりと当てた」投資家は、ほぼ存在しません。予告を聞いて売り、その後の上昇相場に戻ってこられなかった人ばかりです。
有名な研究があります。米国市場で、1980年から2020年までの40年間、最も上昇した10日を取り逃すと、リターンは半分以下に落ちるというデータです。「危機を避ける」つもりで市場から離れると、上昇相場のチャンスも同時に失います。
だからこそ、私はタイミングを予測しません。規律を守って積立を続ける方が、確率的にはマシだという結論にたどり着きました。これが18年やってきての答えです。
4. 動じない理由2: ポートフォリオは既に3重リスクに応答している
ふたつ目の理由は、私のポートフォリオが、ダイモンの指摘した3重リスクにすでに応答していることです。
3重リスクへの対応構造
ダイモンが指摘した3つの不安要因 ── 地政学リスク、原油・インフレ、政府赤字 ── に対して、私はそれぞれ別の資産で備えています。
| ダイモンが指摘したリスク | 私の対応資産 | 対応の意味 |
|---|---|---|
| 地政学リスク | 金(GLDM) | 通貨価値が揺らぐ局面で価値の保存先 |
| 原油・インフレ | VOO(米国S&P500のETF) | 米国の代表500社は値上げ転嫁でインフレ耐性 |
| 政府赤字 | QQQ(NASDAQ100のETF) | テック大手の成長で実質的な購買力低下から逃げる |
用語を補足します。ETFは「株や債券をまとめて買える投資信託の一種」、VOOは「米国の代表500社をまとめて買えるインデックスETF」、QQQは「米国の主要テック大手100社をまとめて買えるインデックスETF」です。
これは偶然ではありません。長く投資をしてきた中で、自然にこの形に落ち着きました。コロナショックでも積立を止めず、むしろ買い増した経験から、こうした「備えの形」は私の中に染み付いています。
ダイモンが指摘した3つの不安要因と、私の構造化は、図らずも一致していました。向こうから「君の備え方は正しい」と言われたようなものです。
私の保有と、読者向け推奨を分けて見る
ただし、ここで大事な区別があります。私の保有銘柄と、読者へのおすすめは別物です。私は投資歴18年で米ドル建てETFを直接保有できますが、初心者の方には為替手数料・米国株売買手数料・配当二重課税といったハードルがあります。
| テーマ | 私(Hiro)の保有 | 読者向けの一般論的選択肢(新NISA前提) |
|---|---|---|
| 米国株式中核 | VOO(米ドル建てETF) | eMAXIS Slim S&P500(信託報酬0.09%) |
| テック集中 | QQQ(米ドル建てETF) | eMAXIS NASDAQ100(信託報酬0.2035%) |
| 全世界 | 中核ではない | eMAXIS Slim 全世界株式(オルカン、信託報酬0.06%) |
| 金 | GLDM(米ドル建てETF) | 純金信託・金関連投信(暴落耐性枠として小比率) |
「私が買っているから皆さんもどうぞ」という書き方はしません。私の保有は私の事情であり、読者の方は新NISAの仕組み・コスト・税制を踏まえて、自分に合うものを選んでいただくのが筋です。
5. 動じない理由3: 「賽はもう投げられている」は買い手にも投げられている
みっつ目の理由は、もう少し哲学的な話です。
ダイモンが言った「賽はもう投げられている」という表現を、私はこう読み替えました。「賽はもう投げられている」のは、買い手にも同じだ、と。
危機が来るなら、それは「絶望は買い」のシグナルにほかなりません。市場が大きく下げる局面は、長期投資家にとって仕入れの時間です。安く買って、長く持って、次の高みまで運ぶ。これが私の18年の答えです。
危機が来たから売る、ではなく、危機が来たから買う。これは精神論ではありません。米国株は過去100年で何度も暴落と回復を繰り返しながら、長期では右肩上がりになってきた歴史的な事実に基づいています。
関連する話として、私は米国債についても規律を持っています。米国債の購入ラインは「年利5.000%以上」と決めており、2026年4月時点ではまだ未到達のため、待っています。詳しくは過去記事「あと0.054%。私はまだ米国債を買わない。」をご覧ください。ルールを動かさないことが、危機予告に振り回されない最大の防御です。
6. クレジットリセッションの可能性と、私の対応
ダイモンはもうひとつ、「クレジットリセッション」についても警告しました。これは説明が必要な言葉です。
クレジットリセッションとは、金融機関の貸し渋りで信用が止まり、企業や個人がお金を借りられなくなる景気後退のことです。2008年のリーマンショックがその典型例です。お金が借りられなくなり、企業が資金繰りで倒れ、株価が大きく下がります。
ダイモンは「クレジットリセッションは長期間起きていないから、起きた時は人々が思うよりも悪化する」と言いました。これには根拠があります。
- 2010年代以降のほぼゼロ金利でお金を借りた企業が、金利上昇局面で苦しんでいる
- 商業用不動産(CRE)ローンには含み損が積み上がっている
- 2023年のシリコンバレー銀行(SVB)破綻以降、地銀のバランスシート問題がくすぶり続けている
- プライベートクレジット市場(銀行を介さない貸付)が約1.7兆ドル規模に膨らみ、不透明領域が拡大している
これらは「次の信用ショックの種」と言われています。確率としては、起こる可能性があります。
でも、私の答えは同じです。それは織り込み済みであり、むしろ買い増すチャンスとしてとらえるべきです。
2008年のリーマンショックでも、米国株(S&P500)は最大で約57%下落しました。しかし、その後10年以内に元の水準に回復し、さらに大きく上昇しています。暴落を耐えたものだけが、次の高みに行く。これが歴史の流れです。
7. インフレ加速論 ── 情報の回転が早くなったから
もうひとつ、ダイモンの発言を読んで私が考えていることがあります。
彼は「世界がこれだけ赤字を出してインフレにならない理由がわからない」と言いました。私はこれに、自分なりの観点を一つ足したいと思っています。
今のインフレは、伝統的な要因(財政赤字・通貨供給・原油高)に加えて、情報の回転速度が上がったことでも加速している面があるのではないかと考えています。
昔は、ニュースが報じられて初めて市場が動きました。新聞が翌朝届き、テレビのニュースが夜に流れ、その間に意思決定する余裕がありました。
今は違います。リアルタイムで状況がわかり、AI が次の展開まで予測します。SNSで一晩で情報が世界中に広がり、株価も為替も即座に反応します。同じ1年でも、昔の数年分の経済イベントが起きてしまうのです。
インフレが収まらないのは、世界の動きが速すぎるからかもしれません。価格改定のサイクルが短くなり、企業はより頻繁に値上げを実施し、消費者の期待インフレ率も高まりやすくなっています。ダイモンの「賽はもう投げられている」は、私にはこの観点でも腑に落ちます。
これは「私の仮説」です。データで完全に証明されたものではありません。しかし、こう考えると、世界中の中央銀行がインフレ抑制に苦戦している理由の一端が見えてくるように思います。
8. まとめ ── パニックでもノイズ無視でもない、規律で迎える
ここまで、ダイモンの「債券危機」警告と、私が動じない3つの理由をお伝えしました。学びを整理します。
- 危機予告は「いつ」を教えてくれない。タイミング予測より、規律を守って積立を続ける方が、確率的にはマシです。
- ポートフォリオが3重リスクに応答していれば、警告は「想定内」になる。地政学・原油・赤字に対して、金・米株・テックで備えがあるか確認しましょう。
- 「賽はもう投げられている」のは買い手にも同じ。危機が来るなら、それは絶望買いのシグナルです。
まずは、自分のポートフォリオが3重リスクのどれに弱いか、ノートに書き出してみてください。穴が見えれば、新NISAの月々の積立配分を少し調整するだけでも備えになります。
パニックでもなく、ノイズ無視でもなく、規律で迎える。これが、ダイモンの警告に対する私の答えです。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品への投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任のもとで行ってください。
本記事は情報提供を目的としており、投資助言・勧誘を目的とするものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
