コロナ禍のある日、何気なくテレビを見ていたら、リクルートのCMがやたら多いことに気づいた。
「これは何かあるのでは」——そう思って両親に話したら、実際に株を買っていた。その後、株価は上がり、喜ばれた。
この経験が、テレビCMを投資のシグナルとして使う原点だ。突然CMが増えた企業は、利益が上がっての税金対策として広告費を使っている——つまり好循環のサインだ。この記事ではその仕組みと使い方を解説する。
「テレビCM・電車広告で投資先を探す」という観察眼
ここまで述べてきた話を、もう少し具体的に体験談として書いていきます。
コロナ禍に気づいた、リクルートの広告露出
私がリクルートホールディングスのCMに気づいたのは、コロナ禍の中盤から終盤にかけて(2020年後半〜2021年頃)でした。
正直、それまでリクルートはあまり目立たない印象でした。求人情報の会社、というイメージで、株式市場の主役とは見ていませんでした。しかし、ある時期からテレビCMだけでなく、電車の広告にもリクルートの露出が増えたのです。
特に印象的だったのが、山手線をはじめとする都内中心の電車広告でした。広告枠を埋め尽くすほどの露出量で、「ここまで広告に金をかける余裕があるのか」と感じたことを覚えています。
両親が買ったリクルート株は、その後どうなったか
両親はリクルートの広告露出に反応して、株式を購入していました。当時の購入時期は記録に残っていませんが、CMに気づいた時期(2020年後半〜2021年頃)からそう離れていない時期と推測しています。
その後の株価推移を整理すると、以下の通りです(出典: Yahoo!ファイナンス、株探)。
| 時期 | リクルートHD(6098)株価 | 備考 |
|---|---|---|
| 2020年3月(コロナ底) | 約2,500円 | コロナショックの底値圏 |
| 2020〜2021年 | 2,500〜5,000円台 | 両親が買った推定時期 |
| 2024〜2025年ピーク | 約9,500円(2026年1月13日: 9,563円) | 高値更新 |
| 2026年4月現在 | 7,000円前後 | 高値からは調整局面 |
仮に2020〜2021年に4,000円前後で購入していたと仮定すると、ピーク時点では約2.4倍まで上昇していた計算になります。さらに、リクルートは配当も継続して出しているため、配当込みのトータルリターンはさらに上になります。CMをきっかけに気づいた銘柄が、結果として大きな上昇を見せたわけです。
最近(2024〜2026年)で印象に残ったCM:海運株と造船株
最近の例で印象的だったのは、海運株です。中でも日本郵船(9101)のテレビCMでした。私の記憶では、それまで日本郵船のテレビCMは目にした記憶がないのです。海運会社は基本的にBtoB(企業対企業)のビジネスなので、一般消費者向けのテレビCMを打つ必要が薄い業種です。それなのに、近年は海運大手のCMを目にする機会が増えました。
実際、海運株の株価推移を見ると、CM露出が増えた時期と業績好調が重なっています(出典: LIMO、つばめ投資顧問)。
| 時期 | 日本郵船(9101) | 商船三井(9104) | 川崎汽船(9107) |
|---|---|---|---|
| 2020年5月 | 約500円 | 約500円 | 約500円 |
| 2022年 | 2,500〜3,500円 | 2,500〜3,500円 | 2,000〜3,500円 |
| 2024〜2025年 | 高値更新 | 高値更新 | 高値更新 |
| 2026年4月現在 | 5,800円台 | 調整局面 | 調整局面 |
海運大手3社は、2020年から最大10倍以上の上昇を記録しました。CMで露出が増えた頃には既に株価は上昇途中でしたが、それでもCMに気づいた段階で「何かが起きている」と察知できれば、投資判断の参考にはなります。
電車広告は「旬」を抑えている
私が特に注目しているのは、都内中心を走る電車、特に山手線の広告です。山手線は通勤・通学の動線として、東京で最も人目に触れる広告媒体の一つです。広告枠の単価も高く、本気の企業しか打てない枠でもあります。
電車広告は、その時点で世間に売り込みたい企業や商品の縮図になっています。新製品の発売、新サービスの立ち上げ、上場(IPO)直後の認知度向上、これらの目的で電車広告を活用する企業が多いです。CMや電車広告を打てる企業は、資金繰りに余裕があり、攻めの姿勢にあると考えられます。これは銘柄選定の足がかりとして、有効な観察対象です。
CM観察を投資判断にどう活かすか
ただし、注意点もあります。CMが目につく時期には、すでに株価が上昇途中である場合が多いということです。リクルートも、海運株も、CMで認知される頃には底値からは大きく上昇していました。
それでも、CMをきっかけに銘柄を知り、業績や財務を調べ、長期投資先として組み入れる、という流れには十分な合理性があります。ニュースや株式ランキングだけ追うよりも、生活者目線の銘柄発掘につながります。私の場合、山手線の広告枠は新作チェックも兼ねて意識して見るようにしています。投資先のヒントが転がっているからです。
なぜCMが増えると注目すべきか
テレビCMは安くない。特に全国放映ともなれば、それなりの費用がかかる。普段CMを打っていない企業が突然大量出稿するには、それだけの資金的余裕が必要だ。
企業がCMを急増させる背景には、2つの狙いがある。
| 狙い | 内容 | 投資家への示唆 |
|---|---|---|
| 節税 | 広告費は全額損金算入できる。利益が出すぎた決算期に広告費を使って課税所得を圧縮する | 利益が出ている証拠 |
| ブランド投資 | 余剰キャッシュを将来の売上につながる認知拡大に使う。財務的余裕がなければできない | キャッシュが潤沢な証拠 |
つまり「急にCMが増えた=利益が出ている=キャッシュが潤沢」という読み方ができる。節税と成長投資を同時に行える体力がある企業だということだ。
「CMを打たなくてもなりたつのに打つ」という逆説
もうひとつ注目したいのは、本来CMを打たなくてもなりたつ企業がCMを打ち始めるという現象だ。
BtoBの企業、すでに知名度が高い企業、リピーターで成り立っているビジネス——こういった企業が突然テレビCMに出てくることがある。「なぜ今さらCMを?」という違和感こそが、利益余剰のシグナルだ。
必要ないのに打つ。それができるのは、それだけ余裕があるからだ。
実際のケース
リクルート(コロナ禍)
コロナ禍でリクルートのCMが急増した時期があった。雇用が激変する中で採用・転職サービスへの需要が高まり、業績も堅調だった。「なぜこんなにCMを打てるのか」という疑問が、業績を調べるきっかけになった。実際に動いた結果、株価は上昇した。
開運・占い関連(2025年後半)
つい半年ほど前、開運系のCMが急に増えた時期があった。「なぜ今この業種が?」という違和感を覚えた人は、調べてみる価値があっただろう。業績が追いついている企業がCMを打てる——この原則は業種を問わない。
| 企業・業種 | CM急増のタイミング | 背景 |
|---|---|---|
| リクルート | コロナ禍 | 雇用流動化で採用・転職需要急増→業績好調→広告余力拡大 |
| Sansan | 2023年末〜2024年初 | ARR拡大・営業CF黒字化のタイミングで全国CM展開 |
| freee | 2020年秋 | 初の大量CM投下後に純売上+45%・継続課金率向上 |
実際の使い方
難しい分析は必要ない。日常の習慣に組み込むだけだ。
- 違和感を覚えたCMをメモする——「なぜこの会社が?」「最近やたら見るな」と感じたら記録する
- IR・決算を軽く確認する——直近の営業利益・キャッシュフローが増えているか見る
- 財務に問題がなければ調べを深める——CM増加と業績好調が重なっていれば投資候補に入れる
- CM量が減り始めたら注意する——出稿量の減少は利益の減少を先行して示すことがある
リスクと限界
この手法は万能ではない。以下の点には注意が必要だ。
- 一過性の可能性:ブランディング目的で一時的に大量出稿し、その後費用先行で利益が急減するケースもある
- ディフェンシブ企業の例外:食品・日用品など値上げに伴う販促強化の場合は、利益圧縮ではなく競合対策の場合もある
- CMの認知だけでは不十分:あくまで「調べるきっかけ」であり、最終的には財務数値と組み合わせて判断する
まとめ
テレビCMは「費用であり投資」という両面を持つ。そして急にCMが増えた企業は、業績好調のシグナルを発していることが多い。
難しい分析をしなくていい。日常でテレビを見ながら「なぜこの企業がCMを?」と感じた違和感を、投資の入口にする。それだけで、ファンダメンタル分析に新しい角度が加わる。
普段は見ないのにCMが増えたら——ちょっと調べてみると面白い。
免責事項:本記事は筆者個人の経験と分析に基づく情報提供であり、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資判断は最終的にご自身の責任で行ってください。記事内容の正確性には注意していますが、市況等の変化により情報が古くなる可能性があります。
本記事は情報提供を目的としており、投資助言・勧誘を目的とするものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

