「インサイダー取引の規制は撤廃すべきだ」——この発言が世界の金融関係者に衝撃を与えています。
発言者は、Interactive Brokers(NASDAQ: IBKR)の創設者トーマス・ペテルフィー氏です。
2026年4月10日のBloomberg Odd Lots Podcastで飛び出したこの主張は、日本ではほぼ未報道の状態です。
この記事では、ペテルフィー氏の主張の背景・理論的根拠・予測市場ビジネスとの関連を整理します。
「情報は即座に公開されるべき」——ペテルフィーの衝撃発言
Bloomberg Odd Lots Podcast(2026年4月10日)で、ペテルフィー氏はこう述べています。
“I’m in favor of not having any rules against insider trading. I would like all the information out there as soon as it’s available.”
訳すと「インサイダー取引を禁じるルールには反対です。情報は入手可能になった瞬間、すべて公開されるべきです」という内容です。
この主張の論拠は、情報伝達のスピードにあります。
ペテルフィー氏は「規制が情報を秘匿させるから、関係者が長期間にわたって優位に立てる」と指摘します。
規制がなければ、情報は瞬時に市場価格に織り込まれるため、不正利用の時間的窓口が閉じる——という逆説的な論理です。
氏はこれを「シャーク理論」と呼びます。
「シャークは本来1〜2秒しかシャークでいられない。しかし規制による情報秘匿が、数週間・数ヶ月のシャーク期間を生み出している」という比喩です。
個人的損失が生んだ哲学
この主張には、ペテルフィー氏自身の痛烈な経験が根拠として存在します。
1977年、当時20万ドルの資本でオプション取引を始めた氏は、DuPont(デュポン)の決算発表・株式分割直前に200枚のコールオプション(株を買う権利)を0.375ドルで売却します。
取引再開後、価格は4.50ドルに跳ね上がり、9万ドル(資本の約半分)を失いました。
この経験を経てもなお、氏は「法律は撤廃すべき」という立場を変えていません。
規制があっても情報は漏れる——M&Aの場面では秘書・弁護士・その家族を通じて必然的に情報が流出すると主張します。
発言の背景にある「予測市場ビジネス」の急成長
この発言は、IBKRが予測市場(将来の出来事にYes/Noで賭けるマーケット)に本格参入しているタイミングと重なります。
IBKRはForecastEx LLCの関連会社として「IBKR ForecastTrader」を展開中です。
経済指標・気候・選挙などに関するイベント契約をゼロ手数料で提供し、年率3.14%のAPY(年間利回り)利息インセンティブも付与しています。
下のグラフは、予測市場全体の月間取引量の急成長を示しています。
市場全体で見ると、2025年の年間取引総額は440億ドルを突破しています(出典:Gambling Insider)。
2026年の年間収益は30億ドル、2030年までに100億ドルへの到達が予測されています(出典:Citizens Bank)。
| 指標 | 数値・内容 |
|---|---|
| 2025年予測市場取引総額 | 440億ドル超 |
| 2026年1月月間取引量 | 200億ドル超 |
| 市場シェア(Polymarket+Kalshi) | 85〜90% |
| Polymarketの予測精度(1ヶ月前時点) | 94%以上 |
| IBKRの2025年Q4売上高 | 16.4億ドル(税前利益率79%) |
IBKRはこの成長市場に約10年前にシステムを構築し、約5年前にKalshi買収を試みた経緯があります。
ペテルフィー氏は「2026年中間選挙を見据えてこの分野に非常に強気だ」と述べており、規制撤廃論はビジネス戦略と表裏一体の主張と読み取れます。
規制当局・議会との対立と投資家への示唆
ペテルフィー氏の主張に対し、規制当局側の反応は真逆です。
2026年3月、民主党議員40名超がCFTC(米商品先物取引委員会)に予測市場のインサイダー取引監視強化を要請しました(出典:CoinDesk)。
Adam Schiff上院議員は戦争・死亡関連の予測市場を禁止する「DEATH BETS法案」を提出しています。
一方、2026年4月にはPolymarketに停戦前の大量資金(約1億7000万ドル)が流入し、インサイダー疑惑が再浮上しました(出典:Bloomberg)。
これは皮肉にも、ペテルフィー氏の「規制があっても情報は漏れる」という主張を裏付ける事例とも言えます。
投資家として見るべきポイント
IBKRの株価は過去1年で約72%上昇しています。
予測市場参入・ForecastEx展開・業績拡大(顧客口座数475万口座、前年比31%増)という流れは、単なるアイデアではなく数字で証明されています。
筆者の見方は明快です。
規制の行方は不透明ですが、「情報の価格発見機能(市場が情報を価格に素早く反映させる力)が強化される方向への流れ」は止まらないと考えます。
予測市場への参入プレイヤーが増えるほど、流動性(取引のしやすさ)が高まり、精度も上がるためです。
まとめ
- ペテルフィー氏の「規制撤廃論」は個人的損失経験と市場効率性理論の両面に基づいており、単なる暴論ではありません。
- 予測市場は月間取引量が1年で約17倍に成長しており、IBKRはその中心プレイヤーとして業績を急拡大させています。
- 規制強化論と規制撤廃論の対立は続きますが、情報の価格発見機能を高める方向への市場の流れは投資家として注目に値します。
まずはForecastExやPolymarketの仕組みを実際に確認し、予測市場がどのように情報を価格に変換するか体験してみてください。
「規制があっても情報は漏れる」——この逆説を理解した投資家だけが、次の市場構造変化を先読みできます。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品への投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任のもとで行ってください。
本記事は情報提供を目的としており、投資助言・勧誘を目的とするものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。


