東京エレクトロン(8035)を深掘りした。個別株をやらない私が「欲しい」と思った理由と、次の買い場

東京エレクトロン(8035)株価分析イメージ|月城ミオと半導体チャート 個別株

頼まれて調べた

個別株はやらない。でも分析は好きで、たまにやる。

今回、知人から「東京エレクトロンってどう思う?」と聞かれた。ニュースで名前はよく出てくる。半導体関連の話になると必ず登場する会社だ。ただ、正直なところ名前しか知らなかった。

せっかく頼まれたのだから、きちんと調べてみた。

調べてみて、素直に思った。「これは欲しい」と。

インデックス投資家の自分がそう感じた理由を書いておく。次の買い場の話も含めて。

調べてわかった2つの事実

東京エレクトロン(TEL)は半導体製造装置メーカーだ。半導体そのものを作るのではなく、半導体を作るための装置を作っている。

細かいデータを見ていって、最初に目が止まったのが自己資本比率70%だった。

製造業の平均は40〜50%程度だ。70%は異次元に高い。借金に頼らずに事業を回せているということで、財務的にかなり盤石な会社だとわかる。

もうひとつ目を引いたのが技術の独自性だ。

TELはコータ/デベロッパ(塗布・現像装置)で世界シェア約90%を持っている。EUV露光用に至ってはほぼ100%。半導体の前工程で絶対に必要な装置で、代わりになるメーカーが事実上存在しない。

成膜・塗布/現像・エッチング・洗浄という4大工程をすべてカバーできるメーカーも世界でほとんどない。参入障壁が極めて高く、いまさら新規競合が出てくる余地もない。

財務の堅さと技術の独自性。この2つを確認した時点で、投資対象として真剣に考える価値があると判断した。

AIが止まらなければ、TELは伸びる

半導体ブームは一服した、という声もある。確かに2025年は調整局面があった。

ただ、自分の読みはシンプルだ。

AIは止まらない。AIにはコンピュータが要る。コンピュータには半導体が要る。半導体を作るにはTELの装置が要る。

難しい話ではない。生成AI・データセンター・自動運転・量子コンピュータ——どれをとっても半導体需要は伸び続ける方向だ。TELの事業はその最上流にある。

TEL自身も今後5年間で1.5兆円超のR&D投資を計画している。守りに入っている会社ではない。

中国リスクという「見えにくいリスク」

気になるのが中国の話だ。

2023年、日本政府は半導体製造装置23品目を輸出規制の対象に追加した。TELの中国向け売上比率は当時23%(2022年度)あったため、影響を懸念する声が多かった。

ところが実際には、規制後も中国向けの売上比率は下がるどころか上昇していた時期もあった。旧世代の装置は規制対象外であり、中国国内の半導体生産能力増強の動きが続いていたためだ。

ただし2024年以降、米国はさらなる規制強化を検討し、米下院の中国特別委員会がTELを含む5社に質問状を送付している。将来的に中国向けビジネスが縮小するリスクは消えていない。

これは業績の重石になりうるが、見方を変えると「中国リスクが織り込まれた状態での数字」とも言える。規制が落ち着けばその分が上乗せになる可能性もある。

2025年8月、買いシグナルは全部点灯していた

調べたのが2025年8月。当時の指標を並べてみる。

指標 2025年8月
株価約22,400円
PER23.8倍
PBR5.74倍
ROE24.13%
自己資本比率70.07%
RSI(14日)25.28
25日移動平均乖離率-17.46%
75日移動平均乖離率-7.52%
みんかぶ診断「割安」
2025年8月時点のみんかぶデータ。RSI25・移動平均乖離率-17%と買いシグナルが全灯していた。

RSIが25というのは「極端な売られすぎ」の状態だ。30以下で売られすぎ、70以上で買われすぎとされているが、25はその下限を大きく割り込んでいた。

自分はRSIを重視している。買われすぎ・売られすぎを数値で見られる指標で、実際に機能することが多い。不思議なことに、この指標をわかりやすく出している情報サービスが少ない。需要がないのか、出したくないのかはわからないが、自分には重要な判断材料だ。

移動平均線も同様だ。25日・75日移動平均線は、その期間に株を買った人たちの「平均的なコスト」に近い。株価がこれらを大きく下回っているとき、多くの買い手は含み損を抱えている。その水準で拾えると、心理的な底になりやすい。

2025年8月はRSI25、25日移動平均からの乖離率-17.46%、みんかぶ診断「割安」——全部が「買い」を示していた。

その後どうなったか。

2026年5月現在、株価は44,000円台。約2倍になっている。

今は買い場ではない

では今が買い場かというと、そうではない。

指標 2025年8月(買いシグナル) 2026年5月(売りシグナル)
株価22,400円44,000円台
PER23.8倍 ✅35.38倍
PBR5.74倍 ✅10.15倍
ROE24.13%30.34%(改善)
自己資本比率70.07%70.07%(盤石のまま)
RSI(14日)25.28 ✅57.14
25日移動平均乖離率-17.46% ✅+4.69%
75日移動平均乖離率-7.52% ✅+6.32%
みんかぶ診断割安割高(4冠)
2026年5月時点のみんかぶデータ。PSR・PER・PBR・配当利回りの全4指標が「割高」に転換。

全指標が逆転している。

2026年3月期の通期決算(2026年4月30日発表)は経常利益が前期比10.9%減の6,303億円と減益。来期の業績予想は市況不透明を理由に非開示とした。

業績が落ちて、先行きが見えにくい。それでもPER35超というのは、かなり期待値が織り込まれた価格だ。ここから買いにいくのは分が悪い。

次の買い場をどう探すか

では何を見て買い場と判断するか。

RSI30以下が最初のシグナルだ。現在57なので、まだ遠い。

移動平均線も確認する。25日・75日移動平均を大きく下回る水準まで下げてきたら、注目度が上がる。

PERでいうと20〜25倍まで下がってくると過去比較で割安水準になる。株価に換算すると30,000円前後のイメージだ(業績次第で変わるが)。

RSI・移動平均乖離率・PERの3つが同時に「割安」を示す局面を待つ。2025年8月がまさにそれだった。

ただ、26,000円まで戻るかというと、正直そうは思っていない。フィボナッチリトレースメントで見ると、61.8%戻しで約30,650円。ここが現実的な押し目のゾーンだ。78.6%戻しでも27,000円台。26,000円まで落ちるには、ほぼ全値戻しに近い動きが必要になる。

カタストロフはどこから来るかわからない。米国の政治リスク、中東の地政学、予想外の場所から火が出ることもある。そういう局面でTELが売られるとしたら、業績とは無関係な売られ方になる可能性が高い。逆張りの本番だ。

ただ、円安が続き、日銀と政府が真逆のことをやっている限り、株価はある程度下支えされる。そこまで崩れないという読みでいる。

だから、押し目買いの姿勢で待つ。30,000円前後まで落ちてきて、RSIが30以下を示したとき——そのとき初めて、本気で考える。

ホルムズ海峡とTELの意外な関係

急落のきっかけとして可能性があるのが地政学リスクの再燃だ。

イランをめぐる緊張はまだ燻り続けている。「もうすぐ終わる」という楽観的な見方から買いが入り、期待が外れると失望売りが出る、というサイクルが続いている。

停戦期待で株を買った人が失望して売る。特に半導体・テック系の銘柄はリスクオフ局面で一気に売られやすい。TELもその例外ではない。

逆に言えば、地政学リスクの悪化でTELが急落する場面は業績とは無関係な売られ方になる可能性が高い。財務の堅さも技術の独自性も変わらないのに株価だけが下がる局面は、逆張りの買い場になりうる。

みんなが欲しがる時に買ってはいけない

自分は金(ゴールド)を高値で買って含み損になった経験がある。みんなが「金が熱い」と言い始めた頃に買った。それが天井だった。

東京エレクトロンも今、みんなが欲しがっている。だから買わない。

「買いたい気持ちが強くなる」のは、たいてい価格が高い時だ。熱狂の中に入ると、数字を見る冷静さが失われる。

みんなが欲しがる時に買ってはいけない。

これは金に限った話ではない。株も、不動産も、暗号資産も同じだ。

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市場のサイクルを読むこと、群衆と逆を行く勇気、「価格が正しいとは限らない」という視点——金で失敗して、TELの割安を見逃しかけた自分には刺さる内容だった。

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「買わない」じゃなくて「買えない」が正直なところ

ここまで書いておいて正直に言うと、自分はTELを買わない。正確には買えないだ。

インデックスに全振りしていて、個別株に回す余力がない。投資家として余力を持つべきだとはわかっている。反省しながらも、結局インデックス投資が自分には合っていると思っている。

ただ、個別株の爆発力は本物だ。2025年8月に22,400円だったTELが8ヶ月で44,000円超になった事実は動かない。

押し目が来たら、余力のある人には狙い目だと思う。

まとめ

  • TELは世界シェア90%の独自技術と自己資本比率70%の財務を持つ優良企業
  • AI需要拡大の恩恵を受け続ける構造的な追い風がある
  • 中国規制リスクは引き続き注意が必要
  • 現在(2026年5月)はRSI57・PER35超と割高水準。買い場ではない
  • 次の買い場の目安:RSI30以下・PER20〜25倍・フィボナッチ61.8%戻しの30,650円前後
  • 地政学リスク悪化による急落は逆張りのチャンスになりうる
  • みんなが欲しがる時に買ってはいけない——これが投資の本質だと思っている

【免責事項】
本記事は情報提供を目的としており、投資助言・勧誘を目的とするものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
この記事を書いた人
hiro

投資歴2007年から約18年。VOO・QQQ・金(GLDM)・eMAXIS Slim S&P500・オルカン・個別株を保有。「絶望買い×インデックス投資」で暴落局面こそ買い増すスタイル。長期的なアメリカ経済への信頼を軸に運用しています。AI×投資で資産運用ツールを開発中。完成次第フリーで公開予定。

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