日経平均が上がっているのではない。円の価値が下がっているだけかもしれない。
日経平均が史上最高値。株高だ。景気回復だ──そう言いたくなる。
でも、最初に疑うべきはここだ。
「日経平均が上がっている」のではなく、円の価値が下がっているだけなのでは?
金(ゴールド)も同じだ。
「金が高騰」しているのではなく、法定通貨(特に円・ドル)の購買力が落ちているだけかもしれない。
この論点を曖昧にしたまま投資をすると、判断は必ずブレる。
だからこの記事は、感覚を捨てて、基軸通貨=ドル(USD)に揃えて「価値」を測り直すところから始める。
※重要:ここで扱う配分は、生活費とは別枠の「投資専用資金」の話。
日々使う現金(生活防衛資金)とは切り離して考える。
価値を測るルール:通貨も資産も「USD建て」で揃える
為替は相対だ。円高に見える日もあれば、円安に見えるペアもある。
だから「どの通貨が強いのか?」を整理するには、土俵を一つにする必要がある。
答えは単純で、基軸通貨=ドルを使う。
通貨の強さ:EUR/USD、GBP/USD、JPY/USD(=1/(USD/JPY))で比較する
金の強さ:XAU/USD(ドル建て金)で比較する
株の強さ:S&P500(USD建て)で比較する
こうすれば「円が弱いのか」「ドルが弱いのか」「金が強いのか」が、同じ物差しで見える。
クロスの罠:ユーロ円・ポンド円が円安に見える理由
ここで重要な整理を一つ。
EUR/JPY = (EUR/USD) × (USD/JPY)
GBP/JPY = (GBP/USD) × (USD/JPY)
つまり、ユーロ円やポンド円が円安に見えるのは、ユーロやポンドが最強だからとは限らない。
円が弱いだけで成立する。
やるべきは“通貨の序列”ではなく、原因分解だ。
金は本当に「高騰」か?──半分正しい、半分誤解
結論から言うと、「金が強い」も「通貨が弱い」も同時に起き得る。
金はドル建てで見ても上がる局面がある。
それは「金そのものが買われた」でもあり、「ドルを含む通貨に対して実物資産が選好された」でもある。
だから金を持つ意味はこう整理できる。
金=リターン狙いの主役ではない。
金=通貨・地政学・インフレ再燃など“別系統ショック”の保険。
金 vs 米国株:同じUSD建てで並べて初めて、役割が見える
「金を持つべきか?」の答えは、
金が株に勝ったか負けたかではなく、株と違う局面で効いたかで決まる。
だから比較の作法は一つ。
金(XAU/USD)と株(S&P500)を、同じ期間のUSD建てで並べる。
この比較をすると、「上昇局面でどちらが強かったか」だけでなく、
ショック時にどちらが先に崩れたか/どちらが粘ったかという“役割”が見えてくる。
ここからが本題:投資専用資金の「黄金比」を作り直す
以前の自分は、金1割・S&P500 9割で良かった。
しかし「ドルの購買力」や「地政学・インフレ・金融不安」まで含めて考えると、米国株一本足は想定外に弱い。
そこで結論として、投資専用資金はこうする。
S&P500:65% / 金:35%
では、なぜ65/35なのか。根拠を言語化する。
根拠1:以前の「円30 / 株35 / 金35」を“投資専用”に変換した結果
もともと「壊れにくい設計」として置いたのが、円30 / 株35 / 金35だった。
ここでいう円は日本株ではなく、円建て現金(JPYキャッシュ)のこと。
しかし今回は、前提を変える。
生活防衛資金は別枠で確保済みとして、投資専用資金からは「円キャッシュ枠」を外す。
すると、投資専用資金は株35と金35の合計70が母数になる。
これを100に正規化すると、
株:35/70=50% 金:35/70=50%
つまり、投資専用だけで見るなら「株50 / 金50」が“元設計の中核”になる。
ただし、ここで終わらない。次の根拠が65/35へ押し戻す。
根拠2:株(成長エンジン)を“上回る比率で残す”必要がある
金は強い。しかし金は「成長エンジン」ではない。
金の主役は保険(ショック吸収)だ。
長期で“勝ち続ける”には、世界経済の成長を取り込む必要がある。
その役割を担えるのは、結局株(S&P500)だ。
だから投資専用資金でも、株を金と同率にするより、株を上に置くのが合理的になる。
根拠3:不確実性を取り込むと「金は増やすが、増やし過ぎない」が最適になる
今回織り込む不確実性は、ざっくり4つ。
- インフレ再燃(購買力低下)
- 地政学リスク(市場ショック)
- 金融不安(信用収縮)
- 米国の躍進/失速(成長の振れ)
この4つを同時に満たす“万能資産”はない。
だから答えは「一点集中」ではなく役割分担になる。
株は成長を取りに行く。
金は保険として効かせる。
ここで金を増やしすぎると、成長エンジンが弱くなる。
逆に金が少なすぎると、通貨・地政学ショックの耐性が薄くなる。
そこで、投資専用資金の「保険枠」を35%に固定する。
この35%は、“金を信じる”ではなく、“想定外を踏んでも壊れない”ための厚みだ。
残りは成長エンジンとして株に置く。
その結果が株65 / 金35になる。
比率調整:S&P500偏重から、65/35へ近づける方法
理想比率が決まっても、現実は偏る。
特にS&P500は積立が強制力を持つ(積立設定が動かしにくい、または動かしたくない)。
だから基本方針はこう。
- 原則:入金で寄せる(売却は最後の手段)
- 売却するなら上昇局面だけ(下落時は売らない)
原則:入金で寄せる(投資専用の追加資金は“金へ寄せる”)
S&P500偏重のときにやることは1つ。
新規資金は金に寄せる。
投資専用資金の目標が65/35なら、
追加資金は原則「金100%」で良い(株は既に多いから)。
これだけで、売らずに比率は動く。
入金だけで足りないなら:上昇局面だけ微売却して寄せる
入金力に限界があるなら、潔く微調整が必要になる。
ただし、あなたの原則はこれ:
売却は上昇局面のみ。下落時は売らない。
これを守るために、売却は条件で固定する。
ルール例:
S&P500が過去12か月高値を更新した月だけ、評価額の0.5%を売る
→ 売却資金は金へ(比率が35%に達するまで)
出口戦略:65/35は「持ち方」ではなく「降り方」を完成させるためにある
黄金比は、保有比率の美しさのためではない。
取り崩し(出口)を壊さないためにある。
4%ルールの最大の敵は、暴落そのものではなく、
暴落直後に株を売らされること(順序リスク)だ。
生活防衛資金を別枠で確保しているなら、取り崩しの基本はこうなる。
- 生活費はまず生活防衛資金(現金)から取り崩す(投資口座に触らない)
- 投資専用資金から取り崩すなら、上昇局面でだけ定量で売る
- 比率が崩れたら、乖離±5%の範囲で戻す(年2回でもOK)
出口の本質は「最適化」ではなく、悪い局面で悪い行動をしない仕組みだ。
まとめ:投資専用資金の結論は「S&P500 65% / 金 35%」
日経平均が上がっているのではない。円が下がっているだけかもしれない。
金が高騰しているのではない。通貨の購買力が落ちているだけかもしれない。
この視点を持つと、投資は「銘柄選び」から「設計」に変わる。
生活防衛資金は別枠で確保した上で、投資専用資金は役割分担で組む。
S&P500 65% / 金 35%
寄せ方はこう。
- 基本は入金で寄せる(追加資金は金へ寄せる)
- 足りないなら上昇局面だけ定量で売って金へ回す
- 出口は悪い局面で売らない構造で作る(順序リスク対策)
- 日経平均や金の上昇は「資産が強い」ではなく「通貨が弱い」影響で見えている可能性がある。
- 比較は基軸通貨=ドルに揃える(対USD・USD建て)とブレない。
- この記事の比率は生活費とは別枠の投資専用資金の話。
- 投資専用の結論は S&P500 65% / 金 35%(成長エンジン+保険の役割分担)。
- 比率調整は「入金で寄せる」が原則。足りない分は「上昇局面だけ」微売却で寄せる。
- 出口戦略は順序リスク対策が主役。「悪い局面で売らない仕組み」が勝ち続ける条件。
