はじめに:資産形成期から取り崩し期へ
人生は、就職から定年までの「資産形成期」と、定年後の「資産取り崩し期」に分けられます。資産形成期には、将来のライフイベントや老後のために資産を築き、取り崩し期には、築いた資産を計画的に取り崩しながら生活します。資産は「いつから」取り崩し始めるのがいいか?
資産の取り崩し開始時期は、個々の状況によって異なりますが、一般的には勤労収入があるうちは本格的な取り崩し時期ではありません。勤労収入がある間は、資産形成を継続し、生活費が足りない場合は運用益を利用するのが良いでしょう。 本格的な資産の取り崩しは、仕事を引退してから、つまり多くの場合70歳以降になります。ただし、人生100年時代においては、60歳以降も可能な限り働き、年金の繰り下げ受給を行うことが賢明な選択と言えるでしょう。お金を貯めるだけの人生は味気ない!「タイムバケット」で人生を豊かに
しかし、お金をただ貯めるだけの人生は味気ないものです。人生において、やりたいことができる期間は限られています。60代でできることと70代でできることは違いますし、80代、90代となればなおさらです。 そこで、「タイムバケット」を活用し、いつ何をしたいかを明確にすることをおすすめします。タイムバケットとは、自分の年齢や年代をバケツに見立てて、各年代で自分がしたいことをまとめたものです。 タイムバケットを作成することで、自由な時間があるからできること、健康だから楽しめること、お金があるからできることが明確になり、人生をより豊かにすることができます。資産は「何から」取り崩していくか?
70歳となり、本格的な資産の取り崩し時期に入ったら、リスクの高い資産から現金化して取り崩していきましょう。具体的には、日本株・米国株・アクティブファンドといった値動きの大きな資産から売却し、そのお金をコア資産の預貯金・債券・投資信託・ETFなどに移します。 最後に、定期預金や個人向け国債などの安全資産を取り崩していきます。万が一に備える資産として、300万~500万円は寿命まで持ち続ける前提で保有しておきましょう。資産寿命を延ばす賢い取り崩し方
運用しながら取り崩すことで資産寿命を延ばすことができますが、運用の結果は必ずしも一定ではありません。そこで、定額取り崩しと定率取り崩しを組み合わせることで、資産寿命を延ばしつつ、安定した収入を確保することができます。 具体的には、資産が多い前半は定率取り崩しで運用益の恩恵を受け、一定の閾値に達したら、定額取り崩しに切り替える方法が有効です。4%ルール、DIE WITH ZERO、コア・サテライト戦略
資産運用における出口戦略としては、以下の3つの主要な考え方があります。 4%ルール 資産形成期に築いた資産を、FIRE後も減らさずに運用しながら生活費として取り崩すための目安として「4%ルール」がよく知られています。年間の生活費を全体の資産の4%以内に抑えることで、資産を減らさずに長期間運用できるという考え方です。 DIE WITH ZERO ビル・パーキンス著『DIE WITH ZERO』では、「死ぬまでにお金を使い切る(ゼロで死ぬ)」ことが提唱されています。貯めた資産をできるだけ多くの経験や自己投資に回し、生前に十分な価値を享受することを目指す戦略です。 コア・サテライト戦略 全体の資産を「コア資産」(約70~90%、安全性が高い運用商品)と「サテライト資産」(約10~30%、リターンを狙いつつ値動きが大きい商品)に分け、取り崩し期に入る際は、まず値動きの大きいサテライト資産から売却し、後半は安定性のあるコア資産で運用しながら少しずつ取り崩す方法です。まとめ:自分に合った出口戦略を見つける
どの戦略を採用するかは、個々のライフプラン、健康状態、リスク許容度、そして「お金をどう使いたいか」という価値観に大きく依存します。 FIRE後は「資産を減らさずに運用収入だけで生活する」4%ルールの活用が基本となりつつも、生前に充実した経験を積むための「DIE WITH ZERO」的なアプローチや、コア・サテライト戦略を取り入れてリスク管理を行いつつ、定率と定額のハイブリッドな取り崩し方法で家計の安定性を保つといった多面的な戦略を組み合わせることが求められます。 最終的には、各戦略のメリット・デメリットをシミュレーションや自分自身のライフプランと照らし合わせて、最も自分に適した出口戦略を選ぶことが「正解」となるでしょう。Visited 4 times, 1 visit(s) today