金は危ない資産なのか? それでも今、買う理由

投資戦略


「金が下がった。やっぱり金は危ない資産だったのか」——そう感じた方は多いかもしれません。

でも、少し立ち止まって考えてみてください。
金が一時的に下落した。それは事実です。
一方で、その背景にある「なぜ金を持つのか」という構造は、何も変わっていません。

今回の記事では、なぜいま金の比率を増やすのか、その理由と、どう買い増すかという具体的な戦術を正直に書きます。

「金は全体の1割」という昔の通説を疑い始めている方、そして「下がっているいまこそ買い時かも」と感じている方に、特に読んでいただきたい内容です。

アメリカでさえ、売られている

投資を始めた頃、こう教わった方は多いはずです。
「迷ったらアメリカに投資しろ」と。

ドルは世界の基軸通貨であり、米国債は最も安全な資産だと。
それは長い間、事実でした。ところが今、その前提が静かに崩れ始めています。

米議会予算局(CBO)は2026年2月、今後10年間の財政赤字がトランプ政権発足時の試算から1.4兆ドル(約214兆円)増え、累計23.1兆ドルに達するとの見通しを公表しました。

ムーディーズが2025年5月16日、米国の長期発行体格付けを最上位の「Aaa(トリプルA相当)」から「Aa1」に1段階引き下げました。格下げの理由として「米国政府と議会が、巨額の財政赤字と金利コストの増大という傾向を反転させるための措置について合意に至っていないこと」を挙げています。

S&Pグローバル・レーティングは2011年8月に、フィッチ・レーティングスは2023年8月に米国を最上位から引き下げており、大手格付け会社の中で唯一残っていた最上位の格付けを失ったことになります。

今回が過去と異なるのは、安全資産とされる米国債の利回りが小幅ながらも上昇し、米国資産が一時トリプル安となった点です。米国債の安全神話が揺らいでいます。

また、中国の米国債保有額は2011年のピーク時対比で半分近くに減少し、格下げと同日発表された2025年3月末の最新データによれば、英国に抜かれて第三位に転落しました。

「アメリカは安全」という神話は、まだ完全には崩れていません。
ただ、ひびが入り始めているのは事実です。

格付け会社 格下げ時期 格付け変更
S&P グローバル 2011年8月 AAA → AA+
フィッチ 2023年8月 AAA → AA+
ムーディーズ 2025年5月 Aaa → Aa1
主要3社による米国債格下げの経緯(出典:各社公表資料をもとに筆者整理)

逃げ場を消去法で探す

これは悲観論ではなく、現実を整理する作業です。

どの国の法定通貨も、構造的にインフレしていきます。
政府は財政を維持するために通貨を刷り続け、その分だけ一枚一枚の価値が薄まっていく。
日本円も、ドルも、例外ではありません。

では、円やドル以外にお金を置く場所はどこか。
選択肢を並べて、一つずつ消していきます。

不動産は流動性がありません。
急いで現金化しようとすれば、大きく値を削らなければならない。売買しにくい。

ビットコインは「信者」がいるから価値があります。
それは裏を返せば、信者がいなくなれば価値がなくなるということです。
投資商品として、不安が残ります。

債券は実質的に定期預金と同じです。
インフレ率が金利を上回る今の環境では、実質的な価値は目減りしていきます。
「安全」に見えて、じわじわ負けている。

株式はすでにS&P500(VOO)やオルカンで持っています。
さらにここに資金を集中させることが最善かどうか、疑問があります。

消去法で残るのが、金です。

「金は1割」は昔の話かもしれない

一般的な推奨比率はどのくらいか

従来、金のポートフォリオ配分は「全体の1割程度」と言われてきました。

実際、一般的には、リスクをあまり取りたくない人は20〜30%、バランス型の人は10〜20%、リスクを取りたい人でも5〜10%程度の金を組み入れることが推奨されます。

一方、研究や金融機関の分析を総合すると、おおよそ5〜20%の範囲が適切とされています。

つまり、「1割が正解」というよりは、リスク許容度や局面によって柔軟に調整すべきというのが現代的な考え方です。

なぜいま、比率を増やすのか

筆者の考えでは、金の配分を増やす理由は次の3つです。

第一に、世界の中央銀行が金を買い増し続けているという事実があります。
欧州中央銀行(ECB)の報告書によると、2024年に各国の中央銀行が購入した金は1,000トンを超え、過去10年間の平均購入量の2倍でした。
この結果、2024年末の時点で、世界の公的外貨準備高に占める金の市場価格ベースの比率は20%に到達し、ユーロ(16%)を初めて上回りました。ECBは、金が「ドルに次ぐ第2の準備資産」に昇格したと述べています。

第二に、法定通貨への信頼が構造的に低下しています。
すでに述べたとおり、主要3格付け会社すべてが米国債を最上位から格下げしました。

第三に、これは根拠のある話ではありませんが、情報が世界中をリアルタイムで駆け回る今の時代、インフレへの反応はかつてより速くなっていると感じています。法定通貨の信用が少し揺らいだだけで、資金が金に向かう速度は昔より格段に上がっている。であれば、金の役割は以前より重くなっているはずです。(この部分は筆者の感覚であり、データの裏付けはありません。正直に申し上げます。)

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The New Case for Gold 投資の正解が見えない時代でも、ゴールドだけは裏切らない(ジム・リカーズ著)」— 法定通貨の崩壊リスクと、なぜ金だけが真の貨幣であるかを論理的に解説した、金投資を考える全投資家の必読書。

金は「稼ぐ手段」ではない

はっきり言っておきます。金は儲かる投資ではありません。

配当もなく、利息もなく、それ自体が何かを生み出すわけでもない。
金は利子を生まず、保管コストがかかるというデメリットもあります。また、実体経済の成長が著しく、実質金利が上昇する局面では、相対的な魅力が低下することもあります。

ただ、金には物理的な価値があります。
どの国の政府にも管理されず、誰かの信用に依存せず、5,000年の歴史を通じて価値を保ち続けてきた。

金をポートフォリオに加えるのは、値上がり益のためというより、資産全体の安定性を高めるのが主な目的です。

金は「増やす手段」ではなく、「法定通貨の劣化に対する保険」として持つ。
その認識が重要です。

私の現在の配分:半々という考え方

なぜ「半々」なのか

余裕資産200万円があるケースを想定すると、
筆者の基本配分は金100万円・S&P500(VOO)100万円の半々です。

「一般的な推奨は10〜20%なのに、なぜ50%も?」と思われるかもしれません。
理由は2つあります。

ひとつは、S&P500はすでに別枠で積み立て継続中という前提があること。
この200万円はあくまで「余裕資産の追加配分」であり、既存の積み立て分は別に存在します。

もうひとつは、今の局面では金をより厚く持つ戦術的配分という考え方です。
米国債が売られ、ドルが疑われ、中央銀行が記録的なペースで金を買い増している。この局面においては、インフレヘッジとしての金を標準より厚く持つことには一定の合理性があると考えています。

これは個人の判断であり、万人に推奨できるものではありません。
ご自身のリスク許容度・既存ポートフォリオの構成をふまえて検討してください。

タイプ 一般的な推奨 筆者の戦術配分(参考)
リスク回避型 20〜30%
バランス型 10〜20%
積極型(既存に株あり) 5〜10% 余裕資産の50%(戦術的)
金の配分比率の目安(出典:各種資料をもとに筆者整理)

フィボナッチ3分割買い増し法:具体的な手順

一括で買わない理由

金100万円分を今すぐ一括で買う気はありません。
理由は単純です。今は高値圏からの調整局面にあるからです。

全額を一気に投じれば、そのまま下がり続けたときに精神的に耐えられません。
分割して買い増すことで、平均取得単価を下げながら、心理的な安定も保てます。

フィボナッチリトレースメントとは

フィボナッチリトレースメントとは、フィボナッチ比率と呼ばれる比率を用いて、トレンド相場における反発や反落のポイントを見極めるテクニカル指標です。直近の高値と安値を選択すると自動的に0%、23.6%、38.2%、50.0%、61.8%、76.4%、100.0%などのフィボナッチ比率に基づいたラインが引かれます。

要するに、「高値からどのくらい下落したか」の節目を視覚的に示してくれる分析ツールです。

強いトレンドの場合は38.2%前後の戻りにとどまり、弱いトレンドの場合は半値戻し50.0%前後または61.8%前後まで戻ります。

この性質を利用して、段階的に買い下がっていきます。

具体的な買い増しルール

筆者の方針は以下のとおりです。

購入回 買い増しタイミング 投入額(目安)
第1回 高値から約38%下落の節目 約33万円
第2回 高値から約50%下落の節目 約33万円
第3回 高値から約62%下落の節目 約34万円
以降 3回打ち切ったら放置・長期保有 追加なし
フィボナッチ3分割買い増しの方針(余裕資産100万円を金に配分するケース)

大切な点は、3回打ち切ったらあとは何もしないことです。
「もっと下がるかも」と待ち続けると、結局いつまでも買えません。

フィボナッチリトレースメントは市場の一時的な反転ポイントを視覚的に判断しやすくするテクニカル指標であり、幅広い金融商品の分析で利用されています。

ただし、フィボナッチリトレースメントだけを用いて安易にエントリーをすると、思わぬ損失を出してしまう場合があります。実際の売買で利用する場合には、他のテクニカル指標も併せて活用するようにしましょう。

あくまで「買うタイミングの目安」として使うものです。
予測通りにならないことも十分あります。


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まとめ:「いつ買うか」より「どう買い続けるか」

今回の記事で伝えたかったことを整理します。

①アメリカ発の構造問題は現実のデータに裏付けられている
財政赤字の拡大、格付け3社すべての格下げ、中国の米国債離れ。
「アメリカは大丈夫」という神話に、ひびが入り始めています。

②消去法で残るのが金という論理は筋が通っている
不動産・ビットコイン・債券・株(既保有)を消去すると、残るのは金です。
金は稼ぐ手段ではなく、「法定通貨の劣化に対する保険」として機能します。

③「金は全資産の1割」という通説は見直す価値がある
世界の中央銀行の年間購入量は、2022年には1,000トンを超え、2024年には過去最高を更新する水準となりました。
世界最大の投資家たちが構造的に金を買い増している時代に、個人だけが1割に縛られる必要はないかもしれません。ただし、配分は自身のポートフォリオ全体と相談して決めてください。

④買い方はフィボナッチ3分割で、焦らず段階的に
一括購入は精神的リスクが高い。
高値からの38%・50%・62%の節目を目安に3分割し、3回で打ち切って長期保有に移る。
それが今の筆者の答えです。

金が下落した今、「やっぱり金はダメだ」と感じた方もいるかもしれません。
でも、筆者の見方は逆です。
下がったから買うチャンスが生まれた。
長期的な構造変化は何も変わっていない。

株は持ち続ける。その上で、金を少しずつ積み増していく。
それが今の筆者の答えです。

※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品への投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任のもとで行ってください。

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