ポートフォリオを「手入れ」する ── 投資信託でも必要な、年に一度のメンテナンス技術

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2月に入り、確定申告や年度末の準備で、改めて自分の資産状況を目にする機会が増える時期です。 新NISAが定着し、多くの人が「積立設定」を完了させています。一度設定すれば、あとは自動で引き落とされ、勝手に積み上がっていく。これは非常に優れた仕組みです。

しかし、ここで一つ、残酷な誤解を解かなければなりません。 「ほったらかし投資」と「放置」は、似て非なるものです。

種を蒔き、水をやるだけなら誰でもできます。しかし、美しい庭を維持し続けるには、伸びすぎた枝を切り、栄養の足りない土に肥料をやる「剪定(せんてい)」の技術が必要です。 投資において、この剪定作業を**「リバランス」**と呼びます。

今日は、多くの人が目を背けがちな、しかし職人としては避けて通れない「ポートフォリオの手入れ」についてお話しします。


1. 「増えたもの」を売るという、直感に反する行為

例えば、あなたが1年前に以下の比率で投資を始めたとします。

  • 攻め(株式・FANG+など):50%
  • 守り(債券・ゴールドなど):50%

この1年、ハイテク株(FANG+)は大きく上昇し、一方で守りの資産は横ばい、あるいは微増だったと仮定しましょう。 今、あなたの口座を開くと、資産配分はこう変化しているはずです。

  • 攻め:70%
  • 守り:30%

「資産が増えているんだから、いいじゃないか」と思うかもしれません。 しかし、これは危険なサインです。

当初、あなたは「資産の半分までならリスクに晒せる」と判断して設計したはずです。それが今や、資産の7割がリスクに晒されています。つまり、知らぬ間に自分が許容できる以上のリスクを背負わされている状態なのです。

ここで必要なのが「リバランス」です。 具体的には、増えすぎた「攻め(70%)」の一部を売り、減ってしまった「守り(30%)」を買い増して、元の「50:50」に戻します。

論理的(Logic)に見れば、これは最強の投資行動です。なぜなら、「高く売って(利益確定)、安く買う(割安仕込み)」を、感情を挟まずに強制執行できるからです。


2. 「ほったらかし」の正体と誤解

SNSやメディアでは、「一度買ったら気絶していればいい(ガチホ)」や「NISA枠を最速で埋めること」ばかりが正義として語られます。 しかし、それは「購入」という入り口の話に過ぎません。

投資のパフォーマンスの8割は、「どの銘柄を選ぶか」ではなく、**「どのアセット(資産クラス)に、どれだけの比率で配分するか」**で決まると言われています。

プロの料理人は、食材選びにもこだわりますが、それ以上に「塩加減(バランス)」に命をかけます。どんなに高級な肉を使っても、塩を入れすぎれば料理は台無しになるからです。

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多くの個人投資家が、暴落時に市場から退場させられる理由は、銘柄が悪かったからではありません。**「調子に乗ってリスク資産の比率を高めすぎていた(塩を入れすぎていた)」**からです。

周りの空気が「イケイケ」であっても、自分のポートフォリオの比率が崩れていれば、冷徹にブレーキを踏む。 「みんなが買っている」という社会(Social)のノイズを遮断し、自分の決めた規律を守る。それが「職人」の仕事です。


3. 愛着を断ち切る「ハサミ」を持つ

リバランスが難しい最大の理由は、計算が面倒だからではありません。 「調子の良い、カワイイ資産を売る」という行為が、感情(Emotion)的に苦痛だからです。

「FANG+がこんなに上がっているのに、なぜ売らなきゃいけないんだ?」 「もっと上がるかもしれないのに、利益を削るなんて損ではないか?」

そう感じるのは正常です。しかし、ここで私の**「判断マニフェスト」**を思い出してください。

生存限界点:3割の盾 どんなに魅力的な局面でも、70%の残存リソースを「再起のための聖域」として死守する。

リバランスで利益の一部を確定させ、守りの資産へ移す行為は、まさにこの「盾」を修復する作業です。 伸びきった枝は、嵐が来た時に一番最初に折れます。折れる前に剪定し、その栄養を根(守り資産)に返すのです。

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「もっと儲かったかもしれない」という後悔と、 「欲張ったせいで、暴落ですべて吹き飛んだ」という後悔。 どちらが、あなたの投資人生にとって致命傷になるでしょうか?


結論:庭師たれ

投資家であるあなたは、ただ種を蒔く農夫であるだけでなく、全体を調和させる庭師(ガーデナー)であるべきです。

【今すぐやるべきアクション】

  1. 現状把握: 証券口座にログインし、現在の資産構成比率(%)を計算してください。
  2. ズレの確認: 当初決めた目標比率と、現在の比率に「5%以上」のズレがないか確認してください。
  3. 執行: もし5%以上ズレていれば、感情を排してリバランスを実行してください。

リバランスは、決して「負け」や「撤退」ではありません。 それは、長く厳しい相場の季節を生き抜くために、未来の自分へ贈る**「優しさ(防御)」**なのです。

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