なぜ今ゴールドなのか
現在の市場環境を見ると、資金が金(ゴールド)に向かいやすい条件がいくつも重なっている。
為替では、ドルは円に対しては強い一方、ユーロに対しては弱含む局面が見られ、通貨間の力関係は安定しているとは言い難い。
欧州ではウクライナ情勢の長期化が続き、地政学リスクが完全に解消されたとは言えない状況が続いている。
株式市場に目を向けると、AI関連や半導体関連を中心に上昇が続いている。
ただし、株価水準は高止まりしており、バリュエーション面では慎重な見方も増えている。
成長期待は依然として強いものの、リスク資産への集中を避けたいと考える投資家が増えるのも自然な流れだ。
こうした環境下で、相対的に資金の受け皿となりやすいのが金である。
いわゆる「有事の金」としての役割が、改めて意識されている。
実際、金だけでなく銀やプラチナといった貴金属全体が上昇基調にあり、
一部では中国による金の購入増加が報じられるなど、需給面でも注目が集まっている。
その結果、金関連の投資信託は年初来で高いパフォーマンスを示し、
市場全体でも注目度の高い資産クラスとなっている。

ただし、金は万能ではない|株との違いを理解する
注意しておきたいのは、金(ゴールド)は万能な投資対象ではないという点だ。
金は本質的にキャピタルゲインを狙う資産であり、株式のように価値を生み出し続ける存在ではない。
金の価格は、
「多くの人が価値を認め、買いたいと考えるかどうか」
によって決まる側面が大きい。
この点では、金は需給と信認によって価格が形成される資産であり、
性質としてはビットコインに近い部分もある。
一方で、金が長い歴史の中で価値を保ってきたのには理由がある。
金は人工的に生成できず、埋蔵量が限られている。
さらに、劣化や腐食に強く、物理的に安定した金属であるため、
「価値の保存手段」として広く受け入れられてきた。
しかし、金は企業ではない。
事業活動を通じて利益を生み、配当を支払うこともなければ、
技術革新や設備投資によって生産性が向上することもない。
そのため、金には配当や利息という概念が存在しない。
この点は、株式との決定的な違いだ。
たとえば、AI需要や半導体需要の拡大を背景に業績を伸ばし、
株価を上昇させてきた NVIDIA のような企業は、
利益の成長という明確な裏付けを持って株価が形成されている。
金の価格上昇は、
企業努力や技術革新の結果ではなく、
あくまで環境要因や投資家心理、通貨価値の変化によるものだ。
だからこそ、金は株式の代替ではなく、
役割の異なる資産として位置づける必要がある。

金は主役にならない|著名投資家に共通する距離感
ここまでを踏まえると、金をポートフォリオの主役に据える発想にはなりにくい。
実際、長期で資産を築いてきた著名投資家の多くも、金の扱いには一貫して慎重だ。
たとえば ウォーレン・バフェット は、
企業が生み出す利益と複利を重視し、株式投資によって資産を増やしてきた。
金については価値保存の役割は認めつつも、
保有比率は最大でも10%程度が妥当という考え方を示している。
また、「航路を守れ(Stay the course)」という言葉で知られる
レイ・ダリオ も、
資産配分の基本は株式と債券に置いている。
いわゆるオールウェザー・ポートフォリオでは、
資産の大半を株式・債券で構成し、金は補完的な位置づけにとどめている。
これらに共通するのは、
金を否定しているわけではないが、
決して主役にはしていないという点だ。
確かに、安全資産として金を見るのであれば、
株式の比率を落として金に振る、という選択肢も理論上は成り立つ。
しかしそれは、
「リスクを抑える」判断であって、
「資産を増やす」ための中核戦略ではない。
自分自身も、金を保険や分散の手段として評価はするが、
株式の代わりに金へ大きくベットする考えは取らない。
あくまで、主役は株。
金は、その航路を守るための補助的な資産、という位置づけに留めたい。

結論|これから金投資を始めるなら、この形が現実的
ここまで見てきた通り、金は株の代替ではなく、
分散や保険として機能する資産だ。
その前提に立つなら、これから金投資を始める方法としては、
少額を、時間を分けて積み立てていく形が最も現実的だと考えている。
価格変動の大きい局面で一括投資をするよりも、
インデックスファンドを使い、淡々と積み立てていく方が、
相場環境に左右されにくい。
その条件に最も合致するのが、
**SBI・iシェアーズ・ゴールドファンド(為替ヘッジなし)**だ。
このファンドは、
- 信託報酬が低く、長期保有に向いている
- 純資産規模も十分で、安定性に不安がない
- 海外の本家ゴールド運用を、日本向けに最適化した構造
- 新NISA(成長投資枠)で購入できる
といった点で、非常にバランスが取れている。
特に、日本でNISAを使って金に投資するという前提では、
コスト・制度・運用の分かりやすさの面で、
現時点では最有力の選択肢だと思う。
もちろん、金は主役の資産ではない。
オルカンやS&P500といった株式インデックスを軸にした上で、
全体の10%程度までを目安に、補助的に組み入れる。
その位置づけを守る限り、このファンドは十分に役割を果たしてくれる。

為替ヘッジの有無は「見通し」で選ぶ
このファンドがここまで好調だった理由は明確だ。
円安の進行と、金価格の上昇。
この2つが同時に作用したことで、円ベースのリターンが大きく押し上げられた。
だからこそ、仕組みを理解した上で選ぶことが重要になる。
金そのものの値動きに加えて、為替の影響をどう扱うかで、結果は大きく変わる。
もし、
「この先、円高に進む可能性がある」
「為替リスクは極力取りたくない」
と考えるのであれば、為替ヘッジありを選ぶのが合理的だ。
為替の影響を抑え、純粋に金価格の変動だけを享受できる。
一方で、
「円安基調は簡単には終わらない」
「円安の恩恵も含めて取りに行きたい」
と考えるなら、為替ヘッジなしが選択肢になる。
実際、ここまで高いリターンを得てきた投資家の多くは、
為替ヘッジなしを選び、
金価格の上昇と円安の両方を享受してきた。
どちらが正解かは、将来の為替を誰にも断定できない以上、
自分の見通しとリスク許容度次第だ。
重要なのは、「なぜその選択をするのか」を理解した上で持つことだろう。

まとめ|金との距離感が投資の質を決める
金は、資産として見れば確かに魅力がある。
太古の昔から多くの人が金の魅力に惹きつけられてきたし、
インフレや通貨価値の揺らぎが意識される今、その存在感はむしろ増していると言える。
一方で、投資という観点で見ると、金はあくまでキャピタルゲインのみを狙う資産だ。
配当や利息を生むことはなく、企業の努力や技術革新によって価値が拡大するわけでもない。
その点では、富を生み出す株式とは本質的に性格が異なる。
ビットコインと違い、金は実物としての価値があり、
埋蔵量が限られ、劣化しにくいという安定性を持つ。
だからこそ、長い歴史の中で「価値の保存手段」として信頼されてきたのだろう。
自分自身も、資産の一部として金を保有している。
ただし、こと投資と捉えたとき、
金を主役に据えることには、やはり一定の不安が残る。
その意味で、偉大な投資家たちと同じ距離感で金と向き合うのが、
最も現実的で納得感のある選択ではないだろうか。
彼らは金に依存することなく、株式を中心に大きな資産を築いてきた。
金は否定すべきものではない。
しかし、頼りすぎるものでもない。
主役は株、金は補助。
その立ち位置を守ることが、長期投資における最適解だと考えている。

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