トランプ関税ショックから1年、積立継続者が得た真の教訓

投資戦略

「暴落だ、売らなきゃ」と思った人と、「続けよう」と決めた人。
あれからちょうど1年、その選択の差はどれだけ開いたのでしょうか。

この記事では、2025年4月7日のトランプ関税ショックを起点に、主要6アセットの1年間のリターンを比較します。そして単に「持ち続ければよかった」で終わらず、なぜ持ち続けられる人と手放してしまう人に分かれるのか、その構造的な答えを探ります。

読み終えるころには、「次の暴落が来ても動じない自分」を設計するヒントが手に入るはずです。

あの日、何が起きたのか——2025年4月7日の記録

まず、事実を整理します。

2025年4月7日、日経平均株価は前週末比2,644円(▲7.83%)安の3万1,136円58銭で取引を終え、1日の下落幅としては歴代3位を記録しました。

米国が2日に決めた相互関税に対し、中国政府が34%の追加関税で報復を宣言。貿易戦争の激化による世界的な景気後退リスクが高まり、日経225の構成銘柄225銘柄すべてが下落という全面安の様相となりました。

SNSには「終わった」「全部売った」「積立をやめる」という声が溢れました。
その判断が、その後の1年でどんな結果を生んだのか。データで確認しましょう。

主要6アセット、1年後の騰落率を比べてみた

2025年4月7日の底値を起点に、2026年4月時点での各アセットのパフォーマンスを並べます。

アセット 底値からの1年騰落率(概算) 備考
金(ドル建て) +65%超(年間) 2026年1月に史上初5,600ドル台
日経平均 約+70% 底値3.1万→現在5.3万円台
S&P500 約+32%(底値比) 2025年通年では+16.39%
WTI原油 変動が激しく現在は高値圏 中東情勢で1バレル115ドル台まで急騰
東証REIT +15〜20%前後 金利動向に左右される展開
ビットコイン タイミング次第で±40%超 「いつ買ったか」で結果が正反対
主要アセットの1年騰落率比較(出典:日本経済新聞、S&P Global、各種報道をもとに筆者集計)

一見、「金が最強」に見えます。しかし、この表には続きがあります。

原油・ビットコインの上昇が「あなたには関係ない」理由

原油は「読む」もので「買う」ものではない

原油が急騰したのは事実です。しかし、その背景を確認してください。

2026年4月7日時点で、WTI原油の期近物は一時1バレル115ドル台まで上昇しました。これはトランプ大統領がイランとの停戦交渉期限を設定し、ホルムズ海峡をめぐる緊張が高まった中東地政学リスクが直接の引き金です。

誰も予測できなかった地政学的事象です。再現性はありません。
また、日本で買える原油ETFには「コンタンゴ(先物の期近が期先より安い状態で生じる先物ロールコスト)」と呼ばれる構造的なコストが毎月発生します。長期保有するほど現物価格との乖離が広がり、NISAも使えません。

ビットコインは「いつ買ったか」がすべて

ビットコインも同様です。同じ1年間でも、底値付近で買った人は大きなプラス、高値で買った人は大きなマイナスという、「タイミングがすべてを決める」資産です。

積立(ドルコスト平均法)という概念になじまない資産に、NISAの非課税枠を使うことも難しい。これが現実です。


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「積立を続けた人」が正解だった——日経平均・S&P500の1年

では、最も再現性の高かった選択肢はどれか。結論:インデックスファンドの積立継続です。

2026年4月7日時点で、日経平均株価は5万3,000円台で推移しており、底値の3万1,136円から約70%の上昇となっています。特別な知識も、タイミングを読む能力も不要でした。ただ続けるだけでよかったのです。

S&P500も同様です。S&P500指数は、関税発表直後の4月8日に付けた安値(4,982.77)を起点として、2025年9月末時点で34.23%上昇しており、11セクター全てが上昇しました。

S&P500指数は2025年通年で16.39%上昇(配当込みのトータルリターンはプラス17.88%)と、十分な結果となりました。

ただし、ここで一つ問いを立てたいと思います。
「積立を続けた人」の中にも、差があったのではないか。

持ち続けるための「握力」——知っていることとできることは別

「暴落時も積立を続けるべき」という知識は、多くの人が持っていました。
でも実際に続けられた人と、感情に負けて売った人に分かれました。

その差を生んだのは何だったのでしょうか。

筆者の考えでは、大きく2つの要因があります。

①信念・根拠
「暴落は想定内」「絶望はシグナル」という投資哲学が自分の中にある人は、あの日の数字を見ても別の世界の出来事として受け流せます。ただし、これは経験と思想から来るものであり、簡単には身につきません。

②ポートフォリオの設計
こちらは、今日から変えられます。

金は「リターン」のためではなく「握力」のために持つ

「S&P500だけ」を持っていた人と、「S&P500に加えて金も持っていた人」では、あの日の体験が全然違いました。

S&P500だけの人は、資産全体が大きく下落するのをただ見ていました。画面を開くたびに数字が減っていく。その恐怖が「もう売ろう」という判断を引き起こしやすい。

一方、金も持っていた人の資産は、下落幅が相対的に小さかったはずです。

2025年からの金相場の年間騰落率は65%を超え、これは1970年代のオイルショック以来の急騰となりました。株が急落した局面でも、金が資産全体を下支えしていたのです。

金価格は2025年に急伸した後、2026年初頭時点でも調整を挟みながら歴史的な高水準を維持しており、2025年には国内小売価格が初めて2万円台を突破しました。

「思ったほど減っていない」という事実が、感情的な売りを物理的に防いでいた。これが金の本当の役割です。

金の役割はリターンを上げることではありません。S&P500を売らずに済む環境を作ることです。

比較項目 S&P500のみ S&P500+金
暴落時の体感ダメージ 大きい 緩和される
感情的な売りのリスク 高い 低い
長期リターンの期待値 高い(理論上) やや低い(分散効果あり)
「続けられる」確率 信念がないと低い 設計で高められる
NISA利用 可能 金ETFはNISA対応商品あり
ポートフォリオ構成による暴落耐性の比較(筆者作成)

信念がなくても、設計で乗り越えられる

「暴落を想定内と思える境地」は、投資経験を積まないと簡単には到達できません。

初めてNISAを始めた人が、いきなりあの日の暴落を「シグナル」として受け止めるのは難しい。それは当然のことです。

でも、ポートフォリオの設計は今日から変えられます。

信念がある人は信念で乗り切れる。
でも信念がない人でも、設計次第で握力は作れます。

金はその設計における「保険」として機能します。リターンを狙うためではなく、株を売らずに済むために持つ。そう考えると、金の位置づけが変わってきます。

金価格は2024年初めは1グラム1万円台でしたが、2026年1月28日には店頭小売価格が一時3万円を超える場面もあったように、その価格変動は激しくなっています。だからこそ、金を「増やすため」に持つのではなく、「株を持ち続けるため」に持つという発想の転換が重要です。


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まとめ:1年前の相場が教えてくれた3つの教訓

あの日から1年、データが教えてくれたことをまとめます。

教訓①:積立継続が最も再現性の高い正解だった
日経平均は底値から5万3,000円台まで回復し、S&P500も力強い上昇を見せました。特別な知識も、相場予測も不要でした。ただ続けるだけでよかった。

教訓②:「知っていること」と「できること」は別の話
正しい知識があっても、感情に負けて売ってしまえば意味がありません。暴落時に動じない「握力」こそが、長期投資の本質的な能力です。

教訓③:握力は「信念」か「設計」で作られる
信念がある人は信念で乗り切れます。でも経験が浅い人でも、ポートフォリオの設計を工夫することで、感情的な売りを物理的に防げます。金はそのための「保険」として機能します。

市場は必ずまた揺れます。

次の暴落が来た時に「持ち続けられる自分」を今から設計しておくこと。
それが、2025年4月7日の相場が私たちに教えてくれた、最も大切なことではないでしょうか。

※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品への投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任のもとで行ってください。

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