株価は上昇している。しかし同時に、通貨の価値は薄まっている。 円安、インフレ、財政拡大。名目上の資産額は増えても、通貨そのものの購買力は静かに下がっていく。 この「ズレ」にどう備えるか。
私の結論はシンプルだ。 「ドル」と「金」である。 成長のエンジンとしてドルを持ち、信用の裏側にある防壁として金を持つ。 では、その金を「どう持つか」が次の問題になる。
なぜ金を持つのか
金は配当を生まない。企業のように自ら成長して利益を出すわけでもない。 それでも持つ理由は明確だ。 金は、通貨というシステムに依存しない資産だからである。
株は制度の中にある。通貨も制度の中にある。 しかし、金は制度の外側にある。 金は利益を最大化するためではなく、通貨リスクから資産を守る「保険」として機能する。
金の保有方法:それぞれのメリット・デメリット
金の保有方法は主に3つある。投資信託、ETF、そして現物だ。 それぞれに一長一短が存在する。
| 保有方法 | メリット | デメリット |
| 投資信託・ETF | ・流動性が高い・少額から機動的に投資可能 | ・信託報酬等のコストが永久にかかる・金融システムに依存する・金価格にわずかに劣後する |
| 現物(金地金等) | ・完全所有であり制度リスクがない・証券口座が不要 | ・購入時と売却時にスプレッド(手数料)が発生・盗難や保管リスクの自己管理が必要・少額投資が難しい |
ペーパーアセット(投信・ETF)は便利さの代わりにシステムへコストを払い続ける構造であり、現物は完全所有の代わりに自己管理の責任を負う構造だ。
本来の最適解はNISA対応の国内投信
合理性の観点だけで言えば、現在最も優れているのは「SBI・iシェアーズ・ゴールドファンド(為替ヘッジなし)」だ。 理由は明確である。
- NISA口座での非課税運用が可能
- 業界最低水準の低コスト
- 円でそのまま購入可能
【30年シミュレーション(年5%上昇・初期投資100万円の場合)】 100万円 → 約413万円(非課税)
利益に対する約20%の税金がゼロになる効果は、長期運用において非常に大きい。
しかし問題があった
私は野村證券の口座を使っている。 そして、この商品は野村證券では買えない。
ここで前提が変わる。 机上の理論上の最適解を嘆くのではなく、実際に自分が買える商品の中で最適解を探す必要がある。
調べた末に出てきたのがGLDM
そこで浮上したのが「SPDR Gold MiniShares Trust(GLDM)」という現物裏付けの金ETFだ。
- 経費率:0.10%(極めて低コスト)
- 通貨:ドル建て
- 裏付け:現物裏付け
NISAは使えない。外国のETFである。 それでも、これを選ぶ合理性がある。 「ドルで金を持つ」という行為自体が、円だけに依存しないという自分の通貨戦略と完全に一致するからだ。
米国ETFは税金で不利なのか
結論から言えば、大きな不利はない。 米国ETFは通常、配当に対して米国で10%の源泉徴収がされるが、GLDMは配当を出さない。そのため、この10%課税は基本的に発生しない。 売却時に日本の20.315%が課税されるのみで、実質的な税負担のタイミングは国内ETFと同じだ。
【5年シミュレーション(年5%上昇・初期投資100万円の場合)】 100万円 → 約127万円(税引前) 国内課税後(利益27万円×20.315%控除) → 約121万円
金は短期で大きく増やすための資産ではない。 しかし、法定通貨の価値が下がる局面において、この堅実な防御力が確実に効いてくる。
30年シミュレーション比較(年5%・初期100万円)
改めて、各手法の長期的な最終評価額を比較してみる。
| 運用手法 | 30年後の評価額(目安) | 備考 |
| NISA投信 | 約413万円 | 利益に対する課税なし。買える環境なら最適解。 |
| GLDM (特定口座) | 約353万円 | 国内の譲渡益課税(20.315%)を適用。 |
| 現物 | 約347万円 | スプレッド、および総合課税等の影響を考慮。 |
数字を見れば、NISAが使えるならそれが最適解なのは間違いない。
それでもGLDMを選ぶ理由
私がGLDMを選ぶ理由は単純だ。 「買えるから」である。 どれほど理想的な商品であっても、自分の環境で買えなければ意味がない。
GLDMは「低コスト」「ドル建て」「現物裏付け」という、資産防衛において十分すぎるほど合理的な条件を満たしている。
現物という選択肢もある
もちろん、現物には現物の強さがある。 現物の最大の価値は「制度に依存しない」ことだ。完全所有であり、金融システムが揺らいだ際の制度リスクを完全に回避できる。 現実的には、10gから50g単位で手元に保有しておくのが扱いやすいだろう。
ETFは「機動性」。現物は「最終防衛」。 同じ金でも、担う役割が違う。
資産防衛の土台を固める3冊
最後に、この記事で触れた「金」「コスト」「リスク管理」の3つの視点を、さらに強固なものにするための書籍を挙げておく。
結論
最適解は、その人が置かれた環境によって違う。 NISAが使えるなら国内投信を買えばいい。 使えない環境ならGLDMという選択肢がある。 システムの崩壊リスクまで考慮するなら現物を持てばいい。
最も重要なのは、特定の最適解に固執することではなく、「円だけに依存しない」という状態を確実に構築することだ。
ドルと金。 通貨を分散し、システムの摩擦を乗り越える。 それが、不確実な時代におけるこれからの資産防衛になる。
