はじめに
最近、投資信託ランキング上位に「インベスコ世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)(世界のベスト)」というファンドがランクインしているのを目にした方も多いでしょう。一見すると魅力的に見えるこのファンド、実は**資産形成に極めて不向きな“高コスト・高リスクファンド”**です。この記事では、その危険な中身を冷静に分解し、初心者の方に向けて警鐘を鳴らします。
問題点1:信託報酬が極端に高い
このファンドの信託報酬は年率1.903%(実質も同じ)。
これは、例えばeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)などの優良インデックスファンドと比べて10倍以上高い水準です。1.9%という信託報酬は、投資信託の中でも極めて高コストに分類され、長期保有すればするほど複利の効果を損ね、リターンを大幅に削ります。
なぜ高い信託報酬が危険なのか?
投資信託の収益から毎年約2%が差し引かれるということは、仮に年利7%で運用していても、実質のリターンは5%以下になるということです。これは複利の恩恵を削る“見えにくい手数料”であり、初心者が最も気づきにくい罠です。
問題点2:毎月分配型という時代遅れの設計
毎月分配型ファンドは、配当が出る=儲かっていると誤解されがちですが、実際は元本を取り崩して配当している場合が大半です。
本当に利益?実は“元本の切り崩し”
特に株価が下落しているときでも分配金が出続けるのは、その分資産が減っている証拠です。つまり、投資家は自分のお金を“返されている”だけなのに、それを“利益”と錯覚してしまう。
この設計は、高齢層の取り崩し型運用を前提としたものであり、資産形成を目的とする若年層にはまったく向いていません。
問題点3:販売手数料が高すぎる
このファンドの**販売手数料の上限は3.3%(税込)**です。
ノーロード(購入時手数料0円)のファンドが主流となっている現在、3%以上もの販売手数料を支払って購入することは、完全に不利なスタートラインを自ら選ぶ行為といえるでしょう。
この手数料があることで、金融機関が営業トークでこのファンドを勧めるインセンティブが生まれ、本来は買うべきでない商品が売られてしまう構造を作っています。
問題点4:信託財産留保額という“出口コスト”
さらに問題なのが、解約時にかかるコスト=信託財産留保額が0.3%あることです。
これは、解約時にファンド側に資産調整コストを支払うというもので、入り口(販売手数料)も出口(留保額)も取られる設計です。インデックスファンドではほぼ存在しないコストです。
問題点5:中身の運用が不透明かつ割高
アクティブファンドでありながら、明確な運用方針・哲学が見えにくく、実際のパフォーマンスも1年リターンは6.8%と、インデックスファンドにすら及ばないことが多い。
どんなに立派な名前(”世界厳選株式”)が付いていても、中身が平均を下回るなら、高コストで低リターンという最悪の投資です。
なぜこんなファンドがランキング上位?
多くの投信ランキングは「分配金が多い」「純資産額が多い」など、見かけの数字で構成されています。
しかしその背後には、
- 高齢者層に毎月の“収入”として誤認されやすい仕組み
- 販売会社にとって手数料収入が大きい設計
- 分配金を多く出せば純資産が目減りしにくく、ランキング上位に残りやすい
といった“売る側に都合のいい構造”があります。
結論:初心者が絶対に避けるべきファンド
このファンドは、
- 長期で資産を育てたい
- コストを抑えて投資したい
- 複利の力を活用したい
といった投資家にはまったく向かないどころか、有害である可能性すらあります。
初心者こそ、信託報酬が0.1%以下の低コストインデックスファンドや、積立NISA対象ファンドなど、資産形成に最適化された商品を選びましょう。
参考にすべき良質ファンド例(抜粋)
ファンド名 | 信託報酬(年率) | 分配頻度 | コメント |
---|---|---|---|
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) | 0.09372% | 無分配 | 積立NISA対応、王道中の王道 |
SBI・V・S&P500インデックス | 0.0938% | 無分配 | バンガード連携でコスト極小 |
楽天・全世界株式インデックス(楽天VT) | 0.162% | 無分配 | 世界分散投資が1本で可能 |
最後に
「分配金があるから安心」「毎月お金がもらえるから良いファンド」といった発想は、長期投資では通用しません。冷静に“数字の意味”を読み解き、本当に自分の資産を育ててくれるファンドかどうか、ファンドの本質を見極めましょう。