2025年4月第2週(4月7日〜11日)は、日経平均株価が連日で数千円規模の激しい値動きを記録した週でした。米国と中国の貿易摩擦(いわゆる「貿易戦争」)の激化やそれに伴う関税政策の変化を背景に、株式市場は乱高下しました。初心者の投資家に向けて、この週に何が起きたのかを各日ごとにわかりやすく解説し、今後の相場見通しと取るべき投資戦略についても説明します。
今週の株価動向(4/7〜4/11)概要
まず、週内の日経平均株価の動きを簡単にまとめます。週初めの7日(月)に大きく下落し、翌8日(火)に急反発、9日(水)に再び下落、10日(木)に歴史的な大幅上昇、週末11日(金)に反落という流れでした。以下の表に、各営業日の終値と前営業日からの変動幅(前日比)を示します。

日付 | 終値 | 前日比 |
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4月7日(月) | 31,136.58円 | -2,644.00円 |
4月8日(火) | 33,012.58円 | +1,876.00円 |
4月9日(水) | 31,714.03円 | -1,298.55円 |
4月10日(木) | 34,609.00円 | +2,894.97円 |
4月11日(金) | 33,585.58円 | -1,023.42円 |
上の表の数値をグラフ化したものが以下です。4月7日から4月11日までの日経平均終値の推移を折れ線グラフで示しています。グラフを一目見ると、週初に急落した後、週の中頃にかけて急上昇し、その後再び下落するというV字に近い動きになったことが分かります。特に4月10日(木)の上昇幅(+2,894円)が突出しており、その前後の変動幅の大きさが際立っています。初心者の投資家の方も、このグラフによって週内の値動きの激しさを直感的に把握できるでしょう。
4月7日(月): 米中貿易摩擦への懸念で急落
週明け7日の日経平均株価は、大きな下げ幅 -2,644円(-7.8%)となり、終値は31,136.58円でしたjp.reuters.com。前週末4月4日(金)の終値と比べて約2,600円も安く、心理的節目の3万1,000円を割り込んで約1年半ぶりの安値水準に落ち込みましたjp.reuters.com。この急落の背景には、米国と中国の貿易摩擦の激化があります。
この頃、アメリカのトランプ政権は輸入品に高い関税(輸入税)を課す**「相互関税」と呼ばれる政策を打ち出しました。例えば「自国に輸出する他国の製品に対し、自国への輸入関税と同等の関税を課す」という措置です。それに対して中国も報復として同様に高い関税を課す構えを見せたため、米中間の貿易を巡る対立(貿易摩擦)が一気に激化しましたjp.reuters.com。関税が引き上げられると、お互いの国の商品が割高になって売れにくくなり、企業業績の悪化や世界的な景気後退につながる恐れがあります。そのため投資家心理が一気に悲観に傾き、7日の東京市場では朝から売り注文が殺到**しました。
日経平均は寄り付き(市場開始直後)から前営業日比-625円と大幅安で始まり、わずかな時間で下げ幅をどんどん拡大。jp.reuters.com一時は前営業日比で約-3,000円近く下落して3万800円台まで急落する場面もありましたjp.reuters.com。急激な価格変動により、一時的に先物取引が停止となるサーキットブレーカーも発動していますjp.reuters.com(急落時に取引をクールダウンさせる安全装置のような制度です)。その後は下げ止まりましたが、結局終値でも2,600円を超える大幅安となりました。
この日の下げは今年最大の下げ幅であり、市場全体がほぼ売られる展開でした。jp.reuters.com東証プライム市場では約99%もの銘柄が下落し、業種別の全33業種が値下がりする全面安の状態でしたjp.reuters.com。特に自動車や銀行など景気の影響を受けやすい景気敏感株の下げが大きかったことが報じられています。こうした動きからも、米中貿易戦争への不安が市場全体に広がり、「とにかくリスク資産を売って現金化しよう」というパニック的な売りが出た様子がうかがえます。
4月8日(火): 一転、大幅反発し急上昇
前日の急落を受けた翌8日の日経平均は、一転して朝から買い戻し(リバウンド)が先行しました。終値は33,012.58円と前日比+1,876円の大幅高で取引を終え、約4営業日ぶりに反発しましたnews.ksb.co.jp。上げ幅は+6.03%に達し、過去4番目の大きさという記録的な上昇となりましたnews.ksb.co.jp。
この急反発の背景には、前日に大きく売られ過ぎた反動で自律反発(テクニカルリバウンド)が起きたことがあります。7日の段階で日経平均は25日移動平均線との乖離率が15%を超え、「売られ過ぎ」の水準と指摘されるほど急落していましたjp.reuters.com。そのため、市場では「さすがにそろそろ下げ止まるだろう」という観測が広がり、これまで下落のきつかった自動車株や半導体関連、銀行株などを中心に買い戻しの動きが強まりましたjp.reuters.com。実際、この日は日経平均を構成する225銘柄のうちほとんどが値上がりし、値下がりは数銘柄にとどまる全面高でしたkabutan.jp。
また、前日に不安材料となった米国株の下落が一服したことや、為替の**円高進行がいったん止まった(円高一服)ことも好材料となりましたjp.reuters.com。7日の段階では1ドル=145円付近まで円高が進んでいましたが、この日はそれ以上には円高が進まず安定したため、輸出企業にとっての不安が和らいだ面があります。円高とは円の価値が上がること(例:1ドル=144円→142円になる等)**で、輸出企業は製品を海外で売って得たドルを円に換算したときの利益が減るため、円高は株価にマイナス要因となりがちです。8日はその円高が落ち着いたことで、株式市場にとって追い風となりましたjp.reuters.com。
こうして7日の悲観ムードとは打って変わり、この日は投資家心理が改善しました。ただし、急反発したとはいえ日経平均はまだ下落分を完全には埋め戻していない状況でもありました(前週末比では依然として安値圏)。市場関係者からは「依然として米国の関税政策への不透明感は強く、各国の対応を見極めながらの相場が続くだろう。株価がこのまま一気に上昇トレンドに戻るのは難しい」という声も出ていましたjp.reuters.com。つまり、大幅上昇とはなったものの、この時点ではまだ貿易問題への警戒感は完全には消えていない状況でした。
4月9日(水): 再び反落、関税発動で不安再燃
8日の反発もつかの間、9日(水)は再び大きく値下がりし、終値は31,714.03円と前日比で**-1,298円**(-3.9%)の反落となりましたnews.tv-asahi.co.jp。朝方から前日の米株安や貿易摩擦への懸念が意識され、寄り付き直後からほぼ全面安の展開となりましたnews.tv-asahi.co.jp。
この日の下落の主な要因は、依然として**「トランプ関税」を巡る米中対立への警戒感でしたnews.tv-asahi.co.jp。アメリカは表向きには各国に対して相互関税を課す方針を示していましたが、特に最大の貿易相手国である中国に対しては追加で非常に高い関税(最大100%とも報じられる上乗せ関税)を課す姿勢を見せていましたkabutan.jp。ちょうど4月9日は、米国が発動を予定していた追加関税措置の発効日でもあり、日本や中国などへの追加関税がこの日午後に実際に発動されたことが報じられると、市場の不安がさらに強まりましたnews.tv-asahi.co.jp。日経平均の下げ幅は午後に一時 -1,700円超にまで拡大**し、再び急落状態となったのですnews.tv-asahi.co.jpnews.tv-asahi.co.jp。
また、この日は円高の急速な進行も相場の重荷となりましたnews.tv-asahi.co.jp。為替市場で一時1ドル=144円台半ばまで円高が進行し(円の価値が上がった)、自動車など輸出関連株を中心に売り圧力が強まりましたnews.tv-asahi.co.jp。前述のとおり、円高は輸出企業の利益を圧迫するため、これも株価下落に拍車をかけた形です。
市場関係者のコメントとしては、「各国による報復措置(関税のかけ合い)への警戒感が一段と高まったことが影響した」と指摘されていますnews.tv-asahi.co.jp。まさに貿易戦争の泥沼化が意識され、投資家はリスク回避姿勢を強めた日といえます。ただ、8日終値(33,012円)に対して9日終値(31,714円)はまだ上回っており、7日の安値(30,792円jp.reuters.com)も下回るには至りませんでした。kabutan.jp市場では「中国への100%関税という最悪の材料以外に新たな悪材料は出ておらず、7日の安値を割るような展開にはならないだろう」という見方もありましたkabutan.jp。しかし同時に、「関税でダメなら次は為替など他の手段も念頭に置いているとの情報もあり、まだ下値波乱要因が残る状況だ」という警戒的な分析も出ておりkabutan.jp、先行き不安が完全には拭えない状態が続きました。
4月10日(木): 関税措置の停止を好感し歴史的急騰
週の中日まで続いた貿易摩擦への不安も、この4月10日(木)には状況が大きく変わりました。日経平均株価は前日比+2,894.97円もの大幅高となり、終値は34,609.00円まで急騰しましたfinance.yahoo.co.jp。+2,894円という上げ幅は史上2番目の大きさで、日経平均は約1週間ぶりに34,000円台を回復していますtxbiz.tv-tokyo.co.jp。
この歴史的な急上昇の直接のきっかけは、アメリカ側の姿勢変化でした。トランプ大統領が**「相互関税」の一時停止(90日間の猶予)を表明し、中国以外の国に対する追加関税措置を当面見送る方針が伝わったのですtxbiz.tv-tokyo.co.jp。このニュースを受けて、前日の4月9日(米国時間)のニューヨーク株式市場ではダウ平均が+2,962ドル高**とこちらも史上最大級の上げ幅で急伸しましたtxbiz.tv-tokyo.co.jp。貿易戦争の全面拡大に歯止めがかかったとの見方から、世界的に投資家心理が一気に改善した形です。
こうした好材料を受け、10日の東京市場でも朝から買いが優勢となりました。寄り付き(市場開始)段階で+600円超の上昇で始まると、買い気配スタートとなっていた銘柄の取引が成立するにつれて株価水準が切り上がり、開始直後の時点で上げ幅は一気に+2,800円超に達しましたfinance.yahoo.co.jp。その後いったん34,500円台で伸びが一服する場面もありましたが、終盤にかけて再び強含み、結局終値でも+2,894円高とほぼ高値圏で引けましたfinance.yahoo.co.jp。
業種別には東証プライム市場の全ての業種が上昇し、非鉄金属や電気機器など景気敏感セクターでは2桁%の上昇となるものもありましたfinance.yahoo.co.jp。まさに前日までの悲観ムードが一転し、売られていた銘柄に一斉に買いが入った形です。日経平均採用の主力株も軒並み急騰し、例えばソフトバンクグループや東京エレクトロンなど指数寄与度の高い銘柄が大きく上昇して指数を押し上げました(ファストリテイリング1銘柄で日経平均を+172円押し上げるなどkabutan.jp)。
ただ、この上昇も「材料出尽くし感」から途中で伸び悩む場面がありました。朝方の急騰後、後場(午後の取引時間)はしばらく小動きになったことからも、一気に強気相場へ転換というよりはポジション調整の買い戻しが中心だったことがうかがえますfinance.yahoo.co.jp。それでも結果的には週初からの下落分をほぼ取り戻す水準まで値を戻し、市場には安堵感が広がりました。
市場関係者の声としては、「関税への警戒が和らいだことで大幅高になったが、株価がここから本格的に上昇トレンドに転じるかは不透明」とする見方がありましたjp.reuters.com。実際、今回の上昇は**米国の政策変更というニュースに端を発したリリーフ・ラリー(安心感による上昇)**との色合いが強く、依然として貿易問題そのものが完全解決したわけではありません。このため、「上昇した今のうちに戻り売り(高くなったところで持ち株を売る)を検討する動きも出るかもしれない」といった声も聞かれたほどです。初心者の方にとっては、大きな上昇局面でも浮かれすぎずに冷静に状況を見ることの大切さを示す一日だったと言えます。
4月11日(金): 再び貿易摩擦懸念で反落
10日の急騰の翌日となった週末11日(金)は、またも大幅な下落(反落)となりました。日経平均の終値は33,585.58円で、前日比では**-1,023.42円(-2.96%)の下落ですjp.reuters.com。前日の米国株式市場(10日夜のNYダウ)が再び1,000ドル超下落**したことや、為替が再度円高方向に振れたことが嫌気され、東京市場も朝から全面安の展開となりましたfinance.yahoo.co.jp。
米国株の下落は、ここまで小康状態となっていた米中貿易摩擦への懸念が再燃したためですjp.reuters.com。前日に「中国以外への関税90日停止」という好材料が出たものの、依然として米中間の報復合戦は続いており、楽観視できない状況でしたjp.reuters.com。市場では「トランプ大統領の発言は二転三転して不確実性が高く、安心はできない」との指摘もありjp.reuters.com、この日は早くも「やはり米中対立は長期化するのでは」との不安が広がりました。加えてドル円相場が再び円高方向に進み、1ドル=143円台前半まで円高が進行したことも重なり、輸出株中心に売りが優勢となりましたjp.reuters.com。
日経平均はこの日、寄り付きから600円以上安でスタートし、その後も売り注文が止まらず下げ幅は一時 -1,900円超に達して32,600円台まで急落しましたfinance.yahoo.co.jp。しかし、前日の急騰もあってか売り一巡後は次第に下げ渋る展開となります。為替の円高進行が後場にはやや落ち着いたことも支えとなり、徐々に下げ幅を縮小しましたjp.reuters.com。結局、終値ベースでは1,000円超安と大幅安にはなりましたが、日中安値(32,626円)からは約1,000円持ち直し、安値圏からはやや回復して引けた形ですjp.reuters.comjp.reuters.com。
業種別にはこの日も全業種が下落しましたが、海運や小売、建設など一部業種は下げ幅が小幅にとどまりましたfinance.yahoo.co.jp。一方で、医薬品や保険、銀行など前日に買われたディフェンシブや金融株が大きく売られ、下落率上位となりましたjp.reuters.com。新興市場(グロース市場)の株式には資金が向かい、小型成長株が物色される動きも見られましたfinance.yahoo.co.jp。これは、大型株が不安定になる中で一部の投資家が短期妙味を小型株に求めた可能性を示唆しています。
11日の反落によって、日経平均は結局週初から週末までほぼ横ばい圏まで戻った形です(4月4日終値33,780円→4月11日終値33,585円と週間では約200円安)。しかし、その間の値動きの振れ幅(高低差)は実に約3,800円にも達し、いかに相場が荒れたかが分かります。初心者の方は、こうした短期的な乱高下に振り回されないことが重要です。次に、この週の激しい値動きを踏まえた今後の見通しと、初心者が注意すべきポイントについて述べます。
今後の見通し: 貿易問題と企業業績に注目
4月第2週は貿易摩擦のニュースで乱高下しましたが、今後もしばらく相場は波乱含みとの見方が多くあります。finance.yahoo.co.jp米中双方の関税をめぐる攻防は依然続いており、90日間の猶予後に再び関税が強化される可能性も残っています。また、ちょうどこれから日米ともに企業の決算発表シーズンに入ります。jp.reuters.com専門家からは「企業の業績見通しが市場予想より悪ければ、それが売り材料となってしまうリスクもある」との指摘も出ていますjp.reuters.com。特に米国では金利上昇やインフレ動向も不透明感を増しており、経済指標次第では景気減速懸念が再燃する可能性もあります。finance.yahoo.co.jp実際、翌週4月第3週も今週同様かそれ以上に株価指数の値動きが荒くなる可能性があるとも予想されていますfinance.yahoo.co.jp。
要するに、現時点では強気に転じる根拠よりも警戒すべき材料のほうが多い状況です。米中交渉の進展や政策の具体化など、はっきりとした安心材料が出てこない限り、株式相場は上下に振れやすいでしょう。当面はニュースヘッドラインに機敏に反応する神経質な展開が続くと考えておくのが無難です。
初心者投資家へのアドバイス: 慌てず基本に忠実に
以上の状況を踏まえ、初心者の投資家が取るべき行動についていくつかアドバイスをまとめます。
- 短期の値動きに一喜一憂しない: 今週のように相場が乱高下すると、ニュースに振り回されて感情的に売買してしまいがちです。しかし長期的に見れば、一時的な暴落や暴騰はどの市場でも起こりうるものです。慌てて底値で損切りしたり、高値で飛びついたりしないように冷静さを保ちましょう。特に、4月7日のような急落局面でパニック売りすると、8日や10日の反発局面で機会を逃してしまうことになります。
- 分散投資と資金管理を徹底する: 相場の先行きが不透明なときほど、一つの資産や銘柄に集中投資しないことが大切です。株式だけでなく債券や現金なども含めたポートフォリオの分散や、株式投資でも業種・地域を分散することでリスクを抑えましょう。また、一度に資金を投入せずドルコスト平均法的に時間分散して投資するのも有効です。仮に今後さらに下落局面が来ても、余力資金があれば安値で買い増しを検討できる余裕が生まれます。
- ニュースと基本指標をチェックする習慣を: 今週は米中貿易摩擦という国際ニュースが株価に大きな影響を与えました。初心者の方も、経済ニュースや政策発表には目を配りましょう。ただし、デマや憶測も飛び交いやすいので情報源は信頼できるメディアに限り、鵜呑みにせず自分なりに考察することも大切です。また、企業の業績やPER・PBRなどの基本的な指標にも注目してください。株価が急落した7日には日経平均のPBRが1倍割れ目前となり割安感が意識されたことも、8日の反発につながったとの分析がありますnews.ksb.co.jp。このようにファンダメンタルズ(基礎的条件)と照らし合わせて判断する癖をつけると、過度な不安や楽観を抑えやすくなります。
- 損切りラインと投資計画を明確に: ボラティリティ(変動率)が高い相場では、思わぬ損失が膨らむリスクもあります。あらかじめ許容できる損失ラインを決めておき、そこに達したら機械的に手仕舞うなどルールを設けましょう。一方で、将来有望だと信じる銘柄であれば、短期の値下がりで売らずに中長期で持ち続ける判断も必要です。大事なのは「漠然と持ち続ける」「なんとなく不安で売る」といった行き当たりばったりではなく、事前に決めた計画に従って行動することです。
最後に、今週のような荒れた相場は初心者にとっては怖く感じるかもしれません。しかし、視点を変えれば大きく下がった局面は優良株を安く仕込めるチャンスでもあります。一喜一憂せず落ち着いて市場と向き合えば、リスクをコントロールしつつ利益を得ることも不可能ではありません。ぜひ基本に忠実な投資姿勢で、無理のない運用を心がけてください。今後も経済ニュースや相場動向にアンテナを張りつつ、長い目で資産形成に取り組んでいきましょう。